著者
蔦森 英史 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志 片野 晶子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.167-172, 2009 (Released:2010-04-06)
参考文献数
20
被引用文献数
6 2 7

発達性読み書き障害は複数の認知的要因が関与しているとの報告がある (Wolf, 2000;宇野, 2002;粟屋, 2003) . しかし, 読み, 書きの学習到達度にそれぞれの情報処理過程がどのように影響しているのかはまだ明確になっていない. 本研究では全般的な知能は正常 (VIQ110, PIQ94, FIQ103) だが漢字と英語の書字に困難を示した発達性書字障害例について報告する. 症例は12歳の右利き男児である. 要素的な認知機能検査においては, 日本語での音韻認識力に問題が認められず, 視覚的記憶力のみに低下を示した. 本症例の漢字書字困難は過去の報告例と同様に, 視覚性記憶障害に起因しているものと考えられた. 英語における書字困難の障害構造については, 音素認識力に関しては測定できなかったが, 日本語話者の英語読み書き学習過程および要素的な認知機能障害から視覚性記憶障害に起因する可能性が示唆された.
著者
金 徳謙
出版者
日本島嶼学会
雑誌
島嶼研究 (ISSN:18847013)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-11, 2023-03-31 (Released:2023-05-02)
参考文献数
7

After the 1950s, when have heightened interest in islands, the high interest in islands has affected research, and similar upward trends have continued in islands research that focuses on islands and tourism. It is no longer easy to even grasp the actual trends of research. This study intended to clarify research trends on islands tourism. The author collected all research papers which are searched using Web scraping with the keywords ‘Island’ and ‘Tourism’ on Science Direct. The research methods in this study are Bibliometrics and Text mining. Specifically, the author conducted four analyses, in order to clarify research trends in this study. First, the author conducted a Frequency analysis from Bibliometric point of view based on 6,967 papers from 1998 to 2021. As a result, it was clarified that annual amounts of research papers have changed to an increasing trend from 2005. Second, the author conducted a Correspondence analysis based on the top 60 most frequent words, and clarified the time-series changes from 1998 to 2021. As a result, research trends could be classified into five categories: ‘Development / Resources’, ‘Carrying Capacity / Sustainability’, ‘Risk / Disaster’, ‘Network’, and ‘Nature / Landscape’. Third, the author conducted a Cluster analysis based on the top 60 most frequent words, and summarized research trends into three clusters: ‘Tourists / Travel Destinations / Travel Experiences’, ‘Tourism Industry / Economic Growth’, and ‘Conservation / Development (SDGs) / Policy / Community’. Fourth, the author performed a Co-occurrence Network analysis based on the top 60 most frequent words, and classified the co-occurrences and relationships between the words into three categories: ‘Economic Revitalization / Regional Development and Related Policies’, ‘Behavior and Experiences of Individual Tourists’, and ‘Environmental Problems and Conservation’. Finally, based on the results of these analyses, the author concludes that research trends in islands tourism have shifted from ‘Development’ to ‘Economy’ of island regions, to ‘Nature Conservation’ since the mid-2010s, and from 2018, it was concluded that there are trends to focus on ‘SDGs’.
著者
金澤 裕之
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.47-53, 2007-04-01 (Released:2017-07-28)

近年、主に話しことばで、例えば「多くの方が来ていただき…」というような、「○○(=相手)が△△していただく」という表現をよく耳にする。授受を表わす部分が「てくださる」ではないこの表現は、現在一般に「誤用」と考えられているが、使用場面の急速な広がりの背景には、これまでの言語ルールを超えた何らかの理由があるように感じられる。本稿では、話しことばの実際の用例において、「てくださる」と「ていただく」の両者が入り得る場面でも「ていただく」の方が遥かに高い割合で選択されていることを確認しつつ、そうした現象の背景にあるものとして、現代人の敬語意識における一つの心理的な傾向について考察し、併せて、複雑な体系を持つ日本語の授受表現における単純化の方向への一つの兆しが、こうした現象に現われているかもしれない可能性について言及する。

3 0 0 0 OA 覚醒時興奮

著者
金谷 明浩 亀山 良亘 山内 正憲 蔵谷 紀文
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.739-744, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

小児の覚醒時興奮は自傷行為のリスク,看護スタッフの負担,両親の満足度を低下させるなど,術後の大きな問題の一つである.リスク因子には年齢,術前不安,性格,痛み,麻酔方法,術式がある.麻酔方法は重要で,血液/ガス分配係数の小さいセボフルランやデスフルランは広く使用されているが,小児の覚醒時興奮の原因として注目されている.予防・治療にはオピオイド,ミダゾラム,ケタミン,α2受容体作動性鎮静薬,非ステロイド性抗炎症薬などの周術期投与が有効とされている.プロポフォールによる麻酔維持も予防に有効である.小児では覚醒時興奮が生じにくい麻酔方法を選択するべきで,発生した場合は適切に治療を行わなければならない.
著者
今井 理衣 金 佑香 岡野 周志 近藤 竜太
出版者
一般社団法人日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.38-42, 2022-12-27 (Released:2022-12-27)
参考文献数
8

A 9-year-old neutered female British shorthair cat presented with anorexia. Physical examination revealed stomatitis and gingival ulcer of the maxillary anterior acetabulum. Computed tomography showed a bone-infiltrating neoplastic lesion in the maxilla invading the orbit. A core biopsy of the lesion along with imaging studies and laboratory examinations revealed stage 3 oral squamous cell carcinoma. An esophageal fistula tube was placed and administration of analgesics and molecular-targeted drugs was initiated. After a month, palliative irradiation was performed. The cat tolerated without significant side effects during the 197-day administration of the molecular-targeted drug. Later in treatment, radiation therapy caused necrosis of the bone and skin. However, for most part of the 227-day survival, quality of life was well maintained with pain relief and dietary supplements.
著者
高田 宏宗 柳田 誠 富岡 孝仁 金井 講治 高屋 雅彦 木村 亮 影山 祐紀 竹村 昌彦 丸山 朋子 田尻 仁 松永 秀典
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.287-294, 2013-07-15 (Released:2016-12-28)
参考文献数
17

2007年7月から2012年3月に当センターで出産した精神疾患合併妊婦137例を対象に,胎児・新生児合併症と妊娠中の服薬との関連性を検討した。流・死産7例については向精神薬服用との関連は明らかではなかった。奇形8例の母親全員が妊娠初期に向精神薬を服用していたが,妊娠12週以前に服用していた99例のうち,母体が高齢の場合に奇形発生率が有意に高かった(母体35歳以上:30例中6例,35歳未満:69例中2例,p=0.0041)。さらに,服用した向精神薬の種類数も奇形の発生に有意に相関していた(p=0.0021)。流・死産,奇形以外の合併症については,出産直前の内服によって生じ得るものとそれ以外に分けて検討した。いずれも服薬群のほうが非服薬群より発生頻度が約50%高かった。本研究から妊娠初期に向精神薬を内服していた症例では,高齢妊婦および多剤併用という2つの因子が奇形発生のリスクを高めることが示唆された。
著者
財津 亘 金 明哲
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-14, 2015 (Released:2015-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
5

The effectiveness of identifying the author of an illegal document by using text mining was investigated. The suspected writing evaluated in this study was a claim of responsibility written by a 14-year-old boy, which stated that he committed the “Kobe child murders” in 1997. It was compared with control writings including confessions, and an essay that we knew were written by the same boy, as well as with irrelevant materials including various essays written by five junior high school students, and claims of responsibility in four past criminal cases. First, the writings in each document were digitalized and converted to text files. Then, the relative frequencies of bigram of letters, bigram of part-of-speech taggers, sentence lengths of each document, and rate of using Kanji, Hiragana, and Katakana were calculated. Results of sammon multi-dimensional scaling and hierarchical cluster analysis indicated that the text in the suspected writing was arranged identically or similarly to groups of texts in control materials, where they were arranged differently from groups of texts in irrelevant materials. In a separate analysis, the suspected writing was substituted with a document written by a different offender and we conducted the identical procedure described above. Results demonstrated that texts in the suspected writing were in a different form control and irrelevant texts. These results indicated the effectiveness of identifying an author by using text mining when examining forensic documents.
著者
小林 伸行 濱川 文彦 金澤 嘉昭 廣松 矩子 高野 正博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1380-1385, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
3

目的:排ガス(おなら)臭を主訴とする自己臭症の患者における腹部症状を質問紙を用いて調べた.対象と方法:当院心療内科を初診したおなら臭を主訴とした自己臭症患者47名(男性20名,女性27名,平均年齢27.7±12.4歳,以下,自己臭群)と健常者82名(男性48名,女性34名,平均年齢37.3±9.7歳,以下,対照群)を対象とした.当科初診時にRomeIII診断基準に基づいて作成した問診票を用い腹部症状を調査した.結果:過敏性腸症候群(IBS)の診断基準を満たしたのは,自己臭群25名(53%),対照群17名(21%)と自己臭群で有意に高頻度であった(p<0.001).自己臭症とIBSを併存するものは対照群のIBSと比較していきみ,排便困難感,残便感の頻度が高かった(すべてp<0.001).自己臭患者の中でIBS患者と非IBS患者を比べると排便困難感がIBSで高頻度であった(p<0.05).結論:おなら臭を主訴とする自己臭症には高頻度でIBSを併存していた.今後,下部消化管の機能異常の解明により自己臭症の病態理解を促進すると考えられる.
著者
金生 茉莉 藤田 康平 池浦 一裕 加藤 伸 小高 利絵 高森 康次 中川 種昭 角田 和之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.41-45, 2018 (Released:2019-06-30)
参考文献数
14

Laugier-Hunziker-Baran症候群(LHB)は,口腔,指趾の色素沈着と爪甲色素線条を特徴とし,全身症状を伴わない後天性疾患である。今回,経過観察中に症状推移の観察が可能であったLHB症候群の1例を経験した。71歳女性で初診時,下唇,頬粘膜に黒褐色色素斑があった。4年経過時に粘膜色素斑の増悪と指趾,爪甲色素線条が発生した。全身検索の結果LHBの診断となった。口腔粘膜色素斑の診断には全身疾患の精査と慎重な経過観察が重要である。
著者
金 光林
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.54, pp.63-70, 2019-10

世界の各国の姓氏について調べてみると、大概は少数の姓氏に人口が集中する現象が見られる。東アジアの場合もこのような現象は明確に現れる。中国おいて人口が少数の有力な姓氏(大姓)への集中する要因は次のように考えられる。(1)まずは、由緒があり、多様であり、広く分布していることに関連がある。(2)大姓は歴史上において国姓であることが多く、国の支配者の姓であるために当該王朝においては勢力を誇り、また王朝の支配者は賜姓という手段を使い、国姓を広めた。(3)門閥氏族制度は有力氏族増加の重要な要因となった。(4)中国の前近代の一夫多妻制により、社会的地位と経済的優越は子孫の生育にも有利に働き、名門氏族の子孫繁盛の土壌を作った。(5)家系を重んじる意識、同姓村落の形成、共同体内部での婚姻などの要因も、社会的に有力な姓氏への偏中を助長したと考えられる。朝鮮(韓国)とベトナムの姓氏における有力な姓氏への集中現象にも中国と近似する要因が見られる。日本の姓氏が中国、朝鮮、ベトナムのように数百程度に集約されず、約30万個もあるといわれるが、これについては次のような要因が考えられる。(1)日本の姓氏は地名、職業名、物象名などに由来したが、その中の多数が地名に由来している。それぞれの地域の多様な地名に由来したために自ずと姓氏の数が多数になったと思われる(2)日本の家族制度は中国、朝鮮、ベトナムの場合に比べて血縁によって続くという意識が濃厚ではなく、そのため姓氏の分化が常に行われ、それが多数の姓氏に発展する素地となった。(3)日本の政治体制が中国、朝鮮、ベトナムのような中央集権型ではなかったので、古代社会の場合を除くと、中央の政治権力による姓氏への影響力(王権により賜姓・改姓)が薄く、これも姓氏が多様化する一因にもなったと考えられる。(4)明治時代に入り、「平民苗字必称義務令」が発布され、江戸時代までに公に苗字(名字)を名乗ることができなかった平民層も苗字を持つことが義務化されたために、極めて短期間に平民たちが馴染みのある地名から多数の苗字を新しく作ったことが日本の姓氏の数を増加させた。
著者
島崎 貴志 金井 秀明
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-95, no.11, pp.1-8, 2015-05-07

世界各国,様々なスポーツがあり,競技大会が開かれるものが多い.競技大会では,選手たちが腕を競う一方,声援を送り,選手をサポートするファンも会場には存在する.声援は試合会場など近接にいるものからもらうが,その場にいないファン,つまり,遠隔地からの声援は効果がないのか疑問に思う.本研究では,その可能性を明らかにするために,室内ジョギングを対象とした遠隔音声および機械音声による声援の効果を明らかにする.検証は 「近接と遠隔」,「遠隔音声のみと録音」,「人と機械音声」 をそれぞれ比較することにより行った.
著者
伊藤 義徳 金築 優 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-108, 2001-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、認知心理学において注目されている自動的処理と統制的処理という概念が、認知行動療法(CBT)に及ぼした影響について展望するとともに、この概念を積極的に取り入れることが、さらなる臨床心理学の発展に寄与する可能性について考察を行った。自動的処理と統制的処理は、人の認知過程において、意識しないままに行えてしまう活動と、子細に注意を払いながら行う活動があるという事実に着目した理論である。感情の喚起により統制的処理が阻害され、相対的に自動的処理が優位になるという相互の関係性があり、特に感情情報に対する処理過程は、感情障害のメカニズムを説明するモデルにおいて重要な役割を担っている。また、処理の二過程理論は認知・社会心理学の幅広い分野で応用されており、臨床領域においても、さまざまな応用が可能であると考える。こうした他分野の知見を積極的に臨床活動に応用してゆくことが、認知臨床心理学の役割であると考える。
著者
金井 昌信 上道 葵 片田 敏孝
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.273-281, 2018 (Released:2021-04-01)
参考文献数
17

東日本大震災の教訓として、“津波てんでんこ”の重要性が指摘されている。片田(2012)は津波襲来時の釜石市の児童生徒とその保護者の避難実態から、“津波てんでんこ”が実現された要因として、家族間の信頼関係が構築されていたことを指摘している。この実績を参考に、東日本大震災以後、小中学校の防災教育において、津波避難に関する信頼関係の構築を目指して、家族で防災会議を開くことを促している地域もある。しかし、家族での相談が、家族間の信頼関係の構築および“津波てんでんこ”の実現にどの程度影響するのかは明らかにされていない。そこで本研究では、児童生徒とその保護者の関係を対象に、“津波てんでんこ”促進策として、家族間の津波避難に関する相談の実施状況に着目し、その“津波てんでんこ”促進効果を検証することを目的とする。分析の結果、家庭で避難方法について相談しておくことが子どもの適切な避難を選択することにつながることが確認された。さらに、子どもが適切な津波避難行動が実行できないかもしれないと保護者が思うと、“津波てんでんこ”が実行される可能性が低くなることが確認された。以上の結果より、家庭での津波避難に関する相談をすることを通じて、子どもは適切な行動をしようと思うようになり、それを保護者が信頼することによって、“津波てんでんこ”が実行される可能性が高まることが確認された。