著者
青木 康彦 龔 麗媛 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.87-102, 2019-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
41

自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)児の療育指導において社会的関わりによる強化は重要であると考えられるが、一部のASD児においては社会的関わりが強化子として機能していない可能性が指摘されており、社会的関わりを条件性強化子とする成立率が高い方法の検討が必要である。本研究では、ASD児、発達障害児や定型発達児を対象とした研究における年齢、診断、条件づけの方法、中性刺激の種類、強化子の種類、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせごとに条件性強化子成立の差異を検討し、ASD児における条件性強化子成立の条件を検討することを目的とした。条件づけを実施した26篇の研究を対象に、「年齢」、「診断」、「条件づけの方法」、「中性刺激の種類」、「強化子の種類」ごとに条件性強化子の成立率を算出した。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせにおける条件性強化子の成立率を算出した。その結果、年齢、診断、中性刺激、強化子の種類ごとに条件性強化子の成立率に差がみられた。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせでは、ある中性刺激との組み合わせで条件性強化子成立率が高い強化子刺激であっても、別の中性刺激との組み合わせでは条件性強化子の成立率が低い場合がみられた。今後、ASD児にとって社会的関わりが強化子として機能するために、社会的関わりと組み合わせる強化子について検討する研究が多く実施されることが望まれる。
著者
青木 康彦 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.25-32, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
18

本研究では、自己刺激行動が多くみられ、食べ物、玩具を強化子とした随伴ペアリングによって、称賛の条件性強化子が成立しなかった自閉スペクトラム症児に対して、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけを実施し、その効果を検討することを目的とした。指導では、標的行動が生起した際に、日常生活で聞いた経験の少ない称賛コメントと自己刺激性強化子を産出する玩具を同時に与えた。その結果、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした随伴ペアリング後において、12ブロックの間、称賛は強化子として拍手の生起頻度を高めた。また、随伴ペアリングを行なっていない他の行動についても、ベースライン期よりもペアリングⅡ期後の称賛期で生起頻度が高いという結果が得られた。本研究の結果から、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけの有効性が示唆された。
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。
著者
青木 康太朗 永吉 宏英
出版者
日本野外教育学会
雑誌
野外教育研究 (ISSN:13439634)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.23-34, 2003 (Released:2010-10-21)
参考文献数
22

The purpose of this study is to clarify the differences of social skills development due to the camper's characteristics such as their sex, grades, past camp experience and the differences of social skills that they acquired before the camp. Furthermore, the validity of the Pre-Post model that make the first day of a camp the starting point to measure social skills development is examined. The measurement of social skills was conducted to the 36 campers (32 analysis candidates) at the two weeks before, the first day, the 10th, the final day of the camp and one month after the camp by using social skills measure developed by Shoji (1994). The campers were composed of elementary school (grade 5 and 6) and junior high school children.Main findings were as follows; 1) Positive and assertive skills influences modification process of social skills. 2) The junior high school student, campers who have past camp experience and camper who had low social skills score showed distinguished increase between before and after the camp. 3) The score of social skills of the elementary school children and the campers who didn't have a past camp experience showed distinguished decrease from two weeks before the camp to the first day of the camp. 4) It is possible that increase social skills from the first day of the camp are recovery process of decrease social skills. From these results, it became clear that the differences of social skills development due to the camper's characteristics in a long period of camp.
著者
徳田 真彦 吉田 昌弘 青木 康太朗 竹田 唯史 吉田 真
出版者
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター
雑誌
北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 (ISSN:21852049)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-9, 2017

Level of physical fitness and motor ability of children in Hokkaido are lowercompared to the national averages due to inactivity in winter. We developed snow games toenhance the levels of physical fi tness and motor ability of children in Hokkaido. The purpose ofthis study was to clarify the physical and psychological eff ects of the snow games and elucidatethe diff erences between a snow-covered playground and indoor playground. Twenty-eight fourthgrader (14 boys and 12 girls) participated in two snow games named "Snow Tag" and "Catchthe Tail". They performed these games on a snow-covered ground and a snow-free (indoor)playground. Heart rate (bpm), number of steps, and energy expenditure (kcal) were measuredto evaluate exercise intensity and the amounts of activities of the snow games. After playing thegames, the participants were given questionnaires that included questions on the sensation ofenjoyment, motivation to do again and sensation of fi tness improvement by these activities. Themain fi ndings were as follows:1. It appears that playing these games on a snow-covered ground is more eff ective to increaseexercise intensity and the amount of physical activities. to be more eff ective on a snow-coveredplayground for increasing exercise intensity and the amount of physical activities.2. The snow games are enjoyable, and fun to stir children's interest to play again, and adequatelyhard enough to and increase the level of physical fi tness during winter. In the future, while working on development of new activity, we would like to createan activity manual and work on spreading snow games.冬季間,屋外での活動が制限される北海道では,子どもたちの体力・運動能力が全国的に見ても総じて低い状況にある。こうした状況を踏まえ,筆者らは北海道の子どもたちの体力・運動能力を向上させることを目的に,冬の外遊びプログラム「スノーゲーム(Snow Games)」を開発した。そこで本研究では,小学生を対象に実験を行い,身体的・心理的効果を測定し,スノーゲームの運動効果について検証する事及び,スノーゲームが子どもの体力向上に向けて有効な活動であるかを検討する事を目的とした。 調査対象者は,スノーゲームの「スノータッグ」,「雪上しっぽとり」を体験した小学校4年生29名であった(男子15名,女子14名)。スノーゲームの身体的効果を検証するため,ゲーム実施中の心拍数,歩数,エネルギー消費量(kcal)について手首型心拍計(PolarA360,Polar社製)を用いて計測した。測定時間は,ゲームの説明から,1回目のゲーム,作戦会議,2回目のゲームまでとした。スノーゲームの心理的効果を検証するため,実験後に自記式のアンケート調査を実施した。調査内容は,雪上と屋内で行った各アクティビティについて「楽しさ」,「意欲(またやってみたい)」,「身体的負担度」の3項目であった。 スノーゲームの運動効果を検証した結果,ゲーム特性によって雪上での実施適正の差異はあるものの,総じて雪上では雪の重みや足元の不安定さなどから下肢に大きな負荷が掛かることで,身体活動量が豊富に得られることが分かった。また,心理的効果に関しては,活動に対して身体的負荷を強く感じつつも,ゲームの楽しさや意欲を強く感じていたことも明らかになった。 今後,新しいスノーゲームのアクティビティを開発しつつ,ゲームの活動手順や準備物,安全上の留意点等を具体的にまとめ記した活動マニュアルを作成し,スノーゲームの普及及び,北海道の子ども達の体力・運動能力の向上に寄与していきたいと考えている。
著者
瀧本 佳史 青木 康容
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.64, pp.93-116, 2017-03

本稿は沖縄県北部の国頭郡に所在する米軍基地,キャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブ,興味深いことにこの2つの基地は半ば地元による誘致結果として生まれた稀有のケースであるが,その周辺市町村による用地提供の代償として受け取る「軍用地料」に関して論じるものである。それは地域を構成する旧字住民が入会山として日常生活において利用してきた土地でありながら,その地代としての軍用地料が市町村と各行政区との間でどのように配分されるのか,それは地域によってどのような違いがあるのか,などについて市町村が提供した資料等に基づいて明らかにし,結果としてその地代としての巨額の軍用地料が配分される地域とされない地域との間をいかに分断するものであるかについて論及する。それと共に同じように軍用地に土地を奪われた中部地区の市町村との根本的な相違にも言及する。(尚,本稿における多数の表は行文上重要なものであるが,編集者によって小さくされている。)軍用地料金武町宜野座村恩納村辺野古杣山
著者
瀧本 佳史 青木 康容
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.93-113, 2013-03-01

沖縄県における米軍用地は,今日いくらか返還の途上にあるとはいえなお相当な規模を占めている。戦後占領下において農耕地や宅地が接収されていったが,本稿は戦後それがどのように規模を拡大させてきたかについてその背景を探るとともに,地域によってどのような接収に違いがあるのかなどについて追究するものである。米軍の軍用地接収は沖縄戦終了後の占領とともに始まり,これを第1 期とすれば第2 期は国際環境の変化によって大規模かつ組織的な接収が行われる1950 年代半ばからであるということができる。接収地には地料が支払われ,その金額や支払い方法をめぐって住民と米軍との間の軋轢がやがて基地反対の「島ぐるみ闘争」となって全島を巻き込み戦後沖縄史を飾る戦いが繰り広げられた。その最中に米軍基地を自ら誘致したいという沖縄北部の農民たちが現れ,この闘争は分裂の経過を辿り終息していく。その背景には沖縄中部と北部における土地所有形態の相違があり,個人所有地の多い中部に対して北部の土地は殆どが入会地であり村有など共有地・杣山であったことである。共有地であることがかえって合意形成を容易にしたのである。入会地からの資源を保持する山経済よりは地料が確実な基地経済を選択することで貧困な村落社会の利益を守り維持していこうとしたのであろう。後半では杣山の歴史を俯瞰する。
著者
塩 昭夫 青木 康浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.431-439, 1999-03-25
被引用文献数
5 2

定規などを用いずに手書きされた建築間取り図面を, スキャナから読み取って認識し, 建具, 収納, 階段などの建築要素に自動変換するシステム(Sketch Plan)を開発した. 本論文では, このシステムの入力条件, 図面認識/理解処理アルゴリズム, 及びシステム評価の結果について述べる. 筆記変動を含む手書き図面を自動認識するため, 図面上の線分情報と領域情報を独立に処理し, それらの結果を統合する独自の図面認識処理アルゴリズムを考案した. このアルゴリズムを実際の手書き間取り図面を用いて評価した結果, 認識率93%を得た. また, 認識結果の確認・修正も含めた図面入力時間を実測した結果, マウスを用いたマニュアル入力の約1/9になることがわかった.
著者
青木 康容 中道 実
出版者
同志社大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

以下のような点を明らかにした。1.初期の帝国議会において多数を占めたと言われる地主階層はさまざまな産業、すなわち農業、林業、牧畜業、養蚕業、酒造業などを営み、さらに他のビジネスにおいても投資し、活発なビジネス活動をしていた。かれらの企業経営は実に多様であるが、特に銀行業を営むことが注目される。2.戦前政党と戦後政党との間には、政党内職階制に極端に大きな相違が見られる。戦前政党組織が極めて単純であるのに対し、戦後政党は複雑な役職構成をなしている。これは戦後の政党が政治制度の変化の下に果たすべき大きな役割を担ったことを示し、本格的な政党政治の現われと見ることが出来る。3.戦前議員たちの利益団体との帰属関係を見ると、特に産業団体との関わりが深く、自らがそうした団体の出身者であること、すなわち出身職業がそのような産業であり、その意味で団体利益を挺した議員であること、しかしそれが次第に出身の職業とは関係なくそうした団体の役員を引き受ける議員が1936年の第19回総選挙あたりから出でくる。これは職業政治家の本格的な現われであろうと考えられる。4.戦前議員と地方団体との関わりを分析すると、かれらが如何に地域社会と深い繋がりがあったかが判明した。地方団体とは、地域社会固有の団体で、おそらくは地方名望家が担うことが期待された団体である。衛生委員、地方衛生会、学区取締、学務委員、教育会、連合町村会、町村組合会、林業組合、森林組合、山林会、水利組合、水利土功会、耕地整理組合、勧業委員、所得税調査委員、鉄道会議、調停委員、徴兵参事委員、徴兵議員などがこうした団体と役員である。全体として、職業的背景を見ると、戦前から戦後にかけて実に大きな相違を見ることが出来る。「政治によって生きる」職業としての政治家の本格的な出現はやはり戦後に求められる。
著者
岩井 儀雄 青木 康洋 石黒 浩
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. C, A publication of Electronics, Information and System Society (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.546-556, 2010-04-01
被引用文献数
3 1

In this paper, we propose a generic framework for detecting suspicious actions with mixture distributions of action primitives, of which collection represents human actions. The framework is based on Bayesian approach and the calculation is performed by Sequential Monte Carlo method, also known as Particle filter. Sequential Monte Carlo is used to approximate the distributions for fast calculation, but it tends to converge one local minimum. We solve that problem by using mixture distributions of action primitives. By this approach, the system can recognize people's actions as whether suspicious actions or not.
著者
畠山 茂久 安野 正之 青木 康展 高村 典子 渡辺 信
出版者
国立公害研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

重金属によって高度に汚染された宮田川を通年調査し, 付着藻類と水生昆虫について以下のような知見を得た. また代表的な重金属耐性種である硅藻やコケやコカゲロウの一種についてはその耐性機構の検討を始めた.重金属汚染地区から単離培養した硅藻と緑藻類は, その付近の非汚染河川から培養した藻類に比較し, 銅, カドミウム, 亜鉛に対しすべて高い耐性(50%光合成活性阻害値)を示した. 汚染地区から採取したラン藻は光合成活性試験では低い重金耐耐性を示し, 実際の河川での耐性機構を更に検討する必要がある. 種によっては汚染区と非汚染区の両地区に生育していたが, 同一種でも汚染区から単離培養したものは非汚染地区から採取したものよりも高い重金属耐性を示した. 重金属耐性種である硅藻の一種, Achnanthes minutissmaを銅を高度に添加した培養液中で3週間培養した. その結果, ほとんどの銅は細胞壁や硅藻の殻に分布し, その他は細胞膜や細胞内小器官の分画に存在した. 細胞内可溶性分画に存在する銅は極めて少なく, この種の耐性機構として, 銅の細胞内侵入防止, 有機酸による無毒化, あるいは銅が有機酸に結合後細胞外に排出されるなど機構が実験結果から示された.宮田川における重金属耐性水生昆虫としては, 数種類のユスリカ(幼虫), コカゲロウの一種Baetis thermicus, オドリバエの幼虫などが明らかにされた. 3種のコカゲロウを人工水路で10ppbのカドミウムに10日間暴露した. 3種はすべて同種度のカドミウムを蓄積したが, 暴露5日後から重金属耐性種のみ, 重金属結合蛋白が誘導され, その量は10日後にかけ増加する事が明らかにされた. 一般に重金属結合蛋白, メタロチオネインは有害金属を体内で結合し無毒化する. 誘導された重金属結合蛋白と本種の重金属耐性の関係を更に明らかにする必要がある.
著者
青木 康晴
出版者
成城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、(1)利益情報の有用性、(2)会計上の保守主義、(3)配当政策という3つの観点から、支配株主の機会主義的行動について検証した。研究(1)では、支配株主の存在は総じて利益情報の有用性を高めるものの、最大株主がアウトサイダーの場合、その持株比率が一定水準を超えると利益情報の有用性が低下することが示唆された。研究(2)では、最大株主持株比率が高い企業ほど保守的でない会計利益を報告し、役員派遣と相対的規模がそれに影響を与えているという証拠が提示された。研究(3)では、最大株主がインサイダーかアウトサイダーかによって、配当の水準、および最大株主持株比率と配当の関係が異なることが示唆された。