著者
酒井 紳 武田 剛 佐藤 智俊 椿本 昇三 高木 英樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.16079, (Released:2017-03-28)
参考文献数
28
被引用文献数
3

In a competitive swimming race event, the back plate can be placed on the starting block. Although the back plate has different setting positions, the effect of the plate position on start performance has not yet been clarified. This study was conducted to investigate the effect of the back plate position on the kick-start performance of competitive swimmers. Six male swimmers dived from an instrumented starting block that contained two force plates and force sensors to measure the reaction forces exerted by the hands and front and rear feet. Four high-speed cameras were used to obtain kinematic data on the swimmers. The horizontal take-off velocity of the front plate position resulted in a better outcome than the back plate position (p<0.05). In the front plate position, a longer rear foot contact time generated a large impulse, and swimmers were able to achieve a higher take-off velocity. To generate a larger impulse, the contact time on the starting block needed to be longer. However, swimmers were able to achieve a higher take-off velocity using the front plate position without extending the block time. In this manner, the front plate position did not affect the time on the block. Moreover, different setting positions of the back plate influenced the joint angle of the postural set before the starting signal. Differences in the joint angle led to an increase in the horizontal component of the force impulse of the rear leg. Therefore, revealing the relationship between the joint angle of the postural set and start performance would provide detailed information on the optimum start posture for swimmers, including the plate position.
著者
関川 綾乃 高木 俊一 磯崎 健一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.291-295, 2018-05-15 (Released:2018-06-23)

病的肥満患者に対する意識下挿管を同一症例で短期間に3回経験した.57歳,男性.身長173cm,体重150kg,BMI 50kg/m2.左上腕骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.マスク換気困難・挿管困難が予想され,意識下挿管を選択した.鎮静薬投与後,局所麻酔薬を散布しMcGRATH(McG)で気管挿管を試みたが,声門の同定に難渋し約30分かかった.33日後,右大腿骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.エアウェイスコープ(AWS)による声門の同定は容易で,約10分で挿管できた.初回手術から42日後,両上腕骨骨折に対する観血的骨接合術を予定した.AWSによる声門の同定は容易で,約15分で挿管できた.AWSは病的肥満患者の意識下挿管に有用である可能性が示唆された.
著者
山際 英男 甲斐 結城 松木 友美 矢崎 有希 小町 祐子 軍司 敦子 山本 晃子 加我 牧子 益山 龍雄 荒井 康裕 本澤 志方 太田 秀臣 立岡 祐司 野口 ひとみ 高木 真理子 真野 ちひろ
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.262, 2017 (Released:2019-06-01)

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児者)は視覚刺激に対する応答がきわめて乏しい者があり、環境情報取得の制限から周囲の人や物との相互作用が乏しくなりがちである。何をどのように知覚しているのかの視覚認知機能評価は、療育上きわめて重要であり、自覚応答に頼らない視覚機能検査により、視覚情報提供の際の注意点を明らかにするため検討を行った。 対象 重症児者施設長期入所利用者50名(平均年齢37歳、男性26名、女性24名)、大島分類1:39名、2:4名、3:2名、4:3名、5:1名、9:1名。 方法 小町ら(日本重症心身障害学会誌、2013)の方法に準じて検討し、評価した。定性的視覚機能評価は対光反射、光覚反応、回避反応、視覚性反射性瞬目、睫毛反射、視運動性眼振(OKN)、注視、追視、瞥見視野)を調べ、反応状態により、反応あり、条件付き反応、反応無しの3段階の順序尺度で評価し、追視、瞥見視野は角度も測定した。注視・追視可能な者は縞視力測定を行った。機能の有無は評価に参加したセラピスト2/3以上の同意をもって判定した。 結果 各項目の反応出現率は睫毛反射94%、対光反射94%、光覚反応84%、視覚性反射性瞬目68%、注視66%、追視54%、瞥見視野52%、OKN58%、縞視力34%、回避反応40%であった。追視、瞥見視野の結果は個人差が大きく、かつ方向・範囲の制約がみられた。 考察 以上より対象者のうち、94%は情報取得手段として視覚を何らかの形で利用できる可能性があり、追視と瞥見視野の結果は刺激提示場所としてどの位置に提示すれば視覚応答が得られやすいかが示され、個別に考慮、対応すべきことが確認された。重症児者の多くは適切な視野を確保するための自動的な頭部コントロールが困難なことが多いため、「見える位置・距離」に対象を提示することが、残存視力を活かし豊かな相互作用につながると考えられる。
著者
池澤 秀起 井尻 朋人 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1307, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 肩関節疾患患者の肩関節挙上運動は、肩甲骨の挙上など代償運動を認めることが多い。この原因の一つとして、僧帽筋下部線維の筋力低下による肩甲骨内転、上方回旋運動の減少が挙げられる。そのため、患側上肢の運動により僧帽筋下部線維の筋活動を促すが、可動域制限や代償運動により難渋する。そこで、患側上肢を用いない運動として、腹臥位での患側上肢と反対の股関節外転位空間保持が有効と考えた。腹臥位で股関節外転位空間保持は、股関節に加え体幹の安定を得るための筋活動が必要になる。この体幹の安定を得るために、股関節外転位空間保持と反対側の僧帽筋下部線維が作用するのではないかと考えた。そこで、僧帽筋下部線維のトレーニングに有効な股関節外転角度を明確にするため、外転保持が可能な範囲である股関節外転0度、10度、20度位における外転保持時の僧帽筋下部線維の筋活動を比較した。また、各角度での僧帽筋下部線維の活動を、MMTで僧帽筋下部線維の筋力測定に用いる腹臥位での反対側の肩関節外転145度位保持時の筋活動と比較した。これにより、僧帽筋下部線維の活動がどの程度得られるかを検証した。【方法】 対象は上下肢、体幹に現在疾患を有さない健常男性14名(年齢23.1±3.7歳)とした。測定課題は、利き足の股関節外転0度、10度、20度位空間保持と、利き足と反対側の肩関節外転145度位空間保持とした。測定肢位は、ベッドと顎の間に両手を重ねた腹臥位とし、この肢位から股関節屈伸0度位で設定角度まで股関節外転させ、空間保持させた。肩関節外転位空間保持は、MMTでの僧帽筋下部線維の測定肢位である、肩関節145度外転、肘関節伸展、手関節中間位で空間保持させた。測定筋は利き足と反対側の僧帽筋下部線維とした。筋電図測定にはテレメーター筋電計(MQ-8、キッセイコムテック社製)を使用した。また、肩関節、股関節外転角度はゴニオメーター(OG技研社製)で測定した。測定筋の筋活動は、1秒間当たりの筋電図積分値を安静腹臥位の筋電図積分値で除した筋電図積分値相対値で表した。さらに、股関節外転位空間保持において、股関節外転角度の変化が僧帽筋下部線維の筋活動量に与える影響を調べるために、各外転角度での僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した。加えて、僧帽筋下部線維の活動量を確認するため、腹臥位での肩関節外転145度位保持時と、股関節外転0度、10度、20度位保持における各々の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した。比較には一元配置分散分析及び多重比較検定を用い、危険率は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の目的及び方法を説明し、同意を得た。【結果】 股関節外転位空間保持での僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、股関節外転0度で14.6±10.9、10度で17.1±12.3、20度19.9±16.6となり、股関節外転角度の増減により有意な差を認めなかった。また、肩関節外転145度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は17.6±9.9となった。股関節外転0度、10度、20度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値と、肩関節外転145度位保持時では全てにおいて有意な差を認めなかった。【考察】 腹臥位での股関節外転位空間保持で、僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、股関節外転角度の増減により有意な差を認めなかった。この要因として、ベッドによる体幹支持、体幹筋や僧帽筋下部線維を含めた肩甲骨周囲筋の活動など、様々な要素が脊柱や骨盤の固定に作用したためではないかと考える。 一方、腹臥位での肩関節外転145度位保持時と股関節外転0度、10度、20度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した結果、有意な差は認めなかった。つまり、全てにおいて同程度の僧帽筋下部線維の筋活動が生じていたといえる。このことから、腹臥位での股関節外転0度、10度、20度位保持は、上肢の運動を伴わずに反対側の僧帽筋下部線維の活動を促せるため、可動域制限や代償動作により筋活動を促すことに難渋する対象者の治療に活用できる可能性がある。しかし、股関節外転位空間保持による反対側の僧帽筋下部線維の活動は脊柱の固定に作用することが考えられるため、起始部付近の活動が主であることが推察される。そのため、上肢挙上時の僧帽筋下部線維の筋活動に直結するかは検討の余地が残ると考える。【理学療法学研究としての意義】 腹臥位での股関節外転0度、10度、20度位保持は、反対側上肢の僧帽筋下部線維のトレーニングに有効であることが示唆された。これは、可動域制限や代償動作により僧帽筋下部線維の活動を促すことが難しい対象に対して有効であると考えられた。
著者
池澤 秀起 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0690, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】肩関節疾患患者の上肢挙上運動は,肩甲骨の挙上など代償運動を認めることが多い。この原因の一つとして,僧帽筋下部線維の筋力低下が挙げられるが,疼痛や代償運動により患側上肢を用いた運動で僧帽筋下部線維の筋活動を促すことに難渋する。そこで,上肢の運動を伴わずに僧帽筋下部線維の筋活動を促す方法として,腹臥位での患側上肢と反対側の下肢空間保持が有効ではないかと考えた。その結果,第47回日本理学療法学術大会において,腹臥位での下肢空間保持と腹臥位での肩関節外転145度位保持は同程度の僧帽筋下部線維の筋活動を認めたと報告した。また,第53回近畿理学療法学術大会において,両側の肩関節外転角度を変化させた際の腹臥位での下肢空間保持における僧帽筋下部線維の筋活動は,0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大したと報告した。一方,先行研究では両側の肩関節外転角度を変化させたため,どちらの肩関節外転が僧帽筋下部線維の筋活動に影響を与えたか明確でない。そこで,一側の肩関節外転角度を一定肢位に保持し,反対側の肩関節外転角度を変化させた際の僧帽筋下部線維の筋活動を明確にする必要があると考えた。これにより,僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す因子を特定し,トレーニングの一助にしたいと考えた。【方法】対象は上下肢,体幹に現在疾患を有さない健常男性16名(年齢25.6±2.1歳,身長168.5±2.5cm,体重60.4±6.7kg)とした。測定課題は,利き腕と反対側の下肢空間保持とした。測定肢位は,腹臥位でベッドと顎の間に両手を重ねた肢位で,下肢は両股関節中間位,膝関節伸展位とした。また,空間保持側の上肢は肩関節外転0度で固定し,反対側の上肢は肩関節外転角度を0度,30度,60度,90度,120度と変化させた。肩関節外転角度の測定はゴニオメーター(OG技研社製)を用いた。測定筋は,空間保持側と反対の僧帽筋上部,中部,下部線維,広背筋とした。筋電図測定にはテレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社製)を使用した。測定筋の筋活動は,1秒間当たりの筋電図積分値を安静腹臥位の筋電図積分値で除した筋電図積分値相対値で表した。また,5つの角度における全ての筋電図積分値相対値をそれぞれ比較した。比較には反復測定分散分析及び多重比較検定を用い,危険率は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の目的及び方法を説明し,同意を得た。【結果】僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は,肩関節外転角度が0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大した。広背筋の筋電図積分値相対値は,肩関節外転角度が30度,60度,90度,120度に対して0度で有意に増大した。僧帽筋上部線維,僧帽筋中部線維の筋電図積分値相対値は,全ての肢位において有意な差を認めなかった。【考察】先行研究と今回の結果から,腹臥位での下肢空間保持における僧帽筋下部線維の筋活動は,空間保持側と反対の肩関節外転角度の影響が大きいことが判明した。つまり,腹臥位での下肢空間保持は,空間保持側と反対の肩関節外転角度を考慮することで僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促すことが出来る可能性が高いと考える。まず,腹臥位での下肢空間保持は,下肢を空間保持するために股関節伸展筋の筋活動が増大する。それに伴い骨盤を固定するために空間保持側の腰背筋の筋活動が増大し,さらに,二次的に脊柱を固定するために空間保持側と反対の腰背筋や僧帽筋下部線維の筋活動が増大することが考えられる。このことを踏まえ,僧帽筋下部線維の筋活動が肩関節外転0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大した要因として,肩関節外転角度の変化により脊柱を固定するための筋活動が広背筋から僧帽筋下部線維に変化したのではないかと考える。広背筋の筋活動は肩関節外転30度,60度,90度,120度に対して0度で有意に増大したことから,肩関節外転0度では脊柱の固定に広背筋が作用したことが推察される。一方,肩関節外転角度の増大により広背筋は伸長位となり,力が発揮しにくい肢位となることが推察される。また,広背筋は上腕骨,僧帽筋下部線維は肩甲骨に停止することに加え,肩甲上腕リズムから肩関節外転角度の増大に対して,広背筋は僧帽筋下部線維と比較し伸長される割合が大きいことが推察される。その結果,肩関節外転角度の増大に伴い脊柱を固定するために僧帽筋下部線維の筋活動が増大したのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】腹臥位での下肢空間保持において,僧帽筋下部線維の筋活動は先行研究と同様の結果であったことから,空間保持側と反対の肩関節外転角度が僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す要因となる可能性が高いことが示唆された。
著者
池澤 秀起 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100556, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩関節疾患患者の肩関節挙上運動は、肩甲骨の挙上など代償運動を認めることが多い。この原因の一つとして、僧帽筋下部線維の筋力低下による肩甲骨内転、上方回旋運動の減少が挙げられる。理学療法の場面において、患側上肢の運動により僧帽筋下部線維の筋活動を促すが、可動域制限や代償運動により難渋する。そこで、僧帽筋下部線維の筋活動を促す方法として、腹臥位での患側上肢と反対側の股関節外転位空間保持が有効ではないかと考えた。その結果、第47 回日本理学療法学術大会において、腹臥位での股関節中間位空間保持と腹臥位での肩関節外転145 度位保持は同程度の僧帽筋下部線維の筋活動を認めたと報告した。一方、先行研究では下肢への抵抗負荷を用いない自重負荷であったことから、下肢への抵抗負荷を考慮することで僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促せるのではないかと考えた。腹臥位での股関節中間位空間保持において下肢への抵抗負荷の有無が僧帽筋下部線維や肩甲骨周囲筋の筋活動に与える影響を明確にし、僧帽筋下部線維のトレーニングの一助にしたいと考えた。【方法】対象は上下肢、体幹に現在疾患を有さない健常男性22 名(年齢25.4 ± 2.4 歳、身長168.9 ± 2.2cm、体重60.6 ± 4.0kg)とした。測定課題は、利き腕と反対側の股関節中間位空間保持とした。測定肢位は、ベッドと顎の間に両手を重ねた腹臥位で股関節中間位とした。測定筋は、股関節中間位空間保持側と反対側で利き腕側の僧帽筋上部線維、僧帽筋中部線維、僧帽筋下部線維とした。股関節中間位空間保持側への抵抗負荷量は、対象者の体重の0%、10%、30%、50%の重さを抵抗負荷量として設定し、Isoforce(オージー技研社製)を用いて測定した。抵抗負荷をかける位置は、大腿骨内側上顆と外側上顆を結んだ線の中点と坐骨を結んだ線分の中点とし、鉛直下方向に抵抗を加えた。筋電図測定にはテレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社製)を使用した。測定筋の筋活動は、1 秒間当たりの筋電図積分値を安静腹臥位の筋電図積分値で除した筋電図積分値相対値で表した。また、抵抗負荷が無い場合(0%)、抵抗負荷が体重の10%、30%、50%とした場合の測定筋の筋電図積分値相対値を算出し、4 群全ての筋電図積分値相対値をそれぞれ比較した。比較には一元配置分散分析及び多重比較検定を用い、危険率は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者に本研究の目的及び方法を説明し、同意を得た。【結果】僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、抵抗負荷が0%に対して、抵抗負荷が30%、50%において有意に増加した。また、僧帽筋上部線維、僧帽筋中部線維の筋電図積分値相対値は、抵抗負荷が0%、10%、30%に対して、抵抗負荷が50%において有意に増加した。【考察】腹臥位での股関節中間位空間保持において、空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、抵抗負荷が0%に対して、抵抗負荷が30%、50%において有意に増加した。この要因として、脊柱の固定には体幹筋や肩甲骨周囲筋の選択的な筋活動ではなく、全ての筋群の協調的な筋活動により脊柱の固定を図るのではないかと推察する。このことから、腹臥位での股関節中間位保持における下肢への抵抗運動において僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促すことは難しいのではないかと考える。また、僧帽筋上部線維、僧帽筋中部線維の筋電図積分値相対値は、抵抗負荷が0%、10%、30%に対して、抵抗負荷が50%において有意に増加した。低負荷での股関節中間位空間保持では、骨盤や脊柱を固定するために両側の腰部多裂筋の筋活動が作用したと推察する。一方、高負荷での股関節中間位空間保持では、骨盤や脊柱を固定するためにより大きな力が必要になる。そのため、腰部多裂筋など骨盤と脊柱に付着する筋群に加え、空間保持側と反対側の僧帽筋など脊柱と肩甲骨に付着する筋群の筋活動が増大することで脊柱の固定を図ったのではないかと考える。一方、肩関節挙上時に肩甲骨内転筋の筋緊張低下により肩甲骨外転位を呈する対象者は、高負荷での抵抗運動により僧帽筋上部・中部・下部線維の筋活動を総合的に促すことが可能となるため効果的なトレーニングになるのではないかと推察する。しかし、肩関節挙上時に僧帽筋上部線維の過剰な筋活動を認める対象者は、高負荷での抵抗運動は効果的ではないと考える。【理学療法学研究としての意義】腹臥位での股関節中間位空間保持課題において、抵抗負荷の増減により僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促すことは難しいが、高負荷での抵抗運動は、肩関節挙上時に肩甲骨の内転運動が乏しい対象者のトレーニングとして効果的であることが示唆された。
著者
北村 歳男 高木 克公 山鹿 眞紀夫 森澤 佳三 井手 淳二 荒木 崇一 田上 学
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-4, 1994-09-01 (Released:2012-11-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this research was to clarify the causes of numbness and pain by traction of the upper limbs. We stretched the nerves in the upper limbs of rats by utilizing the flail of the shoulder girdle, and measured the blood flow of the brachial plexus and the median nerve. The model animals,32 wistar rats, were inserted with steel lines to the radius and ulna. These steel lines were drawn in the direction of a shoulder abduction of 80 degrees. A decrease and recovery of the blood flow were measured using the hydrogen gas clearance method.The blood flow of the subepineural space in the brachial plexus decreases sharply in conditions with looseness of the plexus.The blood flow of the intrafuniculuse in the brachial plexus decreases like a straight line in those states without looseness of the plexus. The blood flow of the subepineural space in the median nerve decrease like a straight line, too. The decrease rate of the subepineural space was sharper than that of the intrafuniculuse. As for the recovery rate, there was no significant difference in either site.One of the factor that causes nervous and functional imbalance with a slight traction is a sharp reduction of the blood flow in the subepineural space of the brachial plexus.
著者
村田 卓士 久野 友子 穂積 正俊 玉井 浩 高木 雅博 上脇 達也 伊東 禧男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.165-171, 1998-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4 7

卵殻カルシウムを添加したチョコレートおよび卵殻カルシウムを含まないチョコレートをヒトに投与し, 糞便中総脂質, 脂肪酸, カルシウムを測定するとともに, その安全性について検討を行った。1) 卵殻カルシウムを添加したチョコレート摂取群(Ca添加群) は, 卵殻カルシウムを含まないチョコレート摂取群 (コントロール群) に比して糞便中総脂質が有意に高値であった。2) 糞便中カルシウム濃度と糞便中総脂質濃度は, 有意な正の相関関係にあった。3) 脂肪酸分析の結果, Ca添加群は, コントロール群に比してパルミチン酸およびステアリン酸の吸収率が有意に低値であった。4) 試験期間中, 2群間で血清中各種脂質, カルシウム, リン, 脂溶性ビタミンに有意な変動はなかった。5) いずれのチョコレートの摂取期間中も重篤な副作用は認めなかった。以上より, ヒトにおいて卵殻カルシウムはチョコレート中に含まれる脂質の吸収抑制効果を示すことが示唆された。
著者
高木 健夫
出版者
筑摩書房
雑誌
言語生活 (ISSN:04352955)
巻号頁・発行日
no.162, pp.56-60, 1965-03
著者
栗田 健 高木 峰子 木元 貴之 小野 元揮 吉田 典史 中西 理沙子 山﨑 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101721, 2013

【はじめに、目的】われわれは過去に投球障害肘患者(以下肘群)と投球障害肩患者(以下肩群)において手内筋である母指・小指対立筋(以下対立筋群)の機能不全について検討をしたところ,肘群が肩群より有意に機能不全を認めた.さらに対立筋群機能不全を多く認めた肘群において, 非投球側に対立筋群の機能不全がある場合,投球側にも機能不全を認めた.また,この対立筋群の機能不全は,筋や骨などの成長が関与している可能性が考えられた.そのため,今回は年齢により対立筋群に機能不全の差が認められるのかどうかを検討したので報告する.【方法】対象は投球障害で当院を受診した45名の投球側45手とし,他関節の障害の合併や既往,神経障害および手術歴を有する症例は除外した.性別は全例男性で,年齢によりA群10歳~12歳,B群13歳~15歳,C群16歳~18歳の3群に分けた.評価項目は,投球時のボールリリースの肢位を想定した対立筋群テストとし,座位にて肩関節屈曲90°位にて肘伸展位・手関節背屈位を保持して指腹同士が接するか否かを観察した.徒手筋力検査法の3を基準とし,指腹同士が接すれば可,IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした.なお統計学的解析には多重比較検定を用い,3群間に対し各々カイ二乗検定を行い,Bonferroniの不等式を用いて有意水準5%未満として有意差を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし,当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化にてデータを使用した.【結果】各群の人数は,A群9名,B群17名,C群19名であった.また,機能不全の発生率はA群33.3%,B群52.9%,C群47.3%であり,各群間のカイ二乗検定では,A群×B群(p=0.34)A群×C群(p=0.48)B群×C群(p=0.738)となり,すべての群間において有意差は認められなかった.【考察】一般的なボールの把持は,ボール上部を支えるために示指・中指を使い,下部を支えるために母指・環指・小指を使用している.手内筋である母指・小指対立筋は,ボールを下部より効率よく支持するために必要である.ボールの把持を手外筋群によって行うと,手関節の動きの制限や筋の起始部である上腕骨内側上顆に負担がかかることが示唆される.過去の報告から投球障害における母指・小指対立筋機能不全は投球障害肘群に多く認めることが分かっている.しかし手指の対立動作は骨の成長による影響や運動発達による影響など,年齢による影響がある可能性もあり,機能不全発生の機序までは断定できなかった.本研究の結果から,対立筋群の機能不全は年齢間差が無いことから,年齢を重ねることで機能不全が改善する可能性は否定的な結果であった.また同様に年齢を重ねることで対立筋群の機能不全が増えるわけでもなく,どの年代においても一定の割合で発生している事がわかった。この事から対立筋群の機能不全は骨の成長による影響や運動発達など成長による影響ではなく,癖や元々の巧緻性の低下などその他の要素によって発生していることが示唆された.以上により手内筋による正しい対立機能を用いたボールの把持できなければ投球動作を繰り返す中で肘の障害が発生する可能性が示唆された.その為、投球障害肘の症例に対してリハビリテーションを行う場合には,従来から言われている投球フォームの改善のみではなく遠位からの影響を考慮して,母指・小指対立筋機能不全の確認と機能改善が重要と考えられた.また障害予防の点においても,投球動作を覚える段階で手指対立機能の獲得とボールの持ち方などの指導が必要であることも示唆される.【理学療法学研究としての意義】本研究では対立筋群の機能不全は年齢による影響はないと示唆された.また過去の研究より投球障害肘の身体機能の中で手内筋である母指・小指対立筋に機能不全を多く有することが分かっている.投球障害を治療する際には、対立筋群の機能に着目することが重要と考える.また今回設定した評価方法は簡便であり,障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された.
著者
大井 雄紀 高木 陽平 土山 耕南 乾 浩明 信原 克哉 吉矢 晋一
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.675-677, 2016

Stride Foot Contact(SFC)における骨盤回旋,体幹と股関節の姿勢に注目し,年代別に運動学的検討をすることを目的とした.対象は野球投手287名:小学生(小)42名,中学生(中)94名,高校生(高)105名,コントロール群(コ)46名(19歳以上かつ球速120km/h以上)とした.対象者の投球動作をモーションキャプチャ・システムによりデジタル化した.大腿,腰部,体幹部に座標系を設定し,それぞれの座標系の回転をオイラー角で表した.全ての年代において,SFCの骨盤左回旋角度と相関関係がみられた変数は,それぞれ体幹左側屈角度(r = 0.5以上),右股関節内転角度(r = 0.49以上),右股関節伸展角度(r = 0.78以上),左股関節内転角度(r = 0.46以上),左股関節屈曲角度(r = 0.43以上)であった.骨盤が早期回旋しないよう体幹側屈,股関節屈曲伸展,内転に注目しながら投球指導を行う必要があると言える.
著者
原田 幹生 高原 政利 村 成幸 丸山 真博 大石 隆太 宇野 智洋 佐竹 寛史 結城 一声 鶴田 大作 高木 理彰
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.564-568, 2017

Lateral Scapular Slide Test(以下LSST)は,肩甲骨の位置を評価し,肩甲骨下角とその高さの脊柱との距離で示される.本研究の目的は,成長期の野球選手において,LSSTと関連する因子について検討することである.野球選手382名を対象とした(小学:185名,中学:133名,高校:64名).小中高の順序で,肩痛あり(26,29,44%),投球パフォーマンススコア(最悪0-100%最高)(80,79,70%)であった.LSSTは,小中高の順序で,投球側(7.8,8.5,9.5 cm),非投球側(7.8,8.4,9.3 cm),左右差(投球側と非投球側の差)(0.0,0.1,0.2 cm)であり,左右差が1 cm以上ある選手は(10,16,25%)であった.僧帽筋下部の筋力低下は,小中高の順序で,(23,58,45%)であった.LSST(左右差)は,中学生では関連する因子はなかったが,小学生では,投手,肩痛あり,および低い投球パフォーマンスと関連し,高校生では,投手と関連していた.LSST(左右差)は,小中高いずれにおいても,僧帽筋下部筋力と関連はなかった.
著者
宇野 智洋 高原 政利 原田 幹生 丸山 真博 高木 理彰
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.254-259, 2017

<p> 背景:本研究の目的は,野球選手における肘内側側副靱帯損傷(以下,MCL)の保存療法成績と,保存療法に反応しない危険因子を調査することである.</p><p> 対象と方法:肘MCL損傷を有する68名の野球選手を後ろ向き調査した.平均年齢は16.8歳(12~24歳)であった.診断基準は,肘内側痛,MCL直上の圧痛,moving valgus stress test陽性,以上3項目を満たすもので骨端線閉鎖前の内側上顆裂離を除外した.保存療法の平均観察期間は4.4か月(1~15か月)であった.3か月以内の野球への復帰状況を調査した.</p><p> 結果:3か月以内の完全復帰は23名(34%),不完全復帰は21名(31%),復帰不能は21名(31%),および不明は3名(4%)であった.</p><p> 結論:保存療法に反応しない危険因子は,初診時に高年齢,主観的評価の肘痛,KJOCスコアが不良,外反ストレスX線で不安定あり,MRIで靱帯高信号が50%以上,および肩甲上腕関節の柔軟性不良であった.</p>