著者
山城 亘央 長坂 高村 高木 隆助 三輪 道然 新藤 和雅 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.81-86, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は54歳の男性である.2010年12月歩行障害を発症し,2011年2月には記銘力低下も出現した.頭部MRIにて脳室周囲のT2高信号と脳室壁,脈絡叢の造影効果をみとめた.髄液は細胞数・蛋白上昇,糖低下をみとめ,クリプトコッカス抗原陽性から,クリプトコッカス脳室炎と診断した.リポゾーマル・アムホテリシンB,フルコナゾールにて治療を開始したが,副作用が出現したためボリコナゾール,フルシトシン,イトラコナゾールに変更した.本症例では頭部MRIにおける側脳室後角の隔壁形成をみとめ,脳室炎診断の一助となった.クリプトコッカス髄膜脳炎においてはまれながら脳室炎で発症するものがあることに留意すべきである.
著者
伊藤 博隆 馬場 駿吉 高木 一平 大屋 靖彦 横田 明 伊藤 弘美 稲垣 光昭 小山 賢吾 北條 郷明 丸尾 猛 東内 朗 杉山 和子 河合 〓 森部 一穂 鈴木 賢二 柘植 勇人 板谷 純孝 鈴木 康夫
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 補冊 (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.Supplement52, pp.107-118, 1991-12-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

Mao-bushi-saishin-to extract capsules (6 caps. /day) were administered orally to 61 perennial nasal allergy patients presenting with nasal obstruction for 4 consecutive weeks to assess the overall efficacy, safety and utility of the drug. In the doctor's evaluation, the overall efficacy rate covering excellent and good responses was 38.3% at week 2 of treatment and 54.7% at week 4 of treatment. The utility rate covering useful and higher ratings was 60.7%.Nasal symptoms, viz, sneezing attack, nasal discharge, nasal obstruction, dysosmia and interference with daily living were all improved. Nasal obstruction, in particular, disappeared in many cases, thus generating a high improvement rate. Nasal mucosal findings, viz, swelling of inferior turbinal mucosa, watery secretion in nasal cavity, and nasal discharge eosinophil count showed good improvements.The time course of each nasal symptom i n terms of the average score according to allergy diaries, revealed significant reduction in nasal obstruction, dysosmia and interference with daily life in severity at and after week 2 and sneezing and nasal discharge were significantly alleviated at week 4 as compared with the findings obtained during the baseline period.As side effects, headache was reported in one case and stomachache in one case. These symptoms were relieved after discontinuation of treatment.
著者
高木 光太郎
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2019, pp.304-311, 2019-08-31

映画「ブレードランナー」の"tears in rain monologue"として知られる回想シーンでは、逃亡した人造人間が死の間際、自身の個的な経験を想起して、追っ手である人間に語り聴かせることで、人間との間に絶対的な「距離」を生み出し、追う者と追われる者という暴力的な関係から束の間であるが自由になる様子が印象的に描かれていた。想起がこのように聴き手との間に絶対的な「距離」を生み出すのは、他者が共有困難な時空間的持続として現在の環境を探索する行為であることによる。本特集に掲載された3論文(立木論文、仲ら論文、西論文)は共に、こうした絶対的な「距離」に隔てられた時空間的持続から発せられる声に対して、その外部にいる他者がどのような姿勢を取り得るのかという問題に重要な洞察を与えてくれるものであった。精神分析のセッションを扱った立木論文と、司法面接を扱った仲ら論文では、個的な体験の想起をいかに「聴く」のかが問題になっていた。いずれの場合も、聴き手は体験者の自由な語りに干渉しないことによって、体験者の個的な水準に由来する不自由さ(亀裂)を浮かび上がらせ、評価的、解釈的な介入は想起が終結するまで意図的に遅延させるという姿勢がみられた。一方、痛みの経験を扱った西論文では、個的な身体的経験として痛みを表現する患者と、医療者としてそれに対処する在宅看護師や医師が、それぞれの姿勢を「ある程度」維持したまま相互に接続することを可能にする媒介物を通して接続されていた。想起や痛みを語る声に対するこのような聴き手の姿勢は、コミュニケーションを社会的な水準ではなく、個的な水準での人々の出会いとして捉える可能性を示唆するものであり興味深い。
著者
高木 一江
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.253-258, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
17

【目的】神経発達障害のてんかん合併例の治療として, levetiracetam (LEV) を併用投与した症例の有効性と忍容性を検討した. 【方法】2011年10月~2014年12月までにLEVを処方した神経発達障害21例 (男女比16 : 5, 現在の年齢分布は10歳代6例, 20歳代7例, 30歳代7例, 40歳代1例) を対象とした. 効果は発作消失, 有効 (75%以上発作減少, 50%以上発作減少), 不変 (変化なし), 悪化 (発作回数増加) とした. 【結果】自閉スペクトラム症 (ASD) 19例 (最重度知的能力障害13例, 重度知的能力障害5例, 高機能1例), 境界知能1例, 注意欠如・多動症 (AD/HD) 1例であった. てんかんとてんかん症候群国際分類 (1989年) は, 症候性局在関連性てんかん15例, 全般てんかん6例であった. LEVの開始用量は平均488.1mg/日, 維持用量は平均1,714.2mg/日, 平均投与期間は2年3カ月であった. 奏効率は発作消失11例 (52.4%), 75%以上発作減少4例 (19.0%), 50%以上発作減少3例 (14.3%) で, 奏効率は85.7% (18例) であった. その他, 不変14.3% (3例) で, 悪化例はなかった. 初期の浮動性めまいが1例のみで, 全例で服薬継続中である. 抗けいれん剤はLEV開始時2.5剤から1.5剤まで調整でき, 情緒的安定も得られ, 精神安定剤が中止できた例もあった. 【結論】LEVはASDを中心とした神経発達障害のてんかん合併例において高い奏効率と忍容性を示した. 本剤の投与により併用薬数を減らすことができ, コンプライアンスの向上に寄与する可能性が示唆された.
著者
高木 典雄 渡辺 良象 岩月 善之助
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
日本蘚苔類学会会報 (ISSN:02850869)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.65-68, 1982-06-25 (Released:2018-07-03)

In freshwater tropical fish aquariums, several species of bryophytes are used for decorative purposes as well as for egg laying substrates. Taxiphyllum barbieri, which is often erroneously called as "willow moss" in Japan, is found growing vigorously in many aquariums - and this species was also seen in an aquarium in New York. The species was originally described from Vietnam, and probably brought to Japan and other countries from Southeast Asia. Some other bryophytes used for the same purpose in aquariums in Japan are Fontinalis antipyretica, Riccia fluitans and Ricciocarpus natans. Amblystegium riparium, Vesicularia ferriei, Rhacopilum aristatum, Chiloscyphus polyanthos, Rhynchostegium riparioides, etc. were found growing in one of the large aquariums in Japan.
著者
小山田 圭吾 市川 尚 高木 正則 富澤 浩樹 阿部 昭博
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2019-CE-151, no.5, pp.1-8, 2019-09-28

本学部では e ラーニングによる入学前教育を実施しており,プログラミングの課題も含まれている.本研究では,受講対象者である高校生をチューターと学習者に分け,学習者が作成したプログラムに対して,チューターが確認を行うためのオンライン上の学習環境を構築した.そのシステムは,学習者がビジュアル型言語でプログラムを作成して提出するまでの履歴を記録し,チューターがプログラムや履歴を確認して学習者にフィードバックを行うことを支援する.構築した学習環境を用いて入学前教育で試行した結果,チューターの確認とフィードバックにより,学習者のプログラムの改善が見られた.一方で,履歴を提示することはチューターの役に立っていたが,プログラムの確認やフィードバックには不十分な点が見られるなどの課題が残った.その課題を踏まえ,システムの改善について検討した.
著者
高木 昌興
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.30-38, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
21

アカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)は,北海道において過去30年間に急激に減少した。1992年から1996年までの5-7月の繁殖期に北海道で得られたアカモズの繁殖成績と雛の成長について報告する。調査期間中に合計41巣から情報を得た。平均巣立ち成功率は53.7%,平均一腹卵数は5.3卵,平均孵化雛数は5.1雛であった。巣立ちに成功した巣あたりの平均巣立ち雛数は4.4雛で,その巣立ち率は90.3%であった。繁殖失敗の主要因は卵,もしくは雛の捕食であった。カッコウによる托卵率は低く,アカモズは托卵されたカッコウの卵を選択的に除去するか,巣を放棄することで托卵を受け入れなかった。15巣75雛の体重とふ蹠長の成長をロジスティック曲線で近似させ,漸近体重27.1g,日あたり体重増加率0.4,体重増加の変曲点5.7日目,漸近ふ蹠長は24.9mm,日あたり伸長率は0.3,ふ蹠伸長の変曲点4.4日目の結果を得た。
著者
佐藤 敏之 今川 憲英 猪田 大介 高木 俊輔
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.297-302, 2016 (Released:2017-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

白色ポルトランドセメントからなるコンクリートを構造体として使用した,3次元曲面のRC構造物の設計・施工に関する記録である。外・内装とも化粧打放し仕上げとなるため,コンクリートの材料・調合の面から,無収縮挙動に近いものを目標にひび割れ低減対策を実施した。厚肉床壁構造および3種類のコンクリート強度を採用することで,開放的な建築空間,東西断面のワイングラス形状を実現している。困難な杉板浮造りの曲面打ち放しコンクリートを実現するため,3Dモデルでの杉板・Pコン割付の検討,色見本・実大モックアップの作成等の事前準備を経て,型枠・配筋・打込み等で細心の検討を行いながら作り込みを行った。
著者
長岡 亜紀子 中澤 明尋 酒井 直隆 竹内 良平 高木 敏貴 斎藤 知行 岡本 連三 腰野 富久
出版者
Japanese Society for Joint Diseases
雑誌
日本リウマチ・関節外科学会雑誌 (ISSN:02873214)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3-4, pp.197-202, 2001-02-25 (Released:2010-10-07)
参考文献数
10

The purpose of this study was to describe the clinical course of steroid induced osteonecrosis of the humeral head, and to investigate the relationship between radiological stage, pain, and range of motion (ROM) .Nine patients (16 shoulders) were examined directly at our out-patient clinic, with an average follow-up period of 4.2 years. There were 2 men and 7 women, with an average age of 42 years at the first visit. Correlation between radiological stage and both pain and ROM of the shoulder was evaluated with Spearman's rank correlation coefficient.At the first examination, 9 of 16 shoulders were evaluated as radiological Stage III or IV, and only 7 as II. During follow-up, the stage advanced from Stage III to IV in 2 of 5 shoulders, but no advance-ment from Stage II to III was observed. Thus, the radiological stage did not progress in a time-dependent manner. A positive correlation was found between radiological stage and pain grade (p<0.0001), and between that and limitation of active movement (p=0.0064) .
著者
安西 春幸 高木 国失 太田 博俊 大橋 一郎 高橋 知之 中島 聰聰
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.2094-2098, 1988 (Released:2011-08-23)
参考文献数
19
被引用文献数
5 4

未分化型腺癌の組織型を示す隆起型早期胃癌は少く, 単発早期胃癌手術症例1, 150例中10例であった. 性別, 占居部位, 深達度は分化型腺癌の隆起型に比較し, 明らかな差はないが, 平均年齢でやや若い傾向にあった.組織学的に隆起形態を3型に分類した. A: 表層粘膜の癌発育によるもの一6例8B: 表層粘膜のみならず, 粘膜下層への癌浸潤を認めるもの-3例. C: 粘膜層より, 粘膜下層での癌浸潤が著明であるもの-1例. Aはsignet-ring cell carcinoma (sig), Bはpoorly differentiateded enocarcinoma (por), Cはmuconodular adenocarcinoma (muc) がそれぞれ多い傾向にあった. 予後は隆起型分化型腺癌同様, 良好であった.
著者
赤堀 由佳 高木 俊 西廣 淳 鏡味 麻衣子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.155-166, 2015-12-10 (Released:2017-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
5

近年国内の浅い富栄養湖のいくつかでヒシ属植物の増加が報告されている。本研究では,オニビシの繁茂が水質に与える影響を明らかにするために,印旛沼においてオニビシが繁茂する地点(オニビシ帯)としない地点(開放水面)の水質を比較した。繁茂期(7月から9月)のオニビシ帯は,開放水面に比べ溶存酸素濃度および濁度が有意に低かった。溶存酸素濃度の低下は夜間と底層で顕著であり,無酸素状態になることもあった。濁度はオニビシが繁茂している時期にオニビシ帯の表層と底層両方で低くなった。オニビシ帯では,浮葉が水面を覆うことにより,水の流動は減少し,遮光により水中での光合成量は低下するため,溶存酸素濃度や濁度が低くなったと考えられる。栄養塩濃度に関してはいずれもオニビシ帯と開放水面の間で有意な差は認められなかったが,8月と9月に,アンモニア態窒素濃度が高くなった。オニビシの枯死分解に伴い無機態窒素が放出されるとともに,貧酸素により底泥から溶出した可能性がある。一方,オニビシが繁茂しない時期には,地点間でこれらの水質項目に明瞭な差は見られなかった。栄養塩濃度の差は,地点間の差よりもむしろ季節による差のほうが顕著で,オニビシ帯と開放水面共に,7月から9月は全リン濃度が高く,それ以外の時期は亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素濃度が高かった。印旛沼では,このような栄養塩濃度の季節変動は毎年確認されており,栄養塩濃度の季節変動に与える複数の効果に比べオニビシの効果は小さいと考えられる。
著者
松下 優美 八木 実 水落 建輝 西浦 博史 牛島 高介 高木 章子 浅桐 公男 田中 芳明 鹿毛 政義 猪口 隆洋
出版者
日本門脈圧亢進症学会
雑誌
日本門脈圧亢進症学会雑誌 (ISSN:13448447)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-47, 2010-06-30 (Released:2012-12-28)
参考文献数
37
被引用文献数
1

小児の肝前性門脈圧亢進症(以下,本症)は主に肝外門脈閉塞症(EHO:extra-hepatic portal obstruction)や,肝内presinusoidal blockをきたす先天性肝線維症(CHF:congenital hepatic fibrosis)に大別される.これらは小児領域での突然の消化管出血の原因疾患として重要である.本論文では,自験例2例を紹介し,本症の原因,診断および治療,小児領域における問題点を述べる.CHFの1例は13歳男児,吐血で発症し,その後EVL, EISを繰り返したが,胃静脈瘤の発達と白血球,血小板の低下のため5年後にHassab手術を施行した.EHOの1例は8歳女児.心房中隔欠損症(ASD)を合併しており,吐血で発症.高度食道静脈瘤でありEVL, EISの適応を検討したが,ASDへの影響を考え,Hassab手術を先行して行った.その後EISにて残存する食道静脈瘤の追加治療を施行した.
著者
高木 正則 瀬戸山 光宏
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.32, pp.215-220, 2018-08-12

近年,スマートフォンの急速な普及により,若者の PC 離れが進み,PC の利用スキルの低下が懸念されている.しかし,PC の利用スキルがどの程度変化しているのかは明らかになっていない.そこで,本研究では,Word,Excel,PowerPoint の MS-Office の操作スキルの実態を明らかにすることを目的とし,著者らが開発したコンピュータ適応型テストを利用して大学入学時の MS-Office 操作スキルを調査した.調査は 2018 年 4 月~5 月にかけて 4 つの大学で実施し,大学 1 年生約 2000 人の MS-Office 操作スキルを測定した.また,日常の ICT 機器の活用等に関するアンケート調査も同時に実施した.調査の結果, Excel は Word,PowerPoint に比べ,能力差が大きいことが確認され,PC を所有していない学生の MS-Office 操作スキルが低い傾向にあった.一方,スマートフォンの使用開始時期と能力値との関連は確認されなかった.さらに,PC の操作が「苦手」と答えた学生の能力値が最も低く,「得意」,「少し得意」と答えた学生の能力値が高いことが示された.