著者
髙﨑 健二 齋藤 勉 大関 芳沖 稲掛 伝三 久保田 洋 市川 忠史 杉崎 宏哉 清水 収司
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.89-99, 2020-05-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
11

本研究では,灯火を用いない漁業の観測が可能な合成開口レーダを用いて2そうびき漁船の検出を行った.2そうびき漁船の自動検出は,画像からすべての船舶を抽出した後,それぞれの船舶において周辺船舶との距離を調べ,船舶間距離が最小となる組み合わせを漁船ペアとすることで可能となった.漁船ペアが間違っているものについては,組み合わせの修正方法を提示した.また,対象海域における2そうびき漁船の活動を把握するため,2そうびき漁船の密度と船舶間距離を求めた.本研究により,漁期中に十分な画像データが得られれば,漁獲努力量を推定できる可能性が示唆された.
著者
髙村 正造 鈴木 勇己 荻原 真我 古市 生 渡邊 千夏子
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.79-88, 2020-05-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
30

相模湾および相模灘海域で漁獲されたマアジについて,雌雄の生殖腺の組織学的観察や生殖腺重量指数(GSI)に基づいて,性成熟や産卵期などを調べた.GSIの月別変化から,雌雄ともに3–9月にGSIの高い個体が出現し,雄は5月,雌は6月にGSI平均値が最大となった.生殖腺の組織学的観察結果から,雄では精子で充たされた精巣を持つ個体が3–7月に,雌では胚胞(核)移動期および成熟(吸水)期の卵を持つ個体が4–7月にそれぞれ出現した.当該海域における最小成熟年齢は,雄では0歳,雌では1歳であるとともに,雄では11歳,雌では23歳の成熟個体も認められた.半数成熟尾叉長は雄では188.2 mm,雌では230.6 mmであり,雄は雌よりも小型・若齢で成熟することが示唆された.年齢とGSIの関係から,高齢魚ではGSIが低下する傾向が認められたが,当該海域の本種は初回成熟・産卵後から10年以上に渡って産卵に寄与し続けていると考えられた.
著者
髙瀬 理恵子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.214-224, 2018-12-31 (Released:2019-04-30)
参考文献数
40
被引用文献数
1

【目的】精神科病院に入院中の統合失調症を患う高齢者における栄養状態低下の要因を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は,精神科病院に入院中の65歳以上の統合失調症患者66名とし,3食経口摂取可能な者とした.この対象の栄養状態をGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)により評価した.栄養状態の低下に影響しうる要因として,基本属性,ADL(障害高齢者の日常生活自立度判定基準),摂食嚥下機能(現在歯数,repetitive saliva swallowing test: RSST回数),社会機能(Rehabilitation Evaluation Hall and Baker: Rehab),認知機能(Mini-Mental State Examination: MMSE)を調査し,GNRIとの関連を,単変量解析およびステップワイズ回帰分析を用いた多変量解析にて解析した.【結果】単変量解析でGNRIと有意な関連が認められた項目は,罹病期間,入院期間,Rehab下位項目のセルフケアおよび社会生活の技能であった.ADL,現在歯数,RSST,MMSEとの有意な関連は認められなかった.GNRIを独立変数としたステップワイズ回帰分析でGNRIと有意な関連が認められた項目は,入院期間と社会生活の技能であり,GNRIに強い影響を与えている順に入院期間(β=-0.40,p= .001),社会生活の技能(β=-0.23,p= .045)であった.【結論】統合失調症を患う高齢者の栄養状態低下の要因は,入院期間の長期化と社会生活の技能の低さであった.高齢の統合失調症患者の栄養状態の低下には,不足したエネルギーや栄養素を補うだけでなく,日中の過ごし方が活性化するような場の提供と,主体的に生活を楽しむための社会生活の技能や自信の回復が必要である.
著者
髙橋周
出版者
文京学院大学
雑誌
経営論集
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, 2010
著者
箭野 章五郎 髙良 幸哉 樋笠 尭士
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.377-414, 2014-12-30

責任能力が問題とされた被告人につき,事実審裁判官が,制御能力の著しい減少を認めた鑑定に基本的に従って刑法21条(限定責任能力)の適用を認めた場合に,その判決の中での理由づけについて不十分であるとし,かつ,事案に即して検討の不十分な点を示した判断,についての検討。 / 本稿は,被告人が,StGB184b条4項1文にいう児童ポルノ文書の自己調達行為2件と,それらの結果である同項2文にいう児童ポルノ文書の自己所持を行った事案について,児童ポルノ文書の所持は,当該文書の自己調達の構成要件に劣後する「受け皿構成要件」であり,それゆえ,所持という補足的犯罪による,数個の独立した調達行為を結びつける,かすがい作用は認められないとした事案の検討である。それに加えて,本稿ではキャッシュデータの保存行為および,我が国における児童ポルノの所持罪規制についても検討を加えるものである。 / 被告人が恋敵を殺そうと思い斧を投げたが,その斧が自身の妻に当たってこれを死亡させ,妻に対する殺人の未必の故意が認められた事例である。阻止閾の理論に基づき,行為者が結果の発生を是認しつつ甘受していたか否かを判断する際には,行為後の事情(斧が当たった後の妻への殴打)を考慮することはできないはずであるところ,LGは,被告人の犯行後の行為態様を考慮し,未必の故意の意思要素を是認したのである。BGHは,LGの結論に異を唱えていないものの,阻止閾の判断方法,及び未必の故意の認定方法には疑問を投じている。本稿は,殺人の未必の故意の認定に際し,近年BGHによって用いられている「阻止閾の理論」を基礎に,方法の錯誤ならびに択一的故意の議論を併せて,本判決における未必の故意の内実を考察するものである。
著者
中島 徳至 髙木 朗義
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-9, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
17

SDGsを始め,世界に数多くある社会課題の中で貧困問題解消の重要性が高まりを見せる中,その手段として低所得者層を対象としFinancial Inclusion(金融包摂)を実現する金融が注目を集めている.しかしながら従来型のマイクロファイナンスの限界も見え始めており,新興国における社会経済の発展に向けたブレークスルーを生み出すためには更なる枠組みの金融のあり方が求められている. 本稿では,従来型のマイクロファイナンスの課題を解決し,低所得者層であっても中間所得層へのステップアップを可能にするために開発したFinTechを活用した次世代型金融サービスの仕組みとビジネスモデルについて述べるとともに,新たに生み出される社会について言及する.
著者
前田 将吾 髙畑 晴行 原田 麻未 中川 佑美 森 公彦 金 光浩 長谷 公隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.J-52_1-J-52_1, 2019

<p>【はじめに】</p><p> 近年,脳性麻痺症例の運動機能と筋力の関連性を示した報告が散見され,運動による筋力維持・向上の重要性が示唆されている.一方で,歩行や移動に制限がある粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS)Ⅳ~Ⅴレベルの症例では,随意的な運動による筋力維持・向上が困難である.今回,低運動機能に分類される脳性麻痺児に対する他動的歩行練習が下肢筋活動に及ぼす影響を評価し,運動量を増加させる方法を検討したため,運動学的考察を加えて報告する.</p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は9歳男児,身長124.0cm,体重14.6kgである.在胎26週663gで出生し,脳室内出血に起因する水頭症を発症したため,脳室-腹腔シャント術を施行された.今回,シャント機能不全に対するシャント入れ替え術のため当院入院された.入院前に自力歩行が困難で,屋内移動を5m程度肘這いで行っていた.術後にイレウスによる嘔吐や食思不振のため低栄養状態となり,長期的入院や多数のルート類によるストレスによって運動意欲は低下した.術後1か月で全身状態が安定し立位や歩行練習を開始した.歩行練習開始時の身体的特徴は,GMFCS:Ⅴ,粗大運動能力尺度(Gross Motor Function Measure)-66 Score:20.5,Modified Ashworth Scale:膝関節伸展両側1,足関節背屈両側1+であった.歩行条件は,両腋窩介助での歩行と歩行補助具(ファイアフライ社製,アップシー小児用歩行補助具)を使用した歩行(補助具歩行)の2条件とした.アップシーの特徴は、児の体幹と介助者の腰部がベルトで連結され,体幹直立位保持が可能になることである.また足部も介助者と連結され,介助者の下肢支持と振り出しに連動する機構となっている.筋電図評価を行うために表面筋電計(Noraxon社製Clinical DTS)を用いて,左右の大腿直筋,半腱様筋,前脛骨筋,腓腹筋外側頭の計8筋を計測した.</p><p>【経過】</p><p> 両腋窩介助歩行では下肢の振り出しが困難であり,下肢筋活動は持続的であった.補助具歩行では,リズミカルな下肢屈曲-伸展運動が可能であり,大腿直筋は左右とも立脚期に活動し,半腱様筋は左右とも遊脚中期から立脚初期に活動していた.前脛骨筋と腓腹筋外側頭は立脚期を通して同時活動していた.またアップシーを用いると嫌がることなく1時間以上連続して立位および歩行が可能であった.</p><p>【考察】</p><p> 低運動機能に分類される症例において,用手的な介助による運動または歩行が困難な場合でも,アップシーを用いた歩行は,体幹直立位での下肢屈曲-伸展運動を可能にした.立脚期の足関節背屈運動や股関節伸展の誘導によってCentral Pattern Generatorが賦活され,下肢の相動性な筋活動が出現したと考えられた.また筋力低下に対しても体幹・下肢への負荷量を調整することが可能であるため,運動量の確保や運動意欲の向上に関与したと示唆された.今後,歩行練習による介入効果を検証する必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> ヘルシンキ宣言に基づき,家族に口頭にて十分な説明を行い実施した.また個人情報の取り扱いにおいては,個人が特定できる情報は用いずに実施した.</p>
著者
藤原 和歌子 髙木 雄三 松岡 佑樹 前田 啓之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.108-114, 2022-03-15 (Released:2022-03-15)
参考文献数
26

縦隔リンパ節転移を伴った硬化性肺胞上皮腫の1例を報告する.症例は44歳女性.検診異常精査のCTで右下葉S7に25 mm大の境界明瞭な円形結節影を指摘され,CTガイド下生検にて非小細胞肺癌と診断された.PET-CTで原発巣に集積があるも,肺門縦隔リンパ節には明らかな集積は認めなかった.右下葉肺癌cT1cN0M0 Stage IA3の診断で,胸腔鏡下右下葉切除+ND2a-1を行った.永久病理標本にて硬化性肺胞上皮腫及び気管分岐下リンパ節転移と診断された.硬化性肺胞上皮腫は肺良性腫瘍として扱われているが,リンパ節転移や再発例が稀にみられ,低悪性度腫瘍としての性質を持つものと考えられている.外科的切除が治療の第一選択であるが,その切除範囲については定まっていない.切除例の予後は良好で,リンパ節転移も予後不良因子ではないとされるが,本腫瘍の生物学的な特徴については不明な部分も多く,慎重な経過観察が必要と考える.
著者
塩田 真吾 髙瀬 和也 酒井 郷平 小林 渓太 籔内 祥司
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.85-90, 2018

<p> 情報セキュリティ関連のインシデントの増加や新しい学習指導要領などを踏まえると,今後,情報モラルだけでなく,情報セキュリティ教育の実施が学校教育での課題になる。しかし,情報セキュリティ教育の従来の指導方法については,セキュリティ対策やトラブル事例を紹介するという指導が中心であり,知識は身につくものの,どこか他人事として捉えてしまい,「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことは難しいという課題があった。そこで本研究では,中学生に「自分ももしかしたらトラブルにあうかもしれない」という当事者意識を促すことを目的とした情報セキュリティ教材の開発を行い,その成果を考察した。トラブル事例の「あやしさ」を自ら発見し判断させるために,スマホ画面を模したカード教材の開発を行い,授業を実践したところ,当事者意識とセキュリティ対策への意欲の向上が見られた。</p>
著者
髙島 愼助
出版者
四日市大学
雑誌
四日市大学論集 (ISSN:13405543)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.170-156, 2013 (Released:2020-09-10)
参考文献数
39
著者
羽田 晋也 柳澤 博志 徳弘 宙士 増井 健二 桂 大輔 駒野 倫久 藤井 崇典 安井 一敏 坂口 史絋 髙濵 宏 町田 恒一 岩間 誠司 山川 智之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】バリアフリー展は,高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展として西日本最大規模を誇る展示会であり,近年の来場者数は開催3日間で9万人を超えている。(公社)大阪府理学療法士会は,理学療法の啓発を目的として,平成23年度よりリハビリテーション相談のブース出展と理学療法士が実践で培った介護技術を伝達する研修会を開催している。過去4年間のブース来訪者および研修会参加者へのアンケートから若干の知見を得たので 検討を加え報告する。【活動報告】ブースでは4年間で442件の相談を受けた(アンケート回収率35.1%;155件)。相談内容は,リハビリテーションや介護に関する全般的なことから個別的な治療,自主練習,制度および仕組み等の多岐にわたるものであった。アンケートより,相談に対する説明が分かりやすく,役に立つ内容で95%を超える方に満足いただけた。研修会は4年間で1,183名の参加があった(アンケート回収率70.0%;828件)。参加者は,介護福祉士,ケアマネージャー,ヘルパー,看護師,理学療法士,作業療法士など医療・福祉・介護に携わる専門家が65%以上を占めていた。アンケートより,理学療法士が実践で培った介護技術は,分かりやすい内容で75%を超える方に満足いただけた。【考察】リハビリテーション相談は,高い満足度を得ることができたが,スタッフの目の前でアンケートを記入することが回収率低下をまねいた一因と考える。研修会は,医療・福祉・介護に携わる専門家の参加が多く,理学療法士が実践で培った介護技術が多職種から認知されていると同時に,高い次元の内容を求められていたことがブースに比べて満足度が低かったと推察する。【結論】今回の取り組みは,理学療法により府民の医療・福祉・介護および健康保持に寄与するものであり,重要な公益目的事業に位置づけられている。今後,このような公益性の高い事業が全国に広まることを期待する。