著者
山崎 由花 堀口 逸子 丸井 英二
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.411-416, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

1) 卒後5年以下の卒業生は仕事と私生活の両方の充実を望み,仕事を継続するためにライフスタイルに合った専門科の選択を挙げた.この価値観は先行研究でも指摘されている様に,この世代の若者に特有の価値観と考えられた.2) 卒後31年以上の卒業生は,女子医学生が稀少な時代に医学部に入学し,女性医師が今後も存在するためにも「私達が頑張らなければ」という思いで仕事を継続したが,子育てや仕事のことで後悔する者もいた.3)女性医師が直面する性差別,出産,育児に関する問題は両世代で共通して存在した.
著者
宮本 学 西村 保一郎 鏡山 博行
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.199-204, 2005-06-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8

大学をストレートに卒業すること, 医師国家試験に1回目の受験で合格することの2つを医学教育課程が順調であったことの判断の指標として, 大阪医科大学に平成3年から平成9年までに入学した715名について, 性別, 入学までの期間 (現役・高校卒業後1年以上経た者) に分けて, 医学教育課程の順調さを比較した. 医学教育課程が順調であった者の比率 (あるいは1回目で国家試験に合格した者の比率) は現役の方が高校卒業後1年以上経た者よりも高かった. さらに性別で見ると女性では現役・高校卒業後1年以上経た者の差がなかったが, 男性では現役の方が高校卒業後1年以上経た者よりも高い比率を示した. 次に, 入試の理科における生物学の選択群・非選択群の両群の間に医学教育課程の順調さに差があるかどうかを解析したが, 差はほとんど見られなかった. 生物学を入試科目として選択していなくても, 医学教育課程に支障はないという結論となった. ただし, 女性の現役に限定すると, 生物選択群の方が非選択群よりも医学教育課程がより順調であった.
著者
田邊 政裕
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-8, 2015

<p> 医療安全を契機に医学教育の質保証が強く求められるようになり, 教育のアウトカムが重視されるようになった. 教育のアウトカムとして全ての医師が修得すべき能力 (ジェネラル・コンピテンシー) とそこに至るマイルストーンズを設定することで医学教育から臨床研修へのシームレスな医師育成が可能になる. アウトカム基盤型教育ではコンピテンシーの達成が教育の柱であり, その達成を証明する評価が重要である. コンピテンシーの評価は, 筆記試験に加えてパフォーマンス・テスト, 観察評価, ポートフォリオなどにより多面的に行われる必要がある. 現状の医師国家試験ではこのような多面的な評価は実現できていない. 卒前から卒後へのシームレスな教育継続を担保するには, ジェネラル・コンピテンシー, マイルストーンズの設定に加えて, 医学部, 医科大学が臨床実習, 卒業判定において卒業時マイルストーンを適切に評価し, 学位を授与することが求められる.</p>
著者
川根 博司 松島 敏春
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.379-383, 1998

1996年度および1997年度に, 当大学の第5学年医学生における喫煙状況と学業成績の関係を調査した.喫煙状況の調査方法としては, 呼吸器内科に臨床実習のため回ってきた際に, 各班ごとに1人ひとりの喫煙習慣について聞き取りを行った.学業成績は第5学年までストレートに進級してきたか, 1回でも留年したことがあるかで評価した.1996年度, 1997年度の男子学生の喫煙率は, ストレート組でそれぞれ48.9%, 39.1%であるのに対して, 留年組では80.6%, 65.4%と有意に高かった.女子学生においても, 1996年度, 1997年度の喫煙率はストレート組がそれぞれ8.7%, 9.1%なのに, 留年組は25.0%, 37.5%と高率を示した.喫煙状況が学業成績に関係することが示唆される.わが国において, 医学生に対するアンチスモーキング教育をもっと積極的に進めていく必要がある.
著者
菊川 誠 西城 卓也
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 = Medical education (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.243-252, 2013-08-25
参考文献数
28

●代表的な学習方略について事例を添えて概説する.<br>●講義は,大人数を対象にする場合,多くの情報を系統だって提供できる利点がある.<br>●問題基盤型学習とは,能動的小グループ学習による現象の提示(シナリオ)を学習のきっかけとする学習方略である.<br>●早期臨床体験実習は,医学部入学後,比較的早期に現場を体験させる実習である.<br>●医療安全の観点からシミュレーション教育の重要性が増してきている.<br>●参加型臨床実習と卒後臨床実習は,認知的徒弟制と正統的周辺参加論を理論的背景にしている.<br>●継続的専門能力開発を考える上で,省察的実践家という概念が有用である.
著者
岩田 健太郎 北村 聖 金澤 健司 丹生 健一 苅田 典生
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.358-363, 2013-10-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
7

背景 : 指導医講習会は「能動的,主体的」であるべきだが,神戸大学病院でのそれは受動的なものであった.方法 : 参加者がより能動的,主体的になるよう,内容をより現場にあい,自由なものに変更をしてきた.この変更内容をまとめ,変更前後(平成20年度と24年度)の受講者のアンケート結果を比較した.結果 : 講習会の内容はより自由な内容となり,KJ法などは用いられなくなった.参加者の評価をスコア化すると,以前に比べて概ね評価は高まったが,研修時間に関しては有意差がなかった.考察 : 指導医講習会の質的改善が試みられ,受講者の満足度は改善した.今後も質的改善を重ねていき,その質の評価も行うべきだと考える.
著者
岡田 隆夫 新井 康允 池田 黎太郎 各務 正 小川 秀興
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.177-181, 1999-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

順天堂大学医学部では1年生に対する一般教養教育カリキュラムの改革を行い, 実施後半年を経た段階で学生・教員に対するアンケート調査を行いその結果を検討した. 改革の骨子は必修科目の削減と選択科目の大幅増加であり, これにより学生の個性を重視, 自主的な科目選択による勉学意欲の向上を目指した. 新カリキュラムでは各講義に対する学生の満足度が上昇したのみならず, 授業内容は以前と同様であった科目に対する満足度も上昇し, 授業の活性化が明らかとなった.
著者
石川 和信 首藤 太一 小松 弘幸 諸井 陽子 阿部 恵子 吉田 素文 藤崎 和彦 羽野 卓三 廣橋 一裕
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.259-271, 2015-06-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
5

シミュレーション教育への理解と普及をはかり, 医学生の臨床能力の客観的評価システムを全国の医学部教員が連携して確立することを目的として, 第46回日本医学教育学会大会の開催翌日に, 医学生イベントとして, シムリンピック2014を開催した. 全国公募した12チーム36名の医学部5, 6年生が参加し, シミュレータや模擬患者を活用した6つのステーション課題に挑戦した. 各課題の構成, 難易度, 妥当性を臨床研修医の協力で検証し, 実行委員会でブラッシュアップした. 企画の構想, 実行委員会組織, 開催準備, 当日の概要, 参加者アンケート結果に考察を加えて報告する.
著者
高村 昭輝 伴 信太郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.255-258, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
5

1) オーストラリアではここ数年で多くの医学部が医学生に対して全学年を通して地域医療と地域社会そのものを認知・意識できるカリキュラムを採用している.2) フリンダース大学では医学生に対してオーストラリアで初めて,遠隔地での長期間にわたる地域小病院・診療所での総合診療実習に着目してプログラムを作成,実践し,大きな成果を上げている.3) 地域立脚型医学教育には様々な形態が考えられるが,どのような地域医療教育が日本の文化,歴史,医療制度に適合し,将来的な地域医療の充実につながるのか考察する必要がある.
著者
服部 良信 水野 美穂子 野々垣 浩二 小鹿 幸生 西尾 昌之 藤中 憲二 小西 靖彦 村岡 亮
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.298-299, 2014

優れた臨床研修指導医の養成が必要で,指導医は臨床研修指導医講習会(講習会)の受講が必須である.平成25年6月の臨床研修運営委員会(委員会)で開催提案し,7月の委員会で否定された.理事長・病院長の指示で,9月の委員会で指導医のレベルの向上等を目的とした大同病院のスタッフ単独での開催を決定した.タスクホースは,チーフと院外講師を除き院内から選出し,予行会を3回,総合リハーサルを1回施行した.他の事務の協力を得て,平成26年2月に大同病院の第1回講習会を実施した. 単独開催により,臨床研修に対する意識改革ができ,受講者・タスク・事務方のレベルアップおよび良い人間関係の構築ができ,一体感が得られた.
著者
根路銘 安仁 大脇 哲洋 桑原 和代 新村 英士 嶽崎 俊郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.461-465, 2013-12-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
7
被引用文献数
2

医学部入学定員は平成19年より急速に増加しており多くを地域枠学生が占めている.過去の調査で「医師不足地域での従事」において,専門医取得は大きな要素であった.鹿児島県の地域枠は全国よりも3年間早く開始され来年度から後期研修が開始される.彼らが専門医も取得可能なキャリア計画を提示することは喫緊の課題であり現在の制度情報を元に検討した結果,専門医の取得が困難であった.本問題は鹿児島県だけの問題でなく,数年後全国の医学部の卒業生の約2割が地域枠学生であることを考えると全国的な問題であり,彼らが専門医取得困難である現状は改善しなければならない.そのためには,各方面からの取り組みが必要である.
著者
常住 亜衣子 石川 ひろの 木内 貴弘
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.335-344, 2013

目的 : 医療面接における医師・患者間コミュニケーションスキル評価尺度の概要と問題点を明らかにする.<br>方法 : 先行研究,2009年以降の文献レビューより欧米で広く使用される尺度を収集した.尺度の評価項目をthe Kalamazoo Consensus Statement(KCS)を参考に分類した.<br>結果 : 対象とした10尺度の全項目の83%がKCSの示す領域いずれかに分類された.<br>考察 : 医師・患者間コミュニケーションに必須のスキルについて一定の合意形成が示唆されたが,実証的根拠を示す研究がさらに必要である.理論的根拠に基づき構成され,使用する場面に適した信頼性の高い評価ツールの選択・開発が求められる.
著者
錦織 宏 西城 卓也 田川 まさみ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.79-86, 2014-04-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
15

カリキュラム/プログラム評価とは,「学生や研修医を対象にした事後アンケート」に留まるものではなく,一定の目的をもって,計画された教育活動を多角的に評価する営みである. 以下の問いについて考えながら,評価を計画する. ・ なぜ評価を行うのか? ・ 誰に向けての評価なのか? ・ 何を評価するのか? ・ どのように評価するのか? ・ 誰が評価するのか? ・ 誰から情報を得るのか? ・ いつ評価するのか? ・ 評価結果をどのように用いるのか? カリキュラム/プログラム評価の目的は教育活動の改革にある.
著者
渡部 健二 和佐 勝史 濱崎 俊光 樂木 宏実 土岐 祐一郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.63-68, 2014-04-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
5

背景 : 大阪大学で新しく導入した臨床実習総括試験の特性を明らかにするため,当試験の成績を他の試験と比較検討した.方法 : 比較対象は,基礎医学,臨床医学,共用試験CBT,共用試験OSCE,クリニカル・クラークシップとした.結果 : 当試験との相関を示すPearson相関係数は全般的に低値を示した(基礎医学 0.32,臨床医学 0.36,共用試験CBT 0.44,共用試験OSCE 0.39,クリニカル・クラークシップ 0.24).主成分分析の結果,当試験,共用試験OSCE,クリニカル・クラークシップは1つの組を形成し,基礎医学,臨床医学,共用試験CBTは別の組を形成した.結語 : 当試験は既存の試験とは異なる観点の試験であり,技能,態度,コミュニケーション,臨床推論などが包括的に求められる臨床的課題解決能力の指標となる可能性が示唆された.
著者
植村 研一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.380-383, 1986-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10
著者
有村 保次 西田 俊彦 南 麻弥 横山 葉子 三品 浩基 山崎 新 石崎 達郎 川上 浩司 中山 健夫 今中 雄一 川村 孝 福原 俊一
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.259-265, 2010

我が国の臨床研究の推進には,臨床と研究手法に精通した臨床研究医(clinical investigator)の養成が必要である.我が国初の臨床研究の系統的な教育を行う臨床研究者養成(MCR)コースが京都大学に開設された.今回,本コースの卒業生が臨床研究を実施する上で直面している問題点を調査し,今後の改善策を検討した.<br>1) MCRコース3期生までの全履修者28名を対象に,履修後の臨床研究実施に関する現状や将来像等について自己記入式質問紙調査を行った.<br>2) 回答者24名中(回収率86%),臨床研究を行う上で,「時間がない」,あるいは,「研究協力者がいない」といった問題を挙げる者は,それぞれ40%程度いた.<br>3) 「臨床研究を進めるために職場や周囲への働きかけ」を行った者は20名(83%)いたが,職場において臨床研究の支援が得られたのは1名のみであった.<br>4) このような状況下,自らの10年後の将来像として「病院で臨床研究を行う臨床医」と回答した者が半数以上いた(54%).また,「臨床研究を行う医師のキャリアパスを想像できる」と回答した者は42%であった.<br>5) MCRコースは改善の余地があるものの人材育成の具体的なモデルを呈示した.臨床研究のさらなる発展のため,医療現場における支援体制や人的・物的インフラ整備の必要性が示唆された.