著者
辻 芳之 岡村 春樹 玉置 知子 長田 久美子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

マイコプラズマ属のUreaplasma urealyticum(Ur)感染の臨床的意義:妊婦の膣分泌物を培養し、Ur感染に関して、正期産例のUr陽性例は30.0%(30/100)、早産例のUr陽性例は51.1%(23/45)で早産症例に有意(p<0.02)に高かった。また、Urと他の菌(GBS, Gardnerella vaginalis, Candida, E.coli等)との混合感染症例は、無感染群に比べて早産のリスクが7倍高かった。抗ureaplasma urease monoclonal抗体を用いた蛍光免疫染色:Ur株からこの菌が産生するureaseに対する抗体をhybridomaによって作成した。この抗ureaplasma urease monoclonal抗体を用いてUr感染した膣分泌物は陽性に染色された。Urのlipoprotein(LP)が単球細胞に及ぼす影響:Urの菌体からLPを抽出した。TLR-2,-4の存在が知られているヒト単球系細胞株THP-1細胞に添加しTLRのリアルタイムPCRを行ったところ、TLR-2の発現増強が認められた。Ur LPで刺激したTHP-1細胞のapoptosis, necrosisの誘導をflow cytometerで確認したところ、apoptosis, necrosisともに誘導された。さらにELISA法にて、早産に関わる炎症性サイトカインIL-1β,IL-6,IL-8,TNF-αの測定を行ったところ、Ur LPで刺激されたTHP-1細胞は時間経過とともにIL-8の産生が増加したことが確認されたが,その他の炎症性サイトカイン誘導は無かった。また、IL-18は測定感度以下であった。
著者
中村 康雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アーチェリーのシューティング動作における肩甲骨運動の無侵襲測定は,皮膚の動揺による誤差が大きく,その手法は未だ確立されていない.そこで,本研究は,モーションキャプチャ・システムを用いた肩甲骨運動の無侵襲測定法の開発を目的とした.反射マーカを肩甲骨周辺の体表面に100個貼付することで体表面形状を測定し,その形状変化から肩甲骨運動を推定した.結果から肩甲骨運動を推定できることを示した.また,アーチェリーのシューティング動作における肩甲骨運動を計測した結果から,アーチェリーのシューティング動作にともなう肩甲骨運動を測定できることを明らかにした.
著者
東 淳一
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

東京大学医学部製作による音声分析システム「音声録聞見」により生成される基本周波数(以下F0)およびパワーの数値データを利用した定量的韻律分析プログラム、および分析のための前処理として、「音声録聞見」システムにより書き出されるデータファイルの整形および編集を行うプログラムを、Visual C++により開発した(Windows95対応)。韻律分析プログラムには、・F0およびパワーの平均値と分散を求めるプログラム・F0の分布状況を示す散布図をグラフィック表示するプログラム・F0対パワーの相関係数を算出するプログラム・F0の上昇・下降パタンの動態を定量的に示すプログラム・長時間のF0およびパワーの動態をグラフィック表示するプログラムなどが含まれる。さらに、上記のプログラムを利用し、小規模かつ定量的な日本語方言音声の韻律比較研究などを実施した。
著者
千葉 和義
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒトデ卵では、サイクリンBのmRNAは短いポリA末端がウリジンで修飾されており、ホルモン刺激によってそのウリジンがトリミングされると同時にポリA伸長が起こること、さらに合成したRNAをマイクロインジェクションすることでウリジル化はRNA安定には関与しないことも明らかにした。体細胞ではウリジル化はmRNA不安定化にはたらくことが報告されているが、卵ではむしろ翻訳抑制にはたらいていることが示唆された。本研究により、母性mRNAの新たな3’UTR修飾と翻訳制御機構が明らかになった。
著者
上田 健 本田 浩章
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ポリコーム複合体PRC2 (Polycomb repressive complex 2)は、ヒストンH3の27番目のリジン残基 (H3K27)をメチル化して転写抑制に寄与するとされるタンパク質複合体である。私達は、以前に骨髄異形成症候群において、PRC2の構成因子のひとつであるEEDの遺伝子変異を同定した。本研究では、疾患関連EED Ile363Met変異を有するノックインマウスを用いて変異の機能を個体レベルで解析した。その結果、変異マウスでは、H3K27トリメチル化のピークから周辺への伝播障害を伴い、造血細胞の自律的増殖と造血器腫瘍発生率の増加を呈することが明らかとなった。
著者
渡邉 志 松本 有二 塚本 博之
出版者
静岡産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自律神経活動推定および主観評価測定を組み合わせることにより、学校における健康相談活動を支援するシステム構築に必要となる基礎的事項の開発を試みた。そのため、自律神経活動推定については脈波を測定した結果を解析することにより実施し、もう一方の主観評価については、Visulal Analog Scaleを応用した質問紙および我々が開発したiPadアプリにより測定した。その結果、学生生徒の微妙な感情をこれら二つの指標の複合体として表現できる示唆が得られた。
著者
高野 健人 中村 桂子 木津喜 雅 清野 薫子 森田 彩子 杉村 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

社会的凝集性、集団的エフィカシーならびに帰属意識について、指標分析、キーインフォマントインタビュー、住民調査を実施し、居住地域に対する帰属意識を形成する都市の社会的物理的な環境条件、市区町村レベルの疾病傷病リスクと社会的凝集性、集団的エフィカシーおよび帰属意識を含む地域関連指標との関連と、各要素の寄与を検証した。市区町村レベルの地域健康関連指数を作成し、住民の健康水準と地域指標の関連モデルを得た。全国の市区町村を悪性新生物、糖尿病および脳血管疾患、心疾患、不慮の事故の4分類による健康指標とその差について分析を行い、健康指標水準の差異と健康関連要因指標の差異の関連を明らかにした。
著者
堀 智英 上本 伸二 加藤 琢磨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来よりUV照射による抗原特異的な制御性T細胞が誘導できることが報告されていますが、これらの報告ではUV照射後に抗原に感作を行っており(前照射・後感作)、そのメカニズムについてはC4+T細胞を介してTh1からTh2へ偏向することにより説明されています。我々は申請時のプロトコールどおりに各レシピエントマウスから精製したCD4+T細胞と、ドナーの脾細胞とのmixed lymphocyte cultureを行い、培養上清におけるサイトカイン産生について解析し、従来のUVに関する報告と異なりIL-4の有意な産生は全く認めませんでした。そこで、前感作・後照射による感作抗原特異的な免疫抑制のメカニズムが従来のTh2へ偏向ではないことを証明するために、IL-4,IL-10,IL-5,IL-13,IFN-γ,IL-2について解析を行い、これまでの報告と異なり、Th2へ偏向ではなくIL-10のみを感作抗原特異的に高濃度に産生することを証明しました。さらに、抗原特異的な免疫寛容作用を有するCD4+T細胞について、その誘導および機能に関してのIL-10依存性を解析するために、UV照射の前後1日に抗IL-10抗体で処置したマウスおよびCD4+T細胞をナイーブレシピエントに移入する際に抗IL-10抗体を同時に投与し、その場合には免疫抑制効果は失われました。我々の抗原感作後にUV照射を行う系(前感作・後照射)では、感作抗原に一致してドナー抗原特異的なグラフトの生着の延長及びproliferation assayでの抗原特異的な免疫抑制が得られました。今回、感作した抗原に特異的なTr1様の免疫抑制性T細胞をUV照射により誘導でき、従来の報告と大きく異なりTh2偏向のメカニズムではなくIL-10のみに依存性にCD4+T細胞を介して免疫抑制効果を得ている点を証明でき、以下の論文に発表しました。
著者
牧野 芳大 馬 紹平
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本脳炎ウイルス(JEV)は、そのC-prM遺伝子領域(240塩基)による分子系統樹解析およびそのウイルスの分離地をもとに4つの遺伝子型(G1〜4)に分類される。日本国内のJEVの遺伝子型は従来G3型に属するとされていた。しかし、1994年頃を境にG3型からタイ北部の株に属するG1型と交代していることが明らかになり、JEVが海外から持込まれた可能性が示唆された。大分、長崎、沖縄、大阪、石川、東京で1965-2001年に分離された23株について、JEV遺伝子のC-prM遺伝子領域の塩基配列をもとに分子系統樹解析を行ったところ、従来のG3型は時間的経過と共にA, B, C, D, E1, E2のクラスターに分類された。次に、これらのクラスター間の抗原性の差異について検討するため、大分県で1981〜2003年に分離された、異なるクラスターのJEV6株と大分県内で飼育され、JEVに自然感染したブタ血清検体(20検体)を用い、ベロ細胞を用いた50%プラーク減少法による中和試験を行った。各ウイルスによる20検体の血清抗体価の幾何平均値間の多重比較による有意差検定を行った。その結果1981年の株は1989年の株との間に有意の差が見られた。また、1989年の株は1995年の株および2003年の株との間に有意の差が見られた。尚、1995年の2株の間にも有意の差がみられた。しかし2003年の株は1995年の株および1981年の株との間に有意の差は認められなかった。C-PrMによる系統樹分類は中和試験に関与するエンベロープによる系統樹と類似することが報告されている。本研究では、中和試験による各系統間の差は明確ではない。しかし、1980年代前半、後半および1990年代以後のJEVで中和反応に関与するウイルスの抗原性にわずかな差が見られる。異なる抗原性をもつJEVの国内持込に対し継続した監視が必要である。
著者
濱島 ちさと
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

CTやMRIが過剰供給される一方でマンモグラフィの供給は充足していない可能性が示唆された。ピロリ菌保険適応となって以来、導入前と比べヘリコバクターピロリ感染関連検査は2倍に増加し、胃炎・十二指腸炎の有病率は45-64歳で増加した。がん検診の過剰診断の推計方法には、無作為化比較対照試験、コホート研究、時系列研究、モデル評価が用いられるが、算出方法は標準化されていない。胃がん年齢調整死亡率は、胃内視鏡検診を行っている新潟市に比べ胃内視鏡検診を行っていない新潟市以外の市町村で減少割合が大であった。新潟市では他の市町村に比べ死亡率減少の割合が大きく、進行度1の罹患率が高いことから過剰診断が示唆された。
著者
内藤 俊雄 眞山 博幸
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は通常のバルク(D=3)の試料とフラクタル次元(D)を落した試料(2<D<3)とを対比し、磁気転移や超伝導転移といった協同現象における秩序化が次元Dと共にどう変わっていくかを実験データとして提示することであった。与えられた試料のDの制御を実現し、その電子物性を明らかにした点が新しい。3年間でほぼ予定通り研究が進み、酸化コバルトの反強磁性転移温度(T_N)とDの関係、および銅酸化物高温超伝導体の臨界電流密度(J_C)とDの関係が、それぞれ当該の物理量を種々のDを持った試料で測定することで得られた。この成果は論文として受理され、特許も申請した。
著者
津田 博幸 佐藤 信一 遠藤 慶太 佐野 誠子 山口 敦史 市田 悟 一色 知枝 稲生 知子 遠藤 慶太 奥田 和広 木下 綾子 笹生 美貴子 布村 浩一 保坂 秀子 三品 泰子 村本 春香 本橋 裕美 山田 純 湯浅 幸代 尤 海燕
出版者
和光大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『経国集』対策部の諸写本の写真・コピーを全て入手し校訂本文を作成した。その上で「対策」全26首の注釈をほぼ完成した。合わせて、「対策」をベースにして、古代文学・思想・文化・宗教・古代史などに新たな光を当てる領域横断的研究に着手し、現在、各メンバーが論文を執筆中である。
著者
野田 遊
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

米国のシティ・カウンティ統合政府の事例等を研究し、基礎自治体と広域自治体が統合して形成される垂直的統合政府の民主性と効率性について明らかにした。統合成功事例では、統合による経済発展や財政効率の向上を実現していた。一方、規模が拡大した政府において、地域を分けて住民の意向を吸い上げる取り組みなどを進め、民主性と効率性の両立に配慮していた。また、効率性はサービスを地域全般に公平に広げる機能を持つ点も明らかになった。これらは、日本の地方制度改革に資する重要な点である。
著者
林 透 深野 政之 山崎 慎一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、従来、大学の組織構造に関する制度的変遷や機能分析をテーマとした学術的研究が中心で、大学経営や大学教育の日常的課題に焦点を当てた研究が皆無な状況に着目し、大学教員と大学職員が協働する運営体制づくり(教職協働)を超えて、大学構成員である学生との協働実践を含めた新しい姿(教職学協働)を明確化し、大学現場が直面する組織開発(OD)の担い手のあり方を探求した。研究成果として、大学教員・大学職員・学生が協働する参加型組織経営をファシリテートする組織開発(OD)の方法論及び実践事例を蓄積し、新たな提言を行ったほか、日米共同研究により、両国のFD活動の特徴や相違点を明らかにすることができた。
著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は,教育の質保証を目指した大学教育において,図書館員が教員と連携を構築するための戦略とその実現に影響を与える図書館内外の条件をテーマ的コード化の手法をもとに明らかにすることである。米国のミシガン大学については訪問調査を行い,関係者への聞き取りや内部資料の調査によって得たデータをもとに戦略と条件からなるモデルを構築した。このモデルについては国際学会で口頭発表する準備を進めている。カナダのウエスタン大学,フィンランドのタンペレ大学でも同様に訪問調査をもとに同様のデータを収集し,データの整理と分析を進めている。
著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,資料の電子化が迫られる大学図書館を対象に,格差の実態とその変動を明らかにすることである。本研究では,『日本の図書館―統計と名簿』に掲載されているデータをもとに,国公立大学の図書館資料費および図書館職員について,大学間・大学間格差を分析した。また,格差の具体的な状況を明らかにするため,国公立大学を対象とした聞き取り調査も実施した。本研究が明らかにした重要な知見は,電子ジャーナル費や雑誌費,正規採用の司書数で,大学階層間格差が拡大していることである。研究と教育の両面において,大規模大学ほど図書館資源が潤沢である一方,小規模大学が苦境に立たされている実態が浮き彫りになった。
著者
山田 悟郎
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

北海道の続縄文文化は、7世紀後半には土師器をもった農耕文化の影響のもとに擦文文化に変容する。土器からはそれまで使用されてきた縄文が消え、住居の構造は方形でカマドをもったものとなり、鍛冶の技術や機織りの技術、雑穀栽培の技術などが導入され、生活様式が大きく変革した。擦文文化の経済基盤は河川でのサケ・マス魚とされてきたが、最近の調査では各種の雑穀を栽培する畑作農耕を行っていたことも明らかになっている。畑跡はまだ確認されていないが、道内では7世紀後半から12、13世紀までの34遺跡からアワ、キビ、オオムギなど16種類の栽培植物種子が出土したほか、鉄製の鍬先,鎌などの農耕具が出土する。畑作農耕は7世紀後半から9世紀中頃までは石狩低地帯以南の地で展開されたが、擦文文化の集落が石狩低地帯以北や以東に進出する9世紀後半頃から12、13世紀には、温暖な気候を背景としてほぼ道内各地で畑作農耕が展開された。ただ、石狩低地帯以南では7〜8種類の作物がみられるのに対し、以北では多くても4〜5種類と作物の種類は少ない。また、10世紀以降の遺跡から出土したオオムギに違いがみられる。石狩低地帯以南のオオムギは東北地方北部にその系譜が求められ、以北のオオムギは大陸沿岸地方の鉄器文化で栽培されていたものにその系譜が求められる。大陸系オオムギの導入にはオホーツク文化の集団が関与していたことが明らかになった。擦文文化の集団は河川や海洋での漁業や海上・陸上での狩猟も行っていたことは、出土した魚骨・獣骨から明らかで、畑作農耕や漁労・狩猟での産生物をその経済基盤としていた。狩猟・漁労産生物の一部は、自ら産生できない鉄器などを導入した対価となっていたものと考えられる。海運による交易経済が発展した12、13世紀には、擦文土器や竪穴住居が使用されなくなり、擦文文化からアイヌ文化へと変容する。
著者
荻野 和子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 高校化学のマイクロ及びスモールスケール実験教材の開発次の(1)〜(4)のテーマについて,培養用のマイクロプレートを使う実験を開発し,実践した。(1) 酸化還元反応についての実験教材の開発:さまざまな酸化剤,還元剤の反応のようすを明確に示す教材を開発した。(2) 電池と電気分解:特別な装置も使わず,失敗なく短時間でいろいろな電気分解や電池について実験できる方法を工夫した。(3) 無機イオンの定性分析についての実験教材の開発:いろいろな金属イオンの性質をプレートを使って示し,未知試料の定性分析に応用する実験を開発した。(4) アルコールの実験:ポリスチレン製の器具で実験できる,アルコール類についての実験を開発した。本研究代表者らによる一連のスモールスケール実験教材は平成9年度東レ理科教育賞佳作賞を受賞した。2. 大学一般化学のマイクロスケールの実験教材の開発スピロピランのフォトクロミズムを利用した反応速度についてのマイクロスケール実験等を開発した3. 高校化学におけるスモールならびにマイクロスケール実験の実施面および普及に関する研究我々が開発したスモールスケール実験教材を,東北各県および栃木県のいくつかの高校の化学担当教師に依頼し,授業として実施した。その際,試薬,器具をキット化し,生徒用ワークシートとともに配布した。また,教師ならびに生徒を対象にアンケートを行った。アンケートは,のべ9校14名の教師,840名の生徒から回収された。実施したテーマは,(1)金属イオンの性質,(2)化学平衡の実験,(3)中和滴定ならびに(4)電気分解の実験である。その結果,(1)生徒の積極的な取り組み,(2)実験準備,指導,片付けにかかる教師の負担の軽減.(3)廃液の減量,(4)短時間で実施できる等高い評価が得られた。
著者
島立 理子 八木 玲子 小田島 高之
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

この研究は市民、地域の人々と連携して地域にある「資料」を掘り起こし共有することを通して、日本におけるエコミュージアムのあり方について検討する実践的な研究である。千葉県立中央博物館が行っているフィールド・ミュージアムにおいて、博物館行事参加者との連携、博物館・公民館・図書館との連携、地域の人々との協働調査を実施した。連携にあたっては、それぞれの機関の得意分野を活かした連携が必要であることがわかった。また、地域の人々との連携にあたっては知識を一方的に伝えるのではなく、ともに活動することで新たな資料の掘り起こしが可能となることがわかった。
著者
藤山 静雄
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1999年度には塩尻市東部、鉢伏山一帯で成体が、すなわち霧ヶ峰から美ヶ原に至るヴィーナスライン沿いで成体の大発生が観察された。特に9-10月にかけて側溝、コンクリート製の切土斜面に多数の成体が観察された。鉢伏山の周辺では比較的密度が低く、森林内、道路周辺では成体が散見されたに過ぎなかった。これらの調査では、採集個体はすべて成体であり、幼虫は全く観察されなかった。一方、霧ケ峰から蓼科高原に至る一帯では、7齢幼虫が大発生した。観察された幼虫は大部分が白色の個体で成体のように黄赤褐色をした個体はごく少なかった。これらの個体も含めて観察されたものは全て7齢幼虫の個体で成体や6齢の個体は全く見られなかった。採集された成体については、交尾個体は全く見られず性成熟していないことは明らかである。染色体調査では、分裂像が観察できず、染色体数を確認することは出来なかった。これらの結果はこれまで交尾等の繁殖行動の1過程としての群遊行動であるとする説と、分布拡大を主体とする分散行動であるとする説があるが、後者の説を支持する有力な証拠である。また、成体、7齢幼虫の存在など8年周期は今回の調査でも厳密に維持されておりその周期性の厳密さは筆者がこれまで指摘してきた周期決定メカニズムが良く働いていることを示すものである。また、それらの分布域は24年前の分布域の境界線とほとんど変わっていない。このことは本種が土壌中に生息することを考えれば当然といえるが、近隣の個体群が他の個体群の発生経過に何らの影響も及ぼしてはいないことを示すと考えてよいだろう。次ぎに、岐阜県側での調査では6齢幼虫が見つかっているがヒダヤスデと考えられる。シ化し厳密な同定は出来ていない。その他、伊那地方では1齢幼虫が、山梨県塩山市では3齢幼虫が観察され、それぞれ8年周期の発生が予想される齢の個体群が生息していた。今後、地域の個体群間の関係、染色体数の決定等さらに詳しく解析する必要がある。