著者
大澤 義明 古藤 浩 栗田 治
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

主たる研究成果は以下の5点からなる.1)原風景の要素であるスカイライン景観と校歌との関係を考察した.平面上眺望点から,山頂仰角を算出し,最も大きな仰角となる山頂に関して領域分割を理論的に求めた.一方で,関東地方公立高校897校の歌詞を調査し,歌われている山を抽出した.そして,領域分割と校歌分布とが8割程度合致することを実証した.2)面的に広がる夜景景観の数理評価モデルを構築した.夜景規模を測る尺度として立体角を導入し函館市街拡大が函館山夜景や裏夜景にどの程度寄与しているのかを時系列(1975年から2000年まで5年間隔6時点)比較することにより定量的に明らかにした.質を求める指標として道路可視率を導入し,函館では度重なる大火の影響で道路幅員が広り防火遮断帯を配置し,結果としてメリハリのある夜景となったことを数値的に検証した.3)季節前線は日本の景観の大きな構成要素である.その一つとして桜前線を取り上げ,モデルや現実データから桜前線近接性時空表示方法を提案したり,日本の中で桜前線を早くかつ長く楽しめるパレート最適場所を求めたりした.また,これらの多項式計算アルゴリズムを提示した.4)斜線規制に換わる代替規制として2003年1月に建築基準法に導入された天空率規制の問題点を解析的に明らかにした.円環敷地や直線敷地に直方体建物建設という単純な数理モデルを通して,天空率規制導入は,高層建物の許容,共同立替を非促進,建築形態への影響から見て斜線制限の代替指標としての不自然さを数学的に証明した.このようにして,規制導入が町並み景観,都市内のスカイラインへ強く影響することを指摘した.
著者
菊池 聡
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

個人特性としての「あいまいさ耐性」は、クリティカルシンキングの態度を構成する主要要素の一つだと考えられている。この特性と、疑似科学を中心とした超常現象信奉との関連性を明らかにするために、中・高生を対象に質問紙調査を行った。その結果、「あいまいさへの不寛容(非耐性)」は超常信念と正の関連性を示したが、疑似科学や超常信念の種類などによって、関連性が異なっていることが明らかとなった。
著者
加藤 直三
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

エスキモーロールのなかのショートロールの運動機構の解明を行なうために、まずプールにおいて、被験者の左右の関節部(手首、肘、肩、額)にマーカーを取り付け、運動を水中2台、空中2台のCCDカメラにて撮影を行なった。またカヤックには傾斜計を取り付け、ロール角を計測した。この実験解析から、ショートロールはロングロールに比べ、起き上がる時間が約倍速いことや三次元的なパドルの動きと体の姿勢の変化との関係を明らかにした。次に、エスキモーロールのヒューマン・ダイナミックスの解析を行なった。腰、肩、手の部分にジョイントを設け、その間を直線上のリンクで置き換え、また手から先のパドルをリンクとした。またリンクの先端(エンドエフェクター)にはブレードを置いた。これらのジョイントとエンドエフェクターの位置変化からそれらの速度、角速度を求めた。エスキモーロールの理論解析では、運動系を浮遊物体とリンク機構で置き換えることで、浮遊状態のマニピュレータ付き水中ロボットの運動と等価になる。ロングロールはほぼ2次元平面内での運動と見なされるので、二次元の運動方程式を扱う。逆運動力学および逆運動学を同時に扱い、作業腕の先端の位置の加速度を与えて、各関節の運動を求めた。また、パドラーの腰から肩までを一つのリンクと考え、質量をパドラーの全質量の半分と考え、中性浮力とした。その付加質量は円柱近似で求める。パドルは円柱、ブレードは平板として付加質量を求めた。リンク機構に加わる流体力は各リンクの移動速度から得られる円柱または平板の流体力で近似した。数値シミュレーションはMATLABを用いて0.01sec.毎に行った。数値計算では1.2秒でほぼカヤックは起きあがることがわかる。さらにマニピュレータを模型カヤックに搭載してその復原の制御が可能かどうか試みた。実験で用いた模型カヤックは観察で用いたリバーカヤックの約1/3の大きさである。マニピュレータは3つのリンクとジョイントからなり、ジョイント部には-5.00(V)〜+5.00(V)の電圧により-90°〜+90°まで回転するサーボモーターとポテンショメーターの内蔵されている。重量は電源コードを含み空中重量約1.5kgf(水中では約1/3)。実験では各リンク部に発泡スチロールをつめて水中で中性浮力になるように行った。模型カヌーの時々刻々の角度を調べるためにポケンションメーターを模型カヌーの先端に取り付けた。カヤックモデルとマニピュレータの系について、マニピュレータ先端の加速度および角加速度を与えて、それによって得られる各ジョイントの角度を求め、それらを設定値とした。フィードバック制御則にはPD制御を用いた。マニピュレータの運動を制御することによって、カヤックを転覆状態から復原させることがわかった。
著者
柿澤 敏文
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010 年 7 月に、全国視覚特別支援学校 70 校の児童生徒に対して視覚障害原因等の質問紙調査を実施し、3,375 人の回答を得た。視覚障害原因は先天素因、未熟児網膜症、原因不明の順に多い。眼疾患は網膜疾患と視神経視路疾患、硝子体疾患が増加し、眼球全体や水晶体疾患は減少した。弱視特別支援学級設置小学校・中学校の調査では、小学校 155校と中学校 48 校の児童 241 人と生徒 57 人より回答を得た。視覚障害原因は先天素因、未熟児網膜症、原因不明の順に、部位別には網膜疾患、眼球全体、視神経視路疾患の順に多かった。
著者
清水 貴史
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

発生過程において同じシグナル伝達因子が、いろいろな部位で異なった組織形成に関与している。WntやFgfシグナルは、脊椎動物において後方組織形成に重要であることが知られている。我々は、ゼブラフィッシュにおいてWnt3a/8とFgf3/8が、その下流遺伝子cdx1a/4(caudal関連遺伝子)を介して、体幹・尾部の神経組織の形成を制御していること示してきた。今回、Cdx1a/4機能阻害胚における神経系のパターニングを詳細に調べた。Cdx1a/4機能阻害胚では、hoxb7a(4体節)より後方のhox遺伝子の神経系における発現が消失していた。これらの胚では後方神経領域において、本来の前後軸とは反対に、尾側から吻側に向って菱脳節(r)4-7・前方脊髄が形成されるていた。後方菱脳節、前方脊髄のパターン形成には、レチノイン酸(RA)およびFgfの濃度勾配が重要であると考えられている。ゼブラフィッシュ胚後方では、尾側からFgfの、体幹部からRAの濃度勾配が本来の菱脳節、前方脊髄とは前後反対に形成される。Cdx1a/4機能阻害胚では、後方神経が形成される代わりにFgfとRAの濃度勾配を感知して、新たな後方菱脳節が尾側に形成されると考えられた。そこでCdx1a/4機能阻害胚においてRA合成及びFgfシグナルの阻害実験を行った。Cdx及びRA合成阻害によりr5より後方の神経形成が阻害され、Cdx及びFgfシグナル阻害によりr4, r5の形成が阻害された。また、Cdx機能阻害胚における異所的な菱脳形成は、後方hox遺伝子(hoxb7a、a9a、b9a)の過剰発現によって阻害された。これらのことから、CdxはFgf及びRAシグナルに対する組織応答性を制御していることが示唆された。また、Cdxは、Fgfと協調して後方hox遺伝子の発現を制御して神経系のパターン形成に重要な役割をしていることが明らかとなった。以上の研究成果は、胚におけるシグナル因子に対する組織応答性の違いを生み出す機構を明らかにすることによる再生医学の基礎研究として重要であると考えられる。
著者
田中 史生 葛 継勇 李 鎔賢 王 海燕
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

9世紀に日唐を頻繁に往来し、日中の宗教・文化史に多大な影響を与えた日本僧慧萼について、日中に分散して伝わる関連史料を収集し、これに注釈を付した史料集を作成した。また、中国現地踏査と収集した資料に基づき、慧萼の入唐活動の全体像を復元する研究論文を作成した。さらにこうした成果を収録した報告書『入唐僧恵蕚の求法活動に関する基礎的研究』を刊行し、関係機関・研究者に配布し、広く共有できる東アジア史の貴重な研究素材を活用しやすい形で提供した。
著者
中井 昭夫 川谷 正男 吉澤 正尹
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害など発達障害にいわゆる「不器用さ」、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)の併存は多く、またDCDの頻度は世界的に約6-10%とされ、非常に多い状態であるが、我が国ではその研究は少ない。本研究では多数の発達障害症例での「不器用さ」に関する詳細な検討、2つの国際共同研究による国際的評価・スクリーニング尺度(DCDQとMOQ-T)の日本語版の作成と信頼性の検討、モーションキャプチャーや筋電図等バイオメカニクスによる行動計測方法の検討、事象関連電位、NIRS、PETなど脳機能イメージング研究を行い、我が国における「不器用さ」、DCDの発達小児科学的検討方法をほぼ確立することができた。
著者
石垣 琢麿 丹野 義彦 井上 果子 岡田 守弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、わが国ではこれまでほとんど調査されていなかった中高大学生の妄想的観念を比較検討し、青年期のメンタルヘルス向上の一助とすることを目的にしている。まず、Petersらが開発したPeters, et. al. Delusion Inventory(PDI)の日本語版(山崎ら,2004)を、中学校教師の協力を得て日本の中学生に適用できるよう改変し、中学生用PDIを作成した。この尺度を用いた調査結果から、中学生にも妄想的観念と考えられる思考は存在し、とくに中学2年生からそれが増加する傾向がみられた。高校生と大学生には成人版PDIを用いた調査を実施したが、PDI得点分布には大きな違いはみられなかった。なお、中学生と高校生では、女子生徒のほうがPDI得点は高かった。原質問紙では、妄想的観念の有無だけでなく、その思考の苦痛度・心的占有度・確信度の各側面を調査することが可能である。妄想的観念に関する苦痛度・心的占有度は大学生のほうが高いが、体験頻度は中学生のほうが高いことが示唆された。加えて、中学生・大学生ともに、妄想的観念と対人不信感および敵意が強く関連することがわかった。これは、成人で確認された結果とほぼ同じであり、青年期前期から成人と同質の妄想的観念が出現しうることが示唆された。また、妄想的観念をもつ成人には、「性急な結論バイアス(Jump to Conclusion:JTC)」とよばれる認知的特徴があることが知られている。本研究では、ベイズ理論に基づいた心理学実験を、大学生を対象にして実施した。その結果、妄想的観念を多く体験する大学生が確率的判断を行う場合には、JTCに関連する「情報収集量が少ない」というバイアスが存在することが示唆された。
著者
立柳 聡 松本 誠一 土屋 久 對馬 秀子 松山 義夫 岡本 裕樹 大矢 枝里子 小田 和也
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

島嶼や山間の過疎地に所在する高齢化コミュニティに暮らす人々は、健康を維持、回復する上で、一定の不安や不便を認識しつつ、今なお住み慣れた土地と民俗に象徴される在地の文化に対する愛着、そして、長らく培われてきた人間関係を大切に生きようとする心意が強く、特に保健・医療・福祉の施策を有効に展開するには、在地の文化や人間関係の仕組みとの整合性を積極的に考慮して構想することが重要とみられることが判明した。
著者
八若 保孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

根管治療におけるリーミング・ファイリングは根管内壁にスメア層を形成する。本研究は、このスメア層を除去する根管洗浄方法の確立を目的とした。その結果、永久歯ではEDTAあるいはEDTAとNaOClを併用して超音波洗浄を行う方法が、スミヤー層を効果的に除去し、乳歯ではNaOClの超音波洗浄を行う方法がスミヤー層を除去することが示された。超音波の根管洗浄への使用は、水酸化物イオンの拡散に有効であることが示唆された。
著者
荒井 経
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本画を規定する材料となった近代の岩絵具と和紙の起源と普及を多角的な手法で調査し、岩絵具については明治30年代から40年代、和紙については大正後期から昭和初期に主な開発と普及があったことを明らかにした。また、1980年代以降の留学生によって中国に伝播した日本画技法を調査し、伝播の経緯と普及状況を把握した。
著者
吹原 豊 助川 泰彦
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではまず、インドネシア人コミュニティ形成の経緯について明らかにした。続いて、そのコミュニティの成員中100人を対象とした日本語のOPI(Oral Proficiency Interview)を行った結果、中級以上の話者が5人(5%)にとどまっていることが分かった。さらに、そうした現況の背景を探るために個人の生活史を聞き取り、日本語習得と関連付けて分析したところ、習得を促進する要因が見えてきた。比較対照のために行った韓国における調査においても似通った要因が見られた。
著者
藤井 勝紀
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

女子スポーツ選手の初経遅延におけるメカニズムについての仮説は一様構築されている。つまり、トレーニングにより体脂肪量に対する除脂肪量の割合を上げることにより、性腺刺激ホルモンや卵巣ホルモンの血中循環レベルを変化させることが初経遅延のメカニズムと仮説されるのである。しかしながら、この証明はまだ成されていない。そこで、女子個人の身体的成熟度の指標年齢と初潮年齢の差を求め、その差を非運動選手群(対照群)と比較することにより初経遅延の立証を試みるものである。本研究は、基本的には以上述べた女子スポーツ選手の初経遅延の立証を、ウェーブレット補間法を適用することにより客観的に導こうとしたものであるが、個人差の要因により初経遅延の構図は大きく異なることが予想される。そのために個人差を考慮に入れた初経遅延の評価基準を構築し、個々人の初経遅延を評価することにより女子スポーツ選手の初経遅延を検証しようとするものである。そして、女子スポーツ選手における月経不順、無月経等との関わりに対して、学校保健上の問題へ提言する意味を持つ。以下に得られた知見を示す。先ず、運動選手群の初経年齢は12.75歳(SD=1.23)、対照群の初経年齢は12.11歳(SD=1.09)で両群においては有意差(P<0.05)が認められた。つまり、運動選手群の方が初経年齢は遅いことが示された。次に、身長のMPV年齢を両群で見ると、運動選手群は11.13歳(SD=1.04)、対照群は11.0歳(SD=0.96)で有意差は認められなかった。そして、このMPV年齢と初経年齢の差を両群で比較したところ、運動選手群で1.62歳(SD=1.25)、対照群で1.08歳(SD=0.74)となり明らかに有意(P<0.05)が認められ、運動選手の初経遅延が示唆された。さらに身長のMPV年齢に対する初経年齢の回帰評価をスポーツ種目別選手に適用したところ、50%以上の正の得点を示した種目はソフトテニス、ホッケー、陸上競技、バレーボールでありこれらの種目は特に強い初経遅延を生起していると推察された。これら種目の選手の中には月経不順、無月経の者が含まれていることが推測される。
著者
堀内 正昭
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

筆者は本研究課題に対して、法務省旧本館を取り上げ、とくに構法に関する研究を行った。まず、法務省旧本館(1888〜1895)に採用された碇聯鉄構法は、わが国において明治10年代にフランス人技師レスカスによって導入された。このレスカスの業績は地震国の耐震構法としてドイツでも知られ、ドイツ人建築家エンデ&ベックマンは、碇聯鉄構法を煉瓦造を前提にした場合に、セメント・モルタルとの併用で最強の耐震性を発揮する構法として旧本館に採用したのだった。従来、碇聯鉄構法は帯鉄を煉瓦壁の中に挿入して用いたと考えられていたが、旧本館では煉瓦壁中のみならず、火打ち梁のように建物のコーナーを固めていたことがわかった。なお、旧本館は現存最古の採用例となる。また、旧本館の廊下には防火床構法であるヴォールト煉瓦床が採用されたほか、3階床には煉瓦で被覆した鉄梁、さらに鉄筋コンクリートで補強した梁が用いられた。このように、旧本館は、1890年代以降に普及したとされる耐震ならびに防火床構法をすべて備えた先駆的な建物であった。次に、旧本館の床組は、建築仕様書によると、振れ止めで補強され、響き止めのために石炭殻が敷かれていたという。この種の床組は当時ドイツ式と呼ばれた。19世紀末のベルリンでは、根太に長さ6m以上の梁を用いた場合、90cmの間隔で根太を入れ、振れ止めで補強された。旧本館の根太の長さは762cmで、約92cmの間隔で配置されていたことから、床組の構法をドイツ式としてよい。さらに、旧本館の小屋組は、束を左右から方杖で支えたり、数多くの斜柱で支えている点でドイツに類例のないものであり、そこで用いられた部材はドイツのものよりも大きかった。そうなった理由は、日本では小屋裏を積極的に使用する必要が無かったことと、日本の耐震技術の発達を促したとされる濃尾地震(1891)を工事中に経験したことで、小屋組の耐震設計が強化されたからだと考えられる。
著者
越田 久文 酒井 亨 吉田 一誠
出版者
金沢学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

「ニコニコデータセット」のコメント解析から得られるアニメ作品に対する評価と、その作品舞台地を訪問する「聖地巡礼」を核とした観光客入り数との関係を調査した結果、作品評価と観光客入り数の間には明らかな正の相関関係にあるとは言い難い結果となった。ニコニコ動画では独特のネットスラングや、アニメ視聴者同士のみが共有できる意思疎通など、ニコニコ文化圏ともいえる言語空間が存在し、コメントから作品に対する評価・好感度等を推し量ることが困難であった。一方、アニメ作品に依存した観光振興を目論んだ自治体では、アニメファンからの共感を得られず、観光振興自体失敗に陥るケースが見られた。
著者
池田 譲
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

巨大脳をもち高次脳機能を示すイカ類について、同種集団の社会構造を複雑ネットワーク分析により読み解く試みを行った。その結果、アオリイカでは群れ内にネットワークが作られていること、その形成に関わる脳の発達には、同種個体との共存という社会環境が関係すること。トラフコウイカ集団でもネットワークが形成されるが、その構成はアオリイカと異なることから、社会構造に種間変異が認められることが明らかとなった。
著者
土田 修一
出版者
日本獣医畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

被毛や虹彩の退色を伴う症候性難聴がいくつかの犬種で報告されている。当施設で維持されている症候性難聴症例について、人での類似疾患であるワーデンブルグ症候群2型の原因遺伝子であるメラニン合成経路に働く遺伝群(MITF,PAX3,SOX10)に着目し、それらの遺伝子の発現ならびにタンパクコード領域の塩基配列について検討した。犬のMITF遺伝子では2つのアイソフォームが報告されているが、今回健常犬で従来報告されているMITF-MおよびMITF-Hの2つのアイソフォームに加え、新たに人のMITF-Aに相当するアイソフォームが検出された。MITF-HおよびMITF-A沼は多くの臓器に広く発現が認められたが、MITF-M腎臓、大脳、小脳、心臓、上部消化管などで顕著な発現が認められ、臓器特異性が観察された。症例犬のMITFの3つのアイソフォームの発現と塩基配列を解析したが健常犬との間に差異は検出されなかった。次いでPAX3遺伝子の構造解析を試みた。健常犬のPAX3遺伝子構造を確認後、各エクソン領域を増幅するためのプライマーを作成し、PCR増幅後、塩基配列を決定した。しかし、症例犬のPAX3遺伝子にも疾患に関連する変異を見出すことはできなかった。さらに健常犬のSOX10 cDNAをクロニングして塩基配列を決定した後、ゲノム構造を解析してタンパクコード領域のPCR増幅を可能とした。症例犬のSOX10遺伝子のタンパクコード領域の塩基配列は健常犬と一致し、変異は検出されなかった。本研究で対象とした先天性難聴の症例では解析した3つの遺伝子に変異は検出されなかったが、本研究で人のワーデンブルグ症候群に関連する遺伝子の犬における構造解析と解析方法が確立されたことより、今後他の犬種の先天性難聴症例についても解析を進め、関連遺伝子の同定を試みたい。
著者
園田 祥三 伊佐敷 靖 園田 祥三
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

シトクロムP4501B1遺伝子およびその他の眼疾患関連遺伝子について、新しい知見を得ることができた.1.シトクロムP4501B1(CYP1B1)は先天緑内障の候補遺伝子のひとつであるが、成人発症緑内障の症例についてCYP1B1遺伝子多型を検索した.緑内障83例および正常対照90例を対象とした.CYP1B1遺伝子翻訳領域のアミノ酸置換を伴う多型(R48G, A119S, A330V, S331R)を検索した.それぞれの遺伝子型を、緑内障、正常対照の順に、置換ホモ/ヘテロ/正常ホモの例数で示すと、R48G:7/11/61、2/12/62;A119S:10/43/27、13/35/31;A330V:1/3/72、0/7/83;S331R:0/5/76、0/5/55であった.遺伝子型頻度およびアリル頻度の群間検定では、統計的な有意差はなかった.検討した限り、CYP1B1遺伝子は成人発症緑内障の罹病感受性に関与しない.2.先天網膜分離でのRS1遺伝子の新規ミスセンス変異およびNorrie病のNDP遺伝子の新規ノンセンス変異を検出した.3.レーベル病の人類遺伝学的な背景を検討するために、D-loop領域の塩基配列を決定した.対象は独立の家系(九州26、本州8、沖縄2)のレーベル病発病者で、mtDNA G11778A点変異陽性の36例である.D-loop領域(np16002-np16490)の塩基配列データを系統樹作成ソフトで処理して、類似の塩基配列を持つアラインメント群(以下、群)に分類した.37種類(既知34、新規3)の遺伝子多型(一塩基置換)がみられ、枝分かれパターンから13群に分類された.過去の報告と比較すると、mtDNA G11778A点変異で特化された集団のD-loop所見の概要はアジア人全体の概要と大差ない.D-looPの高い可変性と比べて、mtDNA G11778A点変異は保存性が高く、変異新生のイベントが古いことが示唆された.
著者
角谷 直彦 豊倉 穣 古川 俊明 小山 裕司 石田 暉
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

健常者と嚥下障害者の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図による嚥下評価我々は嚥下障害を呈した脳血管障害者20名と健康成人20名を対象者としてインフォームドコンセントを施行した。脳血管障害者20名は、男性10名女性10名で平均年齢が69.5歳であった。Control群である健常者20名は、男性2名女性18名で平均年齢が26.6歳であった。検査は頚部を軽度屈曲位にした座位姿勢にて液体(1ml,3ml,5ml,7ml,10ml)と固形物(丸呑み嚥下,咀嚼後の嚥下)に分類し、嚥下した時の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図で嚥下評価を施行した。健常者の評価では舌骨上筋群の持続時間は食形態や量に関わらず平均400msec以内となり嚥下音の高振幅が出現する時間は平均240msec以内になった。嚥下音の最大振幅は液体と固形間で有意差を示し、特に液体の3ml,5ml,7mlが嚥下障害の診断に有用と考えられた。MEMは液体7ml以上また固形物の嚥下で平均1000Hz以上の高周波を認めた。以上から嚥下障害を診断する為のparameterを検討した。parameterは舌骨上筋群の1)持続時間、2)平均振幅、3)嚥下音の持続時間、4)舌骨上筋群の大振幅を呈した筋活動の開始から嚥下音の第II成分が出現するまでの時間、5)嚥下音の周波数特性をControl群(健常者)と嚥下障害者で算出した。1)舌骨上筋群の平均持続時間(msec)はControl群で442(3ml),605(5ml),430(7ml)を示し嚥下障害者は986(3ml),1100(5ml),823(7ml)と有意な遅延を示した。2)平均振幅はControl群と嚥下障害者の間で有意差がなかった。3)嚥下音の持続時間はControl群で平均500msec以内で嚥下障害者との間で有意差を認めた。4)筋電図と嚥下第II成分までの時間はControl群で平均240msec以内、嚥下障害者は液体3ml,5mlの間で有意差を認めた。嚥下音の周波数特性では3ml,7mlで有意差を生じた。この検査は簡便であり、嚥下障害を診断するのに非常に有効であると考えられた。
著者
鈴木 博 西尾 治
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

二枚貝を原因とする非細菌性急性胃腸炎が近年多発している。ウイルスが原因と考えられたが、ウイルスの分離が行えないことからその実態の把握が困難であった。しかし、PCR法の確立(RT-PCR)により、その検索が可能となった。我々は、汚染の状況を把握するためにカキ(N県)及びホタテ貝について生食を行わない夏期を含めた長期(毎月1回)のわたり観察した。さらに冬期は市販のカキについても検索を行った。対象としたウイルスはNorwalk-like-virus(NL Vs)、アストロウイルス、A型肝炎ウイルスである。その結果、N県産のカキからは我々が検索を開始した1995年9月より採取した46検体中16検体(34.8%)からNL VsRNAが検出された。遺伝子型はG1型が6/16、G2型が5/16、未同定5/16であった。A県産のホタテ貝は、1995年10月より採取を開始したが2000年2月と3月に初めてNL VsRNAが検出された(53検体中2検体、3.8%)。遺伝子型はG2型であった。カキ、ホタテ貝共アストロウイルス、A型肝炎ウイルスは検出されなかった。市販のカキは、46検体について検査を行ったところ9検体(19.6%)からNL VsRNAが検出された。遺伝子型はG2型が7、未同定2でありG1型は検出されなかった。アストロウイルスが1検体から検出された。A型肝炎ウイルスは、検出されなかった。食中毒例については、2000年1月にN県のホテルに宿泊したスキーツアー客の食中毒例があった。各県の衛生研究所から患者便より検出されたNL VsのPCR産物の分与を受け、遺伝子配列を検索したところ、遺伝子配列は多少の差は見られたがG2型があり、共通の食品はホテルで供されたカキが有力視された。