著者
望月 昭彦 久保田 章 磐崎 弘貞
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2003年度に公立中学校において、2年生の3クラス合計134名を対象として、9月中旬から11週間、実験前に熟達度テスト、プリ英作文、作文に関する意識調査を実施した。教育上の配慮から、統制群を設けず、一貫性のある文章の書き方について全員の生徒に指導した。その後、指導法1「文法的誤りを気にせず、一貫性、構成に注意して書かせる」、指導法2「思いつくままに制限時間内に多く書くことに注意して書かせる」、(1、2は各15分間)、指導法3「英語の文章を黙読させ、その内容をまとめて口頭でペア活動で発表した後に、個別に書かせる」(25分間)の3種類の指導法に分類し、同中学校の3人の教師が各々のクラスの指導を6回実施した。生徒の作文答案を研究者が採点し翌週に宅急便で返送した。実験後に、実験前と同じ調査を実施した。2004年度は、国立の高校2年生4クラスを対象として、4月上旬から12週間、統制群を1クラス設けたことを除いて前年度の中学校と全く同様な手続きで実験を行った。分析尺度として、内容の一貫性のために、望月・久保田・磐崎(2004(青木(1991)の改良版)の分析法、総口評価法の7つの指標、文法的正確さのために、EFT等12個の指標、作文の量のために、語数等9個の指標、文法的複雑さのために、T-unitの数等4個の指標、語彙の複雑さのために、洗練語割合等の7個の指標を使用した。中学校の分析結果は以下の通り。仮説1「内容の一貫性に注意して書かせた指導法1は、内容の一貫性の点で、指導法2,指導法3より、優れている」について一部支持された。仮説2「内容の一貫性に注意して書かせた指導法1は、文法上の正確さの点で、指導法2、指導法3より、優れている」は支持された。仮説3「ただ多く書かせた指導法2は、指導法1、指導法3より、作文の量が多い」は支持されなかった。仮説4「指導法1,2,3は、それぞれ、作文指導を受けるにつれて、それぞれの被験者は、文法構造上、複雑な文を作るようになる」は支持された。仮説5「指導法1,2,3による作文指導を受けるにつれて、それぞれの被験者は、より豊富な語彙を使うようになる」は、一部支持された。研究質問1「内容の一貫性、文法的正確さ、作文の量、語彙の豊かさの各々の点で、指導法1、指導法2、指導法3のうち、どれがどれが最も優れているか」については、一貫性及び文法的正確さでは指導法1、作文の量は全ての指導法、語彙の豊かさでは指導法3が最善だった。研究質問2「作文の能力・技能と熟達度はどのような関係があるか」について総合的な指導法が熟達度と総合評価の相関が高い。高校については、仮説1,2は、支持された。仮説3は一部支持され、仮説4,5は、支持されなかった。研究質問1は、一貫性、文法的正確さ、作文の量は指導法1が最善,語彙の豊かさはどの指導法もあてはまらない。研究質問2は全体的に熟達度と一貫性、作文の量、文法的複雑さとは相関が低いか殆ど相関がなかった。
著者
阪本 真由美
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

開発途上国の震災障害者の生活再建に求められる支援制度について、過去に巨大災害に見舞われた開発途上国(インドネシア)の震災障害者の生活再建状況と支援制度を現地調査に基づき把握した。また、震災障害者に対する生活再建支援制度について開発途上国と先進国(日本・アメリカ)の事例との比較検討を行った。研究の結果、震災障害者の生活再建を実現するためには、一時金の提供という資金的救済措置だけでは十分ではなく、一人ひとりのニーズにあったきめ細やかな支援策が必要となること、そのためには震災障害者を巻き込んだネットワークの構築を官民連携で実施することが有効であることが明らかになった。
著者
塩谷 浩之 郷原 一寿 渡邉 真也 渡邉 真也
出版者
室蘭工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では,情報量を基盤とした位相回復法の理論構築・解析を行い,さらに,非周期的な物質構造の解析に貢献するために,回折パターンからの高効率な物質構造復元手法の確立を目的とし,情報数理による位相回復法を対象とした基礎理論と応用研究を行うことである.位相問題において,不完全な実・逆空間の拘束条件が与えられた場合には,実像となる解の不定性や収束に至らない不安定性がある.このような不定な条件のもとでは,弱い意味での位相回復解を求めていく必要がある.そこで,実空間における弱解群の分布を求めることで,その解集合の性質を明らかにした.逆空間における不完全さとしての条件として,量子ノイズを含む回折パターンに着目した.実空間上のノルム体積有限なすべての関数で構成される関数空間を設定し,実像間の情報量解析において用いる分布間情報量を導入することで,弱位相回復解が球殻に分布することを見出した.そのアンサンブル平均が適切な解を与えており,ノイズ回折パターンからの単一な位相回復では,その平均解が得られないことを明らかにした.画像復元,特に位相問題がからむ回折イメージングにおいて,解となる像の分布に着目したのは我々が初めてであり,この研究成果は米国の光学専門の論文誌(OSA)に採録された.
著者
安田 正美 赤松 大輔
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、イッテルビウム(Yb)光格子時計における、光格子レーザー由来の不確かさ低減のために、Yb原子の青方離調魔法波長を探索することを目的として、以下の成果を得た。①Yb光格子時計のさらなる高度化を達成し、絶対周波数測定不確かさを1桁以上低減した。これによりYb光格子時計が秒の2次表現に採択された。②Yb/Sr光格子時計周波数比の直接測定に成功した。マイクロ波周波数基準による光シフト周波数測定と比べて、1桁以上測定時間を短縮できる。③光シフト誘起用青色レーザー光源の開発に成功した。赤外線半導体レーザーを光増幅し、第2次高調波発生により、波長399nmで100mWの出力を達成した。
著者
宮川 敏治
出版者
大阪経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、提携外部性が存在する状況で、効率的な交渉結果を実現するための条件や提携形成の戦略的側面を交渉ゲーム理論の新しい分析手法によって解明することである。さらに、不完備情報下の交渉問題のための非協力・協力ゲームの解概念の提示と制度設計の可能性を検討する。以下の研究成果を得た。(1)戦略的提携形成と非協力交渉ゲームモデルの構築と分析:分割関数形ゲームの下での非協力交渉ゲームモデルを構築し、ナッシュ均衡解、ナッシュ交渉解、およびコアの関係を分析。さらに、応用問題として自由貿易協定を考察。(2)不完備情報の交渉問題でのナッシュ交渉解の提示。(3)非対称情報下での制度設計、提携形成。
著者
星 岳彦
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

施設園芸生産の情報化・高度化を図る目的で、普及が進む低コストで自律分散型の環境制御システムであるユビキタス環境制御システムを導入した園芸施設で活用できる生産支援ソフトウェア開発の研究を実施した。開発と普及を促進するためソフトウェアが扱う情報を規格化した。環境データの組み合わせによる病害好発条件や生育好適条件を検出して、その期間をマーキングし、生産者に注意を促すソフトウェアなどを開発した。
著者
川越 保徳 森村 茂
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

温度や塩分濃度の変化に迅速柔軟に対応できる“淡水-海水コラボレートAnammox 培養系”を構築し,窒素除去特性と細菌群集構造を明らかにした。淡水性と海洋性Anammox細菌の両培養物を反応槽に接種し,淡水,海水,および中間的な培養条件にて連続培養を実施し,全条件下で約5日間以内にAnammox反応特有のNH4-NとNO2-Nの同時除去を確認し,その後0.1g/L/dの窒素容積負荷で安定した窒素除去能を認めた。また,淡水と海水の中間的条件での連絡培養物では,淡水性Anammox細菌と海洋性Anammox細菌の存在比が1:30となり,培養条件の違いによって細菌叢が変化することが明らかになった。
著者
新矢 博美 芳田 哲也 寄本 明 中井 誠一
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

年齢階級を考慮した1日の水分摂取基準を算定することを目的として、乳児・幼児や児童および高齢者を対象に体重計測により1日の水分摂取量や発汗と不感蒸泄による水分損失量(ΣS)を夏季および冬季に測定して、若年成人の値と比較した。1日のΣSは環境温度や活動量の上昇に伴い増加したが、高齢者は成人と同様で、児童、乳児、幼児は若年成人に比べて、それぞれ1. 1倍、1. 9倍、2. 0倍であった。これらの倍率を用いることにより、年齢階級を考慮した水分摂取基準を算定することが可能と考えられた。
著者
三宅 禎子
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

各種団体との面接調査で、バイリンガル教育、保健衛生方面での青少年教育プログラムなどに女性たちコミュニティ活動リーダーらが活躍している実態が判明した。行政側は、地元で増加するヒスパニック人口に対応する必要性に迫られ、コミュニティ活動の経験豊かなプエルトリコ人を採用する経緯などが明らかになった。特に、プエルトリコがアメリカ領土として教育環境整備が歴史的に進行し、プエルトリコ人女性には教育水準が高い人が多く、それらの女性が教育や政治的経歴を買われて行政アドバイザーなどに任用されるケースが目立つ。
著者
二間瀬 敏史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現在の宇宙は従来の重力理論の枠内では説明ができない加速度膨張をしていることが知られている。その原因として反発力を及ぼす暗黒エネルギーやアインシュタイン重力理論の変更が提案されている。しかしそれらの理論的な研究は進んでおらず、観測的に宇宙膨張の原因を探ることが急務になっている。本研究では、2011年度末に完成予定のすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラで行われる大規模深宇宙サーベイを用いた弱い重力レンズ効果によって、加速度膨張の原因を調べるために必要な新たな弱い重力レンズ解析法の開発を行った。
著者
桐原 聡秀
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

アルミニウム合金やマグネシウム合金は、現代工業において幅広く用いられる軽量金属材料であるが、地球環境保全や持続的エネルギー確保に対する社会的な動向に呼応して、より高い特性を発揮することが求められている。また、炭酸ガスの排出削減やエネルギーの消費低減を実現するため、各種車両の軽量化を目指した実践応用が進められている。本研究では、アルミニウムやマグネシウムなどの軽量金属材料に対して、インクジェットプリント法を駆使した、マイクロパターニング技術を基盤として、合金相の表面構造を精密に形成し、人工的に金属組織の幾何学分布を制御することで、優れた機能特性を自在に発現させ得る新規プロセスの構築をめざした。
著者
加地 太一
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

メタヒューリスティクスが経験的に良い解を導き出してくれていることは多くの研究でも示されている.しかし,なぜ,メタヒューリスティクスが良い解を導き出してくれるのかは一つの謎であるともいえる.そこで本研究では,時系列解析の手法を用いて,メタヒューリスティクスに対する問題の解構造を分析しその特徴的な性質を取り出す.それによりメタヒューリスティクスの各手法の性能を理論的に推定しその性能を明らかにするとともに,その能力の謎を解き明かすことを目指す.また,そこから得られた理論的知見をもとにした新アルゴリズムの設計を展開する.
著者
柴田 真志
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

夜間就床後の睡眠第一相における直腸温は一過性に低下し、その間の中心温度指標と末梢温度指標の差分を積分して末梢放熱能とした。末梢放熱能と有酸素持久性能力スコアとの間には有意な正の関連が認められた。身体活動不足による有酸素持久性能力の低下が就床後の低い末梢熱放散機能と関連すると推察された。また、有酸素トレーニング(50%強度・30分間・週3回・4週間)によって、末梢熱放散機能はわずかに改善されたが統計学的有意には至らなかった。
著者
城本 るみ
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高齢者行政担当者の聴き取りや各種高齢者施設の訪問調査及び現地での網羅的な資料収集に努め、台湾の高齢者福祉政策が政治的要因の影響を大きく受け、中国(大陸)との共通点が多いことを明らかにした。また高齢者施設の運営状況や介護労働に従事する東南アジア籍ヘルパーや大陸籍配偶者の実態から、少子化が急激に進む台湾における介護事業の特徴ならびに高齢者ケアに関する台湾独自の問題点や今後の課題を明らかにした。
著者
八幡 雅彦
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

当科研費受給者の当初の研究課題は、「北アイルランドの小説家たちがナショナリズムとユニオニズムの対立をどのように描き、どのような解決策を呈示しているか」という、北アイルランド内部に限った局所的なことであった。しかし研究を通して明らかになったのは、北アイルランドの小説家たちはこの対立問題の描写を通して、そしてまたそれ以外の事象の描写を通して、世界に通じる普遍的な価値を有する作品を書き続けているということであった。ジョージ・A・バーミンガムがSpanish Gold(1908)、General John Regan(1913)、Good Intention(1945)等のユーモア小説を通して訴えているのは「何事も深刻に考えすぎるべきではない。いかなることの中にも『笑い』の要素を見出すことが肝要だ」という、人間のあらゆる対立問題の解決に当てはまる哲学的真実である。そして、対立問題の解決のために八面六管の大活躍をする彼の小説の主人公たちは、「自己犠牲精神」というキリスト教倫理を備えており、アイルランド国教会牧師でもあったバーミンガムの倫理観を具現していると言えよう。今後は、The Wisdom of Desert(1904)、Isaiah(1937)等、バーミンガムの著したキリスト教に関するエッセイを精読することにより、彼のキリスト教倫理と小説の関係を追究する予定である。北アイルランドには、現代小説家たちのうちにも、バーナード・マクラヴァティーやグレン・パタソンら優れた作家がいる。パタソンはNumber5(2003)、That Which Was(2004)等を通して、ベルファーストの様々な姿を呈示し、ナショナリズムとユニオニズム以外の価値観を模索している。その意味ではバーミンガムに通じるものがあり、「パタソンとバーミンガムの作品を読み比べてみる価値がある」というマイケル・パーカーの指摘の正しさを裏付けている。次作The Third Party(2007)では、日本を旅する北アイルランド人を描き、パタソンの小説はさらに広がりを見せる。2003年には今までの研究を『北アイルランド小説の可能性-融和と普遍性の模索-』(渓水社)と題した一冊の研究書にまとめた。今後は、バーミンガムの評伝(英文)の出版を第一目標に置いて研究を続ける予定である。またパタソンのいずれかの作品を翻訳出版したい。さらには、ジョイス・ケアリーやC・S・ルイスのような、北アイルランド出身で、イギリスで名を成した作家たちも取り上げ、北アイルランド小説の奥の深さを明らかにしたい。
著者
大野木 啓人 川村 悦子 八幡 はるみ 松井 利夫 上村 博 松原 哲哉
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は研究会合での研究発表と討論、それに実験的な制作活動の双方により進行した。研究会合では研究組織のメンバーや外部講師を招き、月と生活との関わりをさまざまな角度から考察し、それを特定の場における芸術的な環境づくりという実践に反映させた。太陰暦は、さまざまな身体感覚や自然の変化に照応している。そこに顕著な、自然の兆しによって四季の移ろいを把握するという時間の分節法には、環境に対する鋭敏な知覚が働いており、それがさまざまな生活上の意匠にも現れている。各種の年中行事において日々の生活空間を形作るしつらいや衣食住のありかたは、今日の表象芸術においても参考にすべきものを多くもっている。しかしそれは決して現代デザインに転用できる個別のモチーフとしてではない。むしろ、芸術的な場をどのような時間的リズムにおいて創出するか、という点に関する示唆である。そのため、研究会では、観月会、ひなまつりなどの機会に芸術的な場を作る実験を数次試みた。京都市や京丹後市で、地域の風土や場所の特性を生かした展示や茶会などの行事を通じ、建築物や周囲の土地と一体となった芸術的な環境を作ることを目標とした。こうした諸々の試みは、日常生活と芸術的世界の双方ともが貧困な情況に陥っていることへの反省でもある。太陽暦ないしは世界時間に代表される時間システムのもとでは、平板で均質な日常のイメージが優勢であるために、特殊な時間空間を設定して刺激を与える必要が生じた。その結果、日常/非日常、ケ/ハレ、生活/芸術の対照が過剰になってしまった。しかしながら、それは芸術領域の囲い込みと無限の自己批判によるジャーゴン化である。むしろ、太陰暦のもとでの世界、すなわち地域環境やそこに流れる時間のリズムを尊重することで、芸術活動の有していた雑多な豊かさを回復することができるのではないだろうか。
著者
梅比良 正弘 沢田 浩和
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

3つの環境(リビングルーム、会議室、オフィス)で60GHz帯伝搬実験を行い、統計的SISO(Single Input Single Output)ミリ波チャネルモデルを開発し、これをミリ波WLANの国際標準化を行うTG IEEE802.11adに提案して、標準評価モデルとして採択された。また、伝搬実験により水平・垂直偏波の直交偏波を用いるミリ波MIMO 通信の交差偏波干渉は十分に小さいことを明らかにした。この成果を元に、レイトレーシング法に基づくMIMO 伝送シミュレーションプログラムを開発し、直線偏波を用いた2X2直交偏波MIMO伝送方式を提案して特性評価を行った。その結果、半値幅が30度以下のアンテナを用いれば、等化なし、ZF(Zero Forcing)法の簡易な信号処理で良好な誤り率特性が得られること、円偏波を用いた2X2直交偏波 MIMO伝送では、直線偏波に比べて安定なMIMO伝送が可能であることを明らかにし、MIMO伝送による10Gbit/s次世代無線PANの実現性を示した。
著者
松本 肇
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、孟郊と賈島を例に、唐代の「悲愁の文学」の実態を明らかにした。研究成果は以下の通りである。1、孟郊の文学(1)孟郊は、賢者を処罰する詩を書いている。それは自己の正しさを証明する逆説的な方法であり、孟郊の自虐的な態度を表わしている。(2)孟郊は、困窮を詠じる詩を書いている。そこには、悲愁を楽しむ態度が見られる。悲愁を快楽にまで高めたのが、孟郊の功績である。(3)孟郊の文学は、悪意の文学という性質を持っている。孟郊は、幻想の中でも死を求めた。(4)孟郊は、詩作によって反世界を創造した。それは、天に対する反逆行為である。反逆者には代償が求められる。孟郊が詩という牢獄に自己を閉じこめたのは、自己を処罰したのである。2、賈島の文学(1)賈島の詩には、たとえくじけても望みを捨てない、不屈の精神が表われている。(2)賈島は、廃墟の美を詠じた詩を書いている。中唐期には、盛唐期には見られない新しい美意識が生まれた。廃墟の美を詠じるのも、そのような美意識の反映である。(3)賈島には、病気を詠じた詩がある。病気は、中唐期の知識人のシンボルである。このような文化現象の背景には、「休息」への願望があった。(4)賈島の詩には、微少な世界を詠じるものがある。それは、杜甫の影響を受けたのである。杜甫は、中唐文学の先駆者である。3、孟郊と賈島杜甫以後、詩を作ることに価値が認められるようになり、詩人として生きることが、知識人の目標となった。孟郊と賈島は、このような時代に生まれ、詩人としての人生を全うした。宋の蘇軾は、孟郊と賈島の文学を「郊寒島痩」と批評した。それは、彼らを非難したのではなく、彼らが世界を驚かす言葉の創造者であることを賛美したのである。
著者
鈴木 哲也 関田 俊明
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は,高齢無歯顎者における義歯装着状態の違いが摂食,嚥下機能に及ぼす影響を明らかにすることである.被験者には,無歯顎者,高齢有歯顎者,成人有歯顎者,偏食傾向の者の4群を選択し,5種類の半固形状食品および2mlの冷茶を摂食させた.無歯顎者には3種の義歯装着条件(上下顎義歯装着,下顎義歯撤去,上下顎義歯撤去)を設定し,顎二腹筋前腹筋電図,咬筋筋電図,下顎運動の測定を行った.統計処理には反復測定分散分析とscheffeの方法を用いた.以下に結果示す.1.高齢正常有歯顎者と若年正常有歯顎者では,高齢正常有歯顎者の方が咀嚼所要時間は長かった.2.高齢正常有歯顎者と全部床義歯装着者では,食品によっては,咀嚼所要時間には必ずしも有意差がみられなかった.3.全部床義歯装着者と若年正常有歯顎者では,上下顎義歯撤去時ではすべての食品で若年正常有歯顎者より咀嚼所要時間は長かった.しかし,上下顎義歯装着時では,はんぺん,試験用ゼリー(強度650),芋ようかんで有意差はみられなかった.4.義歯の装着状況で比較すると,上下顎義歯装着時と上下顎義歯撤去時では,上下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間が短かった.5.下顎義歯撤去時と上下顎義歯撤去時では,下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間が短かった.6.ゼリー,芋ようかん以外では,上下顎義歯装着時と下顎義歯撤去時の咀嚼所要時間に差はみられなかった.7.口腔内条件の違いよりも,食品の好き嫌いが咀嚼所要時間に最も大きく影響を与えた.以上の結果から,高齢者における全部床義歯の装着は,半固形状食品の円滑な咀嚼の遂行,維持に重要であることが示唆された.
著者
上村 靖司 関 嘉寛
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,越後雪かき道場の取組を通じて未経験外部支援者の関与による減災プロセスを分析し、雪に対する地域防災力向上手法を確立することである。2011年度からの3冬季に、新潟県,富山県、山形県の18か所で雪かき道場13回、命綱講習会22回を開催した。参加者と地域住民へのアンケートから「外部支援者との共同作業が安全に繋がる」、「外部者混在の講習会の方が心理的抵抗が少ない」など住民の防災意識啓発に有効であることが確認された。次に豪雪4県の雪害リスクの分析の結果、リスク水準が受容限度を超えていること、降雪量がリスクを支配し高齢化率や人口密度等の社会指標はほとんど寄与していないことを明らかにした。