著者
古山 和道 柴原 茂樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

赤芽球型アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)がタンパク質として合成された後、生体内でどのように調節を受けるのかを明らかにする事を目的に研究を行ない、ALAS2タンパク質は細胞内のヘムの量に応じてALAS2を2分子含むより大きな分子を形成することを見出した。さらに、ALAS2タンパク質はSUMO(Small Ubiquitin like MOdifier)化されうる事も明らかにした。これらは今まで報告されていないALAS2 の新規の翻訳後修飾であり、ALAS2の機能発現、さらには赤芽球の分化において果たす役割を今後明らかにしたい。
著者
三野 博司
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究はカミュ『幸福な死』と『最初の人間』を主たる研究対象とし,同時に作家の全作品の読み直しと分析を試みた。その成果は,3年にわたる連載論文「カミュ,異境の正午」,および2013 年11 月刊行予定の著書『カミュを読む』,さらに『幸福な死』『結婚』『異邦人』『夏』『ギロチンに関する考察』『最初の人間』に関するいくつかの日本語およびフランス語による論文として結実した。
著者
若菜 マヤ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

当該研究は英国の学術出版社より出版された単著、Performing the Everyday in Henry James's Late Novels(Ashgate 2009)の研究成果を発展・進化させたものである。現実の虚構性をリアルに描いた作家として、ジェイムズに加え、オースティン及びウォートンを取り上げ、日常は「表現された秩序」であると提唱した米国ミクロ社会学者E.ゴッフマンの理論を文学作品に重ねて詳細に分析を行った。そして、「親密性」をキー・ワードに次なる単著の出版に向けて大きな一歩を踏み出した。
著者
印南 敏秀
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

柳哲雄が10年ほど前から、「里山」という人と山の関わり方を参考に「里海」という新たな概念を提唱している。おもには沿岸海域を中心とする「里海」を「人手が加わることによって、生産性と生物多様性が高くなった海」と定義している(柳哲雄『瀬戸内海-里海学入門』瀬戸内海環境保全協会、2005など)。本研究では、瀬戸内海の沿岸海域でのフィールドワークから「里海」を「多様な文化が複合した文化多様性の海」と定義したい。(1)里海は漁民にとって海産資源が豊富で漁業や海苔養殖などが盛んだった。(2)里海は農民にとって海藻や海草が農地の肥料として大量に利用されていた。(3)里海は海辺の人にとっても海水浴や遊びの場として深く関わっていた。(4)里海は漁民文化と農民文化が交差して重なり、複合した文化多様性の海だった。高度成長期以降の開発などによって、漁業資源が減少し、生活文化との関わりも急速に失われつつある。里海は、人と沿岸海域のこれまでの長い歴史に学びながら、新たな関係を実現するための概念として重要である。
著者
葛谷 孝文 小林 孝彰 羽根田 正隆 岩崎 研太 田中 友加
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

臓器移植後に使用される各種免疫抑制剤の薬剤暴露時間によるリンパ球の増殖抑制効果について健常人の末梢血リンパ球を用いたin vitroの系で検討した。始めに、添加した免疫抑制剤の洗浄方法について検討を行い、分析機器(シクロスポリン:CLIA法、ミコフェノール酸HPLC)の検出限界以下まで洗浄できていることを確認後以下の実験を行った。CFSE染色した末梢血リンパ球に免疫抑制剤(シクロスポリン、ミコフェノール酸)添加後、anti-CD3/28 microbeadsで刺激し3日間培養した。培養期間中、刺激1日または2日後に薬剤洗浄を行った。3日間培養後各々の群におけるTリンパ球をCD3で染色し、細胞増殖抑制効果をフローサイトメトリーにより観察し、薬剤間における特徴を比較検討した。その結果シクロスポリンは3日の薬剤暴露に比し1日の暴露後の薬剤除去で同程度のリンパ球増殖抑制効果が観察された(3日の暴露で47±15%の抑制、1日の曝露で37±13%の抑制)。一方、ミコフェノール酸では1日の暴露後の洗浄ではリンパ球増殖は十分抑制されず、暴露時間によるリンパ球の増殖抑制効果に関してシクロスポリンとは異なる傾向を示した(3日の暴露で83±10%の抑制、2日の暴露で73±6%の抑制、1日の暴露で29±11%の抑制)。これらの結果からミコフェニール酸モフェチルは時間に依存した免疫抑制効果を発揮し、シクロスポリンに関しては一度リンパ球の増殖を抑制することにより継続的な効果が期待できることが示唆された。このことはT細胞受容体の刺激後速やかなカルシニューリンの活性を阻害することが重要であり、初期段階の阻害によりその後の細胞増殖はある程度の期間抑制できることが示唆された。
著者
越谷 重夫 野澤 宗平 北詰 正顕 西田 康二 松田 茂樹 大坪 紀之
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者 越谷重夫 は、今回の研究課題に関して、この3年間に以下のような結果を得た。まず第一に、ブルエ予想と大変関連が深い、グラウバーマン対応を通じての2つのブロックの間の関係を、共同研究者のM.ハリス(Harris)と共に研究を行い、対応している2つのブロックの間には森田同値という深い関係がありそして、この関係は明確に捕らえることのできるある両側加群によって誘導されることを証明した。この結果は雑誌Journal of Algebra (Elsevier)に掲載された。また、別の共同研究者の功刀直子と脇克志と共に、有限離散単純群のなかでもかなり大きな群であるヤンコー(Janko)の第4番目の群J4及びすべての素数に対して、ブルエ予想が成立することを証明した。これの結果は、雑誌Journal of Pure and Applied Algebra (Elsevier)に掲載された。また、研究代表者 越谷 は、まず海外では、ドイツ・オーバーヴォルファッハ数学研究所、フランス・リュミニー数学研究所、オックスフォード大学数学研究所、シカゴ大学、イギリス・アバディーン大学、イギリス・ロンドンシティー大学、ドイツ・イェーナ大学、ドイツ・ブラウンシュヴァイク工科大学、イギリス・リーズ大学、アイルランド・国立大学メイヌース(Maynooth)等で、そして国内においては、京都大学数理解析研究所での研究集会等で、上記の結果を講演発表した。また、研究分担者である功刀直子は、第9回代数群と量子群の表現論研究集会(2006年5月)、および日本数学会代数学分科会年会(2006年9月大阪市立)において、ブルエ予想に関しての特別講演を行った。
著者
安田 孝 吉田 司雄 馬場 伸彦
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1920年代後半から1930年代にかけて、大量印刷技術、カメラ、ラジオといった尖端的なテクノロジーの出現に伴い、「文化」が一部の人の占有ではなくなり、より広範な階層に享受された諸相を解明した。これまでの活字メディアである新聞や雑誌も新たな読者を獲得するためにこうしたテクノロジーを積極的に取り入れたことを明らかにした。写真を一つのケース・スタディとして取り上げ、メディア・ミックス状況について考察した。
著者
岩井 清治
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

初年度の研究計画(これまでの研究史・文献資料検索と分析、ドイツ現地調査)に基づき、広く研究史と現状に付いての多くの文献資料を収集し、それらの分析と整理を実施した。報告書に後述するように、テーマと関連する2学会、日本高等教育学会と日本商業教育学会での学会口頭報告、さらに学術論文2本を投稿した。それらは、特に職業教育という本研究テーマの基盤となるドイツの制度分析と特徴、特に実務教育重視の姿勢とその事例研究であり、初年度の研究にとって必要欠くべからざる課題であった。さらに、初年度に最初のドイツでの現地調査を実施、環境保全職種養成の実態調査と環境マネジメント職種の養成について、各企業でのインタビュー調査を実施した。第2年度の平成15年度に於いては、研究計画(ドイツ現地調査によって収集した資料分析と整理、事例研究の文献との照合)に基づき、ドイツの法的な規制のもとにある「環境保全管理責任者」の存在の確認と当該職種の養成、さらに資格保持者の各企業における実態調査、聞き取り調査を実施した。この間、インタビュー調査によるものと聞き取り調査によるものとの資料収集によって、実際に実施されているドイツ企業での環境保全マネジメント担当者の存在と業務の分析を明らかにする事ができた。本研究テーマの核心部分である。この分析によって特に日本の実態との比較を通して、日本における職業教育野方法との対象性を明らかにする事ができたと確信している。これらの研究上の分析は、学術論文2本、口頭報告2本、にして報告した。最終年度平成16年度は、研究を締めくくる計画、成果のまとめと整理、今後の課題に力を注いだ。特に、年度末には、環境保全意識のつよいモンゴルとの交流を踏まえて、国際シンポジウムでの報告、またモンゴル環境大学(エコ・アジア大学)での講演を実施した。現在報告書を纏め、研究図書として出版の準備を進めている。
著者
脇田 滋 木下 秀雄
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、介護労働者の雇用をめぐる現状を把握し、それを歴史的な発展のなかで位置づけるとともに、ヨーロッパを中心とする先進諸国での立法政策との比較を通じて、日本における問題の解決に向けて、法理論的な課題を明らかにしようとするものである。この目的のもと、平成7年度から平成8年度にかけて2年間にわたって在宅福祉を支えるホームヘルパーを中心に、(1)在宅福祉サービスをめぐる動向、(2)派遣型介護労働者の雇用をめぐる労働条件の実情把握、(3)比較法の視点から派遣型介護労働者をめぐる立法政策の課題を中心に研究を進めた。実態調査としては、京阪神地区以外に、金沢、岡山、福岡、横浜、東京都等の地域福祉における介護従事者についての実態調査に重点をおき、家政婦紹介所関係者、職業安定業務従事者、ホームヘルプ労働者などから「聞き取り調査」を行った。その結果、ホームヘルパーの地位は、(a)常勤の公務員、(b)非常勤の公務員、(c)社会福祉協議会等民間団体による常勤職員、(d)同登録・非常勤職員、(e)有料職業紹介による家政婦に、複雑に分化していることが確認できた。全体として「ホームヘルパは在宅介護のかなめ」と指摘されてきているが、実態は必ずしもそうした指摘にふさわしいものとなっていない。在宅福祉の要であるホームヘルパーの雇用条件を抜本的に改善するためには、日本に特有な非正規雇用による現状を改める必要がある。とくに、雇用管理をめぐる責任とサービス提供の責任との交錯をめぐる検討は皆無に近いので、この点についての本格的な比較研究は今後の大きな課題として位置づけられる。
著者
伊東 健
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまでの培養細胞での研究より,Nrf2は血管内皮細胞では抗炎症作用を示す一方でマクロファージではスカベンジャーレセプターであるCD36を発現誘導し酸化LDLの貪食を促進すると考えられており,Nrf2の動脈硬化症での役割は不明であった.そこでNrf2の個体レベルにおける動脈硬化症への関与を調べるために,動脈硬化症モデルマウスであるApoE遺伝子欠損マウス(ApoEKO)とNrf2遺伝子欠損マウスをかけ合わせることによりApoE::Nrf2遺伝子二重欠損マウス(DKO)を作成した.このDKOマウスに高脂肪食を12週間投与し,大動脈における動脈硬化巣の形成を脂肪染色法により解析した.ApoEマウスでは動脈硬化巣が形成されるのに対して,DKOマウスでは動脈硬化巣が出来にくいことが明らかになった.このことは動脈硬化症おいては血管内皮細胞のNrf2よりもマクロファージのNrf2が動脈硬化巣の形成に大きく関与していると考えられる.また,マウスマクロファージ培養細胞にNrf2誘導剤であるDEMを処理したところ,酸化LDLを取り込んだマクロファージのアポトーシスを抑制するAIM(apoptosis inhibitor expressed by macrophage)が誘導されることが明らかになった.Nrf2はマクロファージにおいて酸化LDLに対するCD36を介した貪食能だけでなく細胞のアポトーシスを制御することにより動脈硬化巣形成へ関与していることが示唆された.個体レベルでマクロファージにおけるNrf2の役割を明かにするために,DKOマウスにApoEKOマウスの骨髄を移植し,動脈硬化巣形成への影響を現在解析中である.今回の個体レベルでの研究により動脈硬化巣形成に対してはマクロファージにおけるNrf2の役割が重要であることが示された.
著者
山本 晴彦 大槻 恭一 森永 邦久 宮本 久美
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、高糖系温州のマルチ栽培において、連年安定・高品質果実生産を実現するため、樹体・土壌水分環境と樹体光環境を迅速に計測するシステムを開発し、両環境の制御により水分ストレスを抑制して、好適な光環境下で高品質果実生産を実現できる技術を構築することを目的としている。土壌水分および樹体水分の計測法の開発においては、市販されているセンサを用いて炉乾燥法と併用して安価で迅速に計測できるセンサを選定した。半楕円モデルより算出した樹体体積を乗して得られた樹体総葉面積と実測による樹体総葉面積には非常に高い相関(r=0.897)が得られ、PCA(プラント・キャノピー・アナライザー)のほぼ10分の1の十数万円の魚眼レンズ付きデジタルカメラを用いて、樹体総葉面積を高精度かつ非接触・非破壊で推定可能な技術を開発した。また、最新の樹木蒸散流の計測手法であるグラニエ法を用いて、白色マルチ栽培下における土壌水分およびカンキツ樹体の蒸散流計測を試みた結果、蒸散流速度は日射量に追随して推移する傾向を示し、白色シートマルチの降雨遮断による土壌乾燥が、樹体に乾燥ストレスを与えて蒸散流速度を低下させることを明らかにした。さらに、近赤外分光解析装置を用いて、カンキツ個葉の水分状態を非破壊で推定する手法と推定精度について検討した。土壌の水分状態、日射・気温・湿度などの気象条件により変動する葉内水分ポテンシャルの範囲内において、全測定波長1,061個(1300〜2400nm)を使用した場合の8主成分のPLS回帰式は、重相関係数R=0.817、予想標準偏差SEP=0.300MPa、残差の平均値Bias=0.004MPaの高い予測精度が得られた。このことから、近赤外分光法を用いてカンキツ葉の葉内水分ポテンシャルを非破壊的かつ迅速で推定が可能であることが明らかになった。
著者
片山 裕之 赤坂 正秀 仲野 義文
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

鉱石に関する地学的なデータと、古文書等に記載された当時の選鉱や製錬の技術、経済性、社会的な背景などを結び付けて、17~19世紀を対象に、石見銀山での銀生産が環境に及ぼした悪影響が小さかったことの原因の解明を行った。用いられた鉱石が、18世紀はじめまで(福石鉱床)と、18世紀中盤以降(永久鉱床)で異なるが、結果として環境への悪影響が少なかった理由として共通的に言えることは、資源を大事に扱う手の込んだ作業と、江戸幕府統括下での鉱山間の技術交流であり、同時代の他の国と異なる日本のよさが発揮されたことにある。
著者
湯本 浩通 松尾 敬志 尾崎 和美 中西 正 中江 英明
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高周波・電磁波照射(500-1, 000 kHz, 5-10回, 1秒/回)は、口腔病原菌に対して照射回数依存的な殺菌効果を示した。また高周波・電磁波照射(500 kHz, 5回, 1秒/回)は、骨芽細胞の増殖を促進させ、さらに様々な成長因子の遺伝子発現や蛋白産生も増強させた。以上より、高周波・電磁波照射は、難治性根尖性歯周炎に対する非外科的歯内療法あるいは歯槽骨再生療法に応用できる可能性が示唆された。
著者
磯山 恭子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,市民のための法教育のあり方を考える基礎的研究である。本研究は,市民の紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の理論と実践を多面的に分析し,小・中学校の法教育のカリキュラムを構想するために必要な視点の提出を試みた。その際,アメリカの「法教育」(Law-Related Education)を先行モデルとして取り上げた。さらに,小・中学校における紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の授業を開発し,考察を行った。
著者
中村 哲也 丸山 敦史
出版者
共栄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では、わが国における生鮮果実・果実加工品の海外販路拡大に関して、計量的かつ実証的に分析した。分析の結果、下記の諸点が明らかにされた。第1章では、栃木産にっこりととちおとめが、香港やバンコクの如何なる購買層に評価されるのか、プロビットモデルを推計し、考察した。まず、香港・バンコクにおける国産ナシ品種と国産イチゴ品種の認知度は非常に低かった。今後、栃木産にっこりととちおとめ輸田する際は、輸田専用パッケージ等による品種のイメージアップを図る必要があるだろう。そして、とちおとめは香港では大きさが、バンコクでは香りが評価された。そして、にっこりは中高年層に、とちおとめは女性に評価が高かった。最後に、香港でのにっこりの価格は中国産ナシの4倍、バンコクでのとちおとめの価格はタイ産イチゴの7倍の価格差があった。そして、香港ではにっこりは8割弱が、とちおとめも7割弱が、調査当日の小売価格または若干高くても購入するという回答が得られた。ただし、バンコクでは8割弱が、調査当日の店頭小売価格ならば購入しないという結果となった。そして、プロビットモデルの推計結果から判断するならば、今後の香港でのとちおとめ輸田は、中高年層をターゲットとし、食味評価の高い女性を如何に購買層に取り入れるかが輸出拡大のカギとなるだろう。第2章では、伊勢丹スコッツ店における栃木産巨峰の輸出動向とその来客の消費意識について考察した。同店において、日本産ブドウの評価自体は非常に高いが、栃木産巨峰の低価格性が求められた。ただし、日本人客の多い同店のようなケースでは、高価な日本産巨峰は安価なオーストラリア産と棲み分けられていた。シンガポール人の味覚や安全性の拘りも日本人とは異なっているのだが、シンガポール人による日本産巨峰の評価は非常に高い。そのため、今後の輸出は、早急に価格改定するというよりは、脱粒(巨峰の粒が茎から落ちること)・茎枯れ(鮮度が落ちて茎が枯れる)しないといった鮮度の向上や種なし巨峰販売といった手法で、ターゲットとする販売層(消費者層)を明確に意識したマーケティング活動が不可欠となるだろう。そして、同店の栃木産巨峰の販売拡大のカギとなるのは、日本人以外の巨峰購入のリピーターを如何にして拡大するかにかかっている。同店は、日本人客も比較的に多いのであるが、実際に購入回数が多い客は日本人が圧倒的に多く、大
著者
濱 裕光 鳥生 隆
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、夜間における歩行者を巻き込んだ重大事故の防止と運転支援を最終目的として、可視光を用いたナイトビジョンの実用化に向けて必要な要素技術の開発を目指す。主な課題はロバストな歩行者検知であり、そのためには消失線の利用が非常に効果的なことが分かっている。従来は、消失線は画像処理により求めていたが、ここでは傾斜計から得られる傾斜角を用いて高速・高精度に求め、マルチスリット法により歩行者検知を行う手法を開発する。
著者
渡邉 裕美 村嶋 幸代 後藤 隆 田口 敦子 浅野 いずみ 辻 泰代
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究目的は24時間ケア医療と介護の包括支援体制の方向性を探ることである。実態を把握するために、大都市圏で夜間ケアに先駆的にとりくんでいるA自治体において全域調査を行なった。結果、要介護認定者数に対する夜間対応型訪問介護利用者の比率は圏域によって異なるものの、その割合は、0.25%~0.73%と1%にも満たなかった。定期訪問実人数は0人の事業所もあれば、28人に639回の事業所もあった。随時訪問利用回数は、4回の事業所もあれば、104回の事業所もあった。定期より随時が多く行われていた。コールを押しても訪問せずに電話対応のみという事業実態もあった。別のB自治体では、介護施設を拠点に24時間訪問介護と夜間対応型訪問介護が一体運営でとりくまれており事業所ヒアリングを行なった。24時間包括ケアの潜在利用者を病院から地域にもどすための退院支援のヒントをまとめた。2012年4月創設される「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を読み解き、研究成果をふまえた、医療と介護の包括支援体制をすすめるための方法論を示した。
著者
品田 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1990年代の総選挙における政治家の選挙公約をデータ化し、公約の構成比をもとに各政党の政策位置を検討した。(1)90年代の三回の総選挙における選挙公約データから、「全体-個別」および「左(再分配)-右(分配)」の二軸を抽出し、四つの領域を設定した。個別の利益を作り出す(例えば地元のために)ことを重視するもの、個別の問題に対し再配分を求めるもの、全体的な問題に異議を申し立てるもの、全体的な問題に関し新しい提案を行うものである。(2)90年においては、地域向けに訴えることの多い個別利益を担う自民党と現状を修正しようとする野党の対置が見られた。さらに野党内には、より一般的全国的な、あるいは体制に関わることを述べる勢力(社会党)と福祉など個別要求を好む勢力(公明党・共産党)が存在していた。(3)93年には改革が最大の話題となった。全国的かつ新しい政策領域が突如、出現し、すべての政党がそこへ向けて移動した。この動きをもっとも代表するのが新党勢力であった。比較的に動きの少なかったのが社会党で、もともと近い位置にいたにもかかわらず、位置変更ができなかった。自民党もかなり動いたが、なお個別利益から脱却できない。(4)96年は全般にわたる諸改革が主要な話題であった。もっとも明確に改革姿勢を示したのが民主党であり、逆に自民党は前回の位置に留まった。自民・民主両党の中間に新進党が位置した。これに対し社民・共産などの政党が再び、革新イデオロギー的な姿勢を明確に示した。96年は主要三党間の競争(改革か地元利益か)と、これらに対抗する中小革新政党群という二つの次元での競争が見られた。(5)連立内閣については、93年の非自民8党政権は政策面からの説明が、その成立についても崩壊についても可能であった。しかし、その後の自社さ政権については、96年の閣外協力によるものも含め、政策を主とした議論で説明するのは難しい。
著者
伊藤 一
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

バイヤーの歴史的形成過程を考察すると、機能分割の流れが読み取れる。つまり、権限分散化と専門職的性格である。元来、購買と販売は同一人物が行い売れ行き状況が購買に反映していた。しかし販売時点のセルフサービス化と総合小売商業として取り扱い品目の増大にともない、バイヤー業務が独立した形態を有することになる。販売面を担当するスーパーバイザーと購買面を担当するバイヤーに2分割されていく。その後,バイヤー業務が煩雑になり、本来持っていた商品開発の役割が失われるにしたがって、通常の再購買、修正購買と新規購買の業務を分割し前二者を担当する、ディストリビューターと後者を担当するバイヤーとの3分割制度へ移行している企業が見られる。また企業間での戦略の違いが組織形態を変化させている。現状小売業は以下の2つのタイプに別れると想定される。まずイトーヨーカ堂(IY型)がとる購買戦略は、新規商品開発・発掘戦略であり、これに対応して上記のような3分割の機能分割型的組織を採用している。これに対してダイエーなどほとんどの小売企業が採用している購買部門がほとんどの関連機能を包括するタイプで、総合的組織がある。購買に関する戦略、規模、権限、機能と組織に関して比較考察し、類型化を行った購買戦略では、イトーヨーカ堂は、消費者のニーズを重視し、高品質商品をバイイングする点に戦略を資源を傾注している。つまり新規商品を探索することにバイヤー業務を傾注させている。そこで商品開発型購買と表現できる。これに対してダイエー、その他の多くの大手小売企業は、価格を重視し、仕入先から安い価格条件で商品を仕入れる努力に資源を傾注している。したがって、取引条件重視型購買と表現できる。
著者
山田 政信 魯 ゼウォン 奥島 美夏
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、日本産ブラジル系プロテスタント教会を主要な事例として次のテーマについて明らかにした。①ブラジルに帰還した夫婦の再適応戦略としての司牧活動。②ブラジル帰国と再適応:カンポグランデ・ホーリネス教会のケース。③デカセギ現象と日系宗教:マリンガ市の事例。④神の王国ユニバーサル教会の日本における展開。⑤ブラジル系プロテスタント教会の脱領域的なコミュニティ。⑥ヨーロッパのブラジル系プロテスタント教会(予備調査)。⑦日本の韓国系・インドネシア系プロテスタント教会。主たる成果は、雑誌論文3件、国内学会発表2件、海外発表2件(うち招待講演1件)、図書1件である。