著者
篠原 和大
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本列島中部地域の農耕の形成について、特に本格的灌漑水田農耕成立以前の実態を明らかにする目的で調査・研究を行った。特に、静岡市手越向山遺跡の調査では、弥生時代中期前半に遡る可能性の高い畠状遺構を検出した。このような成果を含めた分析から、本格的農耕導入以前に、小規模集団がある程度選択的に各種の農耕形態を受容したことが考えられるようになった。また、静岡清水平野の事例の分析などから具体的にどのように農耕が形成されたかをモデル化することができた。
著者
三瓶 まり 村田 勝敬
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

3歳児および小学生における睡眠時間と生活習慣の関連とともに睡眠時間と自律神経機能との関連を調査した。その結果、3歳児においては夜間睡眠と昼寝を合計した総睡眠時間630分未満の児童において交感神経機能および副交感神経機能の低下が認められた。生活習慣と保護者の生活習慣との関係をみると、保護者の帰宅時間が遅い児童に睡眠時間の短縮が認められた。保護者の意識や生活習慣を見直すことが必要と考えられ、生徒児童の健康を考えるときには、睡眠時間の確保が重要であることが示唆された。
著者
石井 薫
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1 地方自治体におけるISO環境監査の導入について、全国各地で現地調査を行うとともに、学校版ISOなどの取組み状況にっいて現状を明らかにした。2 大学、高校、小中学校、幼稚園・保育園、それに専門学校や各種教育機関などにおけるISO14001の認証取得に関する調査を行い、「地方自治体と学校における環境監査の導入(1)(2)(3)」というテーマで論文をまとめた。3 学校に環境監査を導入する一つの事例として、環境ISOだけでなく学生が自己宣言・自己認証できるような環境監査の新しい方法として、家庭版&社会版スーパーISO,学生版スーパーISOなどを、大学の講義で試みた。学生の実践レポートの一部をまとめて、『「環境マネジメント入門」講義の現場報告』『「環境監査論」講義の現場報告』『「環境マネジメント」講義の現場報告』というタイトルの新書3冊を出版した。4 大学や高校におけるISO14001の認証取得の実状を取り入れて、改訂版『環境監査(第三版)』を発行するとともに、コミュニティ版スーパーISOの実践レポートを取り入れた『公共監査論』を発行した。5 環境分野や教育分野などとのネットワークを構築して、具体的提言をするために、地球マネジメント学会の全国大会で、2004年度「"私"の意識マネジメントースーパーISOの進化」、2005年度「癒しと教育と秘学の統合」、2006年度「生きる意味を問う」という統一テーマの下で、スーパーISOによる大学の教育実践について報告した。
著者
岡本 直久 堤 盛人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は休日交通を考慮した交通網計画の策定に資することを目標とし、休日交通の時空間分布特性について、経年的な道路センサス休日調査データの比較を行い、道路整備と分布の関係について定量的に考察した。また、将来的な自動車交通需要を検討するうえでは、不確実な要因の影響を無視することが出来ないため、燃料価格と交通量との ヨ係について、時系列データによるモデルを構築し、短期的・長期的な影響について整理した。
著者
杉森 裕樹 大神 英一 小田嶋 剛 丹波 泰子 高安 令子
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国のREALM、TOFHLA 等に加え、国立国語研究所「病院の言葉を分かりやすくする提案」を参照して、日本語版ヘルスリテラシー評価ツールを開発した。この評価ツールを用いた疫学調査では、医療用語認知度(ヘルスリテラシー)と、主観的健康度を含む健康関連QOL との間に有意な関連性が認められた。わが国でもヘルスリテラシー向上が、保健医療分野における国民のエンパワーメントに繋がる可能性が示唆された。
著者
舟橋 啓臣 今井 常夫 神部 福司 妹尾 久雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

クッシング症候群は、コルチゾルの過剰産生を認める症候群であり、高血圧、耐糖能異常、中心性肥満、満月様顔貌、免疫不全などの重篤な臨床症状を呈する。本邦におけるクッシング症候群の原因の多くは、コルチゾル産生副腎皮質腺腫(CPA=cortisol producing adenoma)であるがその発症機序は明らかにされていない。本研究では、CPA組織において特異的に発現増強あるいは減弱している遺伝子群をRDA(Representational Difference Analysis)を用いて同定し、その機能を明らかにすることによりCPAの発症機序を解明することを目的とした。CPAとそれに隣接する正常副腎から抽出したRNAを用いRDAを行い、CPAに特異的に発現しているcDNA群をクローニングした。その結果、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-A1)及びDiminuto遺伝子が同定された。これらのmRNAの発現は、CPAに強く認められ、隣接正常副腎では殆ど発現が認めらなかった。副腎由来の細胞株H295Rを用い、GST-A1が副腎細胞の増殖に重要であることをこの酵素の特異的な阻害剤であるエタクリン酸を用いて明らかにした。一方、Diminuto遺伝子は、コレステロール産生に関わる酵素をコードすることが報告され、我々は、この発現が副腎皮質刺激ホルモンにより増加することをラットを用いた研究より初めて明らかにした。この結果は、Diminuto遺伝子産物による副腎におけるコレステロール産生がコルチゾル産生に重要であること示唆した。
著者
田中 則雄
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

後期読本の成立期に制作された、実録を典拠とする上方出来の作品群に見られる方法が、その後の読本制作の基礎となっている。実録には、各々の話を連結していく独自の方法があるが、読本においては、特に長編構成を統括するための仕組みが考慮され、人物の内面と連動させて必然性を示しながら話を繋いでいくという様式が考案され継承されたことを解明した。
著者
鈴木 淳史 国場 敦夫 中西 知樹 アンドレアス クリュンパー フランク ゲーマン
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

有限温度における一次元量子系の相関関数に関する定量的評価のため、量子転送行列の方法と完全WKB法を組み合わせる事により、近似によらない新しい定量的方法を確立することができた。この具体的な応用としてスピン1/2の量子磁性鎖に適用することにより相関関数および量子的もつれの磁場、温度依存性等に関する多様な振る舞いを発見した。
著者
保井 亜弓 神谷 佳男
出版者
金沢美術工芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1645年に初めての本格的な凹版画の技法書を出版したアブラアム・ボスは、ジャック・カロの革新的な技法の後継者と看做されている。版画技法は刷られた作品から検討されるのが常であるが、本研究では、デジタル・マイクロスコープによる原版調査と技法書に書かれた防蝕被膜(グランド)の再現実験により、できる限りもの自体に即したアプローチを行い、版画技法の新たな側面に光を当てることを試みた。その結果、ボスおよびカロの制作の工程や技法をより明らかに示すことができた。
著者
三浦 哉
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では若年者の動脈機能と身体活動量との関係を明らかにするために,10歳代の男子高校生おおび大学生を対象に血管拡張反応検査,血圧,身体活動量計によるエネルギー消費量などを測定した.多変量解析の結果,血管内皮機能には身体活動量が有意な正の影響を,収縮期血圧,年齢がそれぞれ有意な負の影響を与えることが明らかになった.したがって,若年者における身体活動量の増加は優れた血管内皮機能の維持に貢献することが示された.
著者
加藤 曜子
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.目的児童虐待防止法が成立したのちも、児童虐待事件は多発している。本研究は、平成17年度に予備調査をえて、児童福祉施設退所のケース分析を通し、再発防止のための要因および、支援状況を明らかにする。2.方法安全な退所の要因や条件を理解するため、2001年作成の大阪リスクアセスメント指標をもとに、作成した17項目からなる安全指標をもちいて、平成18年5月から6月にかけて、全国児童相談所187箇所を対象に郵送調査を実施し回答をえた(回収率55.1%)。433件の回答を分析し、個人情報保護に配慮し、PC-SPSSにより統計分析を試みた。調査票は、施設退所、未退所用、施設退所後の再発入所について項目を設けた。3.結果と考察安全指標は退所の際、再発予防としてどのような要因を把握しておくと、退所できるのかを考える枠組みで、17項目から成る。今回退所ケースで17項目の占める割合が高かった項目の上位5位は、(1)親が子を想う(2)親が子への復帰努力をする(3)子どもが家庭復帰を望む(4)虐待が止む(5)援助機関体制があるであった。子どもの年齢により項目は異なった。退所再び施設に再入所した場合、退所して再入所しなかった違いは何かを比べると、(1)子が改善していないこと(2)子の現状を親が理解していないこと(3)保護者としての自覚に欠ける(4)家庭内の人間関係に問題があるが、再入所した場合に問題が残されていたことがわかった。退所時にワーカーに認知された項目を比較することで、さらに、再発予防のためには上記4項目が重要であることが示された。4.結論・課題在宅における再発防止のための施設退所からみた要因がわかった。今後在宅支援から再発し施設入所した事例を詳細に検討し結果を検証していく必要がある。
著者
金元 敏明 服部 裕司
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本風力発電機は,(1)低風速下では前後段風車ロータが互いに逆方向に回転し,(2)後段風車ロータの最高回転速度付近で定格運転に達し,(3)その後は雨風車ロータが同方向に回転して出力一定運転となる.これを実現させるため,二重回転電機子方式二重巻線形誘導発電機を試作して特性を把握するとともに,風洞と数値実験により,風車ロータ形状の好適化を図った.1.発電機風車ロータとの連携運転が可能なことを確認し,同期回転速度以上では入力側からも出力が取り出せることを明らかにした.2.好適な前後段風車ロータ径比前段ブレードの形状によらずD=(後段径/前段径)=1までは後段風車ロータ径の増加とともに出力は増大するが,D=0.84以下では相対回転速度が遅い領域で後段風車ロータが前段風車ロータと同方向に回転する能力があるのに対し,D=0.84以上になると前段風車ロータが後段風車ロータと同方向に回転する.本着想に沿いかつ高出力が得られる直径比はD=0.84付近となる.3.前後段風車ロータの好適な軸間距離前後段ブレード形状によって出力と回転トルクに違いはあるものの,前後段風車ロータの軸間距離が近いほど高出力が得られる.4.風車ロータ周りの流れ軸方向速度成分は風車ロータを通過する毎に遅くなるが,前後段風車ロータが同方向に回転すると後段風車ロータのハブ側で上流側に向かう流れが生じ,前段風車ロータの過回転を抑制する.5.好適ブレード形状の提案後段風車ロータに流入する流れを考慮し,前段風車ロータ径の50%内側では,前段風車ロータに流入する流れをそのまま後段風車ロータに流すため,無作用翼素の採用を提案した.6.空力騒音の把握単段風車ロータのみの場合に比べてタンデム風車ロータの等価騒音レベルは高く,相反回転時のほうが同方向回転時より高い.しかし,後段風車ロータ径が小さいと騒音が低くなることは喜ばしい.
著者
登喜 和江 高田 早苗 蓬莱 節子 和田 恵美子 山居 輝美 前川 泰子 山下 裕紀 仁平 雅子 柴田 しおり
出版者
大阪府立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

脳卒中後遺症としてのしびれや痛みの実態および対処の様相を明らかにすることを目的に面接法と質問紙法による調査を行った。脳卒中後遺症としてのしびれや痛みは,(1)約7割に発症している。(2)約5割の人々が四六時中しびれや痛みを感じている。(3)約7割の人々が生活に支障を感じながらも何とか生活している。(4)最大の強さを100とした場合,約1割の人々が80以上と感じている。(5)個々の参加者によって多様に表現される一方,表現しがたいとする人も少なくない。(6)明確に区別されにくく,人によってはしびれが強くなると痛みに近い感覚として体験される。(7)気象の変化等による深部や内部のしびれ・痛みとして知覚される場合と雨風が直接当たることで誘発される皮膚表面のしびれ・痛みといった一見相反する感覚を併せ持つ。(8)眠ると感じない,他に意識が向いている時は忘れている,しびれ・痛みに意識が集中すると強く感じられる等の特徴が見出された。しびれや痛みの受けとめは,「強さ」「罹病期間」「医療者や身近な人々の対応」に影響を受けていた。治療効果については,様々な医学的治療や民間療法が用いられていたが,「温泉」「マッサージ」「温湿布」などの身体侵襲が少なく心地よさを感じる療法に効果があったとしていた。また,しびれや痛みは,それ自体として知覚されるだけでなく<感覚の不確かさ><温冷感覚の変化><感覚の違和感>といった特異な感覚を伴っている。さらに,この痛み・しびれは,脳卒中者の生活に多様な影響をもたらしており,参加者は<しびれ・痛みそのものへの対応><身体との折り合い><道具世界との協調><周囲との付き合い><自分自身と向き合う>といった対処で生活を維持しようと努めていた。
著者
寺本 吉輝
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

観測装置は宇宙線検出器用のガス封入型高抵抗板検出器(レジスティブ・プレート・チェンバー)と宇宙線のトリガー,波高値,到来時間などを測定する回路ボックス,全体をコントロールするパソコンなどから構成される.このうち最も困難な部分はガス封入型高抵抗板検出器の開発であった.高抵抗板検出器には二つの動作モードがあり,それぞれストリーマモードとアバランチモードと呼ばれている.我々はこの両方についてテストチェンバーを作りガスを封入してまず動くかどうか,それにさらにどの程度の寿命があるかどうかを調べた,ストリーマモードはアルゴン,イソブタン,テトラフルオロエタンの混合ガスを用いた,その結果1年間以上にわたり95%程度の検出効率を維持し,波高値,などにこれといった変化は見られなかった,しかしその後劣化がみられ,600日目の測定のころに接着剤の剥離が見られた,一方アバランチモードの信号はストリーマモードより二桁大きさが小さく,電極やガスに対する負担が少ないと考えられる,アバランチモードのテストチェンバーはストリーマモードのチェンバーより後に作ったためテスト期間が短いが,1年以上にわたって安定した検出効率を維持している.アバランチモードの方が信号が小さくチェンバーに対する負担が少ないので,本番用のチェンバーをアバランチモードで作った.本番用チェンバーはテストチェンバーの数倍の大きさがあり,信号電極が大きいためノイズが大きくそのままでは使えないことがわかり,信号電極を6分割すればノイズが落ちることがわかった.この本番用チェンバーは現在までに6台つくっている.これを戸外で雨風を防ぐステンレスのケースにいれて配線すれば一応完成であるが,現在完成までには達していない,回路ボックスの方は安価なコンポーネントの使用や,信号波高回路をマルチプレクスして1chで4ch分読み出せるようにするなどをしてコストをさげた,こちらのほうはすでに完成している.
著者
山本 隆 山本 惠子 井岡 勉 青木 郁夫
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は、英国での実地調査や英国研究者を招聘して開催した研究会に基づいて、地域再生におけるネイバーフッド(基礎自治体内の小地域)・ガバナンスの理論を構築し、日英比較の可能性を明らかにした点である。理論と実態の両面から詳細に検証したことにより、わが国におけるネイバーフッド・ガバナンスの先駆的かつ包括的な研究となった。また、英国の大学研究機関と交流しており、今後の国際的な比較研究へ発展させることが可能である。
著者
楠戸 一彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、ドイツ中世後期の「トーナメント」に関する諸問題の中でも、特に「トーナメント規則」に焦点を当て、次の点を明らかにした。(1) 15世紀後半に南ドイツ(ラインラント、シュバーベン、フランケン、バイエルン)において統一的なトーナメント規則が作成された。(2) トーナメント規則の内容は、現代スポーツの規則に見られるような「勝敗の決定方法」ではなく、トーナメントへの「参加証明」と「資格証明」であった
著者
遠藤 孝夫
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、これまで本格的研究がなされてこなかった、シュタイナー学校の教員養成システムの理念とその実態を解明することを目的とするものである。具体的には、(1)シュタイナー学校発祥の地であるドイツにおけるシュタイナー学校の教員養成の歴史的展開過程を、「補完的」教員養成から、「完結的」教員養成への転換の視点から明らかにし、(2)ドイツにおけるシュタイナー学校の教員養成機関の現状とその内実について、特にボローニャ・プロセスに伴う再編に留意しつつ明らかにし、最後に(3)シュタイナー学校の教員養成システムを支える基本理念、とりわけシュタイナーの教員養成思想を解明した。
著者
川名 誠司 東 直行 山岡 淳一 井村 純 片山 美玲
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、皮膚におけるCRH-POMC反応系が毛周期の制御機構に及ぼす影響を解明することにある。前年度(2003)は、心理ストレスがマウス毛周期のtelogen stageを有意に延長させ、そのメカニズムは毛包ケラチノサイト、脂腺細胞に強く発現するCRHの作用を介することを証明した。従来、毛周期の研究にはC57BL/6マウスの背部皮膚を機械的に脱毛し、直後から成長期が同調して開始する性質を利用する。我々の研究もこの性質を応用している。しかしながら、現在、成長期の強制発現がどのようなメカニズムに基づいているか不明である。本研究の遂行にあたって、このメカニズムを明らかにしておくことは必要不可欠のことと考える。特に、CRHの関与については興味深い。そこで、今年度(2004)はCRHノックアウトマウスとwildマウスにおいて、脱毛によって誘導された毛周期毎に皮膚に分布する神経線維ならびに活性化肥満細胞数の経時的変化、神経ペプチド(CRHおよびSubstance P ;SP)、神経成長因子(Nerve growth factor ; NGFおよびGlial cell line-derived neutrophilic factor ; GDNF)の発現についてELISAにて測定し、同時に免疫組織化学染色にてその局在を検討した。その結果、両マウスに共通して、成長期初期(anagen I〜III)に毛包ケラチノサイト、脂腺細胞、平滑筋細胞にNGFが急速かつ多量に発現することが一義的変化であることが明らかになった。その後、POMCの発現、SP陽性神経線維の増加、活性化肥満細胞の増加、毛包におけるTNF-αなどサイトカインの増加が続いた。CRHノックアウトマウスにおいてはCRHの発現はなかったが、α-MSH、ACTHなどPOMCの発現はwild typeと有意の差はなかった。以上の結果は、機械的脱毛によって皮膚に創傷反応をきたした結果NGFが産生され、ケラチノサイトの増殖、神経細胞の可塑化/成長、肥満細胞由来のサイトカインによる毛乳頭細胞の活性化などの反応が進展していったことを示唆した。また、CRHの存在がなくとも別のルート(例えば、NGFなどの作用)でPOMCの発現が誘導され、その後の毛周期が進行、維持されることが推測された。
著者
羽二生 久夫 小山 省三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

未熟児網膜症(ROP)モデルマウスにおける血管新生とその後の退縮・毛細血管再形成までのメカニズムの解明するために、我々はまず、出生後(P)7〜12日目に高酸素暴露を行ってROPモデルマウスを作製した。血管新生とその後の退縮・毛細血管再形成をフルオロセイン潅流後に、蛍光顕微鏡下で確認し、P14(相対的低酸素時)、P17(血管新生最大時)、P21(新生血管退縮時)、P28(毛細血管形成時)の4時系列とさらにP35の1時系列を加えてマウス網膜サンプルの採取と同時系列のコントロール網膜の採取も行った。時系列毎に4個の網膜を1回の2次元電気泳動のサンプルとして網膜を採取、さらに1群につき6回の2次元電気泳動を行う分として合計で240網膜を採取して、2次元電気泳動を行った。泳動ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色し、各群6枚の電気泳動ゲル、合計60枚のゲルの画像解析を行い、各ゲルで600個以上のタンパク質スポットを検出した。その後、各時系列のコントロールと比較し、ROP群で2倍以上、かつ有意差のあるゲル上のスポットを抽出したところ、それぞれの時系列で複数のスポットが見つかり、現在、質量分析計でそのタンパク質の同定を行っている。これとは別に、発達途中で一時的に発現上昇するNDRG1のROPモデルマウスでの発現変化も調べたところ、発現上昇がみられ、血管新生への関与が示唆された。一方で、血管新生機序の別の観点から、糖尿病網膜症モデルラットを作製し、こちらも2,12週での比較を行い、タンパク質の同定を完了した。これらのタンパク質の中には、直接血管新生に関わるという報告のあるタンパク質は見つからなかったが、いくつかのストレス反応性タンパク質の発現変化があり、血管新生前にストレス反応性タンパク質の関与が示唆された。
著者
須賀 晃一 吉原 直毅 薮下 史郎 若田部 昌澄 若松 良樹 船木 由喜彦 須賀 晃一 藪下 史郎 飯島 昇藏 船木 由喜彦 若松 良樹 梅森 直之 川岸 令和 清水 和巳 若田部 昌澄 谷澤 正嗣
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

社会的正義の基本概念は、今日の社会的問題、公共的問題に解決策を示唆しうるもの、また社会の歴史的・民主的発展に適合的な内実を備えたものであるべき点が明らかにされた。さらに、社会的正義の諸要素間の論理的整合性を追及する一方で、政策理論の基礎を与える組合せを、対象となる財・サービスごとに検討すべきことで合意が得られ、公共財・準公共財・価値財などに関していくつかの試みがなされた。公開性、公正性、接近可能性が重視される一方で、匿名性の処遇については意見が分かれた。