著者
藤田 尚文
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

曲面の違いの影響について調べた。また、図形の向き(上向きか下向きか右向きか左向きか)の違い、比べる曲面(同じ曲面か異なる曲面か)の違い、図形の置く位置(右と左か上と下か)の違いの影響についても調べた。3次元の曲面では他の要因の影響を受けやすいため、曲面を2次元のものに限定して実験を行った。実験において被験者はアイマスクをして机の前に座り、提示された刺激図形を右手の人さし指で触れる。被験者には1個の標準図形と1個の比較図形が提示される。被験者の課題はそれらの提示された図形を比べてより高い図形(より深い図形)を選ぶかあるいは両者が同じかを判断することである。極限法により主観的等価値(PSE)を測定した。実験で用いた標準図形と比較図形には山曲面を持つ図形と谷曲面を持つ図形の2種類がある。山曲面と谷曲面は、一山または一谷のsin曲線であった。標準図形の曲面の幅は5.1cmの1種類;高さ(深さ)は1.0cmの1種類。比較図形の曲面の幅は3.4cmの1種類;高さ(深さ)は0.1cmから1.5cmまで0.1cm刻みで15種類。実験1〜4において以下の4点が影響を及ぼしていることが分かった。この4点は、図形の位置(右と左か上と下か)に関係なく影響を及ぼしていた。図形の位置については、標準図形の位置が右(上)の時と左(下)の時の数値には差がないことから、影響はないと考えられる。(1)幅5.1cmと幅3.4cmでは幅3.4cmを高く(深く)知覚し、幅5.1cmを低く(浅く)知覚する。(2)標準図形の向きを下向きにした時に高く(深く)知覚し、標準図形の向きを左向きにした時、低く(浅く)知覚する。(3)幅3.4cmの山曲面と谷曲面では山曲面を高く(深く)知覚し、谷曲面を低く(浅く)知覚する。(4)比べる曲面、比べる曲面の幅が異なる時、比較図形を高く(深く)知覚する。(山曲面と谷曲面、幅3.4cmと幅5.1cmを比べた時、比較図形を高く(深く)知覚する。)比較図形(幅3.4cm)の山曲面、谷曲面の影響の原因については、山曲面の時は指が外側を通り、谷曲面の時は指が内側を通るためと思われる。標準図形(幅5.1cm)では影響がなかったことから、曲面の幅が広くなる程、影響力はなくなると推測される。向きの影響については、前後の平地の高さをずれて知覚するためだと思われる。上、下、右向きの時は、後ろの平地を低く感じるために高く知覚し、左向きの時は、後ろの平地を高く感じるために低く知覚すると考えられる。図形の触りやすさ、触りにくさも影響していると思われる。
著者
岸 幹二 繁原 宏 若狭 亨 杉本 朋貞 窪木 拓男
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、第1に顎口腔領域における各種感覚刺激のfMRIに最適の撮像条件の設定、頭部の固定法、画像処理を確立することである。第2に味覚など体動や筋肉の動きを伴わない刺激および嚥下運動におけるfMRIの描出能について健全例について種々条件を変えて検討を加え、fMRIの顎口腔領域各種感覚刺激の研究、臨床応用の可能性を追及することである。平成12年度にまず撮像法の検討を行った。手指の運動に対し、gradient echo type EPI(GE-EPI)とspin echo typeEPI(SP-EPI)の2種類の撮像シーケンスを用いて、fMRI画像の比較検討を行った。その結果、SP-EPIが信号検出の特異性、正確度共に高いため、このシーケンスを用いることにした。頭部固定は、ヘッドコイルと頭部に対し、ヘアバンド、スポンジ等を組み合わせることにより施行し、アイマスクと耳栓で視覚、聴覚刺激を遮断した。画像処理は、Magnetom Visibn付属のソフトウエア-(Numaris)内のz-scoreを用いて行った。次に、味覚刺激は、濃度1Mの食塩水と3mMのサッカリンを被験者の口腔へ挿入したチューブより滴下することにより与え、fMRI撮像を行った。その結果、味覚刺激による脳賦活領域はpariental operculum、frontal operculumとinsulaに分布することが明らかになった。味覚刺激の種類による分布の差異は今回の研究では認められなかった。平成13年度は、主に嚥下運動によるfMRI studyを行った。すなわち、被験者の口腔に挿入したチューブより、蒸留水を3ml/秒注入し、断続的に嚥下してもらうことにより行った。その結果、primary motor cortex、primarys somatosensory cortexが主に賦活されることが明らかになった。
著者
曲谷 一成
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

視覚障害者が介助者なしで自由に歩行することができるような支援機器の開発が本研究の目的である。このために以下に示す3つの装置の開発を行った。1.DGPSを利用し、視覚障害者の位置を計測し、その位置情報と地図情報により目的地までの道案内を行う誘導装置。2.赤外線を利用した標識により場所の案内や道案内を行う屋内施設用道案内装置3.施設内の床に目的地までの経路に沿って貼られた色テープを検出し、これを視覚障害者にしらせることにより目的地までの誘導を行うインテリジェント白杖。1.はカーナビゲーションシステムのようにDGPSにて利用者の位置を調べ、地図データベースを参照することにより目的地までの道案内を行う装置である。現在までに小型ノートコンピュータ、DGPS装置、および自立測位装置よりなるハードウェアの開発が終了している。ソフトウェアについては道の安全を考慮した最適経路算出手法、地図データベースおよび音声誘導システムについて開発を行った。現在、健常者を対象とした実験を行っており、この結果を踏まえたシステムのブラッシュアップが今後の課題である。2.は屋内施設の天井に取り付けられた赤外線標識と、利用者が携帯するその受信機とからなり、赤外線標識の発信する位置情報により、音声を用いた場所および道案内を行おうとする装置である。ハードウェアを構成し、視覚障害者を被験者として誘導実験を行った。その結果白杖の使用に習熟している利用者には有効であるが、そうでない利用者は手掛かりのない場所で真っ直ぐ歩けないため必ずしも有効に機能しないことが確認された。この問題を解決するため誘導経路をトレースすることが可能な3.のインテリジェント白杖の開発を行った。この研究では病院等で使用されている誘導ラインに注目した。ここで誘導ラインとは赤、青、黄色等に色分けされ床に貼られたラインで、特定の色のラインを辿って行くことにより目的地に到達できるようなものである。開発した白杖は先端に取り付けたカラーセンサにより誘導ラインの色を識別し、目的の色のラインの上に白杖がくると、バイブレータが振動し、そのことを利用者に知らせる。アイマスクにより全盲状態にした健常者を被験者として実験を行ったが、被験者全員が目的地に到達でき、本システムの有効性が確認された。
著者
小谷 賢太郎 堀井 健 三浦 敏弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,ヒトの触覚の感覚特性を明らかにするために,空気圧制御による圧力刺激呈示システムを製作し,ヒトの手が知覚可能な最小の力の変化量を調べることを目的とするものであった.初年度は実験装置の作成から開始した.作成した実験装置は,エアコンプレッサからノズルまでの空気圧の流路と,空気圧の出力を制御するコントローラやスイッチ等の電気回路から構成される空気圧提示装置である.校正実験の結果,本装置により0.5gfまで小さな噴流出力を制御することが可能となった.そこで,示指先端に加わる力に対して,標準刺激を変化させたときの弁別閾の特性を調べるため,心理物理学的実験を行った.実験の結果,標準刺激が4.0〜7.0gfの範囲では,標準刺激が変化しても,Weber比は約0.1程度で一定であり,4.0〜2.0gfの範囲では標準刺激が減少するに伴って,Weber比が増加していることがわかった.2年目は構築した空気圧提示装置を用いて,刺激の立ち上がり時間を変化させた場合における力の弁別閾変化の傾向を調べることを目的として実験を行った.実験は標準刺激2秒提示,無刺激インターバル3秒,比較刺激2秒提示,無刺激回答時間7秒を1試行として,無刺激時間7秒の間に,被験者には「大きい」,「小さい」,「同じ」のいずれかを感じたかを回答してもらった.その結果,刺激の立ち上がり時間を長くするとWeber比と弁別閾は増加する傾向が見られた.また,Weber比は本実験での各刺激の立ち上がり時間において0.1程度に収束することが分かった.これは,昨年度の標準刺激4.0〜7.0gfの傾向と同様であった.また,初年度の結果では刺激の立ち上がり時間を0.3secと設定していたことから,この実験における刺激の立ち上がり時間0.3secの実験結果と比較すると約0.2の違いがあるが,これは提示時間の影響によることがわかった.
著者
大倉 元宏
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年から2カ年にわたって視覚障害者用道路横断帯の最適幅と横断帯を構成する新しい突起体形状,およびその配置について検討した.さらに,視覚情報の得られない歩行における基本特性を調べ,横断帯の必要性を裏付けた.横断帯の幅に関しては大学構内の道路に幅30,40,50,60cm横断帯を各20m敷設し,目隠しを施した21〜23歳の晴眼大学生17名(男14,女3)を被験者として,歩行実験を行った.踏み外し歩数と歩きやすさ等の主観的応答から,30cm幅では狭すぎ,40cmより広い幅が一つの目安となると考えられた.横断帯を構成する突起体に関して,車輪を有する乗り物や歩行者に対してストレスが少ない突起(高さ5mm,底面と上面の直径それぞれ23.5,6mm;以下トライアングル型)を開発した.そして,それに連携して,点状横線部の両側に点状縦線を配するパターンを提案した.点状縦線の存在で,白杖による横断帯と足裏による道路面との境界部の検知性が高まることが予測される.このことを確かめるフィールド実験を実施したところ,点状縦線の効果を示唆する結果が得られた.さらに,道路横断帯の必要性の裏づけをとるために,視覚遮断直進歩行における周囲音の影響を調べた.周囲音条件として進路左右のスピーカから音圧の異なるホワイトノイズ(70,50dB,なし)を設定した.被験者には指定された手がかりを使って出発方向を決めた後,設定された周囲音条件下で直進歩行を求めた.被験者は13名の目隠しをした晴眼者であった.周囲音は直進時の歩行軌跡に有意な影響をもち,軌跡を音源とは反対側に偏軌させる.さらに音圧が高いと偏軌程度が強まることがわかった.道路横断は一般に直進歩行を求められるが,例えば視覚障害者が横断歩道を渡ろうとして,すぐ脇にエンジンのアイドリング音の高いトラックなどが止まっていれば,それとは逆の側に偏軌し,走行車両との干渉が危惧される.横断帯は直進歩行を維持するための有効な方法と考えられよう.
著者
徳田 克己
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、障害理解を促進するための教育内容、方法を明らかにするために視覚障害シミュレーション体験の効果に関する実験的検討を行ったものである。本研究の結果から、視覚障害歩行シミュレーション体験の内容や時間の長さについて、具体的な提案をすることができた。すなわち、目隠しをして歩く視覚障害歩行シミュレーション体験は、人通りの少ない、階段のない平地を30分程度歩くことが障害理解の促進には最も効果的であること、人通りの多い、起伏のあるルートを10分程度歩く体験が最も恐怖心と不安を生起させることが明らかになった。
著者
高垣 敏博 ルイズ アントニオ 上田 博人 宮本 正美 福嶌 教隆
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

スペイン語圏都市でアンケート調査を実施することにより、スペイン語文法における重要な統語的テーマの地理的変異を明らかにし、統語研究に生かすのが目的である。それまでの6年間にわたる調査・研究に加え、新たにこの3年間の調査により、スペイン9地点、中南米12都市での調査を終え多くの事実が明らかになった。この成果は、本研究のHPhttp://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~cueda/kenkyu/bunpo/varigrama/で見ることができる。
著者
大村 知子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、身体機能に障害のある者や高齢者、幼児が着脱しやすいバリアフリーの衣服設計に関する基礎的研究であり、研究目的は、バリアフリーの衣服デザインのための基礎資料を得ることであった。先ず、着用実験の方法に関する検討をした。着用実験用に6種類の留め具のブラウスを試作した。着用実験では、上肢に障害を想定したケースと視覚障害のケースを設定した。被験者は健常な学生29名と中途失明者1名であった。着脱動作の所要時間を分析した結果、障害の種類によって使いやすい留め具は異なった。着脱動作についての感覚評価においても所要時間と同様、袖口のカフスはもっとも難易度が高く、いずれの留め具でも、またどちらの障害においてもバリアが大きかった。他方、中国の高齢者の体型を捉える目的で、2000年11月に中国ハルピン市において100名を被験者として、62項目の身体計測をした。その結果、高齢者の体つきや身体寸法は、若い婦人とは、明らかに異なった。日本人高齢者の体型とも異なることが明らかになった。既製服におけるサイズ不適合な部位に関する実態調査の結果について解析中である。
著者
加 三千宣 武岡 英隆 阿草 哲郎 武岡 英隆 阿草 哲郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大洋スケールの魚類バイオマス変動の謎を解き、有用魚類資源の長期動態と将来予測にとって極めて重要となると考えられる、別府湾堆積物中のカタクチイワシ及びマイワシの魚鱗アバンダンスの過去1500年間における変動記録を明らかにした。また、その魚類資源変動を引き起こす低次生産及び海洋構造の動態を調べた。
著者
友重 竜一 石田 清仁 及川 勝成
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

燃焼合成法を利用してCr硫化物、Ti系およびZr系炭硫化物を安定的に得た。透過電子顕微鏡観察結果から代表的な固体潤滑剤のMoS2と同様な層状構造を確認した。高温酸化試験の結果、約500℃以上での酸化が激しいことから、被削性向上用分散剤として溶鋼中への当該化合物を投入・分散させる方法は酸化雰囲気では困難と考える。一方、動摩擦係数μは概ね0.11-0.12を示し、MoS2と同程度であった。以上より固体潤滑剤としては十分期待できる物質であると結論づけた。
著者
石田 俊正 南部 伸孝 チュン ウィルフレド
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

光に応答する生成分子として、視覚に関するタンパク質ロドプシン中に存在するレチナール分子をとりあげ、分子に光を当てた際に起こる反応のシミュレーションを行った。レチナールの種類による光に対する応答性の違い、とくに、光を当てたときどれだけ反応するか、また、反応はどれくらい速くおこるかについて調べ、実験と一致する結果を得た。9cis-レチナールが私たちの目にある11-cisレチナールより反応が遅く、反応性が悪いのは、光で生成する励起状態においてトラジェクトリがエネルギー障壁に補足されるためであることを明らかにした。
著者
坂庭 好一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

Shannon限界に迫る符号化方式として注目されている,LDPC(Low-DensityParity-Check)符号に関する未解決問題として,(1)出来るだけ詳細に規定された符号アンサンブルを導出し,その性能評価を効率的に行なうこと,(2)装置化を考慮した,代数的な構造を有するLDPC符号の構成法,などが上げられる.本研究では,上記の問題に対する解決策として,(1)MuIti-Edge型と呼ばれる新しい非正則LDPC符号アンサンブルの提案とその性能評価に必要な密度発展(Density Evolution)アルゴリズムの開発,(2)LDPC符号のクラスである,修正エキスパンダ符号,アレー符号に対して,ランダム性と代数的構造のバランスをとった,装置化が容易で高性能な符号の構成法,の検討を目的として行なわれ,平成18年度には(1)『対称性』と呼ぶ,Multi-Edge型非正則LDPC符号を規定する基本構造を明らかにして,Multi-Edge型非正則LDPC符号アンサンブルを組織的に記述し,これに適合した密度発展アルゴリズムを開発した(2)修正エキスパンダ符号に対する一般化最小距離繰り返し復号法を提案し,Justesen符号に類似の構成法による,線形時間復号可能でかつ漸近的に良い符号を"陽に"与えることに成功したなどの成果を得た.引き続き,平成19年度には,実際に近い環境を想定したシミュレーションを実施して,提案方式の実用性を検証し,・提案したMulti-Edge型の非正則LDPC符号アンサンブルの具体例に関して,重み分布ならびにStopping Set分布の漸近的振る舞いを求め,提案符号の有効性を確認する・提案した代数的構造を有する各種LDPC(-likeな)符号に関して,従来符号との性能比較を行ない,提案符号の有効性を確認することができた.
著者
岡戸 浩子
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、この国で推進されている言語政策および言語教育政策と大きな関わりを持つ学校教育における「第二言語教育」について社会言語学(狭義での言語社会学)的視点から現状を考察し、政策の推進における問題点および阻害要因を明らかにすることを目的とした。そのために、平成15年度〜18年度に渡ってニュージーランドを訪れ様々な調査を行った。第一に、「第二言語教育」の実態と学習者の意識に関して明らかにするために、中等学校の第二言語学習者に対してアンケート調査を行い、得られたデータを基にしてSPSS, Amosによる因子分析やパス解析等の種々の統計的手法を用いた分析を行った。第二に、上記の量的調査に加えて、質的にも確認するために、言語教師に対しては第二言語教育の現状と最近の傾向について、そして言語学習者に対しては言語学習に関するインタビュー調査を行った。第三に、カンタベリー大学、マッセー大学、ワイカト大学、オークランド大学、オークランド工科大学の研究者およびニュージーランド教育省の担当者に対してインタビュー調査を行った。その際、今回の研究にとって貴重な資料・情報を入手することができた。上記の調査結果から、(1)カリキュラム、(2)第二言語の必修化、(3)教員不足、(4)学習者の「言語」教育に対する意識、に関する問題点および課題が明らかになった。これらの課題に取り組むためには、行政によるさらなる積極的な言語教育政策の施行と、ひいては総合的な言語政策が国から打ち出されることが必要であると言える。研究期間中には、中間報告的な内容も含め、いくつかの雑誌論文や図書(著作)のかたちで研究の成果を発表した。
著者
神野 健二 河村 明 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

気候変動や異常気象の発生が降水量変動に与える影響が危惧されている.本研究では気候変動と降水量変動との関係について統計的手法による解析を行った.具体的にはまず,大規模の気候場を表す指標として南方振動指数(SOI),太平洋数十年振動指数(PDOI),北太平洋指数(NPI),インド洋ダイポールモード指数(DMI)といった4つの気候指標を用いた.過去約100年間にこれら4つの気候指標が各月および各年単位で示したパターンを,非線形分類手法(自己組織化マップ)を用いて分類した.さらに,これら気候指標のパターンと福岡市の降水量及び気温との対応関係を調べた.その結果,4つの気候指標が特定のパターンを示した月に,対応する福岡市の降水量が通常より少なくなる傾向等がみられた、また,これら指標が年規模で示したパターンを調べた場合,SOI,NPIが通常年より高く,PDOI,DMIが通常年より低い値であった年の翌年は,福岡市の気温が通常年より低くなる傾向がみられた.また,西日本における重要な降雨期である梅雨期を対象にして,日本周辺の気象場の分類も行った,具体的には,日本列島周辺の気象場・成層状態を多次元格子点情報を利用し,非線形分類手法(自己組織化マップ)を適用することでパターン分類した,その結果,気象場・成層状態のパターンと西日本域の降水特性との関係が明らかになった,特に,西日本の豪雨と,湿舌と下層ジェットの水平分布のパターン,梅雨前線帯内の対流活動と関連がある対流不安定成層・中立成層のパターンとの間に明瞭な関係を得ることができた.
著者
丁 貴連
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、夏目漱石や島崎藤村、国木田独歩、有島武郎など韓国近代文学の成立に深く関わった日本近代文学者の中でも、とりわけ有島武郎と国木田独歩に注目し、廉想渉や金東仁、田榮澤といった韓国の近代文学者が有島武郎と国木田独歩の何を、そしてそれをどのように受容したのかを解明することによって、韓国近代文学に及ぼした日本近代文学の影響が国木田独歩から有島武郎へ受けつがれていった事実を明らかにした。
著者
今井 康貴 永田 修一 豊田 和隆
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,高い精度を有する,渦法による浮体構造物の非線形波浪中挙動解析法の開発を目的に,自由表面下で振動する2次元没水平板の問題に,Random-Wal k法およびCore-Spreading法に基づく渦法計算を適用し,平板に作用する流体力について検討を行った.その結果,Core-Spreading法および物体近傍での渦層モデルを用いることで,これまでの波浪問題に適用されてきたRandom-Walk法に基づく手法より実験結果と近い結果が得られた.
著者
生塩 研一
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳の前頭前野や大脳基底核は時間計測に関与すると考えられていますが、具体的な役割は未解明です。我々は引き続いて呈示された図形の表示時間の違いを弁別する課題をサルに与えて、その課題遂行中に個々の神経細胞の活動を調べました(大脳基底核では世界初)。前頭前野が時間の長短を大まかに分ける標準時間によってフィルタリングすること、また、大脳基底核が遅延期間で時間長を発火頻度で符号化していることを見出しました。
著者
曽我 亨
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

東アフリカ牧畜社会では、近年、民族紛争が増加している。報道や学術的言説は、こうした紛争を家畜や牧草や水などの稀少な資源をめぐる競合と説明する傾向がある。しかし、こうした紛争は、民族エリートたちによる扇動の結果と思われる。本研究は東アフリカ牧畜社会において民族主義が興隆する以前の時代に焦点をあて、異民族による生態資源の共同利用の諸相を分析した。その結果、異民族間には生態資源と労働力の交換や、生態資源をめぐる棲み分けが行われていたことが明らかになった。
著者
宇都 由美子 村永 文学 大野 佳子 熊本 一朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

わが国においても、医療費適正化を目的として徐々に包括評価が導入、拡大されている。出来高払い方式から包括払い方式へと移行し、収入の上限が決められた中で、いかに効率よく医療や看護を提供するかということが重要な課題となり、人件費などを含め医療資源の適切な投入とコストコントロールのためのツール作成が急がれている。医療や看護の質を確保し、同時に医療費の適正化を達成するためには、病院のIT化は不可欠な要素である。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院においては、すでに医療情報・遠隔診断システムとしてセキュリティ機能を強化した病院ATMネットワークが設置されている。したがって、病院データウェアハウス用データベースサーバを病院ATMネットワーク内に設置し、病院情報システム(THINK)のデータベースとリンクを図ることが比較的容易に実現でき、病院DWHの中に看護師人件費の算出及び評価システムの開発を行った。具体的な成果として、1)THINK内の看護師基本情報、看護データ、勤務実績、超過勤務時間データの抽出、ならびに給与データを解析し、DWHのDBの構造を構築する。2)入院(病棟勤務)の看護師のマンパワーと人件費の解析システムの開発を行った。(1)患者ごと、1入院期間ごとの看護度データを抽出し、病院DWHに転送して看護師ごとにまとめ、看護マンパワーと人件費の関係を評価できる解析システムを開発した。(2)患者に提供された看護マンパワーの需要と供給バランスにどのような差異があるのか分析、評価した。3)入院に関する病棟(含むICU)ごとの看護師のマンパワーと人件費の差異に関する分析を行った。(1)病棟、看護師ごとに分析を行い、看護マンパワーの需要と供給バランスにどのような差異があるのか分析、評価した。(2)その差異がどのような原因(患者の疾患、手術の有無、合併症、補助的療法)によって生じるのか分析した。
著者
笠原 正治 高橋 豊 増山 博之 橘 拓至
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

P2Pネットワークに代表されるオーバレイネットワークにおいては,トランスポート層より上位のオーバレイレベルでの制御によってデータ転送が行われるため,オーバレイネットワークにおけるファイル転送遅延は論理ネットワークと物理ネットワークの双方のトポロジーに大きく依存すると考えられる.研究期間においては,まず最初の検討として,物理ネットワークとして4ノード・4ルータで構成される代表的な4種類のトポロジーを考え,論理ネットワークと物理ネットワークのトポロジー構成がファイル転送遅延に与える影響について,2層型待ち行列網モデルを用いて評価を行った.数値例において,物理トポロジーと論理トポロジーが一致する場合に遅延が小さくなる傾向にあること,また論理トポロジーの形状によっては物理トポロジーに依らず負荷に対して遅延が急激に増大することが観察された.次にP2P上の実時間サービスとしてSkypeに着目し,呼設定処理に対する動的負荷分散機構の有効性を解析的に検証した.具体的には,一般ユーザの参加を非斉時ポアソン過程でモデル化し,ノード数とスーパーノード数で規定される2変数確率過程が満たす微分方程式を導出した.数値例より,P2P型のユーザ管理方式を用いたサービスではクライアント・サーバ型方式よりも安定したサービス品質を保障できることが示された.最後に,フラッディング検索機構を有するファイル共有型P2Pネットワークに対し,4端末・4ルータ物理網より構成されるP2P網を二層型待ち行列網でモデル化し,論理レベルと物理レベルのトポロジー不一致性とフラッディング検索機構がファイル取得時間に与える影響を定量的に評価した.数値実験より,高いノード次数を持つネットワークトポロジは低負荷時において性能が高い一方,高負荷時には急激に性能が劣化することが判明した.