- 著者
-
大武 美保子
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
実環境で頑健に動作する情報システムを構築するために, 多岐にわたる情報科学技術の諸分野を融合する必要性が高まっている. 本研究の目的は, 実世界情報並列計算フレームワークを構築し, 異なる種類のデータを扱える新しいシステムを開発することを通じて, 汎用の計算基盤の構築と応用例を示すことである. 具体的には, 情報爆発で開発されているInTrigger上で動作するシステムを開発した. 標準の並列計算用ライブラリMPIは, クラスタには対応していても, 複数のクラスタで構成されるグリッドには必ずしも対応していない. そこで, A02支援班で開発されているグリッド用のMPIライブラリMC-MPI(Multi-cluster MPI Librarv)を用いて,グリッド上で動作するリング状にネットワークした計算ノードでパイプライン処理するシステムや, 異なる条件の計算を同時並列に行い, 結果を集約するシステムを開発した. その上で, 多数の生物学的神経モデルを同時並列に計算し, シミュレーションを行った. また, 任意の実世界情報を扱えるシステムを開発することを目的として, 運動学習支援システムを開発した. 従来ネットワークに対応していなかった運動計測データを扱うソフトウエアをサーバとクライアントに分け, クライアント側にハードウエアを接続し, サーバは任意の計算機上に配置できるように構成した. 運動学習支援システムは, 運動の特徴量をリアルタイムに学習者にフィードバックすることができる. この他, 会話支援システムなどの認知活動支援システム, マルチスケール神経モデルで構成され. 計測装置と接続可能なオープンブレインシミュレータ, 脳活動, 認知活動計測装置などを開発し, 評価実験を行った. 以上を通じ, 汎用の実世界情報並列基盤フレームワークと, それを用いたアプリケーションの開発に成功した.