著者
田中 陽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.225-237, 2018 (Released:2018-05-12)
参考文献数
68

This paper analyzed discourse on women's clothing through articles published between 1930 and 1943 in “Clothing,” magazine published by the Japan Clothing Association, and their historical significance. The main findings are as follows.  1. It was significant that awareness of Japanese and Western dress was raised through discourse on clothing, with Japanese dress regarded as a cultural and traditional asset, while Western dress was portrayed as a universally functional form of clothing.  2. It was significant that there was no aim to reform clothing in a temporary or mandatory way; rather, there was a long-term view of moving toward the creation of a new Japanese style of clothing. The reality of living through the war severed people from their culture and customs, with day-to-day experiences encouraging demands for the development of new things rather than for replication and emulation, leading to debates over suitable attire for Japanese people.  3. It was significant that discussions on women's clothing were conducted in various fields from diverse perspectives. In contrast to a state policy that demanded unification and simplification, arguments and proposals both for and against were developed in the magazine in a multi-layered and versatile way. It could be argued that debates allowing for many viewpoints under the national unity policy became a driving force after the war.
著者
長尾 慶子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.533-538, 1994

ドーナツの嗜好評価に大きく影響する揚げ加熱中の亀裂について, 先報の亀裂発生のメカニズムに基づいて亀裂を制御することを試みた.そこでドーナツの形すなわち曲率を変えることで亀裂圧を変化させ, 内部膨張圧との力関係を変えることを検討した.<BR>その結果, 内側亀裂はいずれの試料にもみられ, 抑制できなかったが, 側面亀裂の著しかった対照試料Bでは, 高さとドーナツの外径を小さくすることで亀裂は抑制できた.<BR>一方上面亀裂の著しかった対照試料Cでは, ドーナツの外径のみを小さくすることで, 亀裂は抑制できた.
著者
井澤 尚子 成田 巳代子 長塚 こずえ 斎藤 祥子 橘 喬子 小吹 史子 盛田 真千子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.275, 2007

目的 本報はビジネスウェア着用者である男性と、その服装に客観的意見を持つであろう女性の意識に着目し、男女有職者を対象にクールビズ推進を含む職場環境や、夏期における男性のビジネススーツスタイルに対する意識調査を実施した。クールビズ環境下でのビジネススーツスタイルの意義を考え、気候と職場環境に適したビジネスウェアを提案するための資料を得ることを目的とした。方法 1)調査対象者:20~60歳代の男女有職者 1049名(男性 500名,女性 549名)、2)調査時期:2006年7月中旬~10月上旬、3)調査場所:全国11地域、4)調査方法:質問紙留め置き調査、5)調査内容:基本属性(3報と同様),職場などの冷房設定温度,夏期における男性のビジネススーツスタイルに対する意識(23項目)など、6)分析:単純集計,因子分析を用いて考察した。結果 因子分析の結果、男性のビジネススーツスタイルに対する意識について、男性は7因子で構成され、女性では「ビジネススーツスタイルの必要性」,「スーツやシャツの素材」,「ビジネススーツスタイルの擁護」,「ビジネススーツスタイルのカジュアル化」,「シャツの着こなし」,「個性の表現」,「おしゃれ感」,「身だしなみ感」の8因子が抽出された。身だしなみは相手への好印象に繋がり、女性特有の因子と考えられる。さらに男女ともに職場の室温設定28℃が46%,43%、職場でのクールビズの推進は73%,60%と、職場環境に浸透するなか、男女とも男性のビジネススーツスタイルに否定的でないことがわかった。これらから、今後のクールビズにおける衣服環境は、軽装化のみならず涼しく快適に着用できる素材の選定、デザインの提案、着こなしの工夫が不可欠と考えられる。
著者
岡村 好美 田中 翔子 湯地 敏史 木之下 広幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

【目的】日本における香りの利用は仏教儀式において始まり、以来日常生活のいろいろな状況で利用されてきた。衣生活での利用も多く、&ldquo;空薫物&rdquo;として香りを着衣に焚込めることや匂い袋を身につける他に、鬢付け油&rdquo;や&ldquo;化粧料&rdquo;として香りをまとう行動に展開されてきた。近年は、手軽な香り剤として柔軟剤が注目を集めている。柔軟剤の本来の目的は、洗濯後の衣服を柔らかく保つことや帯電防止であるが、香りに注目されるようになって香りの残効性や拡散性を強調した製品が多く提供されるようになってきた。柔軟剤の香りを対象とした研究も増えてきたが、使用状況から香りの働きを解析した報告は少ない。 本研究は、柔軟剤の香りの影響について使用状況から解析した。 <br>【方法】先ず大学生を対象として、香りへの関心度を5段階評価で実施して香りの使用意識を明らかにし、次いで5種類の市販柔軟剤を用いて、嗜好及び4段階のイメージ評価を実施した。また、使用状況調査および、柔軟処理試料の香りによる感情状態を調査した。 <br>【結果】学生は適度な強さの香りがある環境は生活に良いと考えており、柔軟剤としては「すがすがしさ」、「気品」が感じられる香りを好んだ。柔軟剤の使用状況は香りの嗜好状況および気分・感情状態と対応した。
著者
安田 みどり 松田 智佳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.107, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 緑茶に含まれるカテキンは強い抗酸化活性を示し、様々な疾病の予防などに効果があることで知られている。しかしながら、茶の飲用は食事や薬からの鉄などの吸収を妨げるといわれている。これは、カテキンと金属イオンとが錯体を形成するためであると考えられている。本研究では、電気化学的手法を用いて、カテキンと金属イオンとの反応のメカニズムを解明することを目的とした。 方法 サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学検出器(ECD、750mV)を装備したHPLCを用いて、カテキンの酸化電位および酸化ピーク面積値に与える金属イオン(Fe2+、Fe3+、Cu2+)の影響を調べた。カテキンは、緑茶に含まれる主要なもの((-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG))を使用した。 結果 CVの結果から、金属イオンは、カテキンの酸化電位に影響を与えることが明らかになった。特に、pH7以上において、EGCGの酸化ピークはFe2+やCu2+の添加によってほとんど消滅した。また、HPLCの結果、ECは金属イオンの影響をほとんど受けなかったが、他のカテキン、特にEGCGは金属イオンの添加により著しい濃度の減少が認められた。これは、pH7以上で起こりやすく、金属イオンの濃度に依存することがわかった。以上のことにより、EC以外のカテキンは、酸化活性部位において金属イオンと錯体を形成するか、もしくは金属イオンによりカテキンが酸化分解されることが示唆された。
著者
天野 晴子 三神 彩子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<br><br><b>目的 </b>買い替えの際に高効率省エネ機器を選択することは,省エネルギー促進に大いに役立つものの導入コスト負担感から必ずしも選択されない。本研究では,省エネルギーに資する「高効率給湯器」の選択という行動を促すために,省エネ機器買い替え促進要因,阻害要因を洗い出し,持続的な省エネルギー行動誘導策を明らかにする。<br><br><b>方法</b> 調査対象は,2011年4月以降,ガス給湯器の買い換えに主に関与した経験者とし,首都圏を対象としたWebアンケート調査を行い,高効率給湯器購入者309名と従来型ガス給湯器購入者309名を抽出した。<br><br><b>結果</b> 給湯機を買い替える主な理由は,故障もしくは機器の調子が悪くなったからが81%を占め,それ以外にはリフォームがあげられており,短期間で購入の意思決定をしなければならない状況であることが確認できた。それぞれの機器を選んだ際に重視した理由は,高効率給湯器購入者の58%はガス代が安くなるからと回答しており,その他,購入価格の割引があったから,ガス料金の割引適用があるからと合わせると77%となり,機器自体は高額で一時支出があるもののランニングコストなどの長期的視点に立って選択をしていることが伺える。省エネ機器促進のためには,買い替えニーズが発生した段階での省エネ機器に関する情報提供ならびにランニングコストを含めた価格面でのコストメリットなどを伝えることが重要であると考えられる。
著者
鈴木 博志 宮崎 幸恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.53-62, 1995

以上の結果は, 次のように要約される.<BR>(1) 単身世帯の男女とも, 年齢層が高くなると住宅水準の高い [マンション] や [鉄賃アパート] への住み替えが進むが, その一方で [木賃アパート] の「沈殿層」が一定程度析出されている.この「沈殿層」は, 「50歳以上」の女性に多いとみられる.若年層から高年層まで, 女性は男性より水準の高い [マンション], [鉄賃アパート] の居住が多い.いずれの住宅型でも女性の平均収入は男性より低いが, 逆に畳数水準は高く, 女性の住宅への関心の高さが伺われる.また, 長期居住による住居費の低廉化は, 高年層の女性に多く寄与している.<BR>(2) 単身世帯の現住宅に対する不満度は, 総合評価で44%と高い.各評価項目別の不満度についても同様に高いが, とくに住宅の居住空間より設備・性能に関する項目の不満度が高い.全体に女性の不満度は男性より低いが, これは現住宅の居住水準が高いことの反映でもある.住宅の評価を具体的な客観的指標 (規模, 日照, 設備水準) と照合してみると, 住宅水準が低下すると不満度が高くなる傾向が読み取れる.他方, 単身世帯の住環境に対する不満度は, 総合評価で27%と低い.各評価項目別では, 中央線沿線の立地, イメージの良さから男女とも立地の利便性や地域イメージに関する項目の不満度は低い. しかし, 居住地の安全性やアメニティに関する項目の評価では, 不満度が高く表れている.<BR>(3) 単身世帯の現住宅選択理由は, 「通勤・通学の利便性」が圧倒的に多い.二義的選択理由として, 男性は「価格・家賃が適当」の経済重視が多いが, 女性は「買物などに便利」とする日常生活の利便性を重視する傾向に分かれる.今後の住宅選択の重視項目では, 全体に「通勤・通学の便利さ」の利便性以上に, 「家賃・価格の安さ」の経済性を重視する傾向にある. [~29歳], [30歳代] では, 男女とも「通勤・通学の利便性」, 「家賃・価格の安さ」が重視されるが, [40歳代] では, 「日常生活の便利さ」, 「住宅の広さ」の比重が高くなる.高年層になると, 男性は「家賃・価格の安さ」の経済性が依然として多いが, 女性は「日常生活の便利さ」, 「住宅の設備・性能」など日常生活のしやすさを重視する傾向が強くなる.<BR>(4) 単身世帯の定住希望は, 全体で61%を占める.性別では女性の方が高い.定住希望の高い年齢層は, 男性では若年層だけであるが, 女性では若年層と高年層の両極で高い.<BR>(5) 単身世帯の住宅関連設備の要求では, 男女とも「専用の風呂」や「専用のトイレ」と最も基本的な要求であり, 「独立のキッチン」や「エアコン (冷暖房用) 」は, それにつぐ高い要求とされる。女性は, とくに住宅の安全性や生活の便利さに配慮した要求内容が多い.また, 男女とも年齢が高い層に「エレベーター装置」, 「住棟内トランクルーム」, 「衣類乾燥機付浴室」の要求がやや多い.単身世帯の住宅関連サービスの要求については, 「ゴミ処理サービス」や「セクレタリーサービス」が最も多い.「セキュリティサービス」など住宅の安全性は, 女性では若年層から高年層まで共通して多い.男女とも「ケアサービス」は, その必要性の認識が高くなる高年層に多い.
著者
加藤 みゆき 加藤 芳伸 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.67, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 茶の種類は,緑茶・紅茶・ウーロン茶・後発酵茶などが存在している.これらの茶は,カメリア属の茶葉から製造されている.茶の製造には主に中国変種とアッサム変種が多く用いられている.これまでミャンマーにおける茶の製造実態を調査してきた.ミャンマーでは,シャン州が主要な茶の栽培地になっている.しかし,シャン州以外にもミャンマー全土で多くの茶の製造が見られた.そこで今回,ミャンマーにおける茶の品種と製造方法について報告する.方法 ミャンマーのシャン州,カチン州,カレン州,チン州等多くの茶の栽培地域で茶の製造方法・利用方法等聞き取り調査を行った.一方,茶を製造している茶葉の遺伝子解析を行った.遺伝子の解析方法は,前報1)で報告している方法を用いた.つまり茶葉からDNAを抽出し,マーカーとしてribulose1,5-bisphosphate carboxylase large-subunit(rbcL)を用いて解析する方法を行った.結果 ①ミャンマーにおける茶の製造方法は,飲用としてのラペチャウ,紅茶,後発酵茶のラペソウなどがあった.②緑茶の製造方法は,蒸す・ゆでる方法より炒る方法を用いている場所が多かった.これはラペチャウおよびラペソウや竹筒茶においても同様の傾向であった.③茶葉は多くがアッサム変種であったが,カチン州の一部では,中国変種があった.チャの仲間に属するタリエンシス等で茶を製造している地域もあった.さらにアッサム変種の変異体の茶葉が茶の製造にも使われていた.1)Katoh et al. Food Science and Technology Research,21,381-389(2015)
著者
手塚 悦子 西村 修 小林 啓子 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.297, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】東南アジアでは、バナナの葉は食品の包装や保存等へ用いられ、生活の場面で有効に用いられている。ここでは、大量に廃棄されているバナナの葉をバイオマスの一環として捉え、その有効利用や食品の保存という観点からバナナの葉に含まれている抗菌性物質に着目し、その分離、同定と有効性を明らかとしたので報告する。 【方法】(1)試料は、フィリピン産の乾燥バナナの葉(Musa acuminata)3kgを用いて粉砕後、沸騰水中で抽出、ろ過したものを試料液として以下の実験に供した。(2)バナナの葉の香気成分(SPME法)、有機酸およびアミノ酸(HPLC法)、抗酸化性(DPPHラジカル補足活性)を測定した。(3)抗菌性試験では、試料液をヘキサンで脱脂後、酢酸エチル分画し、ペーパーディスク法により、Escherichia coli K12 Staphylococcus aureusNBRC 14462による抗菌活性を検討した。(4)(3)で得られた酢酸エチル分画液を用い、TLC、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、による分離を検討し、GCMS、HPLC、NMRにより同定と確認を試みた。 【結果】(1)バナナの葉の香気成分は、6-Methyl–5-Hepten-2-one等が多く、有機酸は、シュウ酸、リンゴ酸等が見出された。(2)バナナの葉抽出液のpHを異にして抗菌活性を検討したところ、抗菌性物質は、柳田らの報告しているように酸性で酢酸エチルに転溶することを確認した。(3)GCMS、HPLC、NMRにより酸性物質の同定を試みたところ、ケイヒ酸と安息香酸であることを確認した。(4)15種の菌株について抗菌性を測定したところ、グラム陽性菌株に対して、より大きい抗菌性を示していることがわかった。
著者
下村 久美子 谷井 淑子 猪又 美栄子 小原 奈津子 ファン ハイ リン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 2005年からベトナム北部・中部・南部の農村にて、伝統的な衣服の着用実態や形態の変化などを解明することを目的として現地調査を実施している。これらを基盤として、2014年から商業地区の中部ホイアンにて現地調査をした結果、葬儀用の衣服について詳細な知見を得た。 <br><b>方法</b> ホイアン遺跡管理センターの協力を得て、2014、2015年に現地調査を実施した。かつて伝統的な葬儀用の衣服を仕立てていた高齢者を対象に、ホイアンの伝統的な形式の葬儀において、死者および親族が着用した衣服の種類、色や素材、着装方法などについて聞き取り調査を行なった。 <br> <b>結果</b> (1)死者に着用させる伝統的な衣服は、上衣に白いアオ・ババ、その上に赤いアオ・ザイを重ね、下衣に白いクアンを着用させる。男性は7つ、女性は9つの命が宿るとする考え方から、男性は7本、女性は9本の紐で縛る。女性の場合は、幅90cm、長さ150cmの布を3枚に切り分け、両端から途中までを短冊状に裂き、裂いてない部分を死者の下に敷き、裂いた布で身体を包むように結ぶ。(2)親族の衣服は、伝統的な形式の白いアオ・ババとクアンで、死者との血縁関係によって、衣服の形式や被り物、杖など持ち物に決まり事がある。(3)葬儀用の衣服は、かつては仕立屋が縫製していたが、1990年代以降は葬儀会社が利用されている。 <br>本研究は科学研究費基盤(C)(26350080)の助成による。
著者
藤田 智子 坂本 有芳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 共働き世帯が子の発達段階に応じた生活設計を行なうために必要なことを明らかにするため、子の発達に伴い、夫婦の家事遂行状況がどのように変化するのかを検討する。<br><b>方法</b> 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に居住する、末子が中学生以下の有配偶女性を対象に、Webアンケート調査を行い、得られた個票データを統計的に分析する。層化無作為抽出法を用い、株式会社マイボイスコムの登録モニターより、末子学齢別の就業率に応じた比例割り当てをおこなった。実施は2013年9月、有効回収数502人、有効回収率30.2%である。<br><b>結果</b> 末子学齢によって、夫婦の家事遂行状況がどのように変化するか、夫婦の「家事頻度」「夫の分担割合」「家事育児の外部化」、妻の夫への「家事促進行動」の単純集計、相関分析、分散分析により検討した。夫婦合計の家事頻度は長子よりも末子年齢による差がみられ、最も高いのは末子が0~2歳と小学4~6年生の時点である。夫婦合計家事頻度を100とした夫の相対頻度は12%であり、末子学齢が0~2歳のときに最も高いが有意な差はみられなかった。家事育児の外部化はほとんど行なわれていなかった。夫への促進行動をする妻は全体の半数程度であり、妻の促進行動が多いほど夫の家事分担割合は高かった。夫に対して家事促進行動をする妻には、家事・育児を外部化している、末子の学齢が低いという特徴がみられた。<br> なお、本研究は、お茶の水女子大学・社会連携室外部受託研究(代表者:石井クンツ昌子)の一部である「子の発達段階に応じたキャリア・デザイン研究会」(代表者:坂本有芳)の一環として実施した調査に基づく。
著者
神谷 法子 小柴 朋子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>0A-0 </b><b> 寝衣が睡眠に及ぼす影響</b><b> </b><b>-寒冷環境下における睡眠―</b><b></b><b>○神谷<sup> </sup>法子<sup>1</sup>,小柴 朋子<sup>1</sup>,田村 照子<sup>1</sup></b><b></b>(<sup>1</sup>文化学園大)&nbsp;<b>目的</b> 寒冷環境下における寝衣の違いが睡眠の質へ及ぼす影響を明らかにし、より適切な寝衣について検討を行う。<b>方法</b> (1) 10~20才代男女450名を対象に、就寝時の寝具、着衣に関するアンケートを実施。(2) 終夜18℃55%一定に制御した人工気候室にて、半袖・半ズボン、下着のみ、スウェットの3種の着衣条件下で、午前0時より7時間睡眠中の、体動、布団内気候・衣服内気候、心拍、足指(親指) 皮膚温、睡眠満足度:OSA睡眠調査票を測定した。<b>結果</b> (1)アンケート結果から、冬は厚着をして寝る人が多く、52%がスウェット、パジャマ43%(フリース19%、襟なし14%、襟付10%)冬用ネグリジェ5%で、それ以外も長袖41%と長ズボン83%の着用者が多かった。(2)睡眠実験の結果、皮膚温は個人差があるものの、着衣条件による差はみられなかった。布団内気候、衣服内気候は共に下着のみ、半袖・半ズボンが厚着のスウェットよりも温度が高い傾向で、布団内は着衣に関わらず暖かさが保たれることが明らかとなった。スウェットの場合、腕まくりをしたり足を外に出すなど体動が多く、また夢みが多く、深い睡眠がとれていなかった。半袖・半ズボンでの睡眠は入眠までの時間が短く、睡眠時間が長く、目覚めが良い傾向を示し、3条件の中で最も良好であった。
著者
宮川 有希 上村 協子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.279, 2018

【目 的】フィンテック(金融とテクノロジーの接続)による情報化社会の進展で、消費者と生産者(事業者)の関係が変化し、金融リテラシーの有無とその内容が日常生活に及ぼす影響が大きくなっている。本研究はキャッシュフロー表と家計簿アプリを使った生涯を見通した「生活設計教育」の可能性を検討する。<br>【方 法】S女子大消費経済学履修者60名に、初回授業で金融リテラシーに関する質問(3問)と意識調査(7問)の全10問、15回目授業後に初回の10問と追加3問(金融経済情報の頻度、個人収支の把握方法、希望するライフコース)全13問のアンケート調査を実施。授業内でキャッシュフロー表を2回作成。<br>【結 果】①個人収支の把握方法は、家計簿記帳36.4%、家計簿アプリ等を利用しスマホで把握34.5%と家計簿を利用している学生が全体の7割を占めている。②希望するライフコースは、結婚し子どもを持ちいったん退職し子育て後に再び仕事を持つ50%。③生活設計の正解率は、初回50.0%、授業後88.3%と授業後の正解率が上昇。キャッシュフロー表によると、出産後安易に仕事を辞めることによる機会損失は大きいが考えられていない。家計簿アプリは、収支の把握をするだけではなく、収入が近い利用者の家計簿と比較することもできる。生涯を見通したキャッシュフロー表を作成するために、家計簿アプリを利用し家計管理だけではなく生活設計力をつけることの必要性が示唆された。
著者
宮川 有希 上村 協子 米元 みずほ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

【目 的】金融リテラシーマップ4分野(家計管理、生活設計、金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択、外部の知見の適切な活用)にあわせた「金融リテラシー」調査が金融広報中央委員会により2016年18~79歳の2万5千人を対象に実施された。高校生を対象に金融リテラシー調査を行い、高校家庭科における「家計管理と生活設計教育」を検討する。<br> 【方 法】千葉県の私立高等学校の家庭基礎履修者の2年生、668名に全10問の金融リテラシーに関する質問(3問)と意識調査(7問)のアンケート調査を実施した。問1(家計管理)問2(生活設計)問3(外部の知見の適切な活用)の3問は成人向けと比較するため選択肢を同じにした。 <br>【結 果】成人向け金融リテラシー調査の正解率は全国平均、家計管理55.1%、生活設計47.6%、外部知見73.7%。高校生全体の正解率は家計管理66.1%、生活設計36.8%、外部知見56.8%である。家計管理の正解率は、高校生が高く、さらに高校生男女で比較すると、女性が高い。全体にチャレンジクラス(高卒で経済的自立を求められる若者)と進学クラス別では、進学クラスの正解率が高く、特に外部の知見の適切な活用では進学クラスの男子の正解率が高かった。家計簿アプリなどを活用した高校生のニーズにあった家計管理と生活設計教育の必要性が示唆された。
著者
高正 晴子 江後 迪子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.835-844, 1999-08
参考文献数
48
被引用文献数
1

The characteristics and types of food served at wedding ceremonies of the Shimazu household in Kyushu are described.<BR>Shimazu wedding ceremonies were different from those of other major households. Food was served after exchanging <I>sake</I> cups. <I>Zoni</I> (a kind of mochi soup) and five kinds of <I>kezurimono</I> were included on the wedding menu. <I>Jinchu</I> (five-color rice), and <I>tegake</I> (a kind of <I>kezurimono</I>) and <I>tokokazari</I> (an alcove ornament) cannot be found at the wedding ceremonies of other important feudal lords. Thus, the Shimazu ceremonies were clearly different, although they were simplified over the years.
著者
平野 順子 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.312, 2006

【目的】 近年の消費者トラブルの急増と悪質化に鑑み、一般の消費者よりも不利な立場にある高齢者の実態を把握するために実態調査を行った。本報では、高齢者が消費者トラブルに関する情報と一般的な情報を得る経路についての実態把握を行い、今後の高齢者に対する消費者教育のあり方について検討することを目的とした。【方法】 2005年1月に、全国の65歳以上の一般男女1350人に対して、訪問面接法によってアンケート調査を行った。有効回収率は77.6%であった。本調査は、平成16年度内閣府請負事業として実施されたものである。【結果】 _丸1_一般的な情報の入手経路として多かったのは、テレビ(男性95.4%、女性95.8%)、新聞(男性89.2%、女性81.8%)、友人・知人(男性41.0%、女性46.5%)であった。_丸2_消費者被害情報の入手経路として多かったのは、テレビ・ラジオ(男性91.0%、女性92.9%)、新聞(男性81.3%、女性65.9%)、家族・友人との会話(男性26.7%、女性38.8%)、自治体や自治会の広報(男性24.9%、女性21.4%)であった。_丸3_前述までの通り、高齢者の多くは積極的な入手経路によって情報を得るよりも、メディアや身近な人からの情報入手が多いことが分かった。とりわけ身近な人からの情報によって、消費者トラブルが自分の身近な問題であることを再認識するきっかけとなることが分かっている。今後、高齢者にとってより有効な情報伝達手段を使っての情報提供が期待される。
著者
森 英子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.90, 2004

目的 標準経済理論によれば、収入は金額の多寡・時期・定期不定期などに拘らず無差別であるはずである。しかし、日常生活では違和感が大きい。標準経済理論では無名の抽象金額に過ぎず、限界消費性向したがって貯蓄率も唯一つ一定と仮定する。心理的にはそれぞれの収入の受けとめ方は独自のものであり限界消費性向・貯蓄にまわるものも様々である。換言すれば私達は複数の主観的収入支出口座(勘定)を設置している。 方法 標準経済理論の代表的モデルはフランコ・モジリアーニの「ライフサイクル理論」である。現在の収入・資産・将来の期待される収入を合わせ、その資金から一律平均年収入金額を算出し、その金額を消費する。(死後に残さない) 生涯のあらゆる時期の消費は等しい。しかし、実地に試すとまったく妥当せず、心理を加味した種々のモデルが作成されているが、実地試みの具体例をもって収入の限界消費性向の差異・そこから主観的勘定を推測する。 結果 (1)主観的勘定は経常所得勘定イー当座預金口座 資産勘定ロー長期金融資産 将来所得勘定ハ イの限界消費性向は限界消費性向1に近く、ハのそれは0に近く、ロはイとハの中間にある。即ち、イロハ間の代替可能性は低いのが現実である。(2)消費は生涯の年平均所得でなく、経常所得の変動と相関が深い。収入でも臨時収入か予期していた収入かで限界消費性向は異なる。(2)「ライフサイクル理論」では、人は不屈の意志で実行するが、人々は自己規制が利かないと自覚しているので、保険に加入し途中解約不可不利の金融商品を選び、手もと流動資金が不足しても借入を極力避ける。賢明鉄人の行動をモデルにしているか、愚鈍意志薄弱人の行動を描いているかである。
著者
平田 鷹志 山﨑 亘 カヤオ クリスチャンデウス 吉川 雅博 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的 </b>近年,家事や日常生活動作など,家政に関わる物事を代理・補助する支援ロボットの研究開発が盛んに行われている.本研究では,市販のロボット掃除機にRGB-Depth センサおよびロボットアームを搭載し,室内の掃除機掛けを行いながらゴミの認識を行い,発見したゴミの回収も行えるシステムの開発を行う.<br><b>方法 </b>ロボットにゴミ拾い機能を実装するには,1. ペットボトルや缶などがRGB-D センサ範囲内に存在するとき,コンピュータがそれらをゴミであると認識し,2. 拾い上げるためにロボットがゴミに接近し,3. 適切につかみ拾い上げる必要がある.1. ゴミの認識は,機械学習および物体認識手法を用いて,コンピュータがゴミをゴミであると認識できるよう事前に学習させ,センサ情報からゴミを検出することにより行う.2. ゴミへの接近は,センサからロボットやゴミ周辺の情報を取得し,環境に応じてロボットがどのように接近するか経路計画を行うことで実現する.3. ゴミの取集は,ゴミの形状に応じてゴミをつかむ位置などを適切に計画することで実現する.<br><b>結果 </b>ロボット掃除機とRGB-D センサおよびロボットアームのインテグレーションによって,室内の掃除機掛けを行いながらペットボトルや缶などのゴミを認識し,経路計画および把持計画を行うことによって自律的にゴミを回収するシステムの開発を行った.
著者
長谷 博子 丸山 眞澄 佐橋 那央子 平林 由果
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

目的 生活の中の香りについて,香り付き商品の使用状況と香りに対する意識を探るため、アンケート調査を実施した. &nbsp; <br>方法 調査は,10歳代以上の男女を対象とし,2015年9月~10月に実施した.学生は集合調査法,その他は留置調査法により調査した.居住空間,衣服,身体に分け,香り付き商品の使用状況,香りに対する意識や嗜好を尋ねた.自意識尺度や生活習慣についても尋ね,それらとの関連を分析した.&nbsp; <br>&nbsp;結果 有効回答数は996部で,男性27.2%、女性72.8%であった.学生が77.7%を占めており,回答者の79.6%が10~20歳代で,30~40歳代,50~60歳代以上は,それぞれ1割程度であった.居住空間は,「何もしない」が居間・寝室・玄関では40~60%と最も多いが,香り付けには,ルームフレグランススプレー型と置き型が多く使用されていた.衣服から香りがする方が好きと回答したのは,約8割であった.香りを好む程度が高いほど、香り付けを行うという関係が認められた.衣類への香り付けには,柔軟剤や衣類用スプレー・ミストが主に使用されていた.ファッションに気を遣っている人ほど,また流行を意識している人ほど,衣類への香り付けをしていた.自意識尺度の高い人ほど衣類や身体からの香りを好み,自分や他人,居住空間のにおいを気にする傾向が確認された.このことから,香りへの意識の高さは、自意識尺度の高さと関係していることが考えられる.
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 森山 夏菜
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.114, 2009

<B>目的:</B>今日,様々な場面でエコが取り組まれる一方,ファッションよる環境汚染に対して,関心をもつ者は少ないように感じる.本研究では,女子大生の視点でエコとファッションを考える.2008年7月女子大生(90名)とその母親世代(70名)を対象に質問紙調査を行い,エコやファッションに対する意識や行動の共通点・相違点を明らにして,ファッションに関するエコを実践している人のライフスタイルを探る.さらに,聞取りやディスカッションの結果も加味して,女子大生の立場から「やりたい」と思えるエコとファッションの方法を考察していく.<BR> <B>結果及び考察:</B>女子大生と母親世代の意識や行動の共通点は,エコに関する情報は「テレビ・新聞」から得ており,エコに関心はあるものの,ファッションより興味が低いことである.相違点は,「環境に良い洗剤の使用」「天然繊維の使用」などエコの実践は母親世代が高い.一方,女子大生は,「年下への譲渡」「フリーマーケット」の活用したリユースを実践している比率が高かった.女子大生におけるエコを実践している人のライフスタイルは,「地域活動に積極的」「掃除好き」「情報をよく探索」「家族からファッション・エコ情報を得ている」ということが明らかとなった.ディスカッションの結果,自治体や企業による衣料品回収サービスやその他の活動について,「知らない」「やりたいと思っても方法がわからない」が指摘され,女子大学生がよく利用する場所や衣料品店など広く情報提供・活動することが必要である.また,1人あたり年間20kgの衣料消費量を減らすため,品質の良いものを長く,またエコ商品の周知を兼ねたネットによる衣料品レンタルなどが提案された.