著者
石橋 秀巳 鍵 裕之 阿部 なつ江 平野 直人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本研究では、プチスポットに産する玄武岩質ガラスについてFe-K端&mu;-XANESによるFeの価数状態分析を行い、プチスポットマグマの酸素フュガシティ(fO<sub>2</sub>)を見積もった。分析は、高エネルギー加速器研究機構Photon FactoryのBL4Aの装置を用いて行った。分析試料は、東北地方三陸沖約800kmの太平洋プレート上に位置するプチスポットSite-Bでドレッジされたスコリア中に含まれる急冷ガラスである。今回、スコリア6試料について分析を行ったが、いずれもFe<sup>3+</sup>/Fe<sub>total</sub>~0.37の値を示した。この値は、ガラス-オリビン間のみかけのFe/Mg分配係数から求めたFe<sup>3+</sup>/Fe<sub>total</sub>比とほぼ一致する。この値から見積もったfO<sub>2</sub>条件は、QMF+2.3程とMORBより酸化的で、むしろ島弧マグマの条件に近い。この結果に微量元素組成を加え、プチスポットマグマの形成過程について議論する。
著者
草地 功 小林 祥一 武智 泰史 中牟田 義博 長瀬 敏郎 横山 一己 宮脇 律郎 重岡 昌子 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
巻号頁・発行日
pp.142, 2011 (Released:2012-03-28)

岡山県備中町布賀鉱山のゲーレン石・スパー石スカルンに近接した結晶質石灰岩を貫く,武田石など種々のカルシウムホウ酸塩鉱物からなる不規則な脈中の含水カルシウムホウ酸塩鉱物(草地ら,2004)について,新たな分析を行い,このたび国際鉱物学連合,新鉱物命名分類委員会より,新種「島崎石」として承認された。命名は、スカルンの鉱物学、鉱床学に多大な貢献をした島崎英彦東京大学名誉教授に因む。
著者
下林 典正
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

天然に産する水晶の形状は、主に錐面(<i>r</i>:{10.1},<i>z</i>:{01.1})と柱面(<i>m</i>:{10.0})で囲まれており、底面(<i>c</i>:{00.1})の出現は極めて稀である。例外的に、米国アリゾナ州Four Peaks産のアメジストなど、限られた産地から底面をもつ水晶の産出が知られており、当地のアメジストについてはカソードルミネッセンス(CL)観察により、溶解によって底面が生じたことが示されているが(Kawasaki et al, 2006)、このような観察例は極めて乏しいのが現状である。本研究では、大阪府長谷産の高温石英のCL観察の結果、溶解ではなく成長の過程で底面が出現している組織が確認されたので報告する。
著者
三河内 岳 竹之内 惇志 東 浩太郎 ゾレンスキー マイケル
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

小惑星2008TC<sub>3</sub>起源と考えられるAlmahata Sitta隕石は ユレイライトを主体とするポリミクト角レキ岩である。近年見つかった破片のMS-MU-011とMS-MU-012は、ユレイライトと同じ酸素同位体組成を持つものの、それぞれトラキアンデサイト質の火成岩(MS-MU-011)および斜長石を含むユレイライト(MS-MU-012)である。MS-MU-011は、主に長石と小量の輝石からなり、Fe-XANES分析によって得られた長石のFe<sup>3+</sup>/(Fe<sup>2+</sup>+Fe<sup>3+</sup>) 比は0.30~0.48で、部分溶融液として残渣のユレイライトから分離後に酸化的環境になってから結晶化したと考えられる。我々が分析したMS-MU-012には斜長石は認められなかったが、典型的な含オージャイトユレイライトの組織・鉱物組成を示した。カンラン石の還元リムでのFe-Mg組成変化から1200~700度での冷却速度は0.2度/時であり、ユレイライトの典型的な冷却速度と一致する。MS-MU-012は他のユレイライトと同様に高温での天体破壊を経験したが、何らかの理由で、斜長石が取り除かれること無く残ったと考えられる。
著者
川嵜 智佑 足立 達朗 中野 伸彦 小山内 康人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

アーマルコライトは,アポロ11号計画で1969年7月20日月面「静かの海」で発見され,搭乗員のアームストロング(ARMstrong),オルドリン(ALdrin),コリンズ(COLlins) 由来して命名された.この鉱物は低圧高温で低酸素分圧条件で安定であり,1000 &deg;C以下でIlm+Rtに分解する.Fe<sup>3+</sup>に富むアーマルコライトが東南極ナピア岩体リーセルラルセン山に産する珪長質片麻岩から報告された(Miyake Hokada 2013).我々(2013) はアーマルコライト仮像様組織をリュッツホルム岩体スカルビークスハルゼンのザクロ石珪線石片麻岩から見出した.これらは,アーマルコライトが超高温変成作用の新しい指標鉱物となり得ることを示唆している.Fe<sup>3+</sup>に富むアーマルコライトの安定性を超高温変成作用の温度圧力に相当する条件で予察的に調べたので報告する.
著者
白勢 洋平 下林 典正 高谷 真樹 石橋 隆 豊 遙秋
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2020-01-16)

京都大学総合博物館では,京都帝国大学の教授であった比企忠が蒐集した国内では最大級の貴重な鉱物・鉱石標本を所蔵している。その標本整理の過程で「比企標本」は,「和田標本」,「若林標本」,「高標本」といった20世紀初頭の日本の「三大鉱物標本」に勝るとも劣らない標本であることがわかった。比企は1894年に帝国大学を卒業ののち,1898年に京都帝国大学理工科大学の助教授に任じられ,開設されたばかりの採鉱冶金学教室で教鞭をとった。その後,採鉱学第三講座(鉱床学)の初代教授となり,1926年に定年退職するまでの間に,1万点以上の鉱物・鉱石標本が陳列する鉱物標本室を作り上げた。比企は亡くなる直前に鉱物標本の行く末を案じ,後進に「標本の志るべ」なる手引書を遺した。「標本の志るべ」の中には蒐集した鉱物標本ひとつひとつの解説と共に,教育熱心さが窺える文言が記されている。比企標本は,国宝級とも形容される,質・量ともに優れた選りすぐりの標本であるが,同時に我が国の鉱物学の黎明期に多くの研究者や学生を育ててきた貴重な標本でもある。
著者
大竹 真紀子 廣井 孝弘 中村 良介 武田 弘 荒井 朋子 横田 康弘 春山 純一 諸田 智克 松永 恒雄 宮本 英昭 本田 親寿 小川 佳子 平田 成
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.23, 2009

マルチバンドイメージャは月周回衛星かぐや観測機器の1つであり、高度100kmの軌道から可視・近赤外波長域、合計9バンドの月面分光画像を取得する。本研究では、MIの高い月面空間分解能とS/Nを生かして月上部地殻の組成を推定した。解析対象として、月全球のクレータ約70個を直径や年代等の条件により選定・解析し、詳細な鉱物含有量比推定を行った。結果、最終選別した約30箇所のうち高地地域の直径30km以上の全クレータ(20箇所)で、極端に斜長石に富んだ(斜長石含有量が98vol.%程度以上の)岩層の分布が観測された。また、これら岩層は深さ4から30kmに分布する。月高地地域の上部地殻は、この極端に斜長石に富んだ層で構成されると考えられ、このような組成の地殻を形成するために非常に効率的なマグマからの斜長石結晶の分離プロセスが必要となることを示唆している。
著者
井上 晴貴 上原 誠一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

本研究では,熊本県八代市泉町下岳産のひすい輝石,オンファス輝石および随伴鉱物の産状や鉱物学的性質を報告し,成因などを議論する。ひすい輝石およびオンファス輝石は蛇紋岩メランジュ中の変成斑レイ岩に産する。緑泥石,パンペリー石,鉄藍閃石,普通輝石が主な構成鉱物であり,ごくわずかに石英も含む。ひすい輝石は約0.5 cmの白色脈や約10 &mu;mの微細な結晶として,主に曹長石,カリ長石,白雲母を伴って産する。いずれのひすい輝石も組成はひすい輝石端成分に近いが,縁辺部にかけてCa, Feの含有量が増えていき,オンファス輝石の組成に近くなる。また,ひすい輝石の周囲に緑簾石-(Sr)などのSr鉱物がしばしば共生する。また,オンファス輝石は数cmの暗緑色脈として産し,この脈を構成する結晶は針状・粒状で約10 &mu;mの微細なものである。組成はFeに富み,脈の一部はエジリン-普通輝石の組成を持つ。以上のことから,曹長石の分解反応のほかに,熱水からこれらの鉱物が直接晶出する過程も考えられる。
著者
岡田 華子 田中 賢一 福本 辰巳 皆川 鉄雄 大越 悠数 浜根 大輔
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2012年年会
巻号頁・発行日
pp.51, 2012 (Released:2014-06-10)

ブラウン鉱を主要鉱石鉱物とする変成マンガン鉱床から産するアルカリ角閃石の化学的検討を行った。秩父帯南帯下払鉱床からはKに富むrichterite - arfvedsoniteのMn3+置換体を見出した。三波川帯の古宮鉱床からもKに富むrichterite-winchite系列に属する角閃石と、BサイトにおけるNa+Caの値がほぼ1 - 1.5の範囲を示す角閃石はottoliniiteあるいは ferri-ottoliniiteのMn3+置換体と推定される。田野畑鉱山産の黄褐色角閃石はkozulite – arfvedsonite - Na3(Mn2+, Mn3+)5Si8O22(OH)2 の3種の端成分組成からなる。
著者
下林 典正 井上 真治
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.104, 2008 (Released:2009-04-07)

鳥取県若桜地域から産したヒスイ輝石岩およびその関連岩を横切るヒスイ細脈中から糸魚川石を報告しているが、それらと共存するバリウム鉱物を再度検討した結果、セルシアンとキュムリ石とが共生していることがわかった。この細脈はヒスイ輝石の長柱状結晶が主体となっており、脈中の紋斑部に糸魚川石-パンペリー石のintergrowthした共生体が見られる。セルシアン-キュムリ石の共生はその紋斑部の周縁に沿って分布している。すなわち、セルシアンとキュムリ石の平衡共存とパンペリー石の出現とから、このヒスイ細脈の生成条件を絞り込むことができた。
著者
奥山 康子 船津 貴弘 高本 尚彦
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

CO2地中貯留に伴う貯留システムの変形や破断、また貯留流体の漏洩という動的応答現象のナチュラル・アナログとして松代群発地震をとりあげ、現象の原因となった深部流体の地球化学的特性を検討した。原因流体は、松代地域での深部試錐でえられた地下水組成より高塩分濃度と推定される。原因流体の組成は、CO2地中貯留に伴う岩盤の動的応答を探る流体流動-岩石力学連成シミュレーションにて必須のものである。
著者
酒井 碧 留岡 和重 瀬戸 雄介
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

Dark clasts(DCs)はCV, CO隕石に含まれる石質岩片で、ホスト隕石と似た物質が水・熱による変成を受けて形成したと考えられている。我々はAllende隕石中に特異な2つのdark clastを見出し、SEM-EDSとEPMA-WDSによる観察・分析を行った。DC中に存在するコンドリュールを交代した仮像(平均直径~0.17mm)は、ホスト部分のコンドリュール(平均直径~0.49mm)より有意に小さく、このことはDCの前駆物質がホストであるAllende隕石とは異なっていたことを示唆する。DCの周縁部及び内部には、Ca成分に富む鉱物からなる脈が存在する。この脈がホストに存在せず、DCを縦断していることから、脈はホストに取り込まれる前、DC全体が水・熱により変成・細粒化した後に形成されたと考えられる。よって、DCが経た変成過程は複数回の水質変成を含む複雑なものであったと推定される。
著者
宮島 宏 百瀬 孝仁 大塚 勉 那須野 雅好 遠藤 公洋 赤羽 久忠 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.88, 2010 (Released:2011-04-06)

中房温泉のこれまで『明礬』とされていた噴気生成物の大部分は,タマルガル石Tamarugite NaAl (SO4)2・H2Oであることがわかったので報告する.本鉱物はチリのTamarugalパンパスから発見されたもので,国内産出例として大分県別府明礬温泉(皆川, 1994),埼玉県吉見丘陵の吉見百穴洞窟内壁面(堀口ら, 2000)がある. 中房川の右岸の噴気帯から白色と黄褐色の2種類の噴気生成物が認められた.量的には前者が卓越する.EDXによる化学分析とXRDによるX線粉末回折データから黄褐色昇華物はソーダ鉄明礬石と鉄を含む明礬石であったが,白色昇華物は明礬石ではなくタマルガル石であった.また,かつて林間学校の宿泊用に使われていた木造の建物内の床面に,タマルガル石と少量のアルノーゲン,明礬石からなる厚さ5cmに達する噴気生成物が発見された.タマルガル石は薄い板状結晶(最大長30μm,厚さ2~3μm)である.Fe-poor でNa, Kが存在しているときにはタマルガル石と明礬石が生成し,Fe-richであるとタマルガル石とソーダ鉄明礬石が生成し,共にソーダ明礬石は生成しない.
著者
冨田 宣光 皆川 鉄雄 浜根 大輔
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2013年年会
巻号頁・発行日
pp.75, 2013 (Released:2018-06-07)

三波川帯古宮ブラウン鉱鉱床からSr rich K-richterite、fresnoite, taikanite, tausonite, norrishiteなどの含Sr、Ba鉱物や 含Li鉱物を見出した。これらはhollanditeを交代するbraunite層中に微細な柱状~粒状結晶をなし生成している。これらの鉱物学的性質につて報告する。
著者
古川 登
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.70, 2018 (Released:2020-01-16)

広島市市街地の地下からオレンジ色に着色した方解石(以下オレンジ方解石とする)が内部に晶出した貝化石が産出した.(古川, 1966 ,山崎他,2000)その化学組成からオレンジ色の着色要因としてMnが示唆された。貝化石中のオレンジ方解石を400℃で加熱処理したところ黒褐色に変化したことから,Mnは結晶中のCaを置き換えるのではなく,不純物として含まれている可能性が高いことがわかった。オレンジ貝化石を透過型電子顕微鏡で観察したところ,オレンジ貝化石では30~60nmの包有物がみられた。この包有物がオレンジ色の着色要因と考えられる。
著者
古川 登 藤田 更
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2015年年会
巻号頁・発行日
pp.48, 2015 (Released:2020-01-15)

貝化石中に沈殿したオレンジ色の方解石の着色要因を解析した.ICPによる分析ではFeは含まれず,Mn,Mgなどが検出された.Mnを含む溶液を用いて方解石を合成したところオレンジ色の方解石が得られた.したがってオレンジ色の着色要因はMnによると考えられる.
著者
安藤 匠吾 奥野 正幸 奥寺 浩樹 水上 知行 荒砂 茜 阿藤 敏行
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

Shock recovery experiments were carried out on two plagioclases (labradorites) that include exsolution lamellae (An<sub>55</sub>Ab<sub>42</sub>Or<sub>3</sub>) and that include no exsolution lamellae (An<sub>64</sub>Ab<sub>34</sub>Or<sub>2</sub>) up to 36.8 GPa. Recovered samples were analyzed by powder-X-ray diffraction measurements (p-XRD), infrared (IR) and Raman spectroscopy. Obtained results may indicate that exsolution lamellae does not affect on vitrification by shock compression.
著者
三浦 保範
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.138, 2007

中間型斜長石のラブラドライト鉱物の組織、組成のその場電顕観察などから、2種の形成過程を示し、物性や構造における相違が説明できる。
著者
北脇 裕士 江森 健太郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

コランダム(ルビー、サファイア)の原産地鑑別は、個々の結晶が産出した地理的地域を限定するために、その地域がどのような地質環境さらには地球テクトニクスから由来したかを判定するためのバックグランドが必要となる。そして試料の詳細な内部特徴の観察、標準的な宝石学的特性の取得が基本となり、紫外-可視分光分析、赤外分光(FTIR)分析、顕微ラマン分光分析、蛍光X線分析さらにはLA-ICP-MSによる微量元素の分析が行われる。 <br>原産地鑑別における地理的地域の結論は、それを行う宝石鑑別ラボの意見であり、その宝石の出所を証明するものではない。同様な地質環境から産出する異なった地域の宝石は原産地鑑別が困難もしくは不可能なこともある。原産地の結論は、検査時点での継続的研究の成果および文献下された情報に基づいて引き出されたもので、検査された宝石の最も可能性の高いとされる地理的地域を記述することとなる。
著者
興野 純 中本 有紀 坂田 雅文
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

スピネル構造におけるCu<sup>2+</sup>のヤーン・テーラー効果の影響を調べるために,キュプロスピネル(CuFe<sub>2</sub>O<sub>4</sub>)の高圧単結晶XRD測定を実施した.実験の結果,圧力が4.6 GPaのところで体積変化曲線に明らかな不連続性が確認され,立方晶系から正方晶系への相転移が示唆された.Birch-Murnaghan状態方程式から求めた体積弾性率は,K<sub>0</sub> = 178 (3) GPaであった.これは,磁鉄鉱やウルボスピネル,クロマイトスピネルの体積弾性率よりもわずかに小さい値であった.キュプロスピネルの八面体席はすべてFe<sup>3+</sup>で占有されるのに対し,四面体席はCu<sup>+</sup>とCu<sup>2+</sup>,Fe<sup>3+</sup>で占有れていた.正方晶系に相転移後に四面体席内の結合角が108.6&deg;に減少する理由は,Cu<sup>2+</sup>のヤーン・テーラー効果による結合性軌道の形成であることが分子軌道計算から明らかになった.