著者
稲葉 継雄
出版者
九州大学
雑誌
大学院教育学研究紀要 (ISSN:13451677)
巻号頁・発行日
pp.185-208, 1998

Minami Jiro, whose term of office (7th; 1936-42) was only the third longest among the eight Governor-Generals of Korea, next to Saito Makoto's (3rd; 1919-27, 5th; 1929-31) and Terauchi Masatake's (1st; 1910-16), is nevertheless evaluated as "the most unforgettably atrocious Governor-General in the history of Japanese colonial rule of Korea. "Minami, who was in office during the time of Sino-Japanese War (1937-1945) and the World War II (1939-1945), gained notoriety for a series of hard-line policies aimed at kominka, or making Imperial Japanese subjects of the Korean race, such as the enforced worship at Shinto shrines, the exaction of the Pledge of Imperial Subjects, the promulgation of the Name Order (so-called soshi kaimei; K. ch'angssi kaemyong), the educational reforms under a new Rescript on Education, and the mass recruitment of young Koreans. It goes without saying that Minami's subordinates played indispensable roles, assisting him and sometimes even taking initiative, in enforcing these policies. This study focuses on Shiobara Tokisaburo, Chief of the Education Bureau, because it is quite effective to trace his words and deeds for clarifying the facts about Minami's policies, especially in education. Although Miyata Setsuko has painstakingly dealt with the general view of kominka policies and the structural relations among them in her numerous works, her approach is not of educational history. It is the goal of this article to further investigate the educational issues of colonial Korea that has been discussed by Miyata and others.
著者
柴田 弘紀 小川 智久
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

沖縄本島、小宝島、西表島産個体の全ゲノムアセンブリを取得し(先進ゲノム支援による)、金属プロテアーゼなどの毒液タンパク質遺伝子族で、集団間でクラスター構造が異なることを見出した。また14島計150個体のmtDNA配列を取得し集団遺伝学的解析を行い、ハブの集団構造には地理的要因が強く影響することを示した。また、9島47個体の毒腺のRNAseqで、集団間で有意に発現量の異なる遺伝子を同定したが毒液タンパク質遺伝子はほぼ含まれていなかった。一方毒液の2D解析では、集団間で発現パターンの明確な違いが観察された。そのため毒液タンパク質発現の集団間の差異は、翻訳/修飾レベルで生じている可能性が示唆された。
著者
茶園 梨加
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

最終年となる本年度は、今まで行ってきた北部九州のサークル誌に関する調査を続けながら、「サークル村」の一要素である水俣の問題について調査、考察、研究報告を行った。報告者(茶園梨加)は、本年度始めより「サークル村」同人であった石牟礼道子の『苦海浄土-わが水俣病』に関する調査を精力的に行ってきた。日本近代文学会秋季大会の研究発表が決定して以降は、熊本県立図書館(熊本市)や熊本学園大学水俣学研究センター(水俣市)、水俣病歴史考証館(水俣市)を中心に調査を行った。『苦海浄土』については、これまでさまざまな先行研究があるが、「サークル村」に初出「奇病」が掲載されたことを踏まえた研究は少ない。よって、報告では「サークル村」の存在がいかに石牟礼道子の創作過程に影響を及ぼしたのか、その過程を明らかにした。また、同内容をさらに発展したものを、「サークル村」終刊50周年記念集会(中間市)にて報告した。会では、森崎和江をはじめとした「サークル村」同人であった当事者たち、諸研究者たちと意見交換を行い、充実した報告となった。また、これまで資料調査を行った日炭高松の文化運動についても調査を進めた結果、資料発掘がまたれていた「月刊たかまつ」の総目次を「九大日文」16号に発表することができた。これは、研究代表者が一、二年目に行った法政大学大原社会問題研究所での調査に加え、遺族への聞き取りを実施した結果である。以上が本年度の主な研究成果である。より幅広く研究成果を報告することができ、有意義な年度であった。
著者
宮園 真美
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2011

Physiological and psychological reactions during taking a sauna were investigated in healthy young and elderly subjects to collect basic information aiming at the application of saunas in nursing. Based on the information, we applied foot saunas for inpatients and evaluated their sleep before and after the use of the foot sauna for 3 consecutive days. In Chapter 1, the background, objective, and structure of this report were described. We set the objective of this study as the investigation of the possibility of applying the thermal effect of saunas for nursing and the collection of basic information. In Chapter 2, Physiological and psychological reactions to saunas were investigated in healthy young subjects. A dome sauna applied below the neck (dome sauna) was adopted because a recumbent position is possible. At the middle-level temperature condition (65-85℃), the deep body temperature rose by about 0.8C. An increase in the systolic blood pressure and heart rate, and peripheral vascular dilatation and reduced peripheral vascular resistance lowered the diastolic blood pressure. On body weight measurement, 810-840 g of sweat was perspired. About 1.3% per body weight of dehydration was observed after sauna. In Chapter 3, the experiment was performed in healthy elderly subjects under the same conditions. An about 0.8C rise in the deep body temperature was observed. The diastolic blood pressure decreased, but the systolic blood pressure did not rise because of a reduced circulatory function in the elderly. On body weight measurement, 390-460 g of sweat was perspired. The subjective mood, inventory JUMACL, was significantly improved after the sauna, showing that the subjects were relaxed after the sauna. In Chapter 4, an experiment using a foot sauna was performed involving inpatients with heart failure. Focusing on insomnia, we investigated changes in their sleep condition after the use of the foot sauna. Physiological reactions were measured on the first day of 3-day sauna treatment. A maximum 0.4℃ elevation of the body temperature was observed during the foot sauna. No changes were noted in the heart rate or blood pressure. These findings revealed that the deep body temperature can be elevated at a small cardiac load even in heart failure patients. The sleep condition was evaluated employing the OSA and St. Mary’s Hospital sleep inventories and body movement measured using an actigraph. A significant change was noted in ‘dreaming’ in the OSA sleep inventory. Since the sleep score was generally improved, we are planning to continue sauna use as a part of nursing actively utilizing the thermal effect involving an increased number of patients.
著者
江藤 正顕
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-42, 1997

This essay deals with the literary method of Natsume Soseki's "Ten Nights of Dream". It seems to me that Soseki's method in this work is directly related to that of E.A.Poe's technique of literary 'perversity'. Soseki's diaries and memoranda also provide clues concerning dreams and the imagination as well as scientific or philosophical conceptions, which also relate to the literary method I analyse.
著者
八坂 哲雄 麻生 茂 宇田 暢秀 西田 迪雄 安倍 賢一 田中 卓史 永山 邦仁 室園 昌彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

惑星探査機の搭載機器能力を大きく向上させる方式として、惑星周回軌道に投入する際にアエロブレーキを用いることを目的とし、その基本技術として、地球周回軌道で小型人工衛星を用いた実証をすること、水素を主成分とする惑星大気の力学を極めることを柱として研究を行ってきた。最終年度には、地球周回実証機の打ち上げ機会が得られなかったので、フライトモデルにプログラム書き換え機能を付与すること、ユニットの統合などによる軽量化を計ることなどの高機能化を行った。非火薬分離機構の研究では、切り離し実験を進め、実用システムとしての可能性を見出した。釣竿を利用した伸展ロッドは環境試験を実施して実用の確認をした。姿勢・軌道の制御ではテザーの運動を利用して効果的な軌道制御を実現する理論を確立した。気体力学では、水素極超音速希薄流の解析を行い、水素分子の回転緩和、振動緩和、解離反応を考慮し、木星大気を対象としたエアロキャプチャーが実現できる見通しを得た。実験的にはデトネーション駆動型イクスパンションチューブを用いて水素極超音速流の発生を試み、8km/sを達成した。また、炭素系アブレータをアーク加熱空気流に曝し、分光分析によりCN Violet、C_2 SWANバンドをアブレータの上流側で観測し、スポーレーションの発生を確認した。さらに、惑星大気に突入したときの強い衝撃波を含む非定常大規模乱流を解明するため、精度向上を達成できるLES/RANSハイブリッド乱流モデルを検討し、新たなモデル表式を確立した。
著者
田中 良之 金 宰賢
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

まず、記紀にあらわれるモガリは期間に長短があること、また、古墳主体部の墓墳周辺の存在する柱穴が「殯屋」であるこという見解が一部で定説扱いされていることを確認した。このうち、古墳主体部周辺の柱穴については、柱穴が墓墳に切られた例もあり、墓墳内に石棺を囲んで掘られた例もあることから、造墓前や埋葬前の「結界」である場合があると考えた。この他にも、古墳築造時の作業用の覆い屋であるとの指摘もあることから、少なくとも「殯屋」は否定されることが明らかになった。次に、松山市葉佐池古墳1号石室出土人骨付着のハエ蛹を実態顕微鏡下で観察した。その結果、ハエの種はニクバエ属とヒメクロバエ属のものであることが明らかとなった。この両者のハエの生態が、前者は死後すぐに死体にたかり産卵する一般的なハエであるのに対して、後者は死体が腐敗した後にたかり産卵する種であることから、葉佐池古墳1号石室出土人骨は、死後少なくとも1週間前後は、ハエが活動するような明かりのある場所に置かれており、埋葬されていなかったことが明らかとなった。また、えびの市島内地下式横穴墓において、埋葬後腹部に発生したガスによって骨盤腔外に排出された便が検出されたことから、ガスが腹腔内に充満する期間、おそらくは2〜3週間の間にはモガリを終えて埋葬されたことがうかがえた。以上から、古墳時代のモガリは、古墳上で行われたものではなく、1週間前後以上で2〜3週間以内の間行われるのが通常であった可能性が高く、香川県宮ヶ尾古墳線刻壁画のような小屋状の施設が、これらの所見に最もふさわしい「殯屋」のあり方であると考えられる。また、記紀に記載されたモガリ期間の長さは、死者の階層の高さに基づく墳墓築造と葬送儀礼の長さを反映したものと考えられる。
著者
横尾 真 神取 道宏 田村 明久 船木 由喜彦 関口 格 坂井 豊貴 平山 勝敏 尾山 大輔 安田 洋祐 岡本 吉央 岩崎 敦 川崎 雄二郎 小野 廣隆 櫻井 祐子 東藤 大樹 上田 俊 伊藤 孝行 小島 武仁 小原 一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究プロジェクトでは、我が国の持続可能な発展のために、計算機科学とミクロ経済学の技術を統合/発展させ、経済的、社会的、環境的な観点からの要求をバランスした、希少な資源の望ましい配分を実現するメカニズムの設計理論を構築することを目的としている。具体的には、資源配分メカニズムの設計、解析、表現技術に関して研究を推進し、特に、制約付き両方向マッチングにおけるメカニズム設計、ノイズのある繰り返しゲームの均衡解析、協力ゲームに関する表現技術に関して顕著な成果が得られている(査読付き国際会議87件、国際論文誌74件、国内論文誌11件、著書8件、教科書の執筆4件、招待講演40件)。
著者
谷川 栄彦
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.559-579, 1973-06-30
著者
中本 康介
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2017

元資料の権利情報 : Fulltext available.
著者
川平 敏文 合山 林太郎 高山 大毅 山本 嘉孝 天野 聡一 岩崎 義則 吉田 宰
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「近世随筆」とは、17~19世紀の日本において、学者や文筆家が、事物の由来・人物の評判・市井の噂話など、種々雑多な内容を書き留めた書物群を指す。従来の「近世随筆」研究は、文学・思想史・歴史の研究者が、それぞれの分野的関心や研究ディシプリンに沿うかたちで行ってきた。しかし、本ジャンルのもつ内容的な広がりに着目するならば、それら三つの研究領域を横断的に貫く視点も重要ではなかろうか。このような考えのもと、本研究では、文学・思想史・歴史の研究者が一堂に会して、「近世随筆」の成立・展開・終焉などの諸問題について領域横断的に議論する。そして最終的には、その成果を資料翻刻と研究論集という形で、世に公表する。
著者
相澤 広記 横尾 亮彦
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

桜島火山雷には継続時間が短い(数10μs) パルスが数ms の間に複数解繰り返すタイプの放電と、複雑な波形がバースト的に長く(数ms) 続くタイプの放電の2 種類があり、それぞれ対地放電(CG) と雲内放電(IC) に対応することが分かった。CGの電流値はピークで数1000A, 電荷放電量としては数C程度で、ICはこれに比べはるかに小さい。桜島火山雷は気象雷と多くの点で共通であり、そのスケールは気象雷の1/10~1/100 程度である。発生メカニズムに関しては、これまで噴煙上昇中の粒子の衝突が帯電に重要と考えられてきたが、火道内部での帯電も重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られた。
著者
扇谷 昌宏
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究では、申請者の開発した末梢血誘導型ミクログリア様細胞技術を用いて、慢性疲労症候群におけるミクログリアの関与と客観的評価法の開発を目的に研究を実施した。慢性疲労症候群と類似した症状を示す線維筋痛症患者群において、ATP刺激後ではTNF-αの遺伝子発現が有意に増大していた。さらに興味深いことに、不安・抑うつの重症度(HAD)とTNF-α遺伝子の発現量との間に正の相関関係を認めた。これらの知見は、患者群における精神症状(抑うつ・不安)及びQOLがミクログリア由来のTNF-αによってコントロールされている可能性を示唆している。
著者
友永 省三
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ジペプチドであるカルノシン(β-アラニル-ヒスチジン)およびアンセリン(β-アラニル-1-メチルヒスチジン)は、抗酸化作用を有し、脳内で神経調節物質として働くことが知られている。一方、これらジペプチドは鶏胸肉抽出物に高濃度に含有されている。これまでに、鶏胸肉抽出物およびカルノシンの摂取が学習改善効果や脳内一酸化窒素産生効果を有することを発見した。今回は、鶏胸肉抽出物およびカルノシンの単回投与が強制水泳試験におけるラットのうつ様行動に与える影響を調査した。供試動物としてWistarラット(6週齢、オス)を用いた。馴化および前試験後、鶏胸肉抽出物経口投与2時間後に強制水泳試験を実施した。不動状態をうつ様行動とした。試験後、頚椎脱臼後に断頭し、視床下部および海馬を採取し-80℃下で保存した。後日、HPLC-ECDを用いてモノアミン類を分析した。同様の試験をカルノシンでも実施した。さらに両物質が自発運動量に及ぼす影響をオープンフィールド試験で調査した。強制水泳試験において、両物質の投与により、抗うつ様行動効果が認められた。海馬および視床下部の3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)含量は、両物質投与により減少することが観察された。MHPGは、ノルエピネフリンの主要代謝産物であるので、両物質は脳内ノルエピネフリン神経を抑制する効果を有する可能性が示唆された。両物質はオープンフィールド試験における自発運動量に影響を与えなかった。したがって、両物質における強制水泳不動時間の減少に自発運動の影響がないことが明らかになった。以上より、鶏胸肉抽出物の摂取により抗うつ様効果が認められ、その作用機構にはカルノシンが関与している可能性が示唆された。
著者
上岡 玲子 廣瀬 通孝 増田 敦士 村上 哲彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では複数の周波数帯のRFIDタグを糸にして布に織り込んだハイブリッドRFIDテキスタイルの自動織技術を実現し,広域空間内において人および移動体の位置検出を効率的に実現するため,布の特性を活かしたインタフェースの設計,位置検出システムを効率的に実現するためのマッピング生成装置の開発,およびハイブリッドRFID環境での位置検出の評価を行い,実用化の実現可能性について知見を得た.
著者
平岩 馨邦 徳田 御稔 内田 照章 杉山 博
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.547-574, 1958-11

The Islands of Oki lie in the Japan Sea about 30-40 miles off Matsue, situated at the northern coast of south-west Hondo, the main island of Japan. The depth of the sea between the both is under 200 m. The geologists think that Oki Islands had connected to Hondo by the Shimane Peninsula up to diluvial epoch. Dogo Island, the largest of the group, have an area of 216 km2; predominating there the mountainous landscape with scanty alluvial plains. The vegetation of this island shows an appearance of the climax of deciduous forest consisted of chiefly deciduous trees such as oaks. Dozen Islands are the general name for the group of islands which situate at some distance from Dogo. The topography of Dozen is generally flat, and simpler than that of Dogo. Everywhere of these islands are artificially cultivated, and the secondary vegetation mainly covers all the islands. No large-sized endemic mammal is known in Oki Islands, both in Dogo and Dozen ; Lepus brachyurus okiensis from Dogo being the largest one. As to the other mammals, Mogera wogura kobeae, Urotrichus talpoides minutus, Crocidura dsi-nezumi, Apodemus speciosus navigator, Apodemus geisha celatus, Anteliomys smithii okiensis are recorded from Dogo. Moreover, it is sure that Mustela sp. and Glirulus sp. (both may be characteristic subspecies) inhabit in Dogo, though they are not yet examined taxonomically. It is worthy of notice that the majority of endemic mammals from Dogo Island are distinguished from allied species of Hondo as subspecies by the previous systematic studies. To work on the interesting problem of subspeciation, we tried to make clearer the characteristics shown by the former workers as subspecies. We classified by ages all specimens of both Oki and Hondo respectively, and statistically compared both samples in each division. In this report, Apodemus speciosus speciosus of Hondo and Apodemus speciosus navigator from Oki were mainly chosen as the materials for the purpose above mentioned, and we touched a little to the other mammals. in short, we could point out some characteristics to be distinguished from typical subspecies of Hondo by statistical treatment in the specimens of Oki of Apodemus speciosus navigator (I) together with Apodemus geisha celatus (II), Anteliomys smithii okiensis (III) and Urotrichus talpoides minutus (IV). For the external characteristics, that both subspecies (I) and (II) of Oki have shorter tail in comparison with body length than that of typical subspecies of Hondo, that subspecies (IV) have longer tail on the contrary, that there is no recognizable external distinction in subspecies (III) (but being distinguished by the characteristics in the skull) and others became clear. We compared Apodemus speciosus navigator with Apodemus speciosus speciosus in detail basing on the abundant materials. Ages were identified by the pattern of grinding surface of m3. We divided all samples into five classes ; namely stage 1 (juvenile), st. 2 (subadult), st. 3 (adult I), st. 4 (adult II) and st. 5 (senile) by age, and compared both groups in each class of age respectively. By such comparisons, it became clear, in addition to lower tail ratio of navigator than that of speciosus, that on distance between the first upper molars (m1~m1) and length of upper molar series (m1~m3), the former from Dogo was somewhat longer than that of the later, and specimens from Dozen remarkably longer than speciosus. The portion represented by m1~m1 and m1~m3 grows most slowly in the skull. The skull grows anteriorily and posteriorily from that dead centre ; the anterior extension being greater than posterior extension. Judging from the fact that in the forest mouse from Oki this portion is longer than that of Hondo, especially in the animal from Dozen remarkably, we think that the animal from Dozen may be distinguished also from navigator of Dogo as another subspecies. However, we did not deal with taxonomical consideration of the forest mouse from Dozen, because of the insufficiency of materials. To lay the foundation on the studies of subspeciation of the small mammals from Oki Islands, the present investigation was planned to make more exact taxonomical treatment of the materials. We think that such a new trial as the classification by ages and the statistical comparison in each class was an excellent method for the purpose.隠岐島は, 島後と島前からなり, 前者は一つの大きな陸塊が中心になつているが, 後者は四つの小島の集合からなりたつている. これらは島根半島の沖, 30~40マイルに位置し地形的には該半島に連なるものである. その間の海の深さは200m以下で, 地質学者は洪積世の終りまで, これらの島は本土と陸地で連なつていたと考えている(湊,'54). 島後の内の主島の広さは246km2(東西18km・南北20km)で, 沖積平野は少く, 島全体が起伏の多い地形をなしている. 最高峰は焼火山(451.7m)で, その森林景観はシイ・カシの極相であるといつてよい. 島前は, どの島も地域狭小で, 高い山はなく, 植物相は貧弱である. 今回アカネズミを採集した西島は58km2の島で, その採集地点浦郷は耕地と耕地保護林からなる単純な環境であつた. 島後の哺乳動物は, 最初にAndersonによつて採集され, それが大英博物館のThomas('O5)によつて記載された. この際の採集物は, コウベモグラMogera wogura kobeae 16頭, ヒミズモグラ Urotrichus talpoides 1頭, ジネズミ Crocidura dsi-nezumi 1頭, オキアカネズミ Apodemus speciosus navigator 6頭, オキヒメネズミ Apodemus geisha celatus 4頭, オキノウサギ Lepus brachyurus okiensis 3頭であつた. そのうちで, オキアカネズミ, オキビメネズミ, オキノウサギはそれぞれ新亜種として記載された. つぎに徳田は, 1932年に同島の小哺乳類を採集し, その採集品について分類学的研究を行つた. その際に採集された種類は, クマネズミ Rattus rattus 1頭, オキビミズモグラ Urotrichus talpoides minutus 2頭, オキアカネズミ2頭, オキヒメネズミ1頭, オキスミスネズミ Anteliomys smithii okiensis2頭であつた. オキアカネズミとオキビメネズミに関しては, Thomasの記載を確認し, またヒミズモグラとスミスネズミに関してはその亜種的特徴の著しいことを指摘し, それらを新亜種とすることを提唱した(徳田,'32). 植物や哺乳類以外の動物の中にも, この島に産するものが分類学的に区別された例があるが, そのうちで佐藤井岐雄('40)によつて紹介されたオキサンショウウオ Hynobius okiensis はとくに著しく目立つものであつた. 隠岐島の動物や植物は, しばしば同地に特産のものとして取扱われたが, それらは分類学的に本土に産するものと密接な類縁性のあるものばかりである. 従つて前者は後者よりも分れて亜種化 (subspeciation) あるいは別種化 (speciation) の過程にあるものと考えてよい. 亜種化あるいは別亜種化の起る原因の一つとしては地理的隔離(geographical isolation)があると考えてよいが, それは外因である. 内因としてはそこに産する生物の生活の特殊性をこそ問題にしなければならぬ. さきに少しく触れたように島前・島後の島々の自然環境は単純であり, 比較的に複雑な島後においても森林景観は一つの極相としていいあらわすことができるような単純性をもつている. 哺乳動物相として見た場合に, 島後においてはウサギ, イタチ等が比較的に大形の哺乳類を代表し, それ以上のものはいない. 本土においては普通であるイノシシ, シカ, テン, キツネ, アナグマ, タヌキ等をそこには産しない. Thomasおよび徳田がさきに紹介した哺乳動物以外に, イタチとヤマネを島後に産することが確実であるが, いずれにしても同地の哺乳動物相は貧弱である. もちろんそれは分類学的観点からする同島の自然環境の記載に過ぎないが, 同島における生物の亜種化や別種化の問題を研究する際には, こういつた哺乳動物社会の要素の貧弱性という点がまず考慮されてよいと思う. 今回の研究は, 亜種化や別種化の過程そのものを対象としたものではなく, むしろそこへ到達する前段階的な研究を行つたものである. そのために, 従来の形態的研究をいつそう深め精密化しておく必要があると思つたので, その方法について一つの試みを行つた. 1956年11月に, 平岩・徳田・内田等は伯誉大山および隠岐島で小哺乳類を採集し, それらの採集物について詳細な比較研究を行つた. この際に烏取大学医学部の酉田弘氏も同行し, 小哺乳類に附着する外部寄生虫を採集した. さらに同医学部の長花操教授の御厚意により山陰地方一帯で近年採集された莫大な数の液漬標本について自由な研究を行うことが許されたので, この材料は主として頭骨や歯紋の比較研究資料に供した. すべての材料を統計的に取扱うことを念頭において計測を行い, これらのデータについてその統計学的吟味を併せ行つた. 哺乳類の外部形態は液漬標本で計測すると非常に不正確になるので, 隠岐産のものとの外形比較は, 徳田が1952~1953年に比叡山で, また1952年に上高地(徳本峠)で採集した標本類が主な材料として用いられた. この点で本研究はいくらか一貫性を欠くものとなつたが, 論文の目的が形態に関する吟味をいつそう深める方法を問題にしている点に読者が留意され, 批判をしていただければわれわれは非常に幸である.
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-87, 1987-03-28
被引用文献数
1

全国大会を控えた高校テニス選手を対象にして, 皮膚温バイオフィードバックによるリラクセーション・トレーニングとイメージ・トレーニングを組み合わせたメンタル・トレーニングを10日間実施した。その主な結果を要約すると, 次のとおりである。1. リラクセーション・トレーニングについて 1) 1日に2〜3回のセッションでは第1セッションで最も皮膚温の上昇が顕著であった。2) 10回のうち, 5回目から平均して1℃以上の皮膚温の上昇がみられた。3) 平均皮膚温は第3セッションで上昇していた。4) 個人別にみると各セッションで皮膚温が3℃以上を示す者が6名中5名みられた。残りの1名は2℃以上を示すことはなかった。また, 平均皮膚温が10回のトレーニングの中で半分以上32℃以上を示すものは, 6名中4名であった。5) リラクセーション・トレーニング中に皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が上昇し筋電が下降した。2. イメージ・トレーニングについて 1) 全国大会を前にして, 6日間のイメージ・トレーニングを実施することができた。 2) イメージ・トレーニング中に皮膚温の低下傾向がみられた。 3) イメージ・トレーニング中には皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が低下した時.筋電は向上した。3. 大会前の状態不安は試合が近づくにしたがって, 認知的不安や身体的不安が高まり, 自信が低下した。4. 試合はダブルスで2勝したが, シングルスで3敗して, 逆転負けであった。しかし.No.1ダブルスはその後の大会で優秀な成績をおさめるまでに成長した。
著者
宮本 一夫 宇田津 徹朗 田中 克典 三阪 一徳 小畑 弘己 上條 信彦 米田 稔 欒 豊実 靳 桂雲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究代表者が提起する東北アジア初期農耕化4段階説の内、第2段階の山東半島から遼東半島へのイネの伝播仮説を、土器圧痕調査で実証した。同段階の偏堡文化の朝鮮半島無文土器文化の成立への影響を、山東半島・遼東半島の土器製作技術の調査によって明らかにした。また、この段階の山東半島の水田の存在について楊家圏遺跡のボーリング調査によって示した。さらに第4段階の北部九州の弥生文化の成立年代を炭化米の年代によって明らかにした。