著者
緒方 靖哉 熊谷 健一 吾郷 眞一 北川 俊光 久原 哲 白畑 實隆 井上 治典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の成果として、研究代表者及び分担者の所属する九州大学大学院農学研究科遺伝子資源工学専攻と法学部の教官が担当し、遺伝子資源工学専攻及び法学部の学生を対象に「バイオテクノロジー概論」及び「バイオテクノロジー法学概論」と題する学際講義を、この三年間にわたり開催した。平成7年度には、「バイオテクノロジーと法」と題するシンポジウムを開催し、バイオテクノロジーにおける知的所有権の問題を取り上げ、バイオテクノロジーの分野における法の関与に関し議論を行った。また日本農芸化学会主催の第20回化学と生物シンポジウムにおいて、本研究分担者である法学部教官が全面的に協力し、遺伝子導入生物の法学的見地からの解釈について討論を行った。平成8年度には、LHL(Life-Human-Law)研究会を三回開催し、バイオテクノロジーにおける成果物の知的財産としての保護のあり方、生物資源情報に関する問題点と法学的な保護のあり方及び現実に行われたDNA鑑定と現時点におけるDNA鑑定の根本的な問題点などについて、活発な討論会を行った。また九州バイオテクノロジー研究会・平成8年度技術講習会を開催し、バイオテクノロジーにおける基礎技術の公開とその提供を行った。平成9年度においては、本研究主催で“理系と文系の情報交流の現状と今後の課題"と題する公開シンポジウムを開催した。本シンポジウムにおいては、財団法人工業所有権協力センター・広田洋二郎氏及び福岡県弁護士会・岩田務氏を招聘し、討論会を行った。さらに本研究分担者、農学、法学研究科大学院生をパネラ-とし、法学・農学研究科における大学院学際講義の現状の把握と今後に向けた問題点の整理・検討を行った。
著者
岩宮 眞一郎 高田 正幸
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

工業製品から発せられる音の感性的側面(音質)の経済的価値を評価するために,マーケティングリサーチの分野で用いられるコンジョイント分析を利用した検討を行った。本年度も,掃除機とドライヤーの稼動音を対象とした。先ず,市場調査により,これらの機械製品を特徴付ける属性(性能,デザイン,音,価格など)と水準を設定した。音属性の水準を設定する際には,A特性音圧レベルやシャープネス(音の鋭さの指標)の2種類の音響指標の値を基準としたが,A特性音圧レベルが変化したときにはシャープネスは一定であり,その逆も同様であった。全属性のさまざまな水準を直行計画により組み合わせた27種類の製品プロファイルを被験者に呈示し,各製品に対する選好度を回答させた。実験は2種類ある音属性を入れ替えて個別に行った。実験の際,音属性の各水準に対応する稼動音を被験者に聴取させた。実験には50名(男女各25名)が参加した。得られた選好度の回答結果にコンジョイント分析を適用し,製品を特徴付ける各属性の重要度や属性毎の各水準に対する効用値を求めた。各属性の重要度を比較すると,掃除機の場合,音属性をA特性音圧レベルおよびシャープネスとしたいずれの実験結果でも「価格」「付加的機能」「メーカー」の順に重要度が大きい。また,「タイプ」「集塵方式」「音」の各属性の重要度は「メーカー」属性よりもやや低い。ドライヤーの場合は「価格」「タイプ」「メーカー」「マイナスイオン発生機能」「音」の順に重要度が大きかった。音属性の1水準の変化に対する経済評価値を求めた結果,掃除機では5dBAのA特性音圧レベルの変化に対して3347円,0.25acumのシャープネスの変化に対して3692円と評価された。ドライヤーでは,6dBAのA特性音圧レベルの変化に対する評価額が591円であった。これらの評価額は価格属性4水準の平均の約11〜13%に相当し,昨年度行った仮想評価法による評価結果と近いものであった。さらに,稼動音を呈示せずに同様の実験を行った。得られた重要度や経済評価値と音を呈示した実験の重要度や経済評価値にはやや差があり,稼動音を聴取させる代わりに行った教示の影響が示唆された。
著者
日高 達 市丸 夏樹 冨浦 洋一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,構文構造の曖昧性解消に利用されてきた語の係り受け関係を句構造文法の統語規則により組み込む方法と,確率文法のパラメタを複合化することにより構文解析の正解率を改善する手法の開発を目的とし,次のような研究成果を得た.1. 語彙の共起制約を包含する文脈自由文法の構成法統語範疇(品詞)に基づく自然言語の句構造文法を,(統語範疇,head word,function word)の3組に基づく句構造文法に組み変えることにより,統語範疇の構造制約と語彙の共起制約の両方を満足する文脈自由文法の構成法を提案した.ここで,語彙の共起制約とは語の係り受け関係と文節における付属語の連接条件を指している.この研究成果は,従来難しいとされてきた,語彙の共起制約の句構造文法への組込み法を与えた点で評価に値する成果である.2. 確率文法の複合化手法の開発確率文脈自由文法の近似性能を向上するための複合化モデルを提案した.複合化することにより尤度の向上が計れることを示し,また複合化度mおよびm組の確率パラメタ推定式をBaumの不等式を用いて導いた.確率文脈自由文法の高速構文解析機であるEarleyの手法を拡張して複合化確率文法モデルの構文解析アルゴリズムを構成した.曖昧な構文構造を生成する文を収集し,正解の構文構造をランダムに選出して,標本集合とし,標本集合からm組の確率パラメタを(1)の推定式に基づいて算出し,(2)の構文解析手法により構文解析を行なって正解率を実験的に算定した.その結果,単独の確率文法を用いることに較べ,複合化確率文法の場合に正解率の向上が顕著であることを実証した.
著者
池上 徹 武冨 紹信 杉町 圭史 副島 雄二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

C型肝硬変に対する肝移植術後インターフェロン(IFN)治療を48週以上施行し得た症例を対象とした。Core領域アミノ酸変異、NS5Aの変異、IL28BSNPとVR率およびSVR率との比較を行った。IFN治療によるSVR率は47. 8%であった。IL28B major/major群(n=29)およびmajor含有群(n=20)のSVR率はそれぞれ68. 9%および15. 0%であった。また、major/major群の内、AA70/91(double wild=1)、ISDR(変異2個以上=1)、IRRDR(変異6個以上=1)で解析すると、合計ポイント0(n=5)、1(n=12)、2(n=10)、3(n=2)それぞれのSVR率は40. 0%、66. 7%、80. 0%、100%であった。またmajor群のSVR率は15/19=78. 9%、minor群のSVR率は33. 3%であった。
著者
ZHANG L. X. WANG R. F. HESKETH J. D.
出版者
九州大学
雑誌
Biotronics : reports of Biotron Institute, Kyushu University (ISSN:02890011)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.59-64, 1995-12

A date-of-planting study of time from emergence (VE) to floral bud initiation (R0, detection of floral bud primordium) and first flower (R1) was carried out at Urbana IL USA for soybean genotypes representing maturity groups (MG) 00 through VIII. Growing degree days (GDD), base 10℃ with a cutoff at 30℃, were calculated for VE-R0, R0-R1 and VE-R1 and were plotted against the averge photoperiod between events. We found a temperature relationship among GDD values between events for MG's 00-I; subtracting these GDD values from those of MG II or greater and plotting the residual or adjusted GDD (AGDD) values (or 1/AGDD values) vs. average photoperiod improved the linear or curvilinear relationship involved. Photoperiod effects on R0-R1 were significant for later -maturing genotypes (MG IV+or greater) as reported earlier. These phenology-temperature-photoperiod relationships greatly improve our ablility to predict phenology with computers for real world situations.
著者
土井 政和 岡田 行雄 正木 祐史 渕野 貴生 井上 宜裕 武内 謙治 金澤 真理 佐々木 光明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、(1)社会内処遇について理論的実証的検討を行い、(2)更生保護基本法要網試案を作成することであった。目的(1)との関連では、前年度までの研究の成果として刑事立法研究会編『更生保護制度改革のゆくえ-犯罪をした人の社会復帰のために』(現代人文社・2007年5月)を公表した。いくつかの事件をきっかけに誕生した「更生保護の在り方を考える有識者会議」の提言は、傾聴すべき改善案を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものであった。その方向性は更生保護法にも引き継がれている。それは、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向とは逆行するものと評価できよう。本書では、そこに欠けている歴史的視点や一貫した社会的援助の理念、保護観察対象者の法的地位及び国際準則等について分析検討を行った。これらの成果を生かす形で、更生保護立法に対する働きかけも継続的に行った。参議院法務委員会参考人意見陳述(6月5日):土井政和「更生保護法案についての意見」、更生保護法案審議中の参議院法務委員会等に対する「更生保護法案についての意見」提出(2007年5月4日)、「『仮釈放,仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集」(法務省:案件番号300110003)に対する意見書提出(2007年9月4日)、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定について(意見募集)」(法務省:案件番号300110006)に対する意見書提出(2008年3月10日)がこれである。目的(2)の達成のため、最終年度における研究会の過半を費やして、要綱試案策定に力を注いだ。その成果は、現在取りまとめ中であるが、龍谷大学矯正・保護研究センター2007年度研究年報に掲載の予定(8月刊行予定)である。
著者
石塚 英夫
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.529-579, 1968-03-20
著者
深田 智
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

将来の核融合炉燃料トリチウムサイクルあるいは既存の核分裂炉燃料処理水において大量のトリチウム排水が生じる。法規制値内であれば、そのまま放流できるが、規制値を超える場合、大量の水で希釈する必要がある。しかし、トリチウム濃度が高く、濃縮減容する必要があると、現在では、水-水素同位体交換法が重水減速材製造用に一部実用化されているだけであり、トリチウム排水濃縮に適用するためには、希釈トリチウムの濃縮技術が証明されていないこと、水-水素同位体分離に使用する白金系触媒が高価で、CO被毒の可能性があることなど実用化には多くの課題があり、現実的にそのまま保管貯蔵されているのが現実である。本研究者は、水蒸気吸着処理に用いられるゼオライト系吸着剤あるいはシリカゲルの軽水-トリチウム水間の同位体分離係数が、1.1〜1.2程度であることに着目し、これを連続同位体分離できる蒸留塔分離システムを構築し、より小型で簡便なトリチウム同位体分離システム構築確認の実験をおこなった。本科学研究費計画年度内におこなった、ゼオライト系吸着剤であるモレキュラーシーブ13Xや5A、シリカゲル吸着剤を同位体分離挙動全般について比較すると、ゼオライト系では平衡分離係数は大きいが、吸着と脱着速度が遅く(従ってHETPが大きく)蒸留塔の蒸気速度が遅いときのみ同位体分離が優れるが、同位体収量を上げるため蒸気速度が大きくすると、シリカゲル吸着剤による方が高い分離を示すことが分かった。これまでの研究成果はおもに、英語論文誌に発表した。最終年度であり、成果をまとめて研究成果報告書を完成させ、提出する。
著者
渡邊 公一郎 今井 亮 横山 拓史 板谷 徹丸 三谷 泰浩 小林 哲夫 本村 慶信 セティジャジ ルーカスドニィ 高橋 亮平 米津 幸太郎 糸井 龍一 池見 洋明 実松 建造 HARIJOKO Agung SHERSTEN Anders IDRUS Arifudin WARMADA I Wayan DUNCAN Robert A.
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インドネシア及びフィリピンの金・銅鉱徴地と地熱資源、タイ及びマレーシアの含REE花崗岩風化殼、フィリピンの斑岩銅鉱床および浅熱水性金鉱床についての地質調査を行い、鉱床生成条件の解析に基づく資源量と開発可能性の評価を行った。また、地質試料と室内実験データについて、地理情報システムとデジタルデータベースを併用した統合管理システムを構築した。
著者
渡邊 公一郎 米津 幸太郎 今井 亮 高橋 亮平 横山 拓史 中西 哲也 実松 健造
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

多くの鉱物・エネルギー資源を海外依存する我が国では、資源安定供給に向けて継続的に学術的な資源探査を行うことは必須であり、本研究では、レアメタル・金属・炭化水素資源を含む地下資源ポテンシャル評価のための新しい資源データモデル開発をアフリカ及び東南アジア各国の資源国で行った。結果、エジプト・シナイ半島の重希土類元素濃集帯、アルジェリア南部・ホガールでのレアメタル花崗岩体の発見、リビアでのリモートセンシングによる炭化水素資源の抽出を成し遂げた。東南アジア・モンゴルでは金、希土類元素、スズ、タングステン、モリブデンの新たな濃集地域の発見および既存鉱床の成因モデル開発を行い、探査・開発の指針を示した。
著者
諸橋 憲一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

核内受容体型転写因子であるAd4BP/SF-1は副腎皮質における各種遺伝子の転写を通じ、細胞の分化と機能維持に重要な機能を担っている。この因子の機能を通じ細胞が分化するにあたっては、クロマチン構造の制御を通じ、機能するエンハンサーが選択ならびに変換されるはずである。本研究では副腎皮質を対象として、Ad4BP/SF-1ならびにヒストン修飾を認識する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と大容量シークエンスをおこなった。その結果、Ad4BP/SF-1が遺伝子近傍または内部に存在するエンハンサーに結合することで解糖系遺伝子を制御していることが明らかになった
著者
岡田 裕子 平松 和昭 四ヶ所 四男美
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.55-60, 2003-10

山地流域における洪水流出現象は複雑な要素から成るため、個々の雨水流の持つ平均的法則性を通じて出水現象を把握する方法が有効である。本論文では、個々の雨水流の持つ局所的法則の平均化の手段として流域貯留量に注目し、流域貯留量と流出量の関係から出水形態に関する考察を行った。また、流出解析に必要なパラメータの最適値探索には、現在盛んに応用研究が行われている最適化手法である遺伝的アルゴリズムを用い、その探索能力を検討した。得られた結果を要約すると以下のとおりである。すなわち、1.遺伝的アルゴリズムは、短時間でパラメータの最適値探索を行うことができる。2.流域貯留量と流出量の関係は、ピーク流出量発生時点の付近では直線になり、その傾き(P)は流域貯留量7.6mmを境に変化する。3.この7.6mmは水文活性層の厚さに対応し、流域貯留量が7.6mm以下では中間流が卓越しており、7.6mm以上では表面流が発生し始めていると推察される。以上のように、流域貯留量と流出量の関係から試験流域における出水形態を考察することができた。
著者
高橋 劭
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

この研究は豪雨機構の研究のため豪雨雲内の降水粒子の分布を全降水粒子について求められるビデオゾンデを開発することを目的とした。直径200μmより大きい降水粒子についてはフラッシュ方式を採用、降水粒子が赤外線束を遮るとストロボが作動、フラッシュがたかれ、粒子映像を静止させてビデオカメラで撮影、1680MHzの搬送波を変調して地上に送信するものである。一方、雲粒子の粒度分布の測定のため新しく雲粒子ビデオゾンデの試作を行った。このビデオゾンデの原理はポンプで外気を吸い込み、透明なフイルム上に雲粒を捕捉、顕微鏡で撮影、CCDカメラの映像を地上に送信するものである。この雲粒子ビデオゾンデの特徴は、フイルムを流しながらフラッシュを作動して雲粒の映像を地上に送信するもので、フイルムの固定による外気の吸引では雲粒が次々と重なり見かけ上大きな雲粒が観測されるがこのフラッシュ方式の採用により雲粒粒度分布の測定誤差を最小限にすることが可能となった。室内実験でのビデオゾンデのテスト後、平成7年11月15日から1ヶ月間オーストラリア・メルヴィール島で行われたMCTEX国際プロジェクトに参加、降水粒子ビデオゾンデ16台、雲粒子ビデオゾンデ2台を雲内に飛揚することができた。ここでの雲はHectorと呼ばれ雲頂は18kmにも達し、強い雨と雷は想像を絶するものであった。我々のビデオゾンデで初めてHector雲の降水粒子の測定が行われ、氷晶域の異常な活発化、霰の融解に伴う雨滴のリサイクル、それに伴う大凍結氷の形成等が明らかになり10個/cm^2にも達する多くの氷晶数は雷活動の活発さを説明するものであった。全降水粒子ビデオゾンデの試作とこれらの飛揚によるHector雲の降水粒子の測定は当初予定していた降水機構の解明に大きな成果があった。
著者
赤池 紀生 賀数 康弘 鍋倉 淳一 ANDRESEN Michaelc 李 禎そぶ ANDRESSE M.C 野田 百美
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

延髄孤束核(NTS)において,染色された上行性大動脈弓由来降圧神経(ADN)は孤束を介してmedial NTSの樹状突起と細胞体に投射していた.ADNからの入力を受ける細胞は,ADNから単シナプス性入力を受けない細胞よりもカイニン酸応答が約2倍に増強していた.また,ADNからの神経伝達物質はグルタミン酸であり,後シナプスNTS細胞におけるグルタミン酸受容体はnon-NMDA受容体であった.また,後根神経節などの感覚器受容細胞にはVR-1(バニロイド配糖体)受容体が高密度に発現しているが,ADN神経終末にもVR-1受容体が存在しグルタミン酸放出が増強することが明らかとなった.しかしVR-1受容体のアゴニストのカブサイシン頻回投与ではむしろグルタミン酸放出量が減少したことから,後シナプスNTSニューロン上のnon-NMDA受容体が脱感作するか,もしくはグルタミン酸放出が枯渇する可能性が考えられた.さらに,VR-1受容体が高密度に発現している部位にはATP受容体の一つであるP2X3受容体が共存していることが1997年にCaterinaらによってNature誌に報告されており,medial NTSより得たシナプスブートン標本においても,P2X1,3,2/3受容体アゴニストのαβ-met ATPならびにカプサイシンともに,後シナプス細胞に影響することなくグルタミン酸の放出のみを増強した.以上の結果から,VR-1受容体とP2X受容体はグルタミン酸作動性興奮性神経終末部に共存してグルタミン酸の放出を促進し,その結果NTSニューロンの興奮を惹起して降圧効果を示すことが初めて明らかとなった.
著者
丸野 俊一 藤田 敦 藤田 豊 安永 悟 南 博文 加藤 和生
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

3ヶ年間の成果の概要をまとめる以下のようになる。1. 新たなMK式議論尺度の開発: これまでディスカション状況に積極的に参加し、創造的な問題解決行動を遂行していく上で不可欠なスキルや態度やモニタリング能力などを測定すす客観的な尺度がなかたので、新たに3つのコンポーネント(議論スキルの側面,モニタリングの側面,態度・価値の側面)から成り立つMK式議論尺度を開発した。また外部基準尺度を用いてその信頼性や妥当性を検証した結果、信頼性、妥当性は極めて高く、尺度の標準化へ向けての確信が得られた。2. 議論過程のモデル化: ディスカッション過程がどのように展開していくかについて、特にモニタリングに焦点を定め、モニタリングについて3位相モデル(pre-monitoring,monitoring in action,post-monitoring)を提案し、各位相ではどのような側面や内容が思考吟味の対象になるか、またそこで必要とされる思考特性とはどのようなものかについてのモデル構成を行った。3. モニタリング訓練効果: 自己反省的思考、前提の問い直し、常識への疑いなどを吟味することが創造的思考を育む上で不可欠であるという仮説の基に、複眼的思考を育成するようなモニタリング訓練を行い、議論スキルた議論に取り組む姿勢や態度の変容過程を検証した。4.「話し合い」活動に対する素朴認識: 大学生や小学生を対象に、「話し合い」活動に対する取り組みの姿勢や、話し合い活動の意義や価値に対する素朴認識を検討した。特に、教育現場では「話し合い活動」がどのように行われているのか、また子供たちはどのようにその意義や問題点を認識しているかについて体系的な調査研究を行い、対話型授業を効果的に展開していくための教授プログラムや教授環境設計の指針を示した。5. LTD学習法の実践: LTD学習法の手続き的知識やスクリプトを精緻化し、教育現場でその実践を繰り返し、LTD学習法が対人関係技法の開発や創造的・批判的思考の促進や他者への共感的理解の促進などに効果的であることを実証した。
著者
平野 宗夫 森山 聡之 橋本 晴行
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、雲仙において、リアルタイムに土石流の予測を行う手法を開発し、予警報システムの確立を計ることである。まず土石流の現地観測を行い、ハイドログラフのデータの蓄積を行う。また建設省九州北部レーダなどのデータを収集し、降水レーダデータベースを構築する。次に、得られたハイドログラフ、水位と雨量などのデータをニューラルネットワークに与えて学習させ、予測システムの開発を行う。本研究で得られた結果は以下のとおりである。(1)普賢岳周辺の中尾川、湯江川において、超音波水位計、電波流速計などからなる計測システムを設置し、流下してくる土石流を観測した。'94年、'95年は例年にくらべて雨が少なく、得られたハイドログラフは小規模であった。(2)雲仙の時間雨量データの累加値と総雨量を入力とし、土石流による堆積土砂量を出力とするニューラルネットワーク・モデルを構築した。そのモデルの検証のために、水無川における雨量-土石流堆砂量の関係を土石流発生毎に、過去の事例を学習-次の事例に対して予測させた。予測結果は、本モデルが水無川における土石流堆砂量の予測に有益であることがわかった。(3)ニューラルネットワークを用いて水無川における土石流の流出解析を行った。土石流の流出に関する土砂水理学的式をもとにしたニューラルネットワーク・流出モデルは1993年6月12-13日の実測ハイドログラフをモデリングすることができた。さらに、その流出モデルは、1991年から1993年に発生した土石流の堆積土砂量を推算し、実測堆積土砂量と比較を行い、有効性を示した。(4)土石流の発生予測は降雨パターンを土石流発生パターンと不発生パターンに判別することと考え、クラス分類を目的としたLVQ・モデルを利用し、土石流の発生予測精度の向上を試みた。発生予測に用いたLVQは従来の階層型ネットワークに比べて、単純なアルゴリズムでありながら、高い精度で発生と不発生の判定が可能であった。また、従来の階層型ネットワークについては、その関数近似の特性を利用した土石流の発生限界降雨の評価手法を提案し、累加雨量と発生限界理論をもとに、その妥当性を示した。
著者
南野 森
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究期間の全般にわたり、最新のフランス憲法学・原理論に関する文献を多数収集するとともに、現代フランスにおけるもっとも重要な法理論家であるミシェル・トロペールの論攷を5本翻訳し発表した。また、研究テーマに関連する雑誌論文を邦語・仏語で7本、図書も邦語・仏語で7冊刊行することができた。さらに、日仏の研究者交流にもつとめ、数回の共同研究会を日仏両国(うち一回は研究代表者の勤務校)において開催することもできた。