著者
安東 宏徳 服部 淳彦 西村 正太郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,単一LH細胞を用いてLHの合成と放出のバランスをとる分子メカニズムを明らかにすることである。まず始めに,溶血プラークアッセイ法を用いてサクラマスの下垂体初代培養細胞から単一LH細胞を同定すると共に,LH放出活性の定量系を確立した。また,単一LH細胞のLH合成活性を測定するため,LHβサブユニットのmRNA定量系をリアルタイムPCR法を用いて確立した。最小検出感度は約100コピーであり,単一細胞中のLHβサブユニットmRNAの定量には十分の感度を持っていた。また,遺伝子の転写活性を測定する系として,ヘテロ核RNAを検出するリアルタイムPCR系を検討した。単一細胞のヘテロ核RNAの測定には最小検出感度に近いレベルでの精度のよい測定が必要であることが分かり,より精度よく安定して測定できるようにさらなる条件検討を行うことが必要である。サクラマスを非産卵期と産卵期前に採集し,単一LH細胞の合成と放出の解析系を用いて性成熟段階の異なる魚におけるバランス制御系の機能の違いを調べた。溶血プラークアッセイによって同定されたLH細胞の数は,非産卵期の魚は産卵期前の魚に比べて少なく,放出活性が低かった。また,リアルタイムPCR法によって測定したLHβサブユニットのmRNAも非産卵期では低かった。しかし,GnRHに対する反応性を調べると,非産卵期ではGnRH投与により放出と合成の活性が上昇したが,産卵期前では放出は高まったが合成は変化しなかった。産卵期前ではLHβサブユニット遺伝子の発現調節に関わる細胞内シグナル伝達系のGnRH応答性が変化することが示唆された。次に,ディファレンシャルディスプレイ法の一つであるGeneFishing法を用いて,両時期のLH細胞の間で発現量の異なる遺伝子の探索を行ったが,これまでのところ候補遺伝子は得られていない。使用した任意プライマーの数が少ないためと考えられる。
著者
高原 淳 戈 守仁
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

表面自由エネルギーの低い末端基を有する高分子固体の表面には分子鎖末端が濃縮される。本研究では低表面自由エネルギー末端基を有するポリ(スチレン-b-4-ビニルビリジ)[P(St-b-4VP)]ブロック共重合体膜の表面ナノ構造に及ぼす末端基構造の影響について検討した。水素末端のP(St-b-4VP)-H及びフルオロメチル基末端のP(St-b-4VP)C_2C^Fをリビグアニオン重合で合成した。薄膜を調整し、表面組成はX線光電子分光(XPS)測定に基づき、また、薄膜の表面凝集構造及び力学特性を原子間力顕微鏡(AFM)及び水平力顕微鏡(LFM)測定に基づき評価した。423Kで90時間熱処理後のP(St-b-4VP)-HとP(St-b-4VP)-C_2C^Fの表面P4VP組成の膜厚依存性を評価した。P(St-b-4VP)-Hの場合、表面自由エネルギーの低いPS成分は熱処理より空気界面へ濃縮された。一方、P(St-b-4VP)-C_2C^Fの場合、P4VP側の低表面自由エネルギー末端基CF_3が空気界面に局在化ため、末端基に連接されるP4VPは高表面自由エネルギー成分であるにもかかわらず熱処理後も表面に配向している。またP(St-b-4VP)膜のLFM像は水平力の高い領域と低い領域を示した。高い水平力を示す相は表面自由エネルギーがカンチレバ-のSi_3N_4に近いP4VP相に対応すると考えられ、表面におけるP4VP相の存在が確認された。
著者
立石 潤 北本 哲之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

クロイツフェルト・ヤコブ病(以下CJDと略す)の感染因子として、プリオンが提唱されている。プリオンを構成する主な蛋白としてプリオン蛋白の存在が知られ、single copy geneによりコードされた蛋白であることが報告されている。プリオン蛋白遺伝子のノックアウトにてスクレピーに感染しなくなるという事実より異常プリオン蛋白そのものが感染因子である可能性が高くなった。我々は、この異常プリオン蛋白が感染初期から、マウスの脾臓やリンパ操置の濾胞樹状細胞(FDC)に沈着することを世界で初めて証明し、このFDCへの蓄積機序を検討した。まず感染因子の投与ルートによるるリンパ操置のFDCへの蓄積を検討すると、腹腔内または脳内投与とも、投与後100%FDCに異常プリオン蛋白が沈着し脳内にプリオン蛋白が蓄積する以前から検出可能であり、発症前にCJDが診断可能であることを明らかとした。また、ヒトからマウスへの初代接種実験ではFDCへの沈着がおこらず、また腹腔内投与のみではいまだ発症したマウスがなく、中枢神経組織外での種間バリヤー形成の一役をFDCがになっている可能性を指摘した。初年度でのSCIDマウスの結果と考えあわせると、末梢ルートによるCJDの感染には、まずFDCに異常プリオン蛋白が蓄積することが必要条件であり、もしFDCへの蓄積がみられないなら、CJDの発症もみられないという結論となった。一方、直接中枢神経系へ投与を行なうと、FDCに沈着がみられてもみられなくてもCJDは発症することが明らかとなった。
著者
水波 朗
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.355-386, 1958-03-20
著者
北田 栄
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

微生物由来の細胞毒素パラスポリン-2(PS2)が、特定の培養がん細胞やヒト摘出がんに対してがん細胞特異的に作用し細胞破壊を引き起こす。本年度、PS2の受容体に関する基礎研究と担がんマウスへの腫瘍効果や動態を評価した。昨年度、PS2に特異的に結合する細胞因子としてHep27タンパク質(Hep27p)を同定したが、Hep27p発現のノックダウンでのPS2感受性の低下は観察されなかった。またHep27pのPS2低感受性細胞への発現ではPS2の結合や細胞毒性は見られなかった。しかし、Hep27p発現低下がん細胞では細胞増殖が著しく低下しており、がん抑制遺伝子として機能している可能性を見出した。一方、PS2の立体構造情報を精査し、4箇所に各々蛍光標識反応を行った。このうち1種類の蛍光標識PS2分子が効率的に細胞に結合するものの毒性が低下することがわかった。そこで、がん可視化や標的運搬体としての生体分子としての作用を明らかにするため、蛍光標識PS2をマウス尾静脈より投与し、24時間後の蛍光シグナルを観察した。この結果、蛍光はがん部に優位なシグナルが観察されたが、他の主要器官にはほとんど観察されなかった。よって今回、がん識別能力のあるPS2プローブを得ることができた。一方、昨年度の研究結果の再現性を得るため、腫瘍モデルマウスに対するがん局部へのパラスポリン-2の注射投与を行った。KLN205、Colon-26ともに約24時間以内で劇的な腫瘍の縮小が観察された。対照投与群との比較では、パラスポリン投与群マウスで腫瘍抑制がみられた。
著者
高原 淳 戈 守仁 菊池 裕嗣
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

水面上に有機シラン化合物を展開し縮合重合することにより水面上に高分子有機シラン単分子膜を調整した。水酸基を表面に有するシリコンウエハ-基板に単分子膜を垂直引き上げ法で移しとった。基板には水酸基が存在するために有機シラン単分子膜の水酸基と反応し、単分子膜は基板に固定化された。表面への固定化をX線光電子分光測定装置(XPS)、フーリエ変換赤外分光に基づき評価した。また固定化単分子膜は、従来の非重合性の単分子膜に比べて、環境変化、周囲温度の変化に対して極めて安定であることを明らかにした。293Kにおいてアルキル基を疎水基に有するオクタデシルトリクロロシラン(OTS)は結晶を、フルオロアルキル基を疎水基に有するパ-フルオロオクチルエチルトリクロロシラン(FOETS)は非晶性の単分子膜を形成することを電子線回折に基づき明らかにした。結晶性のFOETSの混合分子膜をシリコンウエハ-上に調整した。原子間力顕微鏡(AFM)観察、水平力顕微鏡(LFM)観察により混合単分子膜が相分離構造を形成することを明らかにした。また相分離がOTSの結晶化を駆動力とすることを明らかにした。さらに水面上に結晶性の脂肪酸とフルオロアルキルシラン化合物の混合物を展開し縮合重合することにより水面上に混合単分子膜を調整した。AFM観察、摩擦力顕微鏡観察により混合単分子膜が相分離構造を形成することを観察した。さらに脂肪酸が結晶性のドメインを形成することを電子回折に基づき明らかにした。脂肪酸は基板に固定化されていないために溶媒で選択的に抽出され、直径1-2μmのシリコンウエハ-基板を露出した小孔を有する単分子膜が得られた。この小孔へ化学吸着により種々の有機シラン化合物が固定化できることを明らかにした。特にチオール基を有する有機シラン化合物(MTS)を小孔に吸着・配向させた有機シラン単分子膜は牛血清アルブミンを選択的に吸着・固定化することが明らかとなった。
著者
松原 孝俊 稲葉 継雄 出水 薫 原 智弘
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトの成果の一つは「『敗戦国』ニッポンに帰りたくなかった日本人」の検討を踏まえて、「在朝内地人」という作業仮説を提出し、「内地」の日本人とは異なるタイプの「外地」型日本人が出現していたと論じた。もう一つは「帝国日本が崩壊した直後の、米軍政庁による統治が始まるまでの『真空』地帯となった時期の朝鮮半島の歴史的考察」において、いかなる政治的メカニズムが作用し、いかなる社会的秩序が崩壊し、いかなる金融システムが機能不全に陥り、いかにして警察権・裁判権が移譲されていったかなどを、引揚者らに対するオールヒストリー調査を活用して、文字資料に顕在化しない事実の解明に努めたことである。
著者
吉田 昌彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)日米修好通商条約違勅調印問題が発生した安政五年段階では孝明天皇は、「勅問之人々」と結んで朝政の実権を掌握、幕藩制的朝政機構である「三職」の長である内覧の九条尚忠を失権させ、戊午の密勅を降下させたこと。その際、孝明天皇と「勅問之人々」は雄藩の軍事的支援を得られるように工作していたこと。(2)安政の大獄により朝廷は幕府のコントロール下に置かれたものの天皇を「君主」とするイデオロギー上の位置づけが不変であったため、和宮降嫁策などにおいて「勅命」を幕府は公式的には拒否できなかったこと。(3)島津久光率兵上京により孝明天皇は、初めて、その至高性を保障する暴力装置を得て勅諚を貫徹し得たのであるが、その際、国事御用書記という幕末朝廷における最初の国事関係ポストが設置されていること。(4)学習院は、その講義施設として藩主クラスに対する礼遇と公卿と大名との政治的会談や伝奏・議奏などとの面談を行え得るスペースと構造とを備えていたことによること。(5)朝廷は、国権の最高機関として、新たに「支配の対象」としなけらばならなかった諸藩の政治的要求や意見を聴取し朝廷の政策決定を伝え諸藩を指揮命令する為の伝達の場を新たに確保する必要があったが、その場として「小御所取合廊下」という天皇や国事御用掛が「政務」を行う空間とは距離を置いた学習院が定置されたこと。(6)儀礼レベルでは藩主との直接的儀礼(天杯拝受など)には宮中小御所という天皇固有の「空間」が設定されいたのに対し、朝廷役職者と藩主・世嗣が儀礼を行う「役向の儀礼」の場として学習院という「空間」が使用されていたこと。
著者
石 汝杰 中里見 敬 西山 猛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.『呉語読本』音声データ作成の準備研究代表者の石汝杰が、7-8月に中国へ渡航し、『呉語読本』の一部について録音を行った。しかし、音声の著作権の問題の解決、および音声データの整理に、さらに時間を要するため、公開には至らなかった。2.『呉語読本』増訂本作成の準備『呉語読本』初版本に未収録で、呉語文献として重要なものを選定し、校訂のうえ電子テキスト化し、注釈作成の準備を行った。この増訂本については、平成16年度の出版をめざして、科学研究費研究成果公開費を申請した。また、これ以外にも、呉語資料を発掘・収集すべく、関連する資料の調査を行った。3.研究会の定期的開催本科研費メンバーを中心に、九州大学の大学院生等を含めて、呉語の研究会を毎週水曜日午後に、定期的に継続して開催した。研究会において上記2の作業を行うとともに、『呉語読本』初版本の一部を日本語に翻訳した。常時参加者は、平田直子(学術振興会特別研究員・北九州大学非常勤講師)、朴春麗(九州大学大学院生)。この研究会は、本研究課題を推進する母体であるとともに、若手の呉語研究者を育成する格好のトレーニングの場ともなった。4.研究成果報告書の作成以上の研究活動の成果として、論文・翻訳編と資料編の2冊からなる研究成果報告書を作成し、呉語研究者・研究機関に送付した。第一冊に収録した論文は、《江蘇新字母》同音字表、川沙方言同音字表(以上、石)、古代漢語文法研究における時期区分の再設定(西山)、呉語小説における内面引用(中里見)、『古今韻表新編』における中古上声全濁音字について(平田)ほかの各編。翻訳は『九尾亀』第163回(一部)、『九美図』第28回除夕、『鉢中蓮』第8出の各編、さらに石による呉語文献書目札記を収めた。第二冊は「蘇州評弾記言記譜」で、蘇州評弾を歌詞と楽譜によって再現するものであり、音声データの書面版ともいえる貴重な記録である。
著者
大出 良知
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

わが国における刑事弁護は、明治初年に治罪法(1880年)によって近代的な刑事手続が導入されると同時に制度確立への第一歩を踏み出すことになった。とはいえ、公判段階(治罪法、旧々刑訴法)だけか、せいぜい予審段階になって(旧刑訴法)選任が認められていただけであり、官選弁護も限定されていた。これに対して、戦後改革は、日本国憲法34条、37条によって、被疑者段階からの弁護人依頼権を保障し、被告人に限定のない弁護士による国選弁護権を保障することになった。しかし、現行刑訴法が、被疑者段階からの弁護人「選任」権を保障したにとどまるかのような規定を置き、複疑者段階の国選弁護の規定を置かなかったこともあって、被疑者段階での弁護人選任率は、確たる統計数値はないものの低率にとどまっていたことは間違いない。そのことが、自白偏重捜査を消極的にであれ支えていた。それゆえ、学説は早くから当事者主義刑事訴訟法理論の体係化とともに、解釈論として被疑者段階の弁護権の伸張を主張してきた。自由接見交通の原則と取調立会権であり、その実効性を担保するための憲法の解釈可能性を前提とした被疑者国選弁護の導入である。これらの主張は、司法の危機といわれた司法状況の展開と弁護士の状況から生まれた「刑事弁護離れ」によって実践的には顧みられなかった。しかし、死刑確定囚4人までもが無罪であったというわが国の刑事手続の実情の打開に刑事弁護の充実・強化が不可欠であるとの認識の広がりが、日弁連刑事弁護センタ-を発足させ、当番弁護士制度を生むことになった。本研究は、このような状況変化までの経緯を総括し、その上で憲法34条、37条を基礎とした、刑事手続の全場面での弁護人の援助を可能にする解釈論を追求したものであり、その可能性を示している。
著者
大場 正昭
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

今年度は、多孔性構造を利用したゲスト分子および機能性分子ユニット間の相互作用と電子状態の制御を目的として、多孔性錯体材料{Fe(pz)[Pt(CN)_4]G}(1;pz=pyrazine,G=guest molecule)を基軸化合物として研究を推進した。昨年度までに、化合物1をヨウ素蒸気に曝すと、ヨウ素がPt(II)に酸化的に付加したヨウ素付加体が得られ、ヨウ素含有量によりスピン転移温度を300-400Kの間で連続的に変化させることに成功した。今年度は、機能性分子ユニットであるピラー配位子pzの運動とスピン状態の相関を検討した。中性子準弾性散乱および固体^2H NMRスペクトルより、10^<-13>-10^<-3>sのタイムスケールでpzの回転運動の温度変化を追跡した結果、pzは高スピン状態の細孔中で4-fold jump motionをしているが、低スピン状態になると骨格構造とpz間の立体反発により、その回転速度が3桁以上遅くなることを確認した。このpzの回転による回転エントロピーがゲスト吸着によるスピン状態変換に寄与することも、理論的に説明された。また、Fe(II)をCo(II)に変えた類縁体{Co(pz)[Pt(CN)_4]G}では、Co(II)周りの対称性変化に伴って光吸収が変化し、特にアルコール類に対して特異的な応答が観測された。さらに、ピラー配位子をCholest-5-en-3-yl-4-pyridinecarboxylateに変えて疎水場を導入した化合物では、ハロゲン化アルキルに対して特異的に応答することを見出した。機能性分子ユニットを合理的に集積して相互作用空間を作り上げることで、ゲスト分子によるスピン状態の変換に成功し、詳細な構造解析と理論計算からその機構を解明した。これらの結果を基に、機能性分子ユニットを変換することで、より特異的なゲスト応答性の発現にも成功した。
著者
綿谷 安男 幸崎 秀樹 濱地 敏弘 松井 卓 梶原 毅 中路 貴彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,多項式や有理関数の反復合成のつくる複素力学系からヒルベルト空間上の作用素のつくる特別なC^*環を構築し、異なる二つの分野の関係を考察することであった。Julia集合J_Rの連続関数環A=C(J_R)上のヒルベルト双加群X_RからToeplitz-Pimsner環T_X_Rとその商環であるCuntz-Pimsner O_R=O_R(J_R)を構成した。同様にしてC^*環O_R(C^^^)やO_R(F_R)も構成できた。Rが2次式R(z)=z^2+cの時でも、cがMandelbrot集合に属さない場合は、C^*環O_RはCuntz環O_2と同型になる。cがMandelbrot集合に属する場合は、c=0やテント写像を与えるc=-2のような特殊な時はその構造がわかった。今回の研究での最も大きな成果は、Rが2次以上の有理関数の時、C^*環O_Rはいつでも純無限の単純C^*環になることを証明できたことである。また、分岐点の構造がヒルベルト双加群X_R上のコンパクト作用素全体K(X_R)と、A=C(J_R)の作用の共通部分に対応するAのイデアルI_Xできっちり記述できることを示した。それにより、Fatou集合F_RとJulia集合J_Rによるリーマン球面の分解の対応物としてC^*環O_R(J_R)を大きい環C^*環O_R(C^^^)のFatou集合に対応するあるイデアルによる商環として実現した。さらに、有理関数Rのジュリア集合が縮小写像族の自己相似集合として実現できる場合を手がかりとして、コンパクト集合上の縮小写像族によるフラクタル図形での類似を研究した。特に重要な成果として、その開集合条件が対応するC^*環の純無限単純性を導くことを示した。またそのK群を計算し縮小写像族の言葉だけで書いた。テント写像やシェルピンスキーのギャスケットやコッホ曲線などの具体例についてもK群を計算したりそのtorsion要素を調べて、異なる縮小写像系が同じフラクタル図形を与えても、同型でないC^*環がでてくることもわかった。
著者
松本 詔
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度の主な結果は、コンパクト対称空間に対応するランダム行列に対して、その特性多項式の積の平均を計算したことである。それらの平均を、対称空間の制限ルート系に応じて、長方形ヤング図形に対応したジャック多項式または多変数ヤコビ多項式で表すことができた。特性多項式の平均をこのように一つの知られた直交多項式で表すことができたことは、ランダム行列の研究において、ジャックまたはヤコビ多項式が重要な役割を果たすことを示す。またこの結果に現れる直交多項式を見ると、特性多項式の平均について以下のようなことが考察される。すなわち、直交多項式のパラメータを見ると、ランダム行列の双対性が見える。というのは、円型のβアンサンブルを考えた場合、βに自然に対応するジャック多項式ではなく、4/βに対応したジャック関数が現れる。これは、βと4/βにそれぞれ対応するランダム行列間の双対性を示唆している。また、特性多項式平均が長方形のヤング図形で表されることは、前年度の研究代表者の研究結果から、それはさらにハイパー行列式で表されることも分かる。これは対応するランダム行列に対してハイパー行列式の理論を適用できる可能性を示唆している。
著者
石塚 英夫
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.585-619, 1967-03-25
著者
上野 照剛 伊良皆 啓治 関野 正樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

神経電磁気現象に関する脳機能情報を解析して,脳機能の動的機構の解明に迫るため,MRIによる神経電気活動の電流分布イメージングや細胞膜の水透過率を解析する手法を提案した.また,経頭蓋磁気刺激と脳波の同時計測により高時間分解能,高空間分解能を有する新しい脳機能ダイナミックスイメージング法を開発した.さらに,アミロイド沈着をMRIで観測するため,鉄の貯蔵蛋白質であるフェリチンに着目し,これに交流磁場を印加することで,鉄イオンのフェリチンへの取り込みとフェリチンからの放出に関する磁場の作用を調べた.
著者
山本 教人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

2年度間に、「九州一周駅伝」を報じた西日本新聞の記事をテキストに、新聞がどのようなやり方で駅伝を社会的に意味ある出来事して物語ってきたのかの検討を行った。また、駅伝についてのメディア・テキストを物語としてとらえ、その構造を分析する研究を行った。結果として、今日の新聞の駅伝記事は、主張を明確に表明せず、結論を曖昧にするような書き方で構成されていることが明らかとなった。このような記事の有する曖昧さは、今日の駅伝記事が個人情報を中心に構成されているということとともに、多様な解釈を読み手にもたらすことになると考えられた。また、九州一周駅伝の物語は、語りの多様性を限りなく広げていくようなやり方と、逆にそれに制限を課すようなやり方、そして制限された語りにさらに多様性をもたらすようなやり方で構造化されていた。こうした駅伝記事の物語としての構造が、読み手の多様な関心を引きつけることのできるひとつの要因であると考えられた。このような結果から、読者の「能動的な読み」とは、実はテキストの構造自体が可能とするものであるということができ、近年必ずしも評判が芳しいとはいえないメディア・メッセージの内容分析の意義が改めて確認された。
著者
遠城 明雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、1910〜40年代の地方都市における地域住民組織の存立形態および再編成と、その組織を基盤とした民衆運動の特徴を明らかにすることにある。主なフィールドは福岡県の主要都市であるが、比較研究のため下関市と仙台市でも調査を実施した。得られた知見は以下の通りである。(1)1910年代初に、全国的に米価騰貴問題が発生した際に、既存の地域住民組織がその一時的救済に大きな役割を果した。またいくつかの都市では各種議員の選出に際して、住民組織が中心となって「予選」を実施しており、これらの点から、当該期では地域住民組織が社会秩序の維持において中心的役割を果したことが明らかとなった。(2)1920年代半に、地域住民組織をめぐって行政、政党・政派、住民の間で矛盾と葛藤が高まり、その再編成が生じた。その背景には、都市化に伴う住民の社会階層の変化、普選による民衆の政治参加の拡大、社会の不安定化への対策として行政による「都市共同体」の創出、といった複数の要因があったことが明らかになった。(3)この再編成によって生まれた地域住民組織が民衆運動の基盤となったことが明らかになった。特に、門司市が中心となった昭和初期の電灯・電車料金の値下げ運動において、市会議員や既成・無産政党と並んで、町総代を核とした地域住民が運動の担い手どなり、地域独占事業への批判を展開したことが明らかとなった。(4)1940年、地域住民組織は国家によって再構築されるが、本研究からも明らかなように、この組織を行政の末端組織としてのみ理解することは不十分である。本研究は、近代化と都市化という現象を、民衆の視点と経験、行動様式から明らかにした。これは歴史地理的事実の解明にとどまらず、都市住民を主体とした「公共性」および「共同性」のあり方を再考する上でも、多くの知見を提供するものである。
著者
吉浦 一紀 筑井 徹 徳森 謙二 清水 真弓 後藤 多津子 河津 俊幸 岡村 和俊
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

良悪性の鑑別にMRIの造影パターンを判断材料にする事が多いが、信号強度自体は撮像法により異なり、各施設で共通した指標とはなりにくい。そのため信号強度自体を解析するのではなく、信号強度から造影剤濃度を算出し、薬物動態解析(コンパートモデル解析の一種であるTofts-Kermode model (TK model)を適応)することによって、組織固有のパラメーターを算出を試みた。その為には、造影剤投与後の造影剤濃度の把握が必要であり、算出方法の確立を行った。