著者
小山 智幸 小山田 英弘 陶山 裕樹 孫 玉平 伊藤 是清 船本 憲治 田中 利光
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

フライアッシュ、砕石粉、各種非反応性スラグ、焼却灰など、発生量が増大している種々の副産粉体を、コンクリートの性能を向上させながら大量に有効利用する方法を確立することを目的とし、既に得られた実験室レベルの成果をもとに、構造部材レベルにおける構造性能と設計方法ならびに耐久性能を総合的に検証した。結果、本コンクリートは構造体コンクリートとして使用できること,及びその調合設計,構造設計ならびに耐久設計の方法を明らかにした。
著者
大内田 研宙
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、膵癌における癌幹細胞及びその周囲に存在して癌幹細胞を支持している細胞群であるニッチを同定し、その生物学的特徴を明らかにした。さらに、同定した癌幹細胞や癌幹細胞とニッチの相互作用を標的として、膵癌根治を目指した治療法を開発すすめた。その過程においてCD10陽性間質細胞が重要な役割を果たしていることを見いだし,その分子生物学的性質を明らかとするために、膵癌間質細胞である膵星細胞株を樹立し、ソーティングによりCD10陽性膵星細胞を分取し、膵癌細胞株2種と分取した陽性膵星細胞あるいは陰性膵星細胞を間接共培養した。その結果、CD10陽性膵星細胞株が陰性膵星細胞株より膵癌細胞株の浸潤能をより増強させ、癌間質相互作用に深くかかわっていることが明らかになった。
著者
清水 周次 田中 雅夫 中島 直樹 岡村 耕二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来の遠隔医療システムにおける「画質の劣化」と「高価な機器の必要性」という問題点を解決した新しいシステムを開発し、研究教育用インターネットを活用して、アジアを中心とした医療施設へ高解像度の動画像を用いた遠隔医療教育の活動を展開した。各施設の技術的・医療的背景を調査後、外科手術や内視鏡を初め多くの分野においてライブデモンストレーションや遠隔会議を行った。またハイビジョンなどさらに新しい技術への取り組みも行っている。
著者
綿谷 安男 幸崎 秀樹 榎本 雅俊
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

Gelfand-Ponomarevは有限次元空間の4個の部分空間の直既約な配置について、完全分類を行った。全体空間が無限次元のヒルベルト空間の場合は榎本氏と代表者の共同研究で4つの部分空間の既約な配置の非自明な具体例を無限個構成することができた。今回の研究では、さらに、有向グラフ(quiver)に沿ったヒルベルト空間の部分空闇の配置の研究を試みた。有向グラフ(quiver)の頂点と辺をヒルベルト空間とその間の作用素として表すヒルベルト表現を研究する。特に包含写像を考えれば、部分空間を有向グラフに沿って配置する問題を含んでいる。有限次元空間では、直既約な表現が有限個しかないのはディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8に限るというGabrierの定理がある。この定理を関数解析の手法で無限次元化するのが、大きな目的である。鏡映関手とその双対性を無限次元のヒルベルト空間の枠組みで構成したい。無限次元の直既約なヒルベルト表現の非存在を仮定して,quiverがディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8に限られることは、去年度に示すことができた。しかしその逆である、quiverがディンキン図形のAn,Dn,E6,E7,E8であれば、無限次元の直既約なヒルベルト表現が存在しないということは、ようやくAnの時に示せたのが本年の成果である。さらにBrennerによる3つの部分空間の配置の標準分解を無限次元で特別なときに示せた。拡大ディンキン図形の無限次元の直既約なヒルベルト表現にたいしては、不足数という数値的不変量をFredholm作用素の指数を使ってE6,E7の時に導入することができた。
著者
森 雅生
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は次の3点であり、それぞれ以下のような研究結果となった。●プロトコルの数理モデル化攻撃可能なプロトコルを経験的に補完する例は知られているが、それをプロトコルすべてのセキュリティホールに適用すると冗長性を生じる。このことに注意して、まず暗号化関数と補助的な情報をメッセージに挿入するだけの数理モデルを考察した。これは数理的なモデルでありモノイドとなる。●正規の通信と攻撃的通信の分類一般にプロトコルは公開されており、これを悪用した攻撃は正規の通信との分別が困難である。上述したモノイドモデルでの攻撃的通信を分別することは可能である。●効率に関する考察冗長性はプロトコルの効率性と反比例する。このことについては上述のモデルだけでは議論が不十分であることが分かった。さらに一般的なモデルを構築することが必要となるが、メッセージ集合を文字列とし、プロトコルの実行はメッセージ間の通信と時系列関係によるグラフ(通信グラフ)と考え、文字列としたメッセージが通信グラフの頂点に割り当てられるような構造を考えた。しかしながら、予想していたよりも複雑な構造を持つことがわかり、この一般的なグラフモデルでのプロトコルの安全性と冗長性に関する理論的な結果を得るにはいたらなかった。さらなる研究が必要である。
著者
熊谷 朝臣 大槻 恭一 溝上 展也 市栄 智明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カンボジア熱帯季節林において、外来樹種は郷土樹種より光合成能力が高いが、乾季に気孔を閉じ気味になること、一方、郷土樹種は乾季も地中深くまで伸ばした根のおかげで雨季に貯えられた地下水を利用して気孔を開け気味にできること、が分かった。東南アジア熱帯雨林の主要樹種であるリュウノウジュを対象として降水遮断実験を行った。樹体内の通水分布を考慮した精密な樹液流計測により単木~個葉スケールの蒸散速度を算定することができ、蒸散と環境因子との対応関係から、乾燥条件の気孔開閉に及ぼす影響を考察した結果、リュウノウジュは乾燥に対して極端に気孔開閉による水利用の節約を行わないということがわかった。
著者
橋本 晴行 横田 尚俊
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本システムは、全体で9個のサブシステムの構成となることを示した。中でも、浸水被害予測と住民の避難行動のサブシステムが主要部分を形成している。そこで、まず、浸水被害予測のサブシステムとして、福岡市の那珂川下流域を事例として、家屋が密集した河岸における越流量公式の提案、及び、地上・地下空間に対する平面2次元浸水被害予測シミュレーション手法の構築を行った。これに基づく予測情報を住民に提供して早期避難を図るため、次に、避難のサブシステムについて、豪雨時における住民の予測・避難情報に対する危険性の認識と避難行動との関係性などを明らかにした。
著者
赤松 明彦 船山 徹
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究実績は以下のとおり.『ヴァーキヤ・パディーヤ』第二巻の注釈本文のテキスト・データベースを作成し、すでに入カ済みの第一巻、第二巻、第三巻詩節本文、および第一巻注釈(自注とプンヤラージャ注)とそれとを対照しつつ第二巻注釈のテキスト校訂を行った。『ヴァーキヤ・パディーヤ』第三巻に対するヘーラーラージャの注釈テキストを入力して電子テキスト化する作業を開始した。作成されたテキストデータベースをもとにして、主として当時の言語論と存在論とに関わる語彙を抽出し語彙研究を行った。たとえばdravya(「実体」)とかguna(「属性」)、kriya(「運動」)、jati(「普遍」)といった語-これらの語は、文法学における語彙であるとともに自然哲学派(ヴァイシェーシカ)などの存在論におけるカテゴリーでもある一を取り出し、そららのこのテキストにおける用法を明らかにした。同時に、関連する他のテキスト、『パダールタダルマサングラハ』、『ニヤーヤ・カンダリー』、『ニヤーヤ・ヴァールティカ』などにおける用法と比較検討した。本特定領域研究A04班「古典の世界像」班研究会における共同研究でなされた他領域の研究者との議論を通じて、インド古典期における「言語観」を、古代ギリシアや古代中国におけるそれとの比較を通じて考察することができた。言語哲学に関して現代哲学を代表する思想家であるJ・デリダやジュリア・クリステヴァの思想と、バルトリハリの言語哲学の比較を試みた。特に、言語の起源の問題と、エクリチュールとパロールの問題は、バルトリハリの言語論の枠組みを考える上でも重要な視点であることを確認した。
著者
坂内 英夫
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,文字列の圧縮表現が与えられたときに圧縮表現を展開せずに直接処理をする圧縮文字列処理のアプローチを,文字列パターン発見・文字列データ分類の分野に導入し,様々な関連問題に対して効率的なアルゴリズムを開発した.特に,文字列中の全 q-グラムの頻度問題に対しては,非圧縮の文字列から計算するよりも高速なアルゴリズムの開発に成功し,当該分野における圧縮文字列処理の有効性・実用可能性を初めて示した.
著者
杉山 あかし
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

本研究は、コミック同人誌即売会という文化活動をカルチュラル・スタディーズ的視点から実証的に分析しようとするものである。具体的課題は、若者たちの自発的な活動として形成されてきたこの文化的な場の構造・実態を明らかにし、その中から現代の若者文化が持つ可能性と、現代の若者が直面している社会的な課題・問題を明らかにすることである。本年度は、本研究3年目の最終年として、以下の各項目を実施した。(1)文献調査(2)一昨年度実施した郵送調査の分析作業の完成および(3)昨年度実施したカセットテープ郵送調査の分析の完成(4)コミック同人誌即売会(コミック・マーケット62)の観察(5)調査結果の妥当性を検討するための、コミック同人誌関係者ならびにコミック同人誌に詳しい研究者への聞き取り調査(6)報告書の作成本年度得られた知見のうち特徴的なことは、「コミック・マーケット」という場の日常化の進行であった。かつて、「コミック・マーケット」は文化運動、あるいは、祝祭論で言う「祭り」としての性格を持ち、日常生活とは一線を画した特殊な場として参加者たちから捉えられていたが、現在では単なる日常生活の一部分としてしか受け取られなくなっている傾向があった。同人誌出版物の書店での流通がめずらしくなくなるといった状況から見て、同人誌文化は社会において一般化する段階を迎えており、これはもはや同人誌文化が特殊なものではなくなり、文化運動としては意味を持たなくなって来ていることを示唆しているようである。大量の一般市民が大衆文化の生産者となり得るという事態は、これまでの大衆文化論の予想してこなかった事態であり、大衆文化論の新たなパースペクティプの構築が要求されていると考えられる。
著者
大城 渡
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.131-139, 2002-07-19
著者
田齊 秀章 平松 和昭 森 牧人 四ヶ所 四男美
出版者
九州大学
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.173-183, 2004-10

近年、流域の物理性がある程度考慮され、集中定数型と分布定数型それぞれの特徴が組み合わされたモデルとして、準分布定数型貯留モデルであるOP-MODELが注目されている。OPMODELは、地下水貯留部の水収支は集中定数型として扱い、地表流出および地下水涵養までを含めた表層および土壌部分は分割されたグリッドごとに分布定数型として扱うという特徴を持つ。すなわち、地下水は集中定数型の特長である単純な構造で表し、流路網を形成する地形や、時空間的に変動する流出寄与域については分布定数型モデルのパラメータで表現される。OPMODELの特長は、DEMから計算される地形指標をもとに、流域表層土壌の空間的な乾湿状態を計算し、地表流の発生を空間的に算定できる点にある。本研究では、御手洗水試験流域(流域面積0.095km2)を対象とし、山地小流域の長短期流出解析におけるOPMODELの適用可能性の検討を行った。7個の未知パラメータの最適値探索には単純GAを用いた。検討の結果、単純GAによる最適値探索で得られたパラメータを使用することで、ハイドログラフの低位部から高水部までを良好に再現可能であり、山地小流域の長短期流出解析にOPMODELが有効であることが明らかになった。なお、本研究で検討したOPMODELでは、流域が乾燥状態にある時に少量の降雨があった場合、計算ハイドログラフに流量の上昇波形が出現しないという問題点が見られた。これは、1.根群域の水収支に用いられた蒸発散位の過大評価、2.流域の表層土層厚は流域内で一様でないにもかかわらず、OPMODELの根群域の計算および関連パラメータは流域内の全グリッドで共通としていること、3.河道降雨の影響、などが考えられたがこれらの点は今後の課題としたい。
著者
河原 康雄 岡崎 悦明 土屋 卓也 宮野 悟 藤井 一幸
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

研究課題名「計算科学への圏論の応用」で行われた本研究は, 情報化社会を支える基礎理論である情報科学, 計算科学, ソフトウェア科学への数学的基盤を与えるために計画された研究であった. 以下, 本科学研究費補助金によって実施された研究実績を報告する. 1.研究代表者:河原康雄は, 初等トポスにおけるpushout-complementの存在定理証明し, 有限オートマトンによって受理される言語の基礎的性質をカテゴリー論的に整理すると共に, Arbib-Manes等のプログラム意味論を初等トポスにおいて考察した. これらの成果は従来から研究を蓄積してきた関係計算(relational calculus)を駆使して得られたものであり, 西ドイツのEnrigを中心としたグラフ文法等についての研究に新しい視点を与えるものであり, この分野の基礎を与えるものと期待される. 2.分担者:宮野悟は, 計算量の理論においてP≠NPの仮定のもとで効率よく並列化できると思われる, 即ち, NCアルゴリズムをもつ問題として, 辞書式順序で最初の極大部分グラフを計算する問題について考察した. 3.分担者:藤井一幸は, 古典的によく知られている4次元のCursey modelを任意次元の時空間上に拡大し, そのinstaton(meron-)like configurationsを具体的に構成した. さらに, 従来からの研究で構成していた高次元Skyrme modelsに付随したWess-Zumino termsを高次元hedgehog ansatsを使用して具体的に計算した. 4.分担者:岡崎悦朗は, 位相線形空間上の確率測度の研究を中心に研究を遂行し, 昭和62年8月よりCNRSの招きによりフランス・Paris V大学において研究を継続中である. 5.分担者:土屋卓也は, 境界要素法よって極小曲面を計算機を利用して計算し, 線形常微分方程式の特異点に関する山本範夫の定理を線形代数の範躊において一般化した. 現在, 土屋は米国・Maryiand大学において研究を発展させている.
著者
半田 純雄 北本 哲之 毛利 資郎 立石 潤
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.昨年度の研究実績の概要で,それまでのラジオアイソトープを用いたドットハイブリダイゼーションから安全迅速な制限酵素の切断長による方法を開発し,マウスのプリオン蛋白遺伝子変異の診断技術が向上したこと,同時に,個体について診断に基づき実施した戻し交配が6世代まで進んだ後,繁殖が困難になったので4世代まで元に戻って行なったことを報告した。ところが,うまく繁殖できたものの,その中にPrn-P^aとPrn-P^bとのヘテロが生まれず,次の世代につなぐことができなかった。したがって,F1世代から交配をやり直しており,もう少し時間がかかりそうである。2.その代わり,プリオン接種後の潜伏期間,病理などの感受性がプリオン蛋白遺伝子変異以外の要素で変わることをSCIDマウスで発見した。そして,それがコンジェニックマウスと同様にプリオン病のモデル動物として重要であることがわかったのでその概要を報告する。(1)SCIDマウスではクロイッツフェルトヤコブ病病原体を脳内接種後,プリオン蛋白遺伝子型がPrn-P^aのマウスと同様に150日程度の潜伏期間で発症するが,脳内接種では600日経っても発症しなかった。(2)この原因として,SCIDマウスでは,脾臓やリンパ節の濾胞樹伏細胞に異常プリオン蛋白が沈着しないという特異的な反応があり,それが示唆された。(3)このことから,SCIDマウスは,プリオン病の発病のメカニズムを解析するうえでも重要なモデル動物となることが判明した。(4)今後も,プリオン蛋白遺伝子のコンジェニックとSCIDマウスを組み合わせて,プリオン病解明のモデル動物開発を推し進めていきたい。
著者
立石 潤 高久 史麿 今堀 和友 辻 省次 井原 康夫 畠中 寛 山口 晴保 貫名 信行 石浦 章一 勝沼 信彦 中村 重信
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

当研究班では脳老化に伴う神経変性とくにアルツハイマー型老年痴呆を中心課題としてとり挙げ、その発症機序を分子生物学的ならびに分子遺伝学的手法により追求した。まず神経系細胞の生存維持に直接関与する神経栄養因子に関しては神経成長因子(NGF)およびそのファミリー蛋白質であるBDNF,NT-3,4,5を中心に特異抗体の作成とそれによる鋭敏な測定方法の確立、受容体のTrkA,B,Cなどの核酸、蛋白レベルでの検索で成果を挙げた。さらに神経突起進展作用を持つ新しい細胞接着因子ギセリンを発見し、逆に成長を遅らす因子GIFについてそのcDNAのクローニングから発現状態までを明らかにした。アルツハイマー病の2大病変である老人斑と神経原線維変化(PHF)については、主な構成成分であるβ蛋白とタウ蛋白を中心に検討を進めた。β蛋白に関してはびまん性老人斑は1-42(43)ペプチドから成り、アミロイド芯と血管アミロイドは1-40ペプチドから成ることを発見した。タウ蛋白に関しては、そのリン酸化酵素TPKI,IIを抽出し,それがGSK3とCDK5であることをつきとめた。さらには基礎的な業績として神経細胞突起の構成と機能、とくに細胞内モーター分子についての広川らの業績は世界に誇るものである。アルツハイマー病の分子遺伝学上の重要点は第14,19,21染色体にある。第14染色体の異常は若年発症家系で問題となり、わが国の家系で14q24.3領域のS289からS53の間約8センチモルガンに絞り込んでいた。最近シエリントンらによりpresenilin I(S182)遺伝子が発見され、その変異が上記のわが国の家系でも検出された。第19染色体のアポリポ蛋白E4が、遅発性アルツハイマー病のみならず早発性の場合にも危険因子となることを、わが国の多数の症例から明らかにした。第21染色体ではダウン症関連遺伝子とともにAPP遺伝子があり、そのコドン717の点変異をわが国のアルツハイマー家系でも確認した。さらに第21染色体長腕部全域の物理地図を完成した大木らの業績は今後、学界への貢献度が大であろう。これらの研究成果を中心に、単行本として「アルツハイマー病の最先端」を羊土社より平成7年4月10日に発行し、また週刊「医学のあゆみ」の土曜特集号として平成7年8月5日号に「Alzheimer病-up date」を出版した。