著者
矢部 光保 荘林 幹太郎 田中 宗浩 西澤 栄一郎 林 岳 高橋 義文 陳 廷貴 黄 波 田村 啓二 辻林 英高
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

中国では畜産廃棄物が深刻な水質汚染をもたらしている。そこで、中国江蘇省にある出荷頭数 2.8 万頭の養豚場と近隣農家を対象に、ふん尿由来のメタン発酵消化液を液肥利用する試験を行い、その環境的・経済的効果を評価した。3 年間で液肥利用農地面積は、ゼロから 40ha に拡大し、農家は肥料代を大きく節減できた。また、消化液の投棄が防止され、有機性廃棄物循環、水質環境の改善、温室効果ガス削減に、液肥利用は貢献できることが実証された
著者
有馬 久富 清原 裕 土井 康文
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1.福岡県久山町在住の一般住民を対象に生活習慣病予防健診を実施した。健診では、既往歴・家族歴の聴取、喫煙・飲酒習慣・身体活動度の調査、食事調査、身体計測、随時血圧測定、医師による診察、眼科検診、検尿、血計、血液生化学検査、心電図検査、胸写、骨密度測定などを行った。医師がすべての結果を説明し、適切な事後措置を実施した。2.久山町住民の心血管病発症の有無に関する予後調査を継続して行った。3.福岡県久山町の一般住民(40歳以上)を1961年から32年間追跡した成績より、未治療の高血圧と脳卒中発症との関連を検討し、国際高血圧学会で発表した。4.福岡県久山町の一般住民(40歳以上)を1988年から14年間追跡した成績より、至適血圧(<120/80mmHg)に比べて正常血圧(120-139/80-85mmHg)から心血管病発症率が有意に上昇することを明らかにし、日本高血圧学会で発表した。5.福岡県久山町の一般住民(40歳以上)を1988年から14年間追跡した成績より、高感度CRPと冠動脈疾患発症との関連を検討し、日本高血圧学会で発表し、Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biolog誌に論文公表した。6.福岡県久山町の一般住民(40歳以上)を1988年から14年間追跡した成績より、日本人における心血管病発症予測モデルを作成し、日本高血圧学会で発表した。7.福岡県久山町の一般住民(40歳以上)における断面調査の成績より、心電図におけるQT間隔とPulse Wave Velosity (PWV)との関連を検討し、Hypertension Research誌に論文公表した。8.国際共同研究であるINTERACT試験の成績より、脳出血急性期の積極的降圧療法が血腫増大を予防しうることを、国際高血圧学会で発表し、Lancet Neurology誌に論文公表した。9.下降圧療法の脳卒中再発予防効果を明らかにした国際共同研究であるPROGRESS試験のサブ解析の結果をKidney International誌およびNeurology誌に論文公表した。
著者
町田 光男 馬込 栄輔 塩野 正明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

KHCO_3、KH_3(SeO_3)_2、NH_3CH_2COOH・H_2PO_3及びそれらの重水塩の高温相の中性子構造解析から得られた水素結合中のプロトン、デューテロンの核分布を、ダブルモース関数をポテンシャルとする1粒子(プロトン、デューテロン)シュレディンガー方程式から得られる核分布で再現し、プロトントンネリングの存在を確認した。構造解析から得られる水素結合系の構造パラメータに現れる同位体効果は、トンネル効果の相違によることが判明した。また、NH_3CH_2COOH・H_2PO_3及びその重水塩の^<31>P核のスピン格子緩和時間を調べた結果、軽水塩と重水塩におけるトンネル効果の相異を反映する結果が得られた。
著者
石井 久美子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

インターネット文書の読解支援を動的に行うためのユーザインターフェース技術ならびに自然言語処理上の研究を行った。特に、ユーザがweb文書をブラウザで閲覧している際に、文書部分に関してアクションをとると、関連する情報を取得してユーザに動的に提示するweb mash up技術を中心に研究を進めた。内容は、web mash upをブラウザと連携して行うクライアントと、関連情報を抽出するサーバの研究に分かれる。クライアントについては特許を取得し産学連携上の成果につながり、プロトタイプを共に構築した学生が起業しその会社が育った。また、サーバに関しては関連情報を抽出する手法に関して種々の研究成果が挙がった。
著者
神野 健二 河村 明 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

気候変動や異常気象の発生が降水量変動に与える影響が危惧されている.本研究では気候変動と降水量変動との関係について統計的手法による解析を行った.具体的にはまず,大規模の気候場を表す指標として南方振動指数(SOI),太平洋数十年振動指数(PDOI),北太平洋指数(NPI),インド洋ダイポールモード指数(DMI)といった4つの気候指標を用いた.過去約100年間にこれら4つの気候指標が各月および各年単位で示したパターンを,非線形分類手法(自己組織化マップ)を用いて分類した.さらに,これら気候指標のパターンと福岡市の降水量及び気温との対応関係を調べた.その結果,4つの気候指標が特定のパターンを示した月に,対応する福岡市の降水量が通常より少なくなる傾向等がみられた、また,これら指標が年規模で示したパターンを調べた場合,SOI,NPIが通常年より高く,PDOI,DMIが通常年より低い値であった年の翌年は,福岡市の気温が通常年より低くなる傾向がみられた.また,西日本における重要な降雨期である梅雨期を対象にして,日本周辺の気象場の分類も行った,具体的には,日本列島周辺の気象場・成層状態を多次元格子点情報を利用し,非線形分類手法(自己組織化マップ)を適用することでパターン分類した,その結果,気象場・成層状態のパターンと西日本域の降水特性との関係が明らかになった,特に,西日本の豪雨と,湿舌と下層ジェットの水平分布のパターン,梅雨前線帯内の対流活動と関連がある対流不安定成層・中立成層のパターンとの間に明瞭な関係を得ることができた.
著者
吉井 亮雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

過去3年間の主要な成果としては次の3点がある。第一は、フランスにおいて初期「新フランス評論」誌にかんする多数の関連未刊文献を参照し、同時代の文学環境について具体的な知見を深めたこと。第二に、同誌と交流のあった文芸誌、とりわけ「ラ・ファランジュ」を調査し、その総合索引を作成したこと(この成果はフランスのジッド研究センターから出版予定)、第三に、アンドレ・ジッド=ポール・フォール往復書簡集校訂版を公刊したことである。
著者
松尾 剛
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、子どもが話し合い・学び合う授業を実現するための談話ルールの共有を図る熟練教師の実践知を明らかにすることである。平成19年度の調査から、授業の流れの中で児童が実際にルールを運用した際、話し合いの過程と結びつけてルールを明確化、意味づけていくという熟練教師の実践の特徴が明らかになった。本年度は、教育心理学、教育学、社会言語学などの諸領域における関連研究をレビューし、その中に上記の知見を位置づけ、本研究の理論的枠組みを精緻化した。授業における談話ルールの共有過程を捉えるため、「明示的過程」(教師が望ましい談話ルールを言語化して説明)と、「潜在的過程」(実際の話し合いの体験を通じて児童が談話ルールを学び取る)という二つの過程を整理し、各過程の詳細と、機能、その限界性について論じた。その上で、これらの二つの過程の両方を通じて共有化を図る事の重要性について論じた。また、平成19年度の調査において重要性が示唆された、授業の内外の文脈との関連について、上記のレビューで示された枠組みに基づきながら、詳細な検討を行った。小学校低学年の学級における、朝の会と国語の授業における相互作用過程を分析し、以下の知見を得た。まず、教員は朝の会の場を利用して、子どもたちが共通に体験していることを言語化し、共有する。その上で、教師はその体験を枠祖みとしながら授業中の話し合いの体験について意味づけを行う事で、子どもたちが授業において特定の談話ルールを運用する事の意味を実感できる状況作りを行っていた。これまでも理論的には授業内外のつながりの重要性は指摘されてきたが、今回、そのことを実証的に示したという点で、重要な研究の知見であると言える。上記のレビュー、調査はそれぞれ新たに論文にまとめ、教育心理学研究、心理学評論などの学会誌に投稿している(4月1日現在、審査中)。
著者
角 知憲 外井 哲志 大枝 良直 梶田 佳孝 松永 千晶 小林 敏樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

九州地方の中小都市を対象に、高齢化と人口減少がもたらす都市の閑散化・低密度化と高齢者の日常的な交通の実態を調査した。さらに、将来の年齢構成に基づいて交通需要を予測し、それを支える交通システムと都市の改造の方向性を検討した。その結果、軽便な軌道交通システムと進歩した情報システムを用いた効率的な公共交通網とそれに沿って住宅やショッピングセンターなどを適切に再配置する必要と、そのために都市の土地利用を誘導し規制する方策が求められることが判明した。
著者
小林 哲夫
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

乾燥土壌面からの蒸発とは,土壌表面が乾燥して,水蒸気が土壌中でのみ生成される状態を意味する。したがって,日中,土壌表面温度が大気温に比べて極めて高くなりうるために,土壌表面付近では水蒸気密度だけでなく温度勾配も水蒸気移動の駆動力となりうる。その結果,従来の蒸発速度測定法の多くは,乾燥土壌面からの蒸発には適用不能となる。このような温度勾配が水蒸気の駆動力となる蒸発過程を非等温蒸発と定義し,その機構を明らかにしてモデル化した。さらに,非等温蒸発時の蒸発速度測定方を開発し,その有効性を実証した。土壌層を湿潤土層(WSL),相変換層(PTZ)および乾燥土層(DSL)に分類し,それらが表面に露出している状態を,それぞれ,蒸発の第1,第2および第3段階とした。第1段階では水蒸気の生成(相変化)はすべて土壌表面で行われるが,第2段階では表面に露出している厚さ有限のPTZ内で行われる。第3段階ではDSLが表面に露出し,乾燥土壌面からの蒸発に相当する。温度勾配の影響はDSLと大気の境界面付近で作り出され,小対流(MCJ)によって接地気層内に運ばれる。その結果,接地気分層内に湿度逆転(日中,高度と共に比湿が減少する現象)が発現する。温度勾配の影響はDSL内では比較的小さいので,DSL内の水蒸気上昇フラックスを評価して蒸発速度を推定するDSL法を開発した。また,リモートセンシングによって測定可能な土壌表面温度と厚さ5cmの表土層内の平均体積含水率のみを用いて評価できるようDSL法をパラメーター化したDSLバルク法を提案した。両方法は,鳥取砂丘とマサ土を用いて検証され,有効性が確認された。
著者
丸野 俊一 加藤 和生 仮屋園 昭彦 藤田 豊 小林 敬一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

子どもの発達に応じた創造的ディスカッション(CDC)技能を育む学習/教育環境作りに関する3年間の研究成果は次の通りである: 1)"CDC技能を育む学習/教育環境作りの基本型は対話中心(「子ども主体の話し合い・学び合う」)の授業実践にある"という前提の基に、対話を中心とした授業実践作りに向けての「学びの共同体」作りを行い、現場教師の実践力の向上を図るアクションリサーチを展開した。3年間に渡る追跡研究の中から、身体化された実践知を客観的に可視化し、支援する教師成長過程モデルを構築し、その妥当性を検証した。 2)子どものCDC技能はどのように発達していくのかに関する発達段階モデルを、「態度」「技能」「価値」の諸側面を考慮しながら構築し、その促進を図る為には、どのような学習/教育環境作りが不可欠であるかについての縦断的な追跡研究を行った。 3)対話を中心とした授業実践を行う為には、教師は「新たな授業観」(授業とは子どもと協同構成するもの)のもとに「子どもの視点を取り入れた事前指導案作り」を行い、実践の中では「最適な心理的距離」(自分の感情に振り回されない、遂行上の責任性)の取り方に注意し、3つの位相(授業前、授業中、授業後)での省察的思考に熟達化していくことが不可欠であることを実証した。 4)子どものCDC技能の育成には、"対話を支える談話的風土作り"(グランドルール作り)が教科を超えて必要であるが、創造的・批判的思考が広まる/深まるような対話が生まれる為には、具体的な授業実践の文脈の中でグランドルールの重要性を認識する/体験するような教師からの働きかけが不可欠である。 5)教師の"対話を中心とした授業実践力"の向上と、子ども達の創造的・批判的なCDC技能の向上との間には、車の両輪のごとく、切るに切れない双方向性の関係があり、一つのシステムとして機能する。
著者
野々村 淑子
出版者
九州大学
雑誌
大学院教育学研究紀要 (ISSN:13451677)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.79-105, 2000

Chatharine Esther Beecher was one of most famous women in 19th century America. She made efforts to advance institutions for women's education and wrote many advice books for women. Her major books on housekeeping are said to be the foundation of the modem domestic science. This paper discusses what 'motherhood' is, and how it functions. 'Motherhood' is the most important image in C. Beecher's works. Yet Woman's Profession as Mother and Educator, With Views in opposition to Woman Suffrage, written by her in 1872, is the only book which has the key word 'mother' in the title. C. Beecher says being a 'mother' is the most suitable work for women. She believes women should live in 'women's sphere', as emphasized in 19th century America. This idea is based on Providence in Christianity, and requires women to obey 'the family states'. However, she says almost nothing about the real and practical mothering. 'Motherhood' in her thought acquiring skills as 'mothers', C. Beecher's advice books on housekeeping were textbooks for girl's education and intended to give skills made them to earn for themselves. This image in C. Beecher's thought was the basis for two ways of thinking about 'motherhood' in the late 19th century and 20th century. The first was the 'maternalization' of public affairs. Since the late 19th century, Women have marched into the public arena, especially in the fields of public education and social welfare, in the name of 'motherhood'. The second was 'scientification' and 'professionalization' of 'motherhood'. The advice books to mothers came to be written by doctors and psychologists. These images of 'motherhood', regularized and rationalized, would provide the important idelolgy for thought about not only parent-child relations but also modern systems of 'education'.
著者
阿知波 紀郎 塩野 正明
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

アダマンタン誘導体のプラスチック結晶相転移および配向グラスに関する研究は、静的及び動的分子配向相関に関する興味からである。我々は、'だるま' 分子であるアダマンタン誘導体のうち、'あたま'が比較的大きな1-ブロモアダマンタン 及び、'くび'が長い1シアノアダマンタンを分子配向の典型物質として 選びx線及び中性子散乱実験により分子配向相関に関する研究をおこなった。この科学研究費をもちいて、主として、プラスチック相および配向グラス相での分子配向相関の研究のため、温度変化のできる単結晶用x線散漫散乱測定装置を開発し実験を行った。さらに、分子配向の動的挙動については 主として中性子飛行時間差法による中性子非干渉性非弾性散乱実験を行った。各年度に取り組んだ具体的な研究テーマは以下のとおりである。1)1-ブロモアダマンタンの分子配向の段階的秩序化による構造相転移の研究。単結晶X線結晶構造解析によるプラスチック相、セミオーダー相、オーダー相の構造比較。2)1-シアノアダマンタンのプラスチック相と配向グラス相の分子配向相関およびダイナミックスの単結晶X線散漫散乱による研究。3)1-シアノアダマンタンのプラスチック相から低温に単結晶のままクエンチして得られた配向グラス結晶を、グラス転移温度直下で保ち、時間的に進行する局所分子回転配向秩序をX線ブラッグ反射および、散漫散乱により追求し、新散漫散乱を(2h,1±δ 0)に見いだした。中性子非干渉性非弾性散乱実験により各相のダイナミックッスを調べた。
著者
松下 恭之 水田 有彦
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

当科でおこなった骨結合型インプラントと天然歯との連結症例で破折したものを走査電顕にて観察を行ない、いずれも金属疲労が主因であることが明らかとなった。そこで未使用のインプラント体について繰り返し疲労試験を行ない、単体使用では疲労はおきない程度の強度を有していると考えられた。しかしながら天然歯と連結した場合には、天然歯への荷重がインプラントネック部での最大引張応力値の増加に関与していることが示唆された。またことにその支台となる天然歯の周囲骨レベルが減少することがインプラントネック部で引張応力の集中をまねき、破折することが示唆された。次に三次元有限要素法解析により、1-インプラントシステム(天然支台歯1本とインプラント1本からなる3ユニットブリッジ)では、天然歯とインプラントとはリジッドな連結をするのが最も骨内応力を緩和できることが示唆された。半固定性の連結ではアタッチメントの位置が近心でも遠心でも、またメール・フィメールの位置関係が変化しても、骨内応力に大きな違いはみられなかった。さらに2-インプラントシステム(天然支台歯2本とインプラント2本のブリッジ)ではインプラント同志を連結して、天然歯とはつながない、フリースタンディングの状態とすることが骨内応力の緩和、上部構造の長期安定にもっとも効果のあることが示唆された。
著者
大島 久雄 勝山 貴之 古屋 靖二 中村 未樹 高森 暁子 道行 千枝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

『テンペスト』受容におけるテキストと言説の関係性とその役割を受容事例分析により明らかにし、受容におけるインターテキスチュアリティの重要性を検討し、インターテキ・スチュアリティ受容批評理論の構築を目指した。特に植民地主義・労働、記憶・歴史、モンスター・異常出産、所有・支配、階級・衣服、メタシアター、王政復古期性・政治等の諸言説とのインターテキスチュアリティの受容に意味機能を具体的に検討し、原作上演当時から現代の翻案『プロスペロの本』や『蜷川テンペスト』に至るまでの個々の『テンペスト』受容について、その歴史性・地域性を重視した事例研究を行った。研究成果としては、The VIII World Shakespeare Congress(Brisbane,2006)において"The Discourse of Master-Servant Relationships in The Tempest"(大島)、第46回シェイクスピア学会(早稲田大学,2007)において「『テンペスト』における衣服」(高森)等、研究発表を行い、各分担研究は報告書兼論集『「テンペスト」受容研究:テキストと言説とインターテキスチュアリティ』(2008)に論文としてまとめ、国内外関連研究機関・研究者に配布した。各時代・地域でのテキストと言説が織り成す多様なインターテキスチュアリティの中、近年のシェイクスピア国際化の加速により、『テンペスト』は、多岐に分化するシェイクスピア受容の典型であり、受容研究におけるインターテキスチュアリティの重要性は益々高まっている。The 7th Triennial Shakespeare Congress(Rhodes University,2007)での"Location and Intertextuality in Ninagawa Tempest:Zeami/Prospero on a Sado Noh Stage"、シェイクスピア協会主催マクラスキー教授セミナー(同志社大学,2006)での"The Throne of Blood and Kurosawa's Intertextual and Crosscultural Transplantation of Macbeth"等のシェイクスピア受容事例研究を行い、受容研究へのインターテキスチュアリティ批評理論の有効性を検証した。
著者
寺岡 靖剛 永長 久寛
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

Sr_2AlNbO_6はペロブスカイト(ABO_3)型構造を持ち、Al^<3+>とNb^<5+>がBサイトを占有している。これら2種類の金属イオンは焼成温度の増加に従いBサイト内で規則配列し、結晶内に-Al^<3+>-O-Nb^<5+>-交互規則配列結合を形成する割合が高くなる。したがって、Sr_2AlNbO_6を用いることで化学組成や結晶系を変えることなく、金属イオン規則配列構造と触媒機能との相関を評価することが可能と考えられる。そこで、金属イオン規則配列構造に由来する協奏的触媒機能の発現に対する知見を得ることを目的とし、規則配列度の異なるSr_2AlNbO_6を合成し、結晶構造を評価した。さらに、結晶構造が吸収スペクトルや光触媒活性に与える影響を検討した。規則化度の異なる試料の吸収スペクトルからEg値を見積った結果いずれも4.1eVとなり、Eg値と規則化度との相関はみられなかった。一方、メタノール水溶液を用いた光触媒活性評価の結果、長時間焼成することでH_2生成活性は低下することがわかった。触媒の比表面積は約3~4m^2・g^<-1>と同程度であったことから、活性の差は比表面積では説明できないと考えられる。このような光触媒活性の低下はAg光還元反応にも同様に認められ、反応の種類に依存しなかった。以上の結果から、Sr_2AlNbO_6の光触媒活性は規則化度の向上により低下することが示唆された。このように協奏的触媒機能の発現には至らなかったが、バルクの金属イオン配列の規則化と触媒機能の関連を初めて明らかにした。またバルクの規則配列構造を反映した多金属協奏活性的構造表面の創製として、立方晶のBa_2CoWO_6と単斜晶のCa_2CoWO_6を比較した。その結果、Ca_2CoWO_6において(-201)面上の金属イオン規則配列構造を反映した表面構造が形成され、それが触媒活性向上に関連する可能性が示唆された。
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
久保 勘二
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

近年,筆者はトロポノイドの構造的な特徴を活かした機能性ホストの開発を行っている。これまでに,トロポノイドに種々のイオノファー(アームドクラウン,アザクラウンエーテル,大環状ポリアン,シクロファン)を組み合わせたトロポノイドイオノファーを合成し,その金属イオンに対する錯体形成挙動を評価した。今回,蛍光分子(アントラセン,ナフタレン),トロポン並びにジアザクラウンエーテルを組み合わせたトロポノオイドイオノファーを合成し,その光化学的性質と重金属イオンに対する錯形成評価を試みた。N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルはメタノール溶液中9-メチルアントラセンの発光強度の400分の1という非常に弱い発光を与えた。この発光強度の現象は窒素原子から励起されたアントラセンヘの光誘起電子移動による蛍光消光により説明することができる。また,各種金属イオン存在下での蛍光スペクトルを測定したところ,N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルは平衡定数・発光強度変化共に高い銅イオン選択性を示した。ビスアンスリルメチルジアザ-18-クラウン-6エーテルはカリウムイオン選択性を示すことから,N-アンスリルメチル-N'-トロポニルジアザ-18-クラウン-6エーテルは銅イオン蛍光分析試薬として利用できる。一方,トロポノイドアザマクロサイクルの分子集合体への応用として,トロポノイドアザマクロサイクルをコアに有する液晶化合物を合成した。ビストロポニルピペラジン誘導体はエナンチオトロピックにスメクチックC相を発現することを見い出した。さらに,そのX線結晶構造解析の結果から,ビストロポニルピペラジン誘導体は結晶状態で,分子長軸が層法線に対して30度チルトした層構造を形成していることを見い出した。
著者
柚木 貴和
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、ヒト膀胱平滑筋細胞のATP感受性カリウムチャネル(KATpチャネル)におけるKir及びSUR蛋白のサブタイプの決定を行い、膀胱平滑筋KATPチャネルの分子実体の解明を第一の研究目的とした。さらに現在開発中の膀胱選択性KATPチャネル開口薬や従来のKATPチャネル開口薬を用い、モルモット及びヒト膀胱平滑筋収縮に及ぼす効果を詳細に検討し過活動膀胱治療薬としての有効な薬剤を検索することを第二の研究目的とした。第一の研究目的であるが、ヒト膀胱平滑筋のKATpチャネルは電気生理学的実験および分子生物学的実験よりKir6.2+SUR2Bという構造が主に機能し、加えてKir6.2+SUR1という構造も一部機能していると考えられた。このようなサブタイプの組み合わせは血管平滑筋などの他の臓器のKATpチャネルとは明らかに異なっており、膀胱選択的なKATPチャネル開口薬の開発の可能性を期待させるものであった。第二の研究目的については、膀胱選択的といわれているZDO947と他の薬剤を比較しながら、さらに膀胱平滑筋と血管平滑筋を比較しながら検討した。その結果、ZDO947は他の薬剤より低濃度の領域から膀胱平滑筋のカルバコールによる収縮を抑制し、さらに血管との比較によって他の薬剤より優れた膀胱選択性を有することが明らかとなった。またこの膀胱選択性にはSUR1の発現が関与している可能性も示唆されたが、それについては現在検証中である。さらにKATPチャネル開口薬を臨床応用に近づけるために、現在過活動膀胱のモデル動物を作成し、それらにおける各種KATPチャネル開口薬の作用、副作用も検討する実験を試みている。
著者
清水 宏祐 堀 直 小松 久男 林 佳世子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過去の海外調査で収録した100本以上のビデオ映像をデジタル化し、HDDに収納して、プログラム名を付け、見たい箇所をすぐに検索して提示できるシステムを構築した。プログラムは200以上に及び、バザールでの商取引の比較映像(新彊、トルコ、エジプト)では、手を握って交渉し、合意に達すると離すという、イスラーム世界特有のバイアという手続きを即座に、、見比べることができるようになった。また、バザールの商店構成が年とともに変化する情況を比較したり、市壁が新たに改修される様子を、新旧の比較対象が行えるようにプログラムした。12月9日の九州史学会は、各研究者から趣旨説明、個別報告が行われた。各種の映像資料の提示は、大きな反響を呼び、「今日、ここから新しい映像歴史学が誕生した」との印象を与えるものであった。この成果を生かし、さらに映像の集積と分析を行い、映像資料を歴史史料として定着させる努力を続ける所存である。成果の全容は、報告書『現地調査で収録したビデオ映像のデジタル化と情報共有ネットワークの構築』として刊行した。
著者
北條 純一
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

(1)セラミックス技術の公開いままでの調査を基礎として、それぞれの技術革新の歴史的展開を分析し、その技術展開の必然性をまとめ、将来の技術発展に貢献する知識基盤の集大成として国際セラミックス総合展2009に参加し、セラミックスアーカイブズについて出展した。関連分野の研究者から活発な質問を受け、本研究が高く評価されている事を実感でき、今後の研究の進め方について大いに役立つものであった。また、第5回シンポジウムでセラミックスアーカイブスとして最後のまとめについて講演を行った。(2)インターネット博物館セラミックスに関するバーチャルな博物館を設立するため、これらの成果を日本セラミックス協会の「セラミックス博物館」として公開した。http://www.ceramic.or.jp/museum/(3)研究成果の出版アーカイブズ出版小委員会を2月に開催、出版方針について検討し、英語版として出版することとした。