著者
西 隆一郎 金子 有理 福永 和久 鶴成 悦久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_941-I_946, 2020 (Released:2020-09-28)

2014年10月に来襲した台風1418号と1419号により,鹿児島県奄美大島の南南東側で太平洋に面する瀬戸内町嘉徳集落前の嘉徳海岸で顕著な侵食被害が生じた.この時,後浜の侵食に加えて,嘉徳集落の墓地や民家の数m近くまで海岸砂丘が侵食され,砂丘としては20m程度後退した.台風銀座とも呼ばれる地域でもあり,台風は毎年来襲する可能性が高い.加えて,海岸砂丘上にある集落を護るために海岸保全の要望が地域住民からあった.一方,海岸保全だけでなく,絶滅危惧種オカヤドカリを含む海岸生態系への影響や景観および世界自然遺産登録への影響を考慮する必要性のある海岸でもあった.そこで,本論文では,台風1418号と1419号に伴う本海岸の海岸侵食機構の解明と,経年的な海岸過程について明らかにし,その後,海岸保全,環境保全,海岸利用が適切に調和した海岸保全の方向性に関し検討することにした.
著者
野志 保仁 宇多 高明 高橋 紘一朗 中田 祐希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_721-I_726, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
5
被引用文献数
2

2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火した.この噴火により発生した大量の軽石が2021年10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着し,漁業,海運,観光業に著しい影響をもたらした.そこで2021年10月28日には沖縄本島北部,本部半島の北側に位置する屋我地漁港周辺を対象として急遽現地調査を行った.UAVにより漁港周辺での軽石の漂着状況の映像を取得するとともに,漁港周辺海岸での漂着軽石の現地調査を行った.北側から運ばれてきた軽石は,漁港防波堤により移動が阻止されたため漁港の北側に大量に堆積したことが分かった.
著者
金子 玲大 山中 英生 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.94-102, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
18

本研究では,空石積みの修復活動のオーガナイザーに半構造化インタビューを行い,参加者がいかにしてオーガナイザーになるのかを把握し,さらに継続的に活動を続ける可能性が高まる場のマネジメントの在り方について考察した.その結果,オーガナイザーに共通する前提として類似する石積みに対する思いと活動を取り巻く環境を有していることなどが分かった.また,活動を実践することによる変化の特徴として様々な役割を果たさざるを得ない実践を経験したこと,即興的なコーディネート,ルールの原則の理解,修復作業のアレンジという4つの特徴が見られた.これらより活動のマネジメントとして,役割分担を固定しない,ルールの優先順位の伝達,雑談を促すの3つを示した.
著者
山口 修平 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.109-127, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Fujita and Ogawa (1982)モデルは,複数都心が均衡状態として形成されることを示した都市経済学分野の代表的な集積経済モデルである.このモデルは複数均衡を持ち,中には実現不可能と考えられる不安定な均衡解も存在しうる.そのため,均衡解の安定性を吟味し尤もらしい解を選択する必要があるが,解の安定性を検証した研究は従来存在しない.本研究では,ポテンシャル・ゲームと確率安定性概念を用いて,Fujita and Ogawaモデルの安定均衡解の特性を明らかにする.空間設定を線分都市と円周都市として分析した結果,本モデルは以下の3つの特徴を持つことが示される: 1) 複数都心パターンが安定均衡解として創発する,2) 交通費用パラメータを減少させるにつれて安定解の都心数が単調減少する,3) 上記の2つは線分都市と円周都市に共通する性質である.
著者
蔵下 はづき 平片 悠河 高木 素紀 幡本 将史 牧 慎也 山口 隆司 青井 透 黒田 恭平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_255-III_264, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
46
被引用文献数
1

本研究では,連作障害が発生したレンコン栽培実圃場を対象とし, 線虫被害の程度の違いにおける微生物群集比較解析,寄生性線虫の定量PCR,有用微生物優占化土壌改良資材を用いたレンコン栽培土壌の回分培養を行うことで,化学農薬に依らない防除方法の確立を目指した.被害程度の差における優占種の同定を行った結果,被害の大きい圃場においてAcidobacteria門,Chloroflexi門の未培養グループに属する微生物が優占して検出された.被害の生じたレンコン細根中の寄生性線虫の定量PCRを行った結果,Hirschmanniella diversa及びH. imamuriの2種の寄生が確認された.土壌改良資材の施用効果を評価した結果,Bacillus属がレンコン栽培土壌で増殖可能なことが分かった.
著者
桜庭 拓也 二瓶 泰雄 倉上 由貴 入江 美月
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1297-I_1302, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9

本研究では,2016年熊本地震とその後の洪水(熊本県木山川)による複合災害の実態や洪水氾濫メカニズムの検討を行うことを目的とする.具体的には,(1)木山川を含む緑川水系における地震時の堤防被害調査,(2)6月20日豪雨による木山川の堤防被害・洪水氾濫調査,という二つの現地調査を実施した.その結果,2016年熊本地震では,堤防の天端・表のり面の縦・横断亀裂や天端沈下が秋津川や木山川のような県管理区間でも広範囲に生じていた.木山川では,地震による天端沈下(10cm程度)と豪雨による堤防決壊・洪水氾濫が生じるという複合災害が発生した.そこでは,沈下対策に設置された土嚢上の越流に加えて,土嚢直下のパイピングによる土嚢の不安定化が決壊を助長した可能性が示唆された.
著者
久保田 恭行 西山 哲 矢吹 信喜 福田 知弘 手塚 仁 尾畑 洋 村上 治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_77-I_88, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
37

トンネル工事での肌落ち災害を防止するため,作業中は切羽の状態を常時継続的に監視する必要がある.切羽での大規模な崩壊の予兆として,崩壊までの時間に差はあるものの小規模な落石が見られる場合があるが,目視では落石の確認が困難であるため,大規模崩壊に巻き込まれ,重大災害に繋がる可能性がある.そこで,筆者らはAIにより切羽のみに解析範囲を制限し,背景差分法を軸に面的に落石を検出するシステムの開発を検討した.本研究では,落石検出の処理の解析範囲を切羽に制限することや,粉塵といった微小な物体や映像のノイズ除去等について検討した.次に切羽の大規模崩壊の前兆となる落石を想定した映像を用いて画像解析を行った.その結果,小規模な落石を検出でき,肌落ち災害の発生リスクを軽減する可能性を示した.
著者
今野 雷 稲垣 厚至 神田 学 宮本 康司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_763-I_768, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
6

This study focuses on the problem of "mosquito swarm" along urban rivers. Different from general biological methods (capture, counting and photograph), we adopted a fluid dynamical approach to investigate the temporal-spatial distribution of mosquito swarm. First, a novel device composed of multiple laser sheets is developed as a mosquito counter in order to quantify the density of the swarm. Second, filed observations are done in Nomi River by utilizing this laser device as well as the other conventional meteorological observations. The followings are the major results obtained: (1) Mosquito swarms are apparent only about 1 hours before the sunrise heavily on one-sided (sunlit side) along the river. (2) The hot-sopt of mosquite swarm seems to exist ; the cross sections of urban street perpendicular to the river. The locations were roughly fixed with slight perturbations. (3) The suitable temperature to make swarm is about 22.5ºC.
著者
鈴木 春菜 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.179-189, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
26
被引用文献数
9 4

良質な地域風土を志すことは土木事業に課された重要な使命であり,我々はその努力と共に,事業によってもたらされる地域風土の変化が地域愛着をはじめとした人々の「地域への関わり」にどのように影響するかについても常に検討していく必要がある.以上の背景から本研究では,パネル調査で得られた結果を基に,風土への接触量の変化が地域への感情に与える影響についてその醸成期間を考慮して検証した.その結果,地域への感情はその種類によって醸成期間に差があることを示した.さらに地域風土への接触が,長期的には「地域愛着」のような醸成に時間を要する感情にも影響を与える可能性があること,「寺社」や「公園」との「接触」がその醸成を助長する可能性があることを確認した.
著者
吉田 惇 井元 智子 河野 達仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.47-58, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
18

日本各地でクマによる農作物被害や人身被害が増加している.本研究は,生物保全とクマ被害軽減を同時に考慮した社会的に望ましい土地利用のあり方を理論的に分析する.具体的には,(a)生態系サービス,(b)農作物被害,(c)農地におけるクマ遭遇リスク(人身被害,恐怖感)の外部性を同時に考慮し,ブナの本数および住宅地と農地それぞれの最適総土地面積条件を導出する.分析により,クマが住宅地に侵入しない場合は市場均衡で決まる総住宅地面積は社会的最適と一致すること,最適総農地面積は農地拡大による生態系サービスの質の低下とクマ被害の減少のトレードオフに依存して,市場均衡より大きい場合も小さい場合もあることを明らかにする.各外部性が最適政策へ与える影響についても整理する.クマが住宅地に侵入する場合の拡張も示す.
著者
三山 幹木 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.11-21, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
9

未曽有の災害が想定外の被害をもたらしている昨今,インフラの要求性能として,被災後に構造物としての機能をゼロにしない“粘り強さ”など単なる構造物の強さだけでは測れない特質が注目されている.環境的な観点からも評価されている伝統的な技術である空石積みの強度計算だけでは測れない構造物としての「強さ」の検証を行った. 本研究では四国・九州から計452件の擁壁・護岸の被災事例を収集し,写真を構造物の破壊箇所ごとに分類を行い,破壊時の挙動を観察した.観察の結果,空石積みは壊れた後にも効果を発揮しうる構造物であり,(1)小さく壊れること,(2)壊れたときの機能がゼロになりにくいこと,(3)復旧が容易であること,(4)二次被害の危険性が少ない可能性があることを明らかにした.
著者
帯屋 洋之 ザカリア モハメドニザムビン 井嶋 克志 川崎 徳明 松尾 郁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_45-I_56, 2012 (Released:2014-01-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Tensegrity structures give us so much motivation to find a rational form by shape analyses. A tensegrity structure with virtual stiffness has so many equilibrium shapes and it may be hard to obtain a target solution by designation of a set of primary conditions. This study shows the results of some numerical experiments whose aim is to find rational forms of tensegrity structures. Form finding analyses for tensegrity towers in a gravitational field often bring unexpected equilibrium shapes, in such a case; the incremental analysis by compulsory displacement is effective. Moreover, when we consider that a tensegrity structures constructed by virtual elements behaves in an equilibrium system, some solutions are connected each other on equilibrium path. In this paper, load-displacement curves include bifurcation path are also shown and the properties of the equilibrium system are discussed.
著者
石川 大輔 岩屋 隆夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.243-247, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
12

東京都伊豆小笠原諸島には, 「まいまいず井戸」と呼ばれる井戸がある.この「まいまいず井戸」は, 近世前の井戸形態の一つで, 直接, 地表部をオープンカットするという盤井である. これらの井戸は, 武蔵野台地や徳島県徳島市にも存在していることが確認されている. 本論は, 全国の「まいまいず井戸」を調査し, かかる井戸の特徴などを検証する.
著者
青木 達也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_331-I_344, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
16

本研究は足尾銅山の通洞地区にある選鉱所について,明治から大正前期の時代までの変遷と関連遺構を明らかにしようとするものである.既往の二次史料に加えて,このたび実施した史料調査によって得られた一次史料の内容を考証した結果,これまで明らかとなっていなかった通洞選鉱所の創業年代や移転年代およびそれらの位置のほか,有越索道,新梨子竪坑,新梨子斜坑,足尾鉄道との関係も明らかにすることができた.さらにこの知見に基づき遺構の残存状況を調査した結果,施設が存在していた箇所を推定するとともに残存状況を把握することができた.本研究で纏められた成果が今後の詳細調査へと引き継がれれば,これまで困難とされていた通洞選鉱所の産業遺産としての価値づけが可能になる.
著者
片岡 正次郎 佐藤 智美 松本 俊輔 日下部 毅明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.740-757, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
62
被引用文献数
2 19

大規模地震を含むマグニチュード5以上の地震の強震記録約11,000波を用いて,地震動の最大加速度,最大速度,SI値,計測震度及び加速度応答スペクトルの距離減衰式を作成した.この距離減衰式は,モーメントマグニチュードと震源距離のほか,スペクトルインバージョンにより推定された加速度震源スペクトルの短周期レベルをパラメータとした回帰式である.短周期レベルをパラメータとした場合には,そうでない場合と比較して,顕著にばらつきの小さい距離減衰式が得られた.また,短周期レベルと地震モーメントとの関係を整理し,その地域性を考察するとともに,地震のタイプごとの関係式を提案した.
著者
塩田 彩夏 二瓶 泰雄 遠藤 亮之輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1699-I_1704, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
20

Although previous studies pointed healing effects from waterfront, quantitative evaluations and factor of healing effects were still unknown. To evaluate quantitatively healing effects from river and coast and its associated factors, in this study, we measured simultaneously psychological stress and sound and thermal environments at six sites in which the measuring points were selected near waterfront and urban area in its neighborhood. The measured results indicated that 1) the measured values of salivary amylase activity, one of useful stress markers, in several waterfronts were appreciably lower than those in urban area, and 2) the healing effects in waterfronts were closely related to sound and thermal environments.
著者
石橋 知也 松田 知己 東郷 浩樹 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_273-II_284, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
18

石積みは,伝統的・文化的な風景を構成する重要な要素であるものの,被災した石積みの復旧方針・方法は自治体によってばらつきがあり,箇所ごとの対処にならざるを得ない状況にある.本研究は,平成24年九州北部豪雨によって被災した農村地区を有する自治体(うきは市,久留米市,八女市,伊万里市,武雄市,諫早市,大村市)での石積みの復旧実態,重要文化的景観を有する自治体(豊前市,唐津市,長崎市,平戸市,小値賀町)における被災した石積みの復旧実態,について職員へのヒアリング調査と現地調査から明らかにすることを目的とする.その結果,1)石積み復旧を促進する基準の見直し,2)石積み復旧に対する制度運用の有効性と課題,3)重要文化的景観における空石積み復旧の実態,4)重要文化的景観をめぐる課題への対応策,について指摘した.
著者
九鬼 愛夢 鳥生 大祐 牛島 省
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_131-I_141, 2020 (Released:2021-02-01)
参考文献数
18

ニュートン流体である高粘性液体を鉛直下方に流入させて,上面に開口部を有する 2 次元矩形容器内に充填する数値計算を行った.周囲の低粘性気体を同時に計算するため,密度と粘性の異なる 2 つの非圧縮性流体に対する相平均モデルを利用し,これをコロケート格子有限体積法で離散化した.特に,計算セル境界における粘性係数,密度および流速の平均化手法に考察を加え,ダムブレイク問題を通じてその有効性を確認した.提案された計算手法を用いて,高さ H の矩形容器に幅 d の上部流入口から高粘性液体を充填する問題を計算した結果,高粘性液体のレイノルズ数 Re と H/d の条件により発生する,steady filling, spreading, splashing, buckling という異なるフローパターンが既往研究と同様に再現されることを示した.
著者
九鬼 愛夢 鳥生 大祐 牛島 省
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_129-I_136, 2021 (Released:2022-02-01)
参考文献数
14

本研究では,粘弾性流体と周囲のニュートン流体の境界面である自由表面を有する流れの計算を行うために,2 流体について相平均された基礎方程式をコロケート格子有限体積法に基づいて計算する手法を提案した. 粘弾性流体の構成式として,非線形粘弾性モデルである Giesekus モデルを用いた.最初に,ニュートン流体および粘弾性流体のそれぞれに対して平行平板間流れの数値計算を行い,定常状態における流下方向の流速分布や粘弾性応力について,本研究の計算結果と理論解がよく一致することを確認した.次に,ダイスウェル現象の数値実験として,平行平板間からニュートン流体中に粘弾性流体が射出される計算を行い,射出後における粘弾性流体の厚みの変化について既往の計算結果と同様の傾向が得られることを確認した.