著者
東 博紀 森野 悠 大原 利眞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1121-I_1125, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

We discussed a numerical model for oceanic dispersion and sedimentation of radioactive cesium-137 (Cs-137) in shallow water regions to clarify migration behavior of Cs-137 from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Our model considered oceanic transport by three dimensional ocean current, adsorption with large particulate matter (LPM), sedimentation and resuspension. The simulation well reproduced the spatial characteristics of sea surface concentration and sediment surface concentration of Cs-137 off Miyagi, Fukushima, and Ibaraki Prefectures during May-December 2011. The simulated results indicated that the adsorption-sedimentation of Cs-137 significantly occurred during strong wind events because the large amount of LPM was transported to upward layer by resuspension and vertical mixing.
著者
安藤 昭 赤谷 隆一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.233-241, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究は,コオロギ等昆虫の発音を刺激とする場合の日本人とアングロサクソン系欧米人の音の評価とその意味について比較検討したものである.分析の結果,比較的馴染みのない刺激音であるアングロサクソン系欧米人においては,昆虫の種によって“騒音”を想起させる聴覚反応または“自然風景”を想起させる視聴覚反応として処理され評価は低い.一方,馴染み深い刺激である日本人においては,昆虫の種にかかわらず“原風景”を想起させる視聴覚反応として処理され,総じて評価が高いことが明らかとなった.本研究によって,特定の地域や場所の基調音がどのように形成されていくかを解明する新たな手掛かりを得た.
著者
鈴木 啓悟 吉田 翔太 佐々木 栄一 竹谷 晃一 前田 健児 近藤 泰光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_731-I_737, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
14

橋梁の腐食損傷は主として水分と塩化物の存在に影響を受ける.これらの腐食因子は風向,風速,気温,湿度,降雨,波浪などの気象外乱の複合作用により橋梁に来着する.本研究は,ACM センサで計測される腐食応答電流値を主とした1年間のモニタリングデータを基に,まず外乱となる気象データから重回帰式を求めた.次に重回帰式から過去5年分の気象データをもとにしたACM電流応答の推定値を算出し,その季節変動に伴う応答傾向の再現性を検証したうえで,最後に重回帰式の各係数のt値を評価することで,腐食応答に及ぼす原因について検証した.検証の結果,本研究の事例においては降雨と風の相互作用により,腐食応答が促進される可能性が示唆された.
著者
高橋 史武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.III_307-III_314, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
25

水銀はその毒性の高さから水俣条約(2015年)など国際的な規制が強化されつつある。水銀が環境へ排出される際の環境リスクを推定するには、水銀の環境動態をモデルシミュレーションし、最終的に水銀曝露量を求める必要がある。しかし環境動態モデルは多くのパラメータを必要とし、そのパラメータ値は環境に応じて数桁の範囲で変化する。本研究はパラメータ値の不確実性を統計分布解析によって定量化し、推定される水銀曝露量の不確実性を評価した。想定したモデルケースにおいて、モデルパラメータの不確実性のため水銀曝露量は8桁もの大きな変動幅を示した。魚介類の摂取量などの社会的条件よりも生物濃縮係数などの環境的条件に関わるパラメータが水銀曝露量に大きな影響を与えた。上記の不確実性を加味して水銀曝露量が耐容摂取量を超える確率を計算したところ、1.78%と評価できた。本手法は環境リスクの市民的理解を促す可能性がある。
著者
三浦 尚之 風間 しのぶ 今田 義光 真砂 佳史 当广 謙太郎 真中 太佳史 劉 暁芳 斉藤 繭子 押谷 仁 大村 達夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_285-III_294, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
28
被引用文献数
4 3

下水道が整備された都市域においては,感染者から排出されたノロウイルスは下水処理場に流入する.本研究では,感染性胃腸炎の流行を早期に検知するために下水中のノロウイルスをモニタリングすることの有用性を評価した.2013年4月から2015年10月までの期間,流入下水試料を毎週収集し,下水中ノロウイルス濃度と地域の感染性胃腸炎患者報告数の相互相関分析を行った.さらに,下水中に検出されたノロウイルスの遺伝子型をパイロシーケンサーを用いて網羅的に解析し,地域の感染性胃腸炎患者便試料から検出された遺伝子型及び株と比較した.その結果,下水中ノロウイルスGII濃度は患者報告数と遅れが±1週未満の範囲で有意に相関すること(R = 0.57~0.72),及び下水中には患者便試料と同一の遺伝子型及び株が含まれ,それらが経時的に変化することが実証された.患者報告数が集計・公表されるには1~2週間の時間を要することから,下水中のウイルス濃度をモニタリングすることで,医療機関の報告に基づく現行の監視システムよりも早期に流行を検知できる可能性が示された.
著者
鈴木 春菜 北川 夏樹 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.228-241, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4

交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した. その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.
著者
杉松 宏一 八木 宏 小口 哲史 川俣 茂 宇田川 徹 中山 哲嚴 島村 信也 池川 正人 鈴木 彰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_411-I_415, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

To understand the characteristics of the current field and its seasonal variability off the Joban coast along the east coast of Japan, the continuous survey using the mooring system are performed from October 2012. The observed current was dominated by the along shore current with several days period caused by the continental shelf waves subjected to the meteorological disturbance with the seasonal variability. In addition, the cross shore current develops in summer because of the semi-diurnal internal tides caused by the strengthened density stratification. Furthermore, it is revealed that the southward mean current also has the seasonal variability by the geostrophic current with the enhanced baroclinic density fields except for the period when the warm water driven from the Kuroshio disturbance locates off the Joban coast.
著者
西本 裕美 藤森 真一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00209, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
14

長期気候緩和シナリオは大規模な温室効果ガス削減策の評価などで極めて重要な役割を果たしているが,その妥当性や実現可能性についてはこれまで評価されていない.本研究は,シナリオの各指標の変化率及び変化速度の分布に着目して,歴史的推移と対比させながら評価する手法を提示し,エネルギー強度,炭素強度,電化率の3指標について,同手法を適用した.エネルギー強度は過去の経験の範囲内であったが,電化率と炭素強度は気候制約の厳しい将来シナリオで過去の経験の範囲から外れる部分が4~5割あった.
著者
内山 雄介 石井 倫生 津旨 大輔 宮澤 泰正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_931-I_935, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
6

The 2011 Tohoku earthquake and the associated tsunami caused a severe nuclear accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (1F), leading to radioactive water leaking into the sea. We conduct a triple nested high-resolution numerical hindcast to assess oceanic dispersion of the leaked cesium-137 (137Cs) in the coastal marginal sea, and successfully reproduce fluctuations of 137Cs concentration. While an alongshore 137Cs concentration PDF indicates a prevailing northward transport, a 137Cs flux budget analysis exhibits that the cumulative alongshore flux is much greater than the offshore flux with latitudinal asymmetry due to the eddy transport, suggesting that 137Cs tend to remain in the coastal zone.
著者
福丸 大智 赤松 良久 新谷 哲也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.22-00234, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
19

本研究では,中小河川における流域一貫の即時的かつ高精度な河川水位予測実現に向けて,深層学習を用いた河川水位予測モデルを構築し,入出力層に用いるデータの種類および入出力層の構造が異なる複数の計算条件で比較することによって,モデルの高度化について検討した.その結果,集水域内全地点の雨量および水位変化を入力層に用いて集水域内全地点の水位を同時予測するモデルにおいて,ハイドログラフの時系列全体の再現性を表すNash係数がほとんどの水位観測所で0.9以上,ピーク水位の誤差率は10%以下を示し,ピーク水位発生時刻の遅れも他の条件に比べて軽減した.したがって,このモデルを用いることにより,3時間先の流域全体の河川水位をより高精度に予測可能であることが示された.
著者
岩崎 英治 仲井 大樹 山本 寧音
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.23-00035, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
12

鋼トラス橋は,他の橋梁形式に比べて,構造冗長性は高くなく,主構部材の損傷により橋梁全体の構造安定性を損なう恐れがある.一方,鋼トラス橋は多くの骨組部材で構成されているため,腐食損傷の発生パターンは多様であり,損傷部位の力学的な合理性に基づいた定量的な健全性の診断方法は確立していない.トラス橋の斜材の断面は,鋼板のすみ肉溶接や部分溶け込み溶接により構成することが多く,溶接部に腐食減肉を生じると分離することがある.そして,腐食切れの範囲が長くなると,圧縮斜材では構成する板の局部座屈を生じる可能性がある.そこで,圧縮斜材の柱としての全体座屈と斜材を構成する板の局部座屈の連成座屈強度による健全性レベルの分類を示す.また,腐食切れ部を含んだ板の座屈強度式,および連成座屈評価式を提案する.
著者
山田 忠 後藤 雄太 松枝 心路
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.20-27, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
78
被引用文献数
1 1

本報告は消防団が今後の風水害活動で注意すべき事項について検討することを目的に行った.具体的には,消防団員が殉職した1969年から2018年の風水害の事例を消防白書や新聞記事,既往研究などから把握し,殉職時の状況を分析した. 結果として,消防団が今後の風水害活動で注意すべき3点を示した.1点目に,風水害は出動途上から帰宅中までの一連の活動において殉職者が出ており,一連の活動で安全に配慮する必要がある.2点目に,河川を中心に夜間の強い雨が観測されているときに殉職者が多い傾向にあり,夜間で雨が強い場合は活動しない,もしくは団員の安全が確保できた状態で活動に取り組む必要がある.3点目に,昼間で雨のピークが過ぎた後の活動でも殉職者が出ており,昼間で雨が弱くなっても周囲の状況に細心の注意を払って活動する必要がある.
著者
田中 皓介 外村 健太 寺部 慎太郎 栁沼 秀樹 康 楠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_135-I_142, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
15

近年の日本では,国民が持つ土木への否定的な印象が指摘されている.既往研究では新聞報道の公共事業に対する批判的な傾向が明らかにされてきた一方で,例えば,殺人等の報道においては容疑者が,「会社員」ではなくあえて「土木作業員」と表記される事例も散見されるが,こうした報道も土木に対して間接的に否定的な印象を与えることが懸念される.そこで本研究は,土木に対する否定的な世論の形成要因を探るに当たり,犯罪報道の中でも特に凶悪犯罪報道における容疑者の職業表示を対象に報道状況を分析した.その結果,土木建設業関係者による犯罪の報道は,他の職業と比べても高頻度で見られた.しかしそれは土木建設業従事者がそもそも多く,犯罪者数もまた多いことによるもので,報道が偏向していることを示す結果ではなかった.
著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1-I_20, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
94
被引用文献数
3 3

建築家ヴィルヘルム・ベックマンが明治19年(1886)に立案した東京の都市計画(東京計画)は,国会議事堂の位置を,現在と同じ永田町の丘に示した初めての都市計画である.しかし,この事実は歴史に埋もれ,これまで研究の対象とされてこなかった.本研究は,国会議事堂の位置選定に主眼を置いて,ベックマンの東京計画を初めて詳細に論じ,主に次のような事実を明らかにした.1) 彼の議事堂の位置選定は,当時の政府の方針や新聞・雑誌の報道とは異なる,斬新なものであった,2) それは,彼の確固とした意思と見解,そして,東京の地形への確かな理解に基づくものであった,3) 議事堂の位置を永田町の丘としたことは,放射状道路網の線形設計をはじめ,彼の東京計画全体に支配的な影響を与えた.
著者
荒木 功平 奥村 謙一郎 安福 規之 大嶺 聖
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_267-I_272, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
11

地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり,各種産業への影響等が懸念されている.特に沖縄県では,亜熱帯特有の高温多雨気候により,土壌侵食を受けやすく,農地や開発事業地等から流出する赤土等は1950年代頃から問題化しているが,未だ解決に至っていない.沖縄のみならず亜熱帯化が懸念される九州地方においても侵食を受けやすい土壌を有している. 本研究では,50年,100年スケールで年平均気温や激しい雨の年間発生日数の経年変化を調べ,九州の亜熱帯化の現状把握を試みている.また,亜熱帯地域である沖縄県国頭郡宜野座村の農地で土壌侵食実験環境を整備し,降雨量~土壌水分~土壌侵食量関係の計測および考察を行っている.
著者
松本 健作 森 勝伸 下村 通誉 小野寺 光二 南雲 洋平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1117-I_1122, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
12

河川環境に生息する生物として,河川伏流水に生息する地下水生生物に着目し,地下水観測孔を用いた観測手法の有効性の検証およびその生息環境因子について考察した.通常は孔内水位や地下水流向・流速という物理因子を観測するために河川近傍に設置された地下水観測孔内では,多数の地下水生生物の観察が行える可能性が高く,観測手法として極めて有効であることを示した.また,僅か30 m離れた2つの観測孔における生息状態が大きく異なっていることから,両孔の地盤特性,孔内水の含有イオン,水温等を調査し,地下水生生物の生息実態におよぼす水質特性を示すとともに,その両孔間における水質の差異を生じさせている要因が地盤の粗密からくる地下水の流動性の差異である可能性を指摘した.
著者
小峯 秀雄 王 海龍 龍原 毅 園田 真帆 村田 航大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00059, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
4

高レベル放射性廃棄物地層処分事業(以下,HLW処分事業)の社会的認知は低く,事業推進に対する国民の理解が得られにくい.HLW処分事業は,巨大な地下施設建設が主体であり,土木工学が寄与できる国家的プロジェクトである.そこで本研究は,土木工学の観点から,学生を対象としたブレインストーミングを実施し,HLW処分事業に関して若者が知的興味を持つ事項や疑問点を抽出した.そして,それらを参照しながらHLW処分事業の認知と地層処分の技術的成立性の理解に資する教育教材の作成を行った.また,市民や次世代へ伝承するための科学コミュニケーターの育成と対話方法の在り方を探求した.これらの成果を高校生を対象に試行的に実践し,HLW処分事業に対する認知の効果が認められた.
著者
安保 秀範 大澤 高浩 葛 平蘭 高橋 章 山岸 勝俊 櫻澤 裕紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00257, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
26

近年,人工衛星SARデータの活用については社会インフラ設備の維持管理などへの研究が進んでいるものの,恒久散乱点が得られやすいロックフィルダムにおいても,PSInSAR解析による恒久散乱点の変位の計測精度が十分に検証されているとは言い難い.本論文では,既に安定期にあるもののここ数年でも年間最大1cm程度変位しており,外部変形量を連続計測しているロックフィルダムを対象に,Sentinel-1 SARデータを活用したPSInSAR解析を実施し,測量値と解析結果を比較することにより,人工衛星SARデータから把握できる変位の精度を検証するとともに,ロックフィルダムの保守管理への適用性について考察した.ロックフィルダム外部変形の測量値と解析結果の比較により,PSInSAR解析によりmmオーダーの高い精度で計測できることが検証され,保守管理に人工衛星SARデータが活用できる可能性があることを示した.
著者
國井 大輔 喜多 秀行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00211, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
18

過疎地域における生活の足を確保するため,コミュニティバスからタクシーや自家用車を活用した互助的な個別輸送サービスへの転換を図る自治体が増加しているが,もともと人口が少ない過疎地域においては,個別輸送サービスの採算性と利便性を同時に確保することは容易でなく,自治体からの公的支出は年々増加し,現状のままでは立ち行かなくなりつつある状況も見受けられる.本研究では,それらの課題を解決すべく,先に提案したタクシーとボランティア輸送を一体的に運営する公共交通サービスの仕組み「準交通空白地有償運送(仮称)」の社会実装にむけて,法制度上・運用上の課題を洗い出すとともに,課題解決のための対応策を提案した.
著者
片田 敏孝 及川 康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.78-88, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
22

洪水調節を目的に含むダムには明らかに洪水調節機能があるにもかかわらず,その事実が人々に正確に認識されることは一般に希であり,とりわけ洪水災害直後においては“加害者としてのダム”のイメージ,あるいは消極的に表現したとしても“効果のないダム”のイメージが顕在化することが多いのが実情と思われる.本論文は,ダムの洪水調節機能に対する住民理解が,構造物として備え持つ実際の洪水調節機能のありようと大きく乖離しているのが実態であるならば,それは正しく是正されるべきとの立場のもと,そのような乖離の背景を整理するとともに,乖離を是正するための方策の方向性を検証したものである.