著者
西内 裕晶 塩見 康博
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_917-I_927, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,セグウェイをはじめとするパーソナルトランスポーターの交通手段としての工学的な位置づけを明確化するため,セグウェイの走行実験を行い,その走行挙動特性を整理する.具体的には,セグウェイの基本的な走行挙動特性(加速・減速・スラローム)を把握し,更に走行速度レベルが同程度と考えられる自転車との挙動(歩行者の追い抜きとすれ違い,急制動)を比較し,14名の被験者の乗車経験にも着目しながら,セグウェイの走行挙動特性を整理するものである.その結果,乗車経験による大きな挙動の違いは見られず,さらにその挙動性能は自転車と同様であることを確認した.
著者
杉本 卓司 村上 仁士 島田 富美男 上月 康則 倉田 健悟 志方 建仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.306-310, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
7

2050年までに80%の確率で起こるとされるM8.4級の南海地震津波に対し, 防災施設の新設は困難との立場から, 既存の水門や陸閘の津波浸水防止効果を高知県のU町を対象とした津波数値計算により検討した. その結果, これらの門扉が津波到達までに閉門できれば浸水範囲の低減や津波浸水開始時間を遅らせる効果があることが証明された. 一方, 多くの集落で門扉操作者の安全が確保できない場合があり, 操作を含めた門扉の管理・運用方法の改善が必要との結果が得られ, さらにこれらの門扉を有効に活用した具体的な防災対策について提示した.
著者
杉本 悠真 山口 隆司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00329, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
15

橋梁の主桁接合部に非突出型高力ボルトエンドプレート接合を適用する場合,接合部強度と剛性向上の観点から水平リブの設置が必要となる.しかし,桁断面や水平リブ諸元が接合部強度と剛性の向上に寄与するメカニズムは明らかにできているとは言い難い.本研究は主桁断面,水平リブ板厚を変化させたパラメトリック解析を実施し,これらのパラメータが接合部の強度と剛性に与える影響について検討している.解析の結果,水平リブを考慮した桁の断面二次モーメント,下フランジ板厚およびエンドプレート板厚が,接合部剛性に特に影響を与えることがわかった.また,フランジ断面積が小さく,ウェブ断面積が大きい桁で接合部強度が大きくなる傾向があることを明らかにした.最後に,主部材剛性を確保するための水平リブ板厚の算出法を提案した.
著者
河瀬 理貴 井料 隆雅 浦田 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.184-200, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
24

災害の影響を緩和する上で救援物資輸送は重要な課題である.救援物資の迅速かつ的確な輸送のために,我が国ではプッシュ型とプル型の二種類の戦略を計画している.しかし過去の災害では,ラストワンマイル輸送や被災地からの情報伝達でボトルネックが発生し,これらの戦略は期待通り機能しなかった.この経験に基づき,被災地に直接輸送する体制やICTに依存しない情報伝達体制が提案されている.本研究では,提案されたプッシュ型とプル型の戦略を定量的に評価するために,直接輸送が可能な輸送ネットワークや継続的な通信が不可能な情報ネットワークにおける在庫輸送戦略を分析する.その結果,直接輸送が最適であることを証明し,情報伝達が断続的な場合にプル型がプッシュ型よりも性能が低下する可能性とそれを回避する方策を示した.
著者
豊田 淳 佐々木 貴信 荒木 昇吾 林 知行 有山 裕亮 後藤 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.65A, pp.799-806, 2019-03-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
14

Cross laminated timber (CLT) is a new type of engineered wood panel consist of several layers of structural lumber boards stacked crosswise at 90° angles and glued together on their faces. It is possible to produce CLT panels of 3 m wide, 12 m long, and 270 mm thick. CLT is light-weight material which the unit weight of CLT made of Japanese cedar is about 1/6 of reinforced concrete, therefore it's has advantage in terms of the transport and construction works. The authors consider using CLT elements for bridge deck replacement instead of a concrete deck slab. The overview of the design and construction of the bridge deck replacement of an existing bridge using CLT srlabs is reported herein.
著者
別府 万寿博 大野 友則 大久保 一徳 佐藤 和幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.700-716, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究は,火薬庫や重要構造物などのコンクリート構造物の耐爆設計法の確立に資するため,カーボンおよびアラミド繊維で裏面を補強したコンクリート板の接触および近接爆発荷重に対する耐爆性能(損傷および飛散物の低減)について実験的に検討したものである.実験では,C4爆薬を接触・近接爆発させ,繊維の方向,補強枚数がコンクリート板の耐爆性能に与える影響と補強の効果を調べている.また,繊維シートによるコンクリート板の耐爆補強効果について,応力波理論および繊維シートによる押し抜きせん断耐力増加の観点から考察した.
著者
酒井 高良 涌井 優尚 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00341, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,超大規模離散空間におけるFujita-Ogawa (FO)モデルの効率的数値解法を提案する.具体的にはまず,FOモデルにおける主体の確定的選択行動をランダム効用理論(ロジット・モデル)に基づき一般化した確率的FOモデルを提示する.続いて,この確率的FOモデルの等価最適化問題を導出し,さらにその問題が,企業の立地分布を決定するマスター問題と,家計の居住地・勤務地分布を決定するサブ問題とに階層分解できることを明らかにする.ここで,サブ問題はエントロピー正則化付きの最適輸送問題,マスター問題は制約条件付き非凸計画問題の数理構造を持つ.これらの数理構造を活かし,サブ問題に対してはバランシング法を,マスター問題に対しては加速勾配法を適用する階層的最適化アルゴリズムを構築する.
著者
涌井 優尚 酒井 高良 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00301, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
20

本研究では,一起点多終点ネットワークにおける経路選択DUE配分の効率的解法を開発した.具体的には,まず待ち行列にpoint queueを仮定したうえで,DUE配分を線形相補性問題として定式化した.そしてこの問題と等価な最適化問題に対し,大規模問題に適用可能な効率的アルゴリズムを提案した.数値実験を通して提案解法は,既存研究における数値計算例を大幅に上回る規模の巨大ネットワークに対しても,素朴な解法の100倍から1000倍程度以上の計算効率を誇り,かつきわめて高精度な均衡解が計算できることが示された.
著者
鈴木 善晴 田中 聡一郎 郷 祐美子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_391-I_396, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
12

The current study conducted numerical experiments using nonhydrostatic mesoscale meteorological model to clarify the mitigating e.ect of weather modification by cloud seeding on torrential rains. Based on simulated two heavy rain events in northern Kanto and Tokai regions of Japan, sensitivity analysis was performed by manipulating some conditions for cloud seeding implementation, i.e., area, height, time, etc., in incremental steps. Variations of rainfall distribution and convective cloud activity were examined to see the in.uence on the generation and development process of torrential rains. Results in some cases show a signi.cant decrease in areal average and/or regional maximum rainfall, especially noticeable in the case where cloud seeding was performed at a relatively high altitude. It suggests that weather modification by cloud seeding can weaken the development and convergence of torrential rains. In the case with such a decrease in regional maximum rainfall, a signi.cant increase of cloud ice was found in the upper part of the atmosphere, which seems to have caused the mitigation in the spatial and temporal convergence of precipitation particles falling to the ground.
著者
柿本 竜治 黒肥地 雄太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_117-I_127, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

本研究では,熊本県が実施した熊本地震の災害対応に係る調査の「課題が生じた点」のテキストデータを分析し,熊本県庁で生じた課題を整理分類するとともに,時系列的に災害対応状況を整理し,どの段階で課題が生じているかを把握する.包括的に課題を把握した後に,災害の応急復旧に深く関わった土木部の動きに着目し,初動の災害対応活動に生じた課題を把握する.さらに,災害応急復旧の現場が直面した課題の把握にあたり,実際に業務にあたった行政技術職員および建設業者にヒアリング調査を実施し課題を抽出する.本研究では,階層的に課題を把握していくことで,災害時の応急対応に生じた共通の課題を探り出し,迅速な災害対応を可能にする応急復旧体制の構築に寄与する知見を得ることを目的とする.
著者
小澤 広直 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.38-52, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
49

本報告では,昭和戦前期から戦災復興期にかけて内務省や建設省の土木エンジニア,建設官僚として活躍した都市計画家町田保(1903-1967)に着目し,町田の著した論考や書籍,公文書や事業記録などの資料を用いて,町田の経歴や仕事を整理するとともに,代表的な仕事の特徴や町田の考え方について把握することを目的とする.町田に関する年表作成と資料分析を行った結果,戦災復興都市計画では帝都復興事業での経験や知見を生かし,戦災復興院及び建設省の土木エンジニアとして中心的役割を担ったこと,首都建設計画では首都建設委員会事務局長として,戦前の地方計画の研究や戦後のアメリカ都市計画の視察に関する経験を生かし,東京を中心とする衛星都市整備計画や首都高速道路計画の立案に尽力したことなどが把握できた.
著者
村上 祐貴 大下 英吉 鈴木 修一 堤 知明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.631-649, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

本研究では,曲げ破壊先行型RC梁部材において鉄筋腐食が残存耐力性状に及ぼす影響評価を実施するため,主鉄筋の応力伝達や抜出し抑制に対するせん断補強筋や定着筋の効果に着目した実験を実施した.引張主鉄筋が比較的均一に腐食した場合,せん断補強筋の定着領域の残存量が十分であれば,その拘束により引張主鉄筋の付着が保持され曲げ破壊を呈する.一方,せん断補強筋の定着領域がその性能を発揮できない程に過度に腐食した場合には主鉄筋の定着領域まで荷重が伝達され,主鉄筋の定着性能が残存耐力性状に極めて支配的な影響を及ぼす.また,作用モーメントの大きい領域で主鉄筋が局所的に腐食を生じた場合,その領域において変形が局在化し,せん断補強筋の腐食程度によらず曲げ破壊性状を示すことが明らかとなった.
著者
湯谷 賢太郎 小森 瑞樹 浅枝 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1429-I_1434, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

To evaluate the physical bioturbation on tidal flat by the burrowing activity of Ilyoplax pusilla and Scopimera globosa, collapsed and renewed rates of the burrows, population densities and carapace widths, and correlationship between burrow physical parameters and crab carapace widths were investigated on the Banzu tidal flat. Burrowing activity of the crabs developed new ground surface on the inside face of borrows. Therefore, a ground surface area of tidal flat was increased 31.9 % by I.pusilla and 16.5 % by S.globosa, respectively. Soil-turnover rates induced by burrowing activities were found to be 7331 cm3/m2/month in I.pusilla and 9119 cm3/m2/month in S.globosa, respectively. This indicates that 11 % and 13 % of the soils from surface to a depth of burrow bottom were turned over by I.pusilla and S.globosa respectively for a month.
著者
五三 裕太 福島 秀哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00025, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
37

本稿は,河川管理と地域再生の連携推進に向けた計画概念「河川文化アプローチ」の実践課題に対応するため,日本の「かわまちづくり」施策における河川管理施設の計画検討プロセスの特徴を明らかにすることを目的とし,河川利用推進を図る護岸改修が計画された肱川かわまちづくり第1期計画での整備内容の議論の特徴を分析した.研究の結果,肱川かわまちづくりの関係者の特徴を示し,協議会・ワークショップを通じた整備内容の検討経緯と各関係者の意見の関係を明らかにした.以上から,日本の「かわまちづくり」における計画検討初期段階での河川利用の状況に詳しい主体の参画,および地域住民の河川に対する関心が高いタイミングでの計画検討の展開の重要性を示し,「河川文化アプローチ」の実践展開で留意すべき関係者の特徴と地域特性を指摘した.
著者
松澤 優樹 森 照貴 中村 圭吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1435-I_1440, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
19

Kankakee川を対象に構築されたコクチバスの個体群モデルに対して,駆除により個体数が減少する効果を追加することで平衡個体数密度の変化や根絶にかかる年数を試算した.卵・仔魚,未成魚,成魚に対して単独で駆除を実施した場合,すべてのシミュレーションで根絶する(根絶率100%)にはそれぞれ,98%,74%,95%の駆除割合が必要であった.次に卵・仔魚を80%駆除する条件下において成魚,未成魚の駆除を追加した場合,個別で駆除するより,20%以上少ない駆除割合で根絶率を100%にできた.よって,実際に行われる密度管理において,卵・仔魚,未成魚,成魚を並行して駆除することが重要と考えられる.今後,本モデルをアップデートすることで,日本の河川への応用や低密度管理に必要となる駆除個体数や根絶にかかる年数などの試算精度の向上が期待される.
著者
藤井 達哉 一井 啓介 谷口 航太郎 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_259-I_268, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
28

我が国では,若年者の地方から都市への人口流出が,量の観点から問題視されているが,質に関して議論が行われていない.海外への頭脳流出は問題視されても,それより身近な国内における地方からの頭脳流出は看過されているのである.本稿では,大学入試偏差値を用いて地方からの頭脳流出の実態を分析し,その累積的影響を推計する方法を提案した.まず,大学進学者と大卒就職者を都道府県間移動の有無で集計し,地方別に各偏差値の学生が占める割合を分析した.次に,地方別・偏差値別の大卒残留者数を推計した.分析から,高偏差値の大卒者が地方から首都圏へ流出する構造を定量的に明らかにした.また,現在の大学進学者と大卒就職者の人口移動が将来にわたり続いた場合,地方から高偏差値の大卒残留者が累積的に減少していくことを示した.
著者
田中 皓介 長谷川 貴史 宮川 愛由 三村 聡 氏原 岳人 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.356-368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

近年の日本では大型店舗立地による雇用機会,税収,買い物客の増加が期待されるものの,その根拠は乏しい.それどころか先行研究では,大型店舗での買い物は地元商店での買い物に比べて,地域経済の活性化に繋がらないことが実証的に示されている.本研究は,京都市での先行研究の知見が他都市においても妥当するかを検証するため,岡山市を対象に調査・分析を行った.その結果,買い物支出のうち岡山市に帰着する割合は,地元小型商店,地元中型商店ではそれぞれ67.13%,55.21%であった.一方,天満屋,全国チェーンYではそれぞれ40.00%,28.48%に留まり,地元小型商店や地元中型商店の方がチェーン型大型店舗よりも,買い物支出が岡山市に帰着する割合が高いことが示された.こうした傾向は京都市を対象に行った先行研究の知見を支持する結果である.
著者
宮里 心一 深田 宰史 田中 泰司 花岡 大伸 伊藤 始 鈴木 啓悟 杉谷 真司 宇津 徳浩 井林 康 津田 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.F5-0089, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
56

市町村は多くのインフラを管理しているが,そのメンテナンスに苦労している.特に北陸地方のコンクリート構造物では,塩害やASRによる劣化が生じやすく,早急な対応が望まれる.このような背景を踏まえて本稿では,地元の大学・高専教員が連携して,市町村が管理する道路橋を対象にした,メンテナンスの合理化に向けた支援について論ずる.はじめに,新潟県上越地区・富山県・石川県・福井県の41市町に対してヒアリング調査を実施し,課題とニーズを抽出した.次に,これらを改善すべく,コンクリート橋に対する点検・診断・措置の手順案を策定し,また技術展示会を開催し,さらに実橋を用いた補修効果の評価に取り掛かった.以上により,市町村の実情を起点とした,官学連携による道路橋の維持管理の合理化に向けた実績とその評価を整理した.
著者
家田 仁 岩森 一貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_719-I_730, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
13

高速道路ネットワークが約1万kmにまで拡張され,高速バス輸送は今や年間1億人の輸送人員を担う重要な交通手段となっている.特に新幹線を持たない地域においては短距離から中長距離輸送まで,公共旅客輸送の主役の地位を占めるに到っている.この研究では,高速バス輸送における最も重要なインフラ施設ともいえる高速バスストップ(BS)に着目し,まず創始期の高速バス導入の意図とその後の変容経緯を歴史的に振り返り,それを踏まえてBSの設置タイプ別の整備状況と使用状況を調査し,その特性について交通学的見地から分析して一定の合理性を確認するとともに,地域的偏差特性に着目した考察を通じて,BSの整備と使用に関わる地域政治的もしくは意思決定論的性質の内在性を示唆したものである.
著者
池田 隆太郎 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00089, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
15

本研究では,大分県津久見川における河川激甚災害対策特別緊急事業を事例として,基本構想から現場施工までに至る事業プロセスを詳述するとともに景観配慮の実現方策について考察した.その結果,1) 事業早期段階における整備・管理主体間の地域の実情を踏まえた目標設定と共有の場づくり,2) 管理者による景観設計方針を引継ぐシステムとともに監修業務にあたれる人的体制,3) 都市との一体的整備を念頭におきながら自由度の高い交付金を激特事業の工期に重ね合わせて取得・活用する工夫が,激特事業等の災害対策事業における景観配慮を実現させる有効な戦略として挙げられた.