著者
武田 慈史 河西 良幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.57A, pp.1225-1238, 2011 (Released:2011-08-01)

The purpose of this paper is to propose impact response calculation method using response spectrum based on identical impulses. For that purpose, the relationship between momentum of missiles and associated impact impulse were at first analyzed based on previous collision experiments due to hard and soft missiles, and hard missiles through shock absorbing installations such as sand and rubble. As a result, conservation of momentum proved to be realized on the whole and therefore the impulse necessary for calculation can be easily decided based on the momentum of missiles. Consequently, diagrams of impact response spectrums based on identical impulses were originally proposed and successfully applied to three cases. In conclusion, the calculation method can easily and rationally evaluate impact responses of structures.
著者
日野 幹雄 片岡 真二 金子 大二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学講演会講演集 (ISSN:04194918)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-9, 1968-11-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
16

水面に浮ぶ油膜の消波作用は古くから人々の注目した現象であり, これに関する実験もいくつかみられる。しかし風波の発達と特性に対する油膜効果に関するものは意外に少ない。この論文は小型風胴の測定部に水槽部をもうけて, 表記の点について行なった室内実験の報告である。油としては水に溶解性のヤシ油 (ラウリル硫酸ナトリウムC12H25・O・SO3Na) を用いた。油の表面活性作用による表面張力の変化 (減少) と風波発生の限界風速・波高・fetch graph・spectrumなどの関係について種々興味ある結果が得られた。
著者
窪田 諭 井上 明日香 関 和彦 安室 喜弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
インフラメンテナンス実践研究論文集 (ISSN:2436777X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.224-232, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
17

国土交通省は,橋梁の維持管理の効率化と高度化を図るために,3次元モデルの活用を推進している.既設橋梁においては,紙図面から精確な3次元モデルを生成することは容易ではない.また,図面が残されていない橋梁も多く,点検時に図面を参照することや点検結果を図面に記録できない課題がある.本研究では,3次元モデルを維持管理に関する情報を記録するための基盤とすることを目的として,地上型レーザスキャナ,UAV搭載型カメラとMobile Mapping Systemにより実橋を計測したデータから生成した点群データにパラメトリックモデリングを適用し,3次元モデルを構築する手法を提案した.各計測機器により取得した実橋の点群データを用いて提案手法を検証し,データが一部欠損していても3次元モデルを構築できることを示した.
著者
日高 菜緒 道川 隆士 矢吹 信喜 福田 知弘 Ali MOTAMEDI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_156-I_166, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本論文では,スイープ構造であるモノレールのレールの点群のポリゴン化手法を提案する.モノレールは長大でモデル化が容易でなく,特にレール部分は高所にあり満足に点群を計測することも難しい.そのため,既存の手法ではレールの維持管理に有効なポリゴン化は困難であった.本論文で提案する手法は,構造物がもつ対称性に着目して,点群の欠損に頑健なスケルトンを抽出する.スケルトンが得られれば,それに沿って断面を押し出すことでポリゴンが容易に生成できる.提案手法によって生成されたポリゴンは,規則的な構造を持っており,維持管理に活用しやすい.また,入力点群に欠損があったとしても,補完できるなどの利点がある.本論文では,レーザースキャナで計測したモノレールの点群に提案手法を適用することで有用性を検証した.
著者
小関 玲奈 山本 正太郎 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.47-58, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
34

災害常襲国である日本において,土地利用マネジメントを含めた事前復興計画の推進は急務であるが,土木史的な視座を踏まえて,危険地帯への市街地進出要因を考慮した制度設計がなされているとは言い難い.そこで本研究では,東日本大震災,西日本豪雨で被災した5都市の都市形成史と災害後の都市計画的対応を比較分析し,各都市で甚大な被害を生むに至った空間的要因とその経緯を解明することを目的とする.近代以降の交通基盤整備や土地区画整理事業等の都市基盤整備が実施された位置や規模を,分析の視点とする.次の災害への備えとしての災害防御インフラの整備と,土地の利便を逓増させる交通基盤・都市基盤整備とが連動して行われたかどうかが,災害後に減災型都市構造へ転換する分岐点となったことを明らかにした.
著者
出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.779, pp.779_95-779_104, 2005 (Released:2006-04-07)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究は, 京都東山の麓にあたる浄土寺・鹿ヶ谷・若王子地域を対象として, 近代化によって変容した景域の形成過程を明らかにするものである. 古地図や絵図, 文書や過去の出版物などの史料と, 地形の分析をもとに, 地域の構成が遷移する様子とその要因を考察した. その結果, 広い田園地帯と山裾に独立して並ぶ社寺を結ぶ限られた道による近世の原形は, 大正11年頃に始まる住居開発の時期に大きく変容したことが分かった. 明治23年の琵琶湖疏水分線の挿入はその重要な基盤であった. 住居地域の開発時には, 住み始めた住人による直接的空間創造と価値の発見に促進されて, かつてより山裾に存在する歴史的領域と, 散策性を得た水辺を含む住宅地の領域の二層構造で特徴付けられる一つの景域へと成長した.
著者
梶谷 義雄 山本 広祐 豊田 康嗣 中島 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-13, 2011 (Released:2011-01-20)
参考文献数
55

本研究では,水力発電施設の災害や事故による社会的影響を対象に,その分析手法や分析結果の効果的な活用方法について検討する.まず,過去の水力発電施設の被害事例の調査や分析を通じて,将来的に懸念される社会的影響発生のシナリオを構築する.次いで,過去事例にも散見される水力発電施設からの溢水が発生するシナリオを対象に,その定量的な分析手法について検討を行う.最後に,事例分析として,仮想的な水力発電施設や地域の人口・経済データを対象に,導水路損壊による社会的影響評価を実施し,被害額や発電による便益の観点から,災害対策優先度などの水力発電施設の維持管理戦略への反映可能性について考察した結果を報告する.
著者
周 月霞 吉武 央気 東海林 太郎 森下 祐 小河 健一郎 堀江 隆生 関谷 雄大 中村 洋平 河野 誉仁 林田 寿文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.205-210, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
11

気候変動における想定最大規模洪水の発生及び環境の単調化を背景に,治水と環境を一体的検討できる3 次元河道設計ツールが益々重要となっている.本検討では,三重県雲出川の直轄区間を対象として,3次元河道設計ツール(iRIC-Nay2DH, EvaTRiP (Pro))を用いて治水・環境の一体的検討を試行し,その有効性の確認・留意点及び課題を抽出することを目的とした.ALB 測量データを用いて構築した水理解析モデル及び河川特徴を反映する環境評価閾値の設定は,治水,環境を一体で予測できることを確認した.また,大河川において3次元ツールを活用するにあたり,地形等の条件設定の留意点,現地調査結果の精度不足や3次元ツールに中長期視点で植生動態を考慮できない等の課題を整理した.
著者
明渡 隆浩 長野 博一 庄子 美優紀 伊東 英幸 藤井 敬宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1029-I_1036, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

わが国では,子育てと仕事の両立支援や女性が出産・育児のしやすい環境づくりに向けた検討が順次進められているが,子ども連れ世帯は就業状況・世帯状況・子どもの発育状況により,外出活動そのものが多様化しており,移動負担要因についても明らかにされていない部分が多い.そのため,これらを支援する内容もより複雑化することが今後予測される.本研究は,保育園および幼稚園通園世帯におけるご両親にそれぞれアンケート調査を実施し,移動時の負担と行動意識,世帯状況等の子育て環境,立地状況の整理を行ったうえで,共分散構造分析を用いて移動負担要因との関係性を定量的に示した.また,移動支援策の利用要因を数量化II類を実施し,共分散構造分析から得られた結果と同等の要因が影響していることが明らかになった.
著者
山下 啓 柿沼 太郎 山元 公 中山 恵介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_6-I_10, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
7

Mach stems generated by the oblique interaction of waves were numerically simulated using a set of nonlinear equations derived on the basis of a variational principle without any assumptions concerning wave nonlinearity and dispersion. The Mach stems showed a larger amplification rate defined along the nondimensional time as the incident wave height to water depth ratio was larger and the water depth to incident wave length ratio was smaller. When the Mach stem reflected at a vertical wall, its wave height became remarkably large without wave breaking. A new method was proposed to consider the boundary conditions on a vertical wall which was set diagonally across computational grids. The wave amplification at the head of a bay depended on not only the incident-wave parameters but also how large the Mach stem was amplified.
著者
長沼 悠介 立花 潤三 後藤 尚弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.II_351-II_359, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
27

本研究では,代表的な食料8種類について,食料供給システム(食料生産・流通・消費)における食料フローを解析し,1965年から2005年までの各消費量,食品ロス量,食料供給に係る投入エネルギー及び二酸化炭素排出量を明らかにした.二酸化炭素排出量は2005年において約5,400万t-CO2(日本の二酸化炭素総排出量の約4.5%)であることが明らかになった.また,国民が摂取した熱量(摂取熱量)と食料供給に要した熱量(投入エネルギー)の乖離幅と食品廃棄物量に関係があることが明らかになった.そして,必要とする栄養素量を満たしながら,投入エネルギーが最も少ない低炭素型の食生活を線形計画法によって明らかにした.その結果,穀類・豆類・肉類等の摂取を増加し,野菜類・魚介類等の摂取を減少させる解が得られた.この食生活を日本人全員が行うと,年間で約500万t-CO2の削減が可能である.
著者
阿部 雅人 杉崎 光一 中村 一樹 上石 勲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.1, no.J1, pp.217-220, 2020-11-11 (Released:2020-11-18)
参考文献数
15

積雪状態を評価することは,建物の屋根の雪下ろしや路上などでは除雪など路面状態の管理のために重要である.特に積雪深の評価は目視で行う以外にはレーザーなど高価なセンサを利用する必要がある.近年深層学習などの画像処理技術が向上しており,監視カメラなどの画像を利用して積雪状態を評価する検討が多く行われている.特に,沿線カメラによる路面や路肩の監視画像は,撮影場所が固定されているため位置情報は明確であり,画角の変化も比較的少ない.本研究では,監視カメラを利用した路肩にある積雪の積雪深の評価についてAI手法を適用した.
著者
李 瑾 阿部 雅人 杉崎 光一 中村 一樹 上石 勲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.1, no.J1, pp.210-216, 2020-11-11 (Released:2020-11-18)
参考文献数
13

近年、低頻度降雪地域では、降雪の際に、道路での車両の大規模滞留が見られる。道路管理者による異常事態の監視や路面状態の判別は、主に目視で行われているため、異常検知の効率がやや低い。本研究は、道路管理者が迅速に異常検知や処理判断をするための支援ツールとして、ドライブレコーダーの画像をもちいて、道路路面を「乾燥」、「湿潤」、「浸水・冠水」、「湿雪」、「圧雪」の 5種類へ目視分類した教師データを作成した。また、自動で路面状態を判別する AIモデルを構築し、昼と夜を合わせた 26199枚の画像で検証した結果、概ね 85%の正答率であった。
著者
波床 正敏 中川 大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_629-I_641, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

1964年に世界初の高速鉄道である東海道新幹線が開業し,2014年で50年を迎えた.この間,わが国では複数の新幹線が整備されてきたが,厳しい経済合理性を求められる社会環境やオイルショック等が影響し,世界的に高速鉄道の役割が注目される昨今においても新幹線網整備は必ずしも活発ではない.このような現状のネットワークは,特に国鉄解体民営化以後の幹線鉄道政策に依るところが大きいと考えられる.そこで本研究では,国鉄民営化直後の1990年を基準とし,当時の予想としての2025年における将来人口分布や当時明らかになっていた旅客流動データ等を前提に遺伝的アルゴリズムを用いて幹線鉄道網を最適化した.探索結果と実際に実施された幹線鉄道整備を比較し,整備政策が適切であったかなどについて考察を行った.
著者
阪本 真 屋井 鉄雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_1089-I_1101, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
20

航空需要の増加に伴い,首都圏空港は更なる機能強化が必要とされている.海外では,従来の管制運用方式とは異なる先進的な管制運用方式の導入によって空港の機能強化が達成されている.本稿ではPoint Merge System(以下,PMS)と呼ばれる運用方式に着目し,従来の研究には見られない管制指示音声データを利用した分析により,PMSにおける管制指示及び航空機挙動の特性を定量的に明らかにした.次にこの結果を踏まえて先行研究で開発した基礎的なシミュレータの改良を進め,羽田空港にPMSを導入した場合の効果について基礎的な検討を行った.
著者
中村 泰敏 橋本 岳 鈴木 康之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.3, no.J2, pp.92-103, 2022 (Released:2022-11-12)
参考文献数
18

近年では,土木建設等の分野で航空レーザや地上レーザ等の三次元点群測量器が広く活用されているが,そうした測量器を用いるには,運用コストが高い等の課題がある.そのため,特に小規模土工の建設業では測量器の活用が進んでいない.そうした状況の中,LiDAR を搭載したモバイル端末が発売され,三次元点群データの取得を可能にするアプリケーションも数多くリリースされた.しかし,土木建設分野で必要な公共座標へ対応したアプリケーションは少ない.そこで本論文では,任意座標の三次元点群を公共座標へ変換することを従来手法と比較して飛躍的に簡便に行うことを目標とした.また,実際の小規模土工現場の測量点群の座標を本研究成果によって変換した結果が国土交通省の出来形管理要領に示されている測定精度内に収まることも目標とした.
著者
大島 明 樋口 邦弘 鵜飼 恵三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.45-53, 2011 (Released:2011-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

地方公共団体技術職員の技術力低下が心配されているが,その実態と原因を探る糸口として毎年報告されている会計検査院の検査報告に注目してみた.この報告の指摘事項を調べると同様な指摘事項やその繰返しであることに気づく.これらの指摘事項を分析して,見えてきたものはやはり地方公共団体技術職員の技術力低下であり,まず,その原因について考察する.次に,技術力向上を図るための対策・改善方法について考察する.併せて,筆者の具体的事例として,わかりやすく解説しているので指摘事項から学ぶこと,資格取得が有効であること.さらに,現場で工夫した内容を論文にまとめ投稿し発表することなどが,技術力向上に繋がることを紹介する.
著者
天野 光三 西田 一彦 渡辺 武 玉野 富雄 中村 博司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.660, pp.101-110, 2000
被引用文献数
1

近世の城郭における石垣構造の技術的頂点に位置するものとして徳川期初期での大坂城石垣がある. 石垣形状での2次元的曲線および3次元的曲面にみられる構造美や構造形式としての力学的合理性からみて, 城郭石垣は世界的に他に例をみない極めて優れたものである. 本研究では, 歴史遺産としての徳川期大坂城城郭石垣をその構造に着目して土木史的研究を行った. まず, 現場調査と文献調査により過去の崩壊事例を明らかにした. 次に, これらの歴史データの分析をもとに抽出した石垣構造形式の力学的合理性に関して, 平面および断面形状に着目した実証的研究を行った. その中で, 石垣構造の安定性評価法として, 石垣構造比および石垣はらみ出し指数といった工学指標について提案した.
著者
西 隆一郎 金子 有理 福永 和久 鶴成 悦久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_941-I_946, 2020 (Released:2020-09-28)

2014年10月に来襲した台風1418号と1419号により,鹿児島県奄美大島の南南東側で太平洋に面する瀬戸内町嘉徳集落前の嘉徳海岸で顕著な侵食被害が生じた.この時,後浜の侵食に加えて,嘉徳集落の墓地や民家の数m近くまで海岸砂丘が侵食され,砂丘としては20m程度後退した.台風銀座とも呼ばれる地域でもあり,台風は毎年来襲する可能性が高い.加えて,海岸砂丘上にある集落を護るために海岸保全の要望が地域住民からあった.一方,海岸保全だけでなく,絶滅危惧種オカヤドカリを含む海岸生態系への影響や景観および世界自然遺産登録への影響を考慮する必要性のある海岸でもあった.そこで,本論文では,台風1418号と1419号に伴う本海岸の海岸侵食機構の解明と,経年的な海岸過程について明らかにし,その後,海岸保全,環境保全,海岸利用が適切に調和した海岸保全の方向性に関し検討することにした.