著者
稲松 敏夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.353-362, 1995

筆者は先に第1回~第11回にわたって、電力土木の変遷と、電力土木に活躍した人々を中心に各河川の水力開発について述べ、その中で電力土木に一生を捧げた人々のうちの代表的人物60名を発掘して、その成果をまとめ得た。<BR>さらに一昨年から、その中25名の人々の業績を詳述し、第2編・電力土木人物史として6名 (知久清之助、伊藤令二、北松友義、目黒雄平、高桑鋼一郎、久保田豊) について発表し、今回はその3として数名を発表する。
著者
下坂 将史 呉 修一 山田 正 吉川 秀夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.106-122, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本論文は,ダム貯水池の洪水調節機能向上を目的としダム放流量の新しい決定方法を提案するものである.著者らは従来から,現在まで降った降雨のうち確実にダム貯水池へ流入する量を,実際に流入する以前に放流する事前放流方法を提案している.本論文では,放流開始までの準備時間及び下流懸案地点における水位上昇速度を考慮してダムからの放流シミュレーションを行う.これにより各種法律,施設の放流能力,放流開始までの準備時間を考慮した実務に即した放流が可能な事を示すとともに,洪水低減効果向上のためには放流開始に要する準備時間を短くする必要がある事を示した.また,出水直前のダム貯水位が夏期制限水位以下の場合でも,初期水位低下量を考慮した事前放流を行うことで出水以降には夏期制限水位へと貯水位が回復することを明らかにした.
著者
池内 幸司 越智 繁雄 安田 吾郎 岡村 次郎 青野 正志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.136-147, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
20
被引用文献数
6

荒川が決壊し大規模な水害が発生した場合における地下鉄等の浸水状況を把握するために,氾濫域にある地下鉄等の出入口及びトンネルにおける止水板,防水扉等の止水施設の設置状況や乗換駅における各路線の接続状況等を把握して浸水シミュレーションモデルを構築し,地上部と地下鉄等の浸水状況の把握を行った.その結果,地下鉄等のトンネルや乗換駅等を通じて地下空間が広範囲に浸水すること,東京駅等において地上部よりも早く地下鉄等のトンネルを通じて氾濫水が到達する場合があること,足立区千住地先で決壊した場合,地上の浸水範囲は局所的であるにもかかわらず都心部を含む広い範囲が水没状態になること,出入口等に応急的な止水対策等を行うことで,浸水区間の減少や浸水開始時間の遅延に対して効果を発揮する場合があることなどが分かった.
著者
小川 圭一 宮本 達弥
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_883-I_892, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

近年,都市交通手段としての自転車が見直されてきており,環境負荷の低減のため,自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されている.一般に,都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており,自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされている.しかしながら,これは大都市都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり,地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから,有効な距離帯は異なると考えられる.そこで本研究では,京都市中京区,京都府向日市,滋賀県草津市の3地域における各交通手段のサービス水準にもとづき,地方都市の実状に応じた自転車利用促進のための有効な距離帯の算定と比較をおこなう.
著者
中平 歩 岡田 将治 張 浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1087-I_1092, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
7

近年,四万十川河口より4kmから6kmの区間では,土砂堆積による流下能力の不足および汽水域に生育する天然スジアオノリの収穫量の減少が問題となっている.土砂堆積の要因は,昭和41年以降の砂利採取期間を含む現在までの土砂動態と流入土砂量の検討結果から,砂利採取禁止後からの土砂供給量の増加によるもので,今後も堆積傾向にあることが予想される.また,スジアオノリの生育に適した河床高の面積と収穫量の関係から,土砂供給量の変化がスジアオノリの生育できる河床高の範囲に影響を及ぼしていることがわかった.そこで,平成26年に移動床実験による平衡河床形状の検討結果から選定した掘削箇所をスジアオノリの生育に適した河床高になるよう切り下げた結果,平成27年1月にはそれまでに繁茂していなかった区間に新たな繁茂域の形成が確認された.
著者
今岡 亮 藤井 学 吉村 千洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_525-III_533, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

植物プランクトンへの鉄供給プロセスの観点から,本研究では腐植物質の化学的性質が鉄との錯形成に及ぼす影響について調べた.pH 8において競合リガンド法により,様々な起源をもつ標準腐植物質と鉄の錯形成を調べ,錯化容量と条件付き安定度定数について多様な値が得られた.これら錯形成パラメータと元素分析・13C-NMR・酸塩基滴定から得られた腐植物質の構成元素比・炭素種割合・官能基量との関係を調べた結果,芳香族炭素割合と錯化容量には有意な正の相関がみられ,芳香族領域にある官能基が主な鉄結合部位であることが推測された.さらに,安定度定数は硫黄や窒素含有量と弱いが有意な正の相関があり,スルホン基やアミノ基を含む腐植物質は鉄と高い親和性を有する可能性が示唆された.
著者
竹谷 修一 大橋 幸子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_273-I_279, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
3

2011年3月に発生した東日本大震災においては,地域建設業による迅速な支援活動が実施された.本研究では今後の巨大災害の備えに資する知見を得ることを目的に,支援活動が迅速に行われた要因を明らかにすることとした.分析に際しては,国土技術政策総合研究所・東北地方整備局・東北建設業協会連合会が実施した,地域建設業の活動実態調査結果を用いた.その結果,自社確保による建設機械やオペレーターが迅速な支援の要因と考える企業が被害の大きかった沿岸部で多いこと,支援活動に活用した資源は沿岸部では自社保有による確保が困難であったことなどが明らかとなった.
著者
寒川 旭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.672-679, 2008 (Released:2008-08-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本稿では,地震考古学の研究によって得られた成果の概要を紹介する.まず,液状化現象について,噴砂の流出に伴う礫や砂の級化や地層の流動など,遺跡で得られた新しい知見を示した.また,液状化現象の痕跡を強震動の証拠と考えて,南海トラフから発生する巨大地震の発生年代の解明に用いた.内陸地震については,活断層のトレンチ調査や文字記録に地震痕跡を加えて解釈することで地震の全体像が把握できる.さらに,千数百年前頃に各地に築造された古墳については,地滑りなどの地変を量的に検討できる.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
田中 皓介 池端 菜摘 宮澤 拓也 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_33-I_42, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
著者
吉田 郁政
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.93-104, 2011 (Released:2011-08-19)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

波動伝播から破壊現象までを一貫して解析できる地震応答解析手法としてMPS法に注目しその開発を行った.MPS法は波動方程式を粒子を用いて数値的に解く方法であるが,その定式化は結果的にDEMに極めて近いという特徴をもつ.DEMにおいて粒子の配置が破壊挙動に影響を与えることが知られており,同様のことがMPS法においても確認されたため乱数を用いて粒子をランダムに配置する方法について提案を行った.また,せん断,引張に関する破壊基準の導入,初期状態から大きく変形して新たに接触する粒子の扱い方についての提案を行った.落下や自重による崩壊解析,圧縮による破壊解析を行い,これら提案した定式化の有効性を確認した.
著者
Anawat SUPPASRI Panon LATCHAROTE Tanuspong POKAVANICH Khaled AL-SALEM Abdullah Al-Enezi Shinji TODA Fumihiko IMAMURA
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_1675-I_1680, 2016 (Released:2016-11-15)
参考文献数
10
被引用文献数
3

The Arabian Gulf (also known as Persian Gulf) region is one of the most important oil producers to fuel the world and most of the population is located along the coasts. The present study aimed, for the first time, to carry out some preliminary assessment of the tsunami hazards in the Arabian Gulf region using numerical model. This study tsunamis generated by submarine earthquakes with the earthquake magnitude (Mw) of 8.3-9.0 along the Makran Subduction Zone (MSZ) and surface landslides with the volume of 0.5-1.0 km3 along Iranian coast inside the Arabian Gulf. TUNAMI model was applied in this study to predict the tsunami propagation. The model adopts the staggered leap-frog scheme to solve shallow water equations describing nonlinear long-wave theory. GEBCO 30 arc-second grid data was used as bathymetry and topography data for tsunami numerical simulation. This size of the computational grid was ascertained by many previous studies for its suitability in evaluating tsunami hazards in this region. For surface landslides, tsunami generation was simulated using a two-layer numerical model developed by solving nonlinear long-wave equations within two interfacing layers with appropriate kinematic and dynamic boundary conditions at seabed, interface, and water surface. In case of the earthquakes along MSZ, Mw 8.3 has low impact to locations inside the Arabian Gulf. Mw 8.6 has considerable impact mainly at the Gulf entrance meanwhile Mw 9.0 has high impact at the Gulf entrance and negligible impact for the whole Gulf region. In case of the surface landslides inside the Arabian Gulf, the impact is rather local but major near the sources. Detailed estimation of landslide volume, tsunami simulation using very fine topography and bathymetry data and coupling tide and tsunami wave modeling will be considered for the future works.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_1609-I_1614, 2016
被引用文献数
3

太平洋に直面する徳島・高知沿岸では,繰り返される南海トラフ地震によって,大きな津波被害を受けてきた.同沿岸域では,2011年の東北地方太平洋沖地震で津波被害の大きかった三陸地方沿岸と同じリアス式海岸となっている区間も多く見られる.一方,東日本大震災では多くの神社が津波からの被災を免れたことが知られている.古い歴史を有する神社は地域とともに歩んできた重要な公共空間であり,現在の分布は,過去の大災害等によって淘汰された結果を示しているとも考えられる.こうした社会背景を踏まえ,本研究では徳島・高知沿岸神社の空間分布と南海トラフ地震の津波被災リスクについて検証した.
著者
及川 康 児玉 真 片田 敏孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.786, pp.89-101, 2005-04-20
被引用文献数
2 3

本研究では, 水害の進展過程に応じて住民が周辺状況の変化を察知し, 種々の災害情報を入手する中で, それをどのように受け止めて危機意識の形成に結びつけるのか, さらには, 如何にして対応行動に移すのか, という一連の心理的過程と対応行動の関係に着目し, その特性を時系列的かつ定量的に把握した. これらの検討では, 水害時における避難勧告・指示の発令は直接的に住民の避難行動の意思決定に影響を与え, 避難準備情報は家財保全行動を促す効果を持つこと, また, それら避難情報が発令される以前に提供される災害情報は, 早期の危機意識の醸成を促すことなどを定量的に示した. また, 洪水ハザードマップの公表等による事前の災害教育の実施により, 住民が自宅の潜在的浸水可能性を正しく認識し, 対応行動に反映させる効果を示した.
著者
北澤 俊彦 塩見 康博 田名部 淳 菅 芳樹 萩原 武司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_501-I_508, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
20

近距離無線規格であるBluetoothの普及を背景とし,諸外国ではBluetoothのMACアドレス(個体識別ID)を路側で把握することで旅行時間計測やOD計測など交通調査に活用する試みがなされている.わが国でもBluetoothを搭載した電子機器や通信機器が市場に出回るようになっていることから,受信機を設置した任意地点間の旅行時間が計測可能と考えられる.本研究では,BluetoothのMACアドレスを計測・記録して旅行時間計測を行うための調査システムについて検討するとともに,実環境で容易に利用可能な計測ツールの開発を行った.さらに,一般道路や都市高速道路を対象として旅行時間を観測したケーススタディを通じて,Bluetoothを用いた旅行時間計測に関する基礎的な分析を行い,現段階でも旅行時間調査に適用可能なシステムであることが確認できた.
著者
岡本 萌 門廻 充侍 高橋 智幸 日向 博文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_356-I_360, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
10

Two oceanographic Radars targeting tsunamis had been installed in Wakayama Prefecture in Japan. To study observation capabilities of the radars on far field and near field tsunamis, numerical experiments were carried out. After starting the operation of the radars, nine earthquakes occurred in the observation area, however, they were too small to be observed by the radars. Parameter study on near field tsunamis showed the radars can observe earthquake of Mw 7 and very shallow Mw 6. As a far field tsunami, the 2012 Haida Gweii Earthquake Tsunami arrived at Japan, however, the radars could not detect it because of very small velocity. Parameter study on far field tsunamis showed the main energy of tsunamis off Canada propagates northward, and Oshika Peninsula is suitable to observe the tsunamis.
著者
布施 孝志 安井 仁 清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.496-504, 2006 (Released:2006-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

江戸市中における景観において,富士山等の遠地形は重要な要素の一つであったといわれている.しかしながら,史料に記述された地点以外における遠地形の視認可能性は,これまでのところ議論されていない.本研究では,当時の人々の眺望対象であった遠地形が江戸市中のいかなる地点から視認できたか,その可能性について分析を行うことを目的とする.最初に,古地図の幾何補正を行い,デジタル地形モデルを作成する.更に,視認可能性の分析にとって重要となる構造物の高さデータを整備する.これらのデータを用い,江戸市中からの富士山等の可視マップを作成する.その結果,史料に記載の見られない江戸各所からも富士山視認の可能性のあることが明らかとなった.
著者
松井 祐樹 日比野 直彦 森地 茂 家田 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_533-I_546, 2016
被引用文献数
4

インバウンド観光は,今後の日本にとって重要な役割を担うものである.近年では,台湾,韓国,中国からの訪日外国人旅行者に加え,東南アジア諸国からの旅行者も急増している.観光行動の多様化が進む中,ニーズを十分に捉えた観光政策が求められている.しかしながら,彼らがどのような地域を訪問し,どのような観光活動を好むかを観光統計データに基づき複合的かつ定量的に分析された研究はこれまでにない.本研究は,訪日外国人消費動向調査の個票データを用いて訪問地傾向と観光活動を組合せて分析し,個人属性による差や時系列変化を定量的に示したものである.分析結果より,訪問地傾向と観光活動を組合せて分析することの重要性を示すとともに,近年増加する個人旅行者は,都市部を中心に多様な観光活動をする傾向にあることを明らかにしている.
著者
宮里 心一 伊代田 岳史 白旗 弘実 小田 義也 塩見 康博 鶴田 浩章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-9, 2019 (Released:2019-01-20)
参考文献数
23

グローバル化が進む中,学部と大学院修士課程における6年間の教育による土木技術者の育成が望まれている.この様な背景を踏まえて本論文では,社会で活躍する人材を大学・大学院で効果的に育成すべく,産業界で活躍するために必要な能力を整理した上で,それらを学生が習得するための授業について検討した.加えて,意欲の高い学部生が大学院へ進学する動機付けを精査した.その結果,コミュニケーション能力や論理的思考力等が産業界で求められており,それらは大学院の研究活動および研究室活動で顕著に育まれることを明らかにした.また,現場見学や技術者との交流により,学部生は土木が社会で役立つ本質を認識し,学習意欲の向上につながるとともに,大学院進学のきっかけになることを確認し,これらを盛り込んだ授業を整理した.
著者
越沢 明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.223-234, 1986

「満州国」が中央政府直轄で都市建設を実行したのは、新京と大東港の2都市である。前者は新首都の建設であり、後者は大規模な臨海工業都市の建設であった。<BR>大東港は朝鮮と国境を流れる鴨緑江の河口帯に計画された。大東港の計画はぐ満州唯一の不凍港をこの地に建設し、地下資源と水力発電を活かして、人口100万人の臨海工業都市を新規に建設しようとするものであった。<BR>この計画岸信介、直倫太郎の支持によって進められ、現地機関では近藤三郎、黒田重治、米田正文らが事業を推進した。<BR>大東港にられる港湾と工業地帯のセット開発、高速道路の建設、土地経営による事業償還などの方式は、戦後日本の大規模開発プロジェクトの方式を先取りしていたと言えるものである。