著者
大澤 実 高山 雄貴 恩田 幹久 浅川 遼 池田 清宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.50-63, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
36

本研究では,我が国の人口分布の大域的特徴とその変遷を明らかにし,多地域空間経済モデルによる理論的予測と実現象との対応付けを試みる.具体的には,パワー・スペクトルに基づく簡便な空間周波数解析によって,1次元空間における理論的予測である (i) 集積の周期性と (ii) 輸送費用の低下に伴う集積数の減少を検出する.国勢調査をもとに,我が国の人口分布を1次元空間上に射影した人口分布データを1920年まで遡る複数年度にわたって作成し,提案手法を適用する.そして,我が国の人口分布の基本的特徴・時系列変化を明らかにし,理論予測との整合性を議論する.
著者
馬場 康之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_553-I_558, 2018 (Released:2019-12-05)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究は,黒潮の非蛇行期(2017年)および蛇行期(2018年)における水温の変動特性について,和歌山県田辺湾の湾口部で冬季に観測された水温データに基づいて考察を行ったものである.黒潮の非蛇行期には,紀伊半島西岸沿いを北上する暖水波及の影響が顕著であり,水温の急変が発生する頻度が蛇行期に比べて多い.一方の蛇行期にも暖水が南側から波及するものの,暖水波及の頻度及びその規模が大きく減少し,紀伊半島南端に近い地点での水温変化との相関にも顕著な差のあることが確認された.また,観測期間中に確認された顕著な水温変動が両期間ともに約30日周期で発生しており,別時期の水温計測結果においても同程度の変動周期が確認されていることから,長周期の変動が観測地点の水温変動特性にも関与している可能性が示唆された.
著者
篠田 昌弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.218-227, 2015 (Released:2015-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

斜面の安全率算定法は70年以上も前から提案されており,現在までに様々な手法が提案されている.現在実務で適用されている斜面の安全率算定法は,すべり線を円弧と仮定しているものがほとんどである.これは,すべり線が円弧であると,パラメータが少なく,安全率算定アルゴリズムが単純で,計算効率や計算の安定性が高いためである.一方で,非円弧すべりを仮定した斜面の安全率算定法にSpencer法があるが,Spencer法による安全率の算定アルゴリズムは複雑で,条件によっては計算が不安定になる場合がある.本研究では,Spencer法を用いた非円弧すべりを仮定した斜面の安全率算定における不安定性の要因を明らかにするとともに,その問題点を改善した安定性の高い斜面の安全率算定アルゴリズムを示す.
著者
波床 正敏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_809-I_820, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
22

フランスでは1981年にTGVが運行開始され,現在までに多くの主要都市に対してTGVサービスが提供されている.本研究では,フランスの幹線鉄道政策を振り返るとともに,近年の高速鉄道整備に伴う影響などについて分析するため,TGV導入前の1963年,導入直後の1985年,全国展開期の2005年の3年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.その結果,最初のTGVが開通した直後の1985年以前では速度向上と乗り継ぎ利便の改善が図られることで総合的な利便性が大きく向上したが,1985年以後のTGVネットワークの全国展開期においては速度は向上したものの乗り継ぎ利便が悪化することが多く,総合的な利便性の改善は小さいことがわかった.
著者
工藤 めい 下村 匠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.196-207, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
20
被引用文献数
3

コンクリートの吸水・乾燥挙動に及ぼすひび割れの影響を把握するため,一本および複数本の曲げひび割れを有するコンクリート供試体を用いて乾湿繰返し試験を行った.その結果,ひび割れ幅が大きいほど吸水,乾燥が促進されること,ひび割れを有するコンクリート部材の乾湿挙動は,ひび割れ幅とひび割れ間隔の比であるひび割れひずみに依存することを明らかにした.また,実験結果を再現する,ひび割れの影響を考慮したコンクリート中の水分移動解析法を開発した.これを用いて,長期乾湿挙動に及ぼすひび割れの影響,乾湿作用の影響について感度解析を行った結果,ひび割れひずみがひび割れの状態を表す有効な指標であること,長期乾湿挙動予測する場合は月単位の乾湿サイクルの環境作用モデルを用いても十分な結果が得られることを明らかにした.
著者
萩田 賢司 森 健二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_1055-67_I_1062, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

太陽の眩しさは道路交通に悪影響を及ぼしており,様々な交通安全対策が実施されている.こうした悪影響の実態把握や対策効果を検証するためには,太陽の眩しさが交通事故発生に与える影響を定量的に示すことが必要である.しかし,このような研究は場所や路線を限定して行われてきており,不特定多数の道路で検証した例はみられない.本研究では,緯度経度情報と進行方向ベクトルが記録されている千葉県警の交通事故原票を活用して,事故発生時の太陽位置や太陽と車両の進行方向の方位角差を算出し,太陽の眩しさが事故発生に与える影響を検討した.その結果,日照時において,太陽が第一当事者からみて眩しいと考えられる位置に存在する場合には,交通事故が比較的多く発生しており,太陽の眩しさが道路交通に悪影響を与えていることが示された.
著者
笠行 健介 兼清 泰明 石川 敏之 檀 寛成
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_23-I_31, 2018 (Released:2019-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

CFRP接着鋼部材を対象とした数値解析において発生する恐れのあるスキームの数値不安定化を,多倍長精度計算方式を適用することにより安定化させて高精度の解を得る手法を構築する.まずCFRP板が接着された鋼板に引張荷重が負荷されるという想定の下で,CFRP板に生ずる軸力とせん断力に対する静力学的基本微分方程式を導き,境界条件を伴う解を伝達マトリクス法により初期値問題の解から構成する枠組みを与える.次に,IEEE 754に基づく固定精度浮動小数点方式による数値解法ではスキームを高精度化しても数値不安定現象が発生し,定性的に異なる挙動の解しか得られないことを示す.最後に多倍長精度計算ライブラリGMPを用いた任意精度方式による数値解法を適用することにより,スキームが安定化して定性的に正しい解が得られることを明らかとした.さらに,(i) 同様のアプローチがCFRP板端部にテーパを設けた場合にも有効であること,(ii) 得られた解は有限要素解析の結果とよく一致すること,(iii) 有限要素解析では数値評価が困難なCFRP板端部付近の応力の挙動も算出し得ること,を明らかとした.
著者
本田 和也 橘 伸也 飯塚 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.31-39, 2019

<p> 災害時の初期対応において,意思決定者は一刻も早く災害対応の決断を行う必要がある.この初期対応の迅速性を高める手段として,逐次得られる災害情報から被災者数を予測することで意思決定に利用するという考え方がある.</p><p> 本研究では死亡者数の経時変化を表す関数について検討を行い,発災後初期に被災規模を予測できる被害予測モデルの精度向上を考える.発災後初期の情報更新が多い事例については,死亡者数再現関数として双曲線関数を採用することで,ワイブル分布の場合よりも早い時点で信頼できる被害予測を行うことができることがわかった.また,出来るだけ初期にその災害の被災規模を予測できる被害予測モデルの運用方法を検討した.情報更新速度を向上させることで,本モデルを用いて災害初期段階で被害予測を行うことができると考える.</p>
著者
山崎 宏史 蛯江 美孝 西村 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_267-III_273, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,戸建住宅の給排水設備に節水機器を導入し,生活排水の質的量的変化および浄化槽の処理性能に及ぼす影響を評価した.節水機器の導入により使用水量が削減され,浄化槽流入水は高濃度化した.この流入水性状の変化に伴い,浄化槽からの処理水BOD濃度は14.8 mg/Lから21.4 mg/Lへと44.6%増加し,浄化槽は所期の性能を確保できなくなった.しかし,処理水量が削減されたことにより,処理水BOD濃度と水量の積で示される水環境へのBOD汚濁負荷量は,ほとんど変わらないことが明らかとなった.さらに,節水機器導入後に,浄化槽の嫌気好気循環運転を試みた結果,処理水BOD濃度は14.2 mg/Lまで減少し,水量の減少と相まって,水環境へのBOD汚濁負荷量を24.8%削減できた.
著者
山田 貴博 仲田 光秀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_319-I_326, 2015 (Released:2016-02-22)
参考文献数
14

局所的な力学挙動を含むはりの有限要素解析に対して,はり要素とソリッド要素を適切に接続することにより低コストで高精度な数値計算を実現する手法について考える.従来の多点拘束(MPC)法やペナルティ法による手法では,接続条件を変位のみで考慮していることから,ソリッド要素領域のはり要素が接続する境界近傍に不自然な変形状態が発生する.本研究では,このような問題点を改善する手法として,接続境界における応力ベクトルの連続性を考慮できるNitsche法の適用を提案する.提案する手法では,はり理論から計算できる応力分布をソリッド要素でモデル化された領域の接続境界における応力ベクトルとするものであり,ソリッド要素領域の接続境界近傍においてもはりとして自然な応力分布が再現される.
著者
津田 涼汰 廣瀬 孝三郎 上原 盛久 松原 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.386-397, 2019
被引用文献数
1

<p> 沖縄島中南部に広がる島尻層群泥岩は,N値50以上を示す場合が多いことから良好な支持層としてみなされる反面,人工法面や自然斜面においては多くの崩壊・すべりが発生することで知られる.また,建設後約30年が経った本泥岩を主体とする道路法面では,法面保護工の損傷が多く見られ,経年に伴う岩石風化の可能性が指摘されている.本研究では,沖縄県中南部に位置する高速道路法面から得られた島尻層群泥岩の約30年間の強度変化を推定し,スレーキング試験,粉末X線回折分析及び微細構造観察によって,本法面の物理的・化学的な風化メカニズムについて検討した.結果として,法面保護工の損傷は,本泥岩に含まれる粘土鉱物の膨潤・溶解作用や黄鉄鉱の酸化作用等の物理的・化学的な風化作用に深く関わっていることが明らかとなった.</p>
著者
仲座 栄三 田中 聡 本屋敷 涼 宮里 信寿 福森 匡泰 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_79-I_84, 2019
被引用文献数
1

<p> Galvin(1968)は,水理実験によって一様斜面上の砕波形態がspilling,plunging,collapsing,surgingの4つに大別されることを示した.Battjes(1974)は,それらの砕波形態や砕波帯内の諸物理現象がIribarren(1949)の示したパラメータで系統的に整理できることを示し,そのパラメータをsurf similarityと呼んだ.本論は,CADMAS-SURFによる数値計算結果によって,波の砕波形態が進行波の軌道流速と戻り流れとの相対的強弱によって決定されていることを示した上で,新たにresonance mode breakerの存在を位置付けている.また,砕波形態と先行波が派生させる戻り流れとの関連を概説した上で,砕波形態が砕波帯内の波の遡上や反射など諸水理現象に及ぼす影響及び,サーファーが砕ける波をサーフィンできる仕組みを定量的に明らかにしている.</p>
著者
本屋敷 涼 仲座 栄三 宮里 信寿 福森 匡泰 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_769-I_774, 2019
被引用文献数
1

<p> CADMAS-SURFを用いた数値計算によって,高さが1.0m前後の高いステップ高を有する階段式護岸に対する波の遡上及び反射率について明らかにしている.従来型の場合,ステップ高が0.2m~0.3mとなっており,傾斜勾配は1:3程度の場合が多い.この場合の波の遡上高は,滑面斜面に対する場合の1割~2割ほど低めとなることが知られている.しかし,ステップ高がさらに高くなった場合についてはあまり研究が行われていない.本研究は,ステップ高を0.2,0.6,1.0,1.4mと順次高めた場合について,波の遡上及び反射の特性を明らかにしている.波の遡上高及び反射率はsurf similarity parameterによって統一的に整理され,ステップ高を高めることでそれらは総じて低減されること及び緩勾配側で反射率の増加があること,ステップ高を高めることで海岸を占有する面積を小さくすることなどが可能となることが示されている.</p>
著者
福森 匡泰 仲座 栄三 田中 聡 宮里 信寿 本屋敷 涼 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_751-I_756, 2019
被引用文献数
1

<p> 直立護岸は,波を反射させ効率的に越波量を低減させる効果を有する.しかし,砕波した波による護岸衝突時の水塊の飛び出しや飛沫の発生などの問題を有する.また,海岸線の利用という面では,利便性の低下や圧迫感を与えるなどの問題点を有する場合がある.それらの改善策として,直立護岸前面に消波工を設置し,護岸天端高を低減させる場合がある.本研究では,直立護岸前面に独自に開発した消波ブロックを設置する消波工付直立護岸及び遊歩道としてのテラス部を設置するテラス式護岸の提案を行い,それらの護岸に対する越波特性を水理実験及びCADMAS-SURFを用いた数値計算で検討している.検討結果は,消波護岸やテラス式護岸では波の乗り上げ効果により越波量が増えることを示している.しかしながら,海岸線利用という面からは,適宜選択可能な策となっており,実務設計において有用性を与える.</p>
著者
吉田 郁政 大竹 雄 本城 勇介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-13, 2015 (Released:2015-05-20)
参考文献数
42
被引用文献数
2 5

観測点の最適な位置および点数を決める問題について,情報の価値Value of Information(以下,VoI)と確率論的空間分布推定手法であるクリギングに基づく方法の提案を行った.不確定性の伴う情報からなんらかの意思決定を行う問題において,新たな観測情報が与えられれば判断の誤りのリスクは減少する.VoIを新たな観測情報の追加による判断の誤りのリスクの削減量と定義して,それを最大化するように追加観測点の位置を決め,さらにトータルコストの最小化により最適な観測点数を決める.トータルコストは観測コストとVoIの和として求める.実在の堤防に沿った液状化対策区間の選定の問題を対象に,既存ボーリングに対する追加ボーリングの位置およびその点数の最適化について,提案手法を用いた検討例を示した.
著者
長谷川 高平 荒井 康裕 小泉 明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_275-II_286, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
45
被引用文献数
3

水道管路資産の急速な老朽化と更新財源の逼迫を受け,長期に渡り発生するライフサイクルコスト(LCC)の最小化を目指すアセットマネジメントが多くの水道事業体で広まりつつある.これまで,水道管路システムを対象にLCCを最小化する管路更新計画モデルを用いた研究が数多く行われてきたが,人口減少下におけるポンプ圧送系に対する更新の考え方(ダウンサイジング等)は十分に確立されていない.そこで本研究では,更新時期と口径を整数で表現する遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた管路更新計画モデルを提案し,人口減少下におけるポンプ圧送系の樹枝状送水システムにモデルを適用した.この結果,ポンプ運転費用を考慮した合理的な口径決定と同時に末端圧力の余裕を活用した積極的なダウンサイジングの立案が提案モデルによって可能となった.また,計画期間中における水需要のピーク(計画水量)から口径を決定することが設計規範として合理的であることが示され,人口減少下では更新時の水量から口径を決定することが有効であるということも明らかとなった.
著者
清水 裕真 Abbas KHAYYER 後藤 仁志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_799-I_804, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1

津波や高潮襲来時の流体力による構造物の変形や破壊,タンク内液体のスロッシング現象や船舶のスラミング現象など,流体-構造連成問題(FSI問題)は海岸工学分野に関わるものが多いが,その対策の検討には数値波動水槽の活用が有用である.粒子法は完全Lagrange型数値解析手法の一つであり,大変形を伴う界面の取り扱いに優れる.その特性を活かし,近年様々な完全Lagrange型構造解析モデルおよびFSIソルバーが開発されてきた.しかしながら,これまでに提案された手法はそのほとんどが構造解析に陽解法型のアルゴリズムを用いているため,高Young率構造物の動的解析には極めて微小な時間刻み幅が必要となり,計算コストの増大および連成解析時における流体との時間刻み幅の差異が問題となる.そこで本研究では,高次の時間発展スキームに基づいて導出した陰解法型完全Lagrange型構造解析手法を開発し,非圧縮性流体と高Young率弾性構造物のFSI解析を通して提案手法の検証を行う.
著者
山田 啓一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.131-134, 1989

Historical data were analiesed for evaluation of the 1742 flood at the Chikuma River in Japan. From the corps damage ratio data at 18 villages along the Chikuma River, the maximum flood heights were estimated at each villages. These maximum flood heighs were plotted and maximum flood stage profile was g i ven. Th i s estimation was verified by flooding marks.<BR>Nax i mu m flood discharge total flooding a rea and volume were calculated from this profile. Then, it i, vas clearfied that the 1742 flood at Chikuma River was the higgest one in 300 years and had heavy rainfall area at right tributaries of the upper Chikuma River.
著者
当流谷 啓一 松島 亘志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_527-I_534, 2017 (Released:2018-01-31)
参考文献数
26

隕石衝突によるクレーター形成プロセスは,惑星表層の地形・地質進化に重要な役割を果たすため,その力学的メカニズムの詳細な解明が求められている.本研究では,NASAの月周回無人衛星(LRO)に搭載されたカメラ(LROC)の高解像度データを利用し,海と高地の比較的若い月面クレーター136個を対象として,その分析を行った.また,2次元SPH法を用いた数値解析を行い,様々なサイズのクレーターの形状特性や生成過程を調べて,観測との比較を行った.その結果,クレーターの直径に対する深さの比は,直径が10kmを超えると急激に減少すること,クレーター直径が20km以上では中央丘が現れること,などの特徴に対して,画像解析とSPH解析の結果が一致した.またクレーター中央丘は,隕石衝突直後に形成される掘削抗の斜面が内側に円弧滑りを生じることによって,より深い場所の岩石物質が表層に持ち上がる事によって形成されること,その円弧滑りメカニズムがクレーター直径深さ比の変化に影響を及ぼしている可能性があることが解析により示唆された.