著者
井代 彬雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.65-73, 1976

ヴァイマール共和制憲法は,その第2篇第5章「経済生活」の諸条項において,ドイツ国民一般,したがって,その大きな構成要素である労働者階級の生活権を明確に保障した。それ故,労働者階級は,ヴァイマール共和制を支持する中心勢力となった。ヴァイマール共和制は,その崩壊過程において,左右両翼の分解・激突をともなう猛攻撃に遭遇することになるが,右翼からの攻撃,すなわち,ナチ党の政権掌握にとり不可欠な一つの要因は,共和制保持の中心勢力たる労働者階級をいかに浸触し,自己への支持勢力に編入してゆけるかであった。今日のファシズム研究において,ファシズムの運動論,その目標としてのファシズム革命,その擬似革命的性格(革命を装った反革命)は,いまだファシズムの比較研究の成果を踏えた十全な解明の段階に到達していない。本稿では,1928年国会選挙で,ナチ党が敗北した後にナチ党左派が労働者階級に積極的に働きかけを開始するまでの段階を,考察の対象とする。The labour unions have been organized in a great degree under the leadership of leftist parties in Weimer Republic. The labour campaign by NSDAP, therefore in which they had to organize more workers, fased the difficult problems at least before the World economic crisis. In the history of NSDAP's labour class campaign, I restrict my analysis within the problems from the refounding of NSDAP in 1925 to the birth of left-wing Nazis and the result of the Reichstag election in 1928 in this paper. In this period German labour class supported NSDAP only less than 3 percent. Then left-wing Nazis had to proceed to more radical campaign.
著者
井代 彬雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.85-94, 1978-03

本稿は前稿「ヴァイマル共和制期におけるナチ党の労働者政策」〔I〕(本紀要第25巻,昭和51年度,第2号)の続篇である。本稿では,ドイツ労働者階級の体制内編入の法的基盤であったヴァイマール憲法が,いかに具体的に社会政策を実施してゆくために法制化されたかをまず検討する。つぎにそれらの諸法令が,共和制崩壊期にその実質的効力を削減・喪失してゆく過程を考察し,その効力喪失過程において,共和制利益分配機構から排除されてゆく労働者階級が,ナチ党,就中ナチス左派の働きかけによって,いかにナチスに掌握されたか否かを,1930年国会選挙までの歴史過程に限定して論考することにする。I have already published the study of "the Labour Policy of Nazi-Party in Weimar Republic (I)" in 1976. This paper is the second continued study of it. In the history of Nazi-movement in the era of Weimar Republic, the Reichstag election in 1930 was very important. Because Nazi-Party could pave the way to the political power since the success of this election. In this paper I discuss the social and political background of this success and the birth of NSBO.
著者
古角 好美 水野 治久
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.157-169, 2009-02

本研究の目的は,小学校5年生を対象にストレスマネジメントプログラムを実施しその効果を検討することであった。プログラムは主に「心理的ストレスのメカニズムに関する理解」と「コーピングとストレス反応の関連を調査し得た結果を参考にした。介入効果の比較検討のために実験群22名と統制群(待機群)22名に分け,20時間のストレスマネジメントプログラムを実施し,6回の調査(介入前・介入中1・介入中2・介入後・追跡1・追跡2)を行った。その結果,コーピングにおいては肯定的認知対処得点の一部で上昇はみられたが,ストレス反応軽減効果は認められなかった。This study investigated the effects of a stress management program on elemental school children. First, questionnaire research was conducted with 99 elementary school children to clarify the relationship between various coping strategies and stress responses. The results indicated that emotional avoidance coping and support seeking coping were positively related to stress responses. Second,20-hour stress management programs were conducted with two groups of students: intervention group (22 students) and waiting list control group (22 students). Participants responded to a coping style scale and a stress response scale for six waves: pre, midpoint 1, mid-point 2, post, follow-up 1, and follow-up 2. The results showed significant favorable intervention effects for the positive cognition coping style, but there were no other significant effects.
著者
岡崎 純子 石田 清
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

雄性両性異株は希な性表現で雄株と両性花株から構成される性型である。この性型の進化・維持要因として提唱されている雄株の高い繁殖成功についての検証を行った。材料としてマルバアオダモ(モクセイ科)を用い、雄株と両性株の花粉発芽率・花粉管伸長の比較、両性型花粉の混合受粉実験によって結実した種子のDNAマーカーによる父系解析を行った。その結果、雄株花粉由来の種子が多く産出されており、これは雄株の花粉の高い発芽率が関与していることが判明した。これらから雄株は高い繁殖成功を示すことが明らかになった。
著者
木下 百合子
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の理論的成果として、次のことが挙げられる。1.教授におけるコミュニケーション研究を異文化間コミュニケーションに拡大し、特に社会的コンペテンツについて深化させた。2.日本が文化多様性社会に移行していることを承認し、教育学的コンセプトを「国際理解教育」から「異文化間教育」に早急に転換すべきであることを論証した。3.協同学習活動とメディア教育に関する研究成果を本研究に適応可能なかたちに仕上げた。以上の、理論的研究成果をふまえ、本研究対象を、異文化間教育コンセプトとメディア教育コンセプトと協同学習活動コンセプトの接点に位置づけ、2年間の研究をとおして次のことを実証した。1.英語使用のEメイル交換による異文化間コミュニケーションは、中学生段階で十分に可能である。2.異文化と出会うことによって自己の文化が意識化され、アイデンティティ形成に貢献する。3.コンピュータ使用の方法と技術ならびに情報倫理は実践をとおしてこそ確実に形成される。4.グローバルな解決課題である環境問題について認識が深まるとともに、環境問題について日本とドイツでは取り組みの観点が違うことを発見した。5.異文化間コミュニケーションと協同学習のスタイルになれ、異文化理解には忍耐と寛容が必要であること、理解と葛藤の間を揺れ動くプロセスが重要であり、関係を継続することが重要であることを経験しえた。以上のことを研究課題にそくして実証たが、さらに、コンピュータ室の管理や教科教授と総合的学習の横断的組織化などの条件整備が緊急に必要であることも同時に検証しえた。
著者
佐藤 虎男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p1-28, 1975-01

私は、いま、「現象」(かたち)への強い興味をおぼえている。興味では足りない。現象至上の思いといったものをである。かたちこそが、内実の脈動を真正直に伝えてくれるすべてだからである。語はなんらかの音節連続体である。「アタマ」は3音節から成るが、そもそもこの3音節を結合して語とする作用はなにか。それは、意義とアクセント(この場合,語アクセント)である。語アクセントは、意義を意義たらしめるべく(意義を定着せしめるべく)音節を使って語を形成する作用である。この作用は、通常、組織的な傾向を示す。いわゆるアクセントは、この作用の外形ないしは作用上の強い傾向,型をさすことが多い。アクセントを,形態の名とする以前に、まずは作用と解することが有益なのではなかろうか。語の形の決定にあたって、語アクセントがこのように働くのと同様、文の形の決定にあたっては、文アクセントが働く。文アクセントは、文の形を最後的に定着せしめる作用であり、傾向である。この、文アクセントと語アクセントとは,いちおう別段の秩序のもとにありながら、もちろん不可分の密な交渉関係にある。すなわち、文アクセントは語アクセントを駆使し統御する。その統御のしかたには、またそれなりの一定傾向,類型がみとめられる。個人差を越えた、社会的習慣としての傾向がである。方言生活における表現の具体的単位が文である以上、アクセント観察に、文アクセントを先んずべきこと,逸すべきでないことは、自明のことのように思うのである。前稿(「伊勢大淀方言の特殊な文アクセント」大阪教育大学紀要、第22巻、第1部門、55頁)で私は、大淀の方言のナチュラルな文の抑揚を観察し、そこにみとめられる文アクセント諸傾向について述べた。どこの方言についても、なんらかの文アクセント傾向が帰納できると思われるが、大淀の方言の文アクセント傾向のうちのあるものは、当地に比較的近い土地の方言のそれに比して、いちじるしく異態を示している。とくに、話部中の一音節が卓立する傾向が強く、その卓立が,近在方言文アクセントには見られないような位置に現われるのである。その結果、〓に代表されるような特異なアクセント波が把握された。これが、文中のどの話部かに現われると、(文中くりかえし現われればなおのこと)その文アクセントは、特異波に色どられることとなる。ところで、大淀方言の文アクセントが、このように特色の明らかなものでありながら、別に調査した当地の語アクセント状況は、おおむね近畿一般の語アクセント状況に近く、言うところの特異な文アクセントに対応するような語アクセントは、わずかにみとめられるにすぎなかったのである。なぜこうなのであろうか。本稿はそれを承けて、当方言の語アクセントおよびその文アクセントとの関係について考察しようとするものである。具体的な文において、文アクセントは、語アクセントとどのようにかかわっているであろうか。また、語アクセント観察は、文アクセント観察とどのように関連づけられるのであろうか。山野に降り積もった雪の起状は、雪面下の地表の起伏に支えられている。それが淡雪であれば、ほとんど地表の凸凹そのままに雪面をつくるけれども、雪国の深雪は、地表の起伏を蔽いつくして大きくうねる。雪面と地表の相関にお国ぶりがあろう。文アクセント下の語アクセントを見て、よく文アクセントの形象の「自然」を理解することができると思われる。起伏に富んだ雪面の美と真を見るのと、雪面下の状況を認識するのとは、両立させるべきものであろう。従来のアクセント研究界では、結果として語アクセントあるいは文節アクセントに主眼が置かれてきて、文の抑揚、文アクセントについてこれを真正面からとりあげることは、盛んでなかった。少なかった。寺川喜四男博士が「アクセントの基底としての『話調』の研究」(『国語アクセント論叢』昭和26年)に、諸説のいきとどいた紹介整理をしておられるが、そこに見られるような、諸先学のすぐれた指摘、方向づけにもかかわらず、その後今日まで、どれだけ具体的な記述的研究を展開させてきたか、不明にして私は多くを知らない。その中で藤原与一博士と、山口幸洋氏のお二人の、それぞれ独自の、一貫した研究には、教わる所が多い。藤原博士のもっとも近いご発表、,『昭和日本語方言の記述』(三弥井書店,昭和48年)であるが、そこで博士は、櫛生方言の文アクセント傾向と語アクセント傾向とを対比考察していられる。これをさきの比喩をもって言えば、ある地域の雪の起伏に一定の傾向がみとめられるならば、地表の凸凹にも、なんらかの(ほぼ相即対応する)傾向がみとめられるはずである。この、傾向と傾向との対比的把握が、具体文アクセントの基本的理解を可能ならしめるということであろうと思う。大淀方言文アクセントを、このような対比の方法でみた場合には、前稿に述べたように、特色ある文アクセント傾向を説明しうる語アクセントの傾向は、明確にはみとめられなかったのである。もしいま、この事態をこのまま受けとめて解釈しようとすれば、文アクセント上のあの特色ある波立ちは、一種のあだ波のようなもので、傾向というにあたいせぬ微弱なもの、アクセントの基質をなすほどのものでない、ということになるのであろうか。つまり、当地の汎近畿的語アクセントは、当地の汎近畿的文アクセントの優勢に由来するものであって、問題の特異な文アクセントは、いわば偶発的をものにすぎないとすべきものなのであろうか。私の調査によれば、前稿に報告したような文アクセント傾向が、当方言の文アクセントの一特質傾向たりえているのは、明らかな事実と言わざるをえないのである。その後の調査によって知りえたところをここに補えば、大淀のと同似の文アクセント傾向は、南隣の村松(伊勢市村松町)にも見られ、いまのところ、ほぼこの二集落が、問題の文アクセントを特立させているようなのである。志摩は答志島の、鳥羽市桃取の文アクセントもまた、一種独得の文アクセントであることを、ここに思いあわせるならば、大淀方言における特異な文アクセントを、一特質傾向と認めてその存立事情を追求することは、意味あることとされようか。意外に根の深いものかもしれないのである。村松と桃取の文アクセントについては、いくつかの文アクセント例を本稿末尾に(補注)として掲げるにとどめ、くわしくは別の機会にゆする。In the last number, I reported some peculiar intonation patterns in Ise-Oizu dialect. Then, in this paper, I describe the definite patterns of pitch-accent are found in the same dialect.
著者
長尾 彰夫 木下 繁彌 村川 雅弘 浅沼 茂 安彦 忠彦 山口 満 西川 信広 田中 統治 的場 正美 今野 善清 柴田 義松 長尾 彰夫
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の最終年度は、これまでインタビューや授業観察および研究資料の内容分析などによって明らかになった各学校での新教育課程の開発状況について、インターネットのWEBページとして発信するための研究に重点をおいた。本研究で開発したインターネットサイト(http://jcultra.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/〜sougo/)に掲載した学校は、大阪教育大学附属池田中学校、高槻市立上牧小学校、緒川町立緒川小学校などである。それぞれの学校の研究状況を、「地域の特色」、「学校の沿革」、「カリキュラムの概要」、「総合的な学習の位置づけ」、「授業実践事例の紹介」を基本とする項目で整理した。また、授業分析によって得られた研究知見を、文章表記によってのみ記述するのではなく、子どもの個人情報の保護に十分留意しつつ、写真等を用いて、より具体的な研究情報として閲覧することができるようにした。このインターネットサイトの活用目的は、上記の情報を公開することによって、全国の小・中学校の教師がそこから新教育課程に対応した新しいカリキュラムの開発を行うための実践的な知見を得られるようにすることである。この目的を達成するために、たんに学校の実践事例を並列的に掲載するだけでなく、すでに作成されている教師のための教育用インターネットサイトにリンクを貼ったり、本研究の分担者として各学校で訪問調査を行った研究者に直接掲示板を通して質問を寄せたり、あるいは閲覧者同士が意見交換できる掲示板システムを付随させたりしたいる。以上のように、本研究は、当初の計画通りに、新教育課程を先端的に実施している学校を訪問調査することによって、カリキュラム開発の手続きやデザインに関する経験知を集約するとともに、それをインターネットサイトを通して発信することによって、オンラインでの新しい教師教育、ないし教師の自己研修に貢献するという所期の目的を達成することができた。
著者
福江 純
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の研究課題のもとで得られた成果は非常に多岐にわたるが、大きく5 つに分けると、(1)相対論的輻射流体力学の問題点の洗い出しを行った。(2)相対論的輻射圧駆動球対称定常風のモデル計算をした。(3)ブラックホール風の"見た目"など相対論的効果を入れた観測的特徴について調べた。(4)平行平板流で速度一定という仮定のもとだが、相対論的輻射輸送の新しい解析解を求めた。(5)解析的な立場から、相対論的変動エディントン因子の形を探り、いくつかの性質や振る舞いを明らかにした。
著者
二文字 理明
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

(研究経過)1.「オリエンテーリング」関係図書お呼び教科用図書を「社会科」を中心に収集した。いくつかの教科書について内容項目を整理し日本の福祉教育と比較する用意を行った。2.昭和63年度下期に、同一テーマの研究遂行のため民間財団の助成を得てスウェーデンに短期出張し当地の専門家、教科書執筆者等と意見交換し有益な示唆を得た。(研究内容)上記の経過を踏まえて概略的な論文をまとめた(裏面に記載した論文がそれである)。1.「オリエンテーリング」の教科としての成立過程の把握。2.現行の「オリエンテーリング」の教科書のうち特徴的なものについて具体的な記述内容を検討すること。以上2点が初年度あきらかにできたことである。1については1878年より1980年に至る教育課程8冊を通覧し、「オリエンテーリング」成立の概要を歴史的に整理した。1919年版が「オリエンテーリング」成立の萌芽期と考えられる。1955年版による「社会科」の登場で民主的な社会の成員としての教育が明確に志向され、「麻薬・飲酒から解放する教育」「性教育」「交通安全教育」などがこの教科の課題として指摘されている。これら一連の課題によって1955年版は「オリエンテーリング」の実質的な拡充期とみなされる。その後1969年版で自然科学系、社会科学系の全教科が一本化され、名実ともに「オリエンテーリング」の確立とみた。2については、スウェーデンの「福祉教育」に特有であって日本の「福祉教育」に欠落していると思われる、いくつかの特徴的な記述内容を引用し検討を試みた。次年度は以上の考察を深め、教科書及び教材の内容の分析を継続していく予定である。
著者
二文字 理明
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.173-181, 2010-09-30

本稿では知的障害者を対象とする後期中等教育以降のインクルーシブ教育の可能性を,カナダの一事例を考察することを通して検証する。日本でも,オープンキャンパスという形で,大学レベルの「雰囲気」を垣間見る試みはここ10年間に各地で実践されてきた。しかし,これもまた一般の大学教育への参加の度合いは非常に低い。カナダのアルバータ大学のOn Campus Programの特徴を検討してゆくと,日本の実践とは異なる興味ある内容が明らかになった。カナダも日本も,ピア・カウンセリング,ピア・サポートを重視する,また,ボランティア学生を資源として活用するなど,一見同じ様な理念に彩られている。しかし,実態を比較すると,カナダが,4年制であり,通常の講義への参加を積極的に進めているのに対し,日本版は,公開講座型,1年制,短期的・一時的プログラムである等の特徴が指摘された。その他にもOn Campusプログラムの優れた特徴を数多く発見できた。In this article the author intends to analyze the possibilities of inclusive education after post-secondary education through discussing the "On Campus Program", Alberta University in Canada. Similar types of programs were also developed in Japan as the "Open Campus Programs" during the last decade. These Japanese types were developed so that people with Learning Disabilities could have the experiences of feeling a dimension of campus life, but does not intend to have them attend ordinary university classes on a regular basis. In contrast, at the On Campus Program, Alberta University, Canada, we could see some beautiful benefits from the application of inclusive education. Both in Japan and Canada, we could see the same important principles such as peer support from the ordinary students and among the disabled, peer counseling and the use of volunteer students giving support to those with Learning Disabilities. At the same time we could see differences between both countries. One example would be that the Canadian type is a 4-year-study period and another example would be that they try to allow people with disabilities to attend ordinary classes with different support systems. In Japan, almost all of these forms of inclusive education are "Open Campus" types that are usually have shorter periods and are temporary programs. We can conclude that the Canadian type is more beneficial for students and is more highly developed in comparison to the Japanese model.
著者
二文字 理明 堀 智晴
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

(概略)昭和61年度, 昭和62年度にわたり大阪府下全域, 奈良県の一部において研究授業を10数例実施した. 各校で各1学級に協力を依頼し, 各学級あたり1日1時限×3日, 計3時限実施した. 総計では30数カ日に及ぶ期間実施したことになる. 研究授業の1クール(3日間毎)に研究会又は反省会を開き, 授業内容の吟味, 反省等, 総括的な討議を行った.(方法)事前に指導案, 座席表の収集および, 当該の教材の研究を行うほか, 学級毎の個別の状況について事情聴取を行うことなどを原則とした. 全記録を2台のビデオカメラで収録し, 音声の記録のため1台の録音器を併用した. 同時に, 教員の発問, 児童の発言を速記した. このような一連の記録を授業後, 再生しながら検討分析を行なった.(結果)本研究の当初の, 基本的な狙いは, 健常児が障害児を深く理解するための「授業モデル」を構築することにあった. 具体的な実践事例を定着したことで一定の意味を有すると思われる. ただ実践例が, 各校で予想以上に別々のものになってしまい, 同一テーマによる複数事例を比較検討することが必ずしも十分できなかった. この点は今後の同趣旨の事例の集積を俊たなければならない. 本研究の内容における重点的テーマは次の通りであった.(1)自主教材の内容を実践に即して点検する. (2)教員の教育方法を総合的に観察しながら, 教育方法上の問題点を明らかにする. (3)健常児における「障害児」理解を深めるための試行を重ね, 健常児における反応を分析する. (1)の点では, 自主教材の内容の限界, ああるいは問題点がいくつか明らかになった. (2)の点では, 教材から離れて主体的にフリーに発言させるための学級集団の構成の態様にいくつかの傾向のでてくることも判明した. (3)の点については, 実践例のいくつかのパターンの報告にある程度言及することができた.
著者
石橋 正浩 二文字 理明 岩切 昌宏 石田 晋司 ベンクト G・エリクソン キルスティ クウセラ
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

精神障害者の地域生活を支える支援,とりわけサービス利用者と援助者との間でおこなわれる共同意思決定のプロセスについて,スウェーデンの専門職であるパーソナル・オンブズマンの制度と役割を整理し,その機能を日本で展開する可能性について,相談支援専門員を対象にした調査をもとに考察した。両国とも利用者の主観的ニーズと自己決定を最大限尊重しようとする援助者の姿勢は共通であるが,利用者の自己決定を支えるセーフティネットの広がりには違いがある。
著者
二文字 理明 INGEMAR Emanuelsson JAN-AKE Klason BENGT Eriksson
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

スウェーデンにおけるインクルーシブ教育はノーマライゼーション思想に発する「人間としての尊厳」および「すべての者のための一つの学校」という理念を掲げて展開されてきた。「場の統合」を経て「個の統合」を実現してきた。しかし、1990年時点でも「個の統合」の実現の割合は、養護学校の全児童生徒の8.7%に留まる。1990年以降は、社会民主労働党の弱体化と連動して、インクルーシブ教育を支持する言説にも陰りがみられる。カールベック委員会の基本的な構想の破綻はその象徴であろう。理念の標榜と、学校における障害者の処遇の実態との乖離に悩む現実が改めて明らかになった。
著者
瀧野 揚三
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

本研究は、学校心理学的な観点から、学級経営に介入する手法を開発し、それを評価することを目的としている。初年度は、学級介入方法の具体化と評価視点の探索的検討を、次年度は、介入の方向性、経過面接の構造化をより確かなものにするために、継続的に教師用RCRTの測定を行なった。本年度は、5人の教師とその担当学級を対象にした介入を行い、その成果を検討した。個別の関わりに加え、小グループを形成することによって、相互に理解し助言しあえる自助グループの形成もねらいとした。対象の教師には、6月、7月、9月、12月、2月の計5回の研修に継続的に出席してもらい、それぞれの教師用RCRTの結果を用いながら参加者の学級経営の事例検討、自己達成予言的に学級経営の具体的方針の提出、数人の児童に焦点を当てた意図的な関わりの報告、親近感についての調査の実施などが具体的な実施内容である。参加した教師は、教師用RCRTの結果の読み取りができるようになり、またその資料を元にしながら、学級経営の様子を他の教員に語ることができた。このように自らの学級経営の状況を客観化するなかで、意図的な関わりの対象になる児童の特定、関わりの内容についての設定をすることができた。短期の目標とやや中期の目標を立て、またその目標をグループのメンバーに報告するなかで、データをもとにした実施可能な学級経営の実践につながった。別の評価の視点としては、児童による親近感調査を行い、その結果に基づく児童への関わりの修正もできた。継続的な研修の中で、他の教師からの共感や助言の機会を持ち、また自分の実践を他の教師に理解してもらえるように表現できるようになった。これらのことは、学級経営に介入する手法として、継続的な小グループセッションで教師用RCRTを用いることが有効であることを確認した。
著者
瀧野 揚三
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

期間中の研究成果を、個人を対象とした学級経営に関する1回の介入的支援方法の改善と評価、小グループを対象とした年間を通した継続的な学級経営の介入的支援方法の開発と評価、学校危機後、PTSDやトラウマを抱える児童生徒が在籍する学級の経営を行う教師への介入的支援方法の開発と評価の3つの観点から報告書をまとめた。教師用RCRTを実施し、その結果をフィードバックする方法ですすめたが、1回だけの介入では調査に回答する負担に見合う学級経営への介入的支援になりにくいことが課題として残っている。教育実習後の学生に対しても導入し、実習の事後指導において、実習中の児童・生徒への見方を内省し展望することに有効であることが分かった。継続的に小グループで研修を重ねるなかで教師用RCRTの結果を活用するように学級経営の事例検討と、学級経営に意図的、計画的な取り組みを進めることができた。電子メールを活用してコメントするケースもあった。グループ内で実践への共感や取り組みのアイディアが出される等、相互援助的な関係が形成された。学校危機後の学級経営には、心理教育的な支援も行い、授業の観察やカウンセラーとの連携も行われ、配慮の必要な児童生徒への関わり方が明確化され、支援が進められた。教師や学級の状況の変化を捉えることができ、支援の具体化のために教師用RCRTの活用は有用であった。
著者
萱 のり子 神林 恒道 梅澤 啓一 新関 伸也 赤木 里香子 大嶋 彰
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、近代以前から日本が緊密な文化的影響関係をもってきた東アジア諸国における鑑賞教育を調査することにより、(1)近代主義の功罪を見直し、今後の文化的・伝統的視点の生きた教育理念を構築していくこと、(2)教育現場での授業実践へと研究を推進させていくための基盤を得ること、を目的としている。調査内容は、理念に関わる資料収集と、現場の実践見聞を主としたフィールドワークを主とし、東アジアの鑑賞教育を対象として以下2つの視点から行った。(1)東アジア諸国(中国・台湾・韓国)における「近代」以降の鑑賞教育の理念と実践に関わる資料収集、および現在の美術教員による授業実践に関するフィールドワーク(2)東アジア諸国の鑑賞教育に対する欧米(アメリカ・ドイツ)の研究、および欧米における鑑賞教育の東アジアへの影響に関する調査研究成果の形態・研究成果報告書には、調査収集資料をもとに、研究メンバーがおのおのの視点から考察を加えたものを収録した。・研究期間中に収集した資料の中から文献を邦訳して抄録した。これは、今後の継続的な研究に向けて、研究メンバーが相互活用できる便宜をはかり、別途CD-ROMに収めた。・調査研究をすすめつつ、鑑賞教育の具体的なありかたを提示するため『鑑賞101選』を執筆・編集した。はじめに、歴史的・文化的に重要な作品を西洋・東洋からそれぞれ選出し、公教育において取り上げるべき作品の検討を行った。続いて、現場での授業で鑑賞教材として活用していくために、作品に関して3つの視点「作品のテーマと内容」「作品の見所」「美術史上の位置」を設け、全202作品を分担執筆した。・書画領域の共通課題を認識する上で、本課題と重要な接点をもつ国際会議(第5回書法文化書法教育国際会議)の研究論文選を別途刊行した。今後の課題報告書に収めた論考は、研究メンバーおのおのが、それぞれの国や自治体が発する教育方針を把握した上で、現状に根ざす実践上の課題を提起したものである。今後は、これらをカリキュラムや指導理念に反映させながら、実践の力を高めあうネットワークづくりを目指していきたいと考えている。
著者
小山 雄佑 越桐 國雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.25-37, 2006-09-29
被引用文献数
1

平成10年の学習指導要領の改定では,学校週5日制や総合的な学習の時間が導入された。これに伴い小中学校では教科内容が従来に比べて3割程度削減され,これが児童生徒の学力低下をもたらしているという議論がある。教育内容の削減は,教科書の記述量にも反映されるが,一方で,教科書の表現自体が変化しているとの指摘がある。そこで,小学校理科教科書の体様のうち特に,図,表,絵,写真などの図画像表現がどのように変化してきたかを,昭和33年から平成10年までの40年間5期にわたる学習指導要領に対応した教科書について調査した。これにより,図画像表現が占める割合が増加してきたことが定量的に確認された。また,理科における学年別,領域別の図画像表現の違いやその変遷が示される。
著者
瀧 一郎
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 1 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-51, 2009-02

ベルクソン美学を霊性主義(スピリチュアリズム)の観点から「直観の美学」として捉へようとするとき,注目すべきは「類比(アナロジー)」である。「類比(アナロゴス)」といふ経験をその論理(ロゴス)とするベルクソン的直観は,認識論的には「類比の理」である<自即他>の「共感」として,存在論的には「還帰」即「発出」といふ垂直的な<一即多>の二重運動として,論理学的にはロゴスを包越してレンマへと展開すべき「超知性的」な論理として性格づけられる。この霊的直観に基づく美学は,西洋的な「存在の類比(アナロギア・エンティス)」と東洋的な「無の類比(アナロギア・ニヒリス)」との中間に位置する「形像の類比(アナロギア・イマギニス)」によつて,<存在の創造>ではなく<イマージュの生成>を解明する。Jusqu'à maintenant, l'esthétique bergsonienne a été, le plus souvent, considérée comme 《esthétique de la perception pure》d'un point de vue matérialiste, mais nous essayons ici de la prendre pour《esthétique de l'intuition》sous l'aspect spirituel. Nous mettons surtout en avant le thème bergsonien de l'analogie, qui est décisif dans la méthodologie de Bergson, mais qui n'a pas reçu le traitement qu'il aurait mérité de recevoir. L'intuition bergsonienne est d'abord caractérisée en épistémologie comme《sympathie》, c'est à dire《raisonnement par analogie》, qui unit le sujet avec l'objet sans les confondre. Elle est ensuite regardée ontologiquement comme conversion (epistrophê) qua procession (proodos), où la voie ascendante de l'homme à Dieu ne fait qu'un avec la voie descendante de Dieu à l'homme. Si l'intuition bergsonienne nous semble ainsi illogique, elle a néanmoins son propre logos, analogos, qui, en dépassant la logique formelle, consiste à associer l'unité et la diversité, le même et l'autre pour viser le milieu entre l'un et le multiple. Une telle analogie, en tant que logique qua expérience, annule la dichotomie de la transcendance et de l'immanence ainsi que l'alternative de l'analogia proportionalitatis et de l'analogia attributionis. On peut trouver, dans les ouvrages de Bergson, de nombreuses analogies, dont l'une des plus importantes est l'analogie entre《la fonction fabulatrice》et《l'émotion créatrice》; la première, infra-intellectuelle, imagine et fabrique l'art statique, alors que la dernière, supra-intellectuelle, crée l'art dynamique et présente une analogie finale avec le《sublime amour》qui est l'essence même de Dieu. Au lieu de concevoir la création de l'être en termes d'espace, Bergson perçoit, en appelant à l'analogia imaginis, le devenir de l'image sub specie durationis. Entre l'apparition des images en《extension》et leur disparition en《tension》, l'intuition bergsonienne se meut, et ce mouvement est l'esthétique implicite de l'analogie.
著者
二井 仁美 山崎由 可里 石原 剛志 石原 剛志
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、「不良行為をなし、またはなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」を対象とする児童自立支援施設の歴史に関する基礎的研究である。とくに1933年の第64回帝国議会に提出され審議された少年教護法案に焦点をあてている。同法案は、感化院関係者がみずからの手で準備し、議員によって提出されたものであり、本研究では、同法案がいかにして成立したかについて、児童自立支援施設所蔵史料によって解明した。
著者
定金 晃三 横尾 武夫 福江 純 松本 桂 有本 淳一 小林 英之 本田 敏志
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.55-65, 1995-09
被引用文献数
1

大阪教育大学に設置された口径50cm の反射望遠鏡には,観測装置として液体窒素冷却の高性能CCDカメラが備えられている。さまざまな種類の天体観測を行いながら,このCCDカメラそのものの性能の評価と柏原キャンパスにおける天体観測性能の評価を行った。結果として,CCDカメラの冷却性能,読み出しノイズのレベル,直線性などはいずれも良好であることがわかった。空の明るさの計測を行った結果,柏原の空は市街光の影響を著しく受けており,しかも,方向によって影響の大きさが異なることが分かった。多数のイメージを計測した結果,星像の大きさの平均は現状ではおよそ4秒角である。点光源(星)を対象とした場合,120秒間の露出を4ないし5回行うことで14等台の明るさの天体の相対測光観測が0.02等の精度で行えることがわかった。We have conducted an extensive series of tests of the CCD camera which is used at the Cassegrain focus of the 50 cm telescope of Osaka Kyoiku University. Measurements of bias and dark counts, the read-out-noise, and of the linearlity show excellent performances of the camera. We also measured sky counts over the observatory, apparent stellar radius, and the statistical photometric precision of the observing system. The sky brightness is seriouly affected by the city light. The FWHM of the stellar image is, on the average, around 4 arc sec. Photometric precision of +/— 0.02 mag is achieved by the present system in measurements of 14-th magnitude stars.