著者
詫間 晋平 中村 均
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.117-124, 1977-11-25

特殊教育における教育工学的研究は,その歴史も浅くまだ十分な水準の研究を系統的に蓄積するには至っていないが,まず,理論的基礎研究にふれ,つづいて比較的伝統の深い,視覚障害(盲),聴覚障害(ろう唖)の二部門と,近時,大きな研究努力が要求されている精神薄弱(知恵おくれ)の部門を中心に主なる研究報告93編を選び,その解説と比較検討を行なった.その過程で,特殊教育・教育工学ともいえる研究領域の枠組みを,行動,課題,障害の種別の三軸から見直して,今後の展望を探索する必要性も示唆された.
著者
崎濱 秀行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.129-132, 2008
被引用文献数
1

本研究の目的は,文章産出の練習を繰り返すことにより,書き手の文章産出活動や産出文章にどのような変化が見られるのかを検討することであった.大学1年生40名(男性22名,女性18名,平均年齢19.0歳)に教育心理学の講義での学習事項を高校1年生に紹介する文章の産出を求め(600字程度),初期と後期とを比べての違いを検討した.その結果,以下の事項が示された:(1)初期に比べ,文章が書きやすくなったと答えた学生が多かった,(2)初期に比べ,後期の方が文章完成までの時間が短くなった,(3)産出文章の総合得点には変化が見られなかったが,情報選択及び情報同士のつながりの検討の点でスキルの上昇が見られた.
著者
見舘 好隆 永井 正洋 北澤 武 上野 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-196, 2008
被引用文献数
4

学生の「学習意欲」や「大学生活の満足度」は,どのような要因が押し上げているのか.想定される様々な要因を探るアンケートを公立S大学の学生に実施し,その結果から因子分析によって「学習意欲」「大学生活の満足度」に影響を与えていると想定される因子を抽出した.そして抽出された因子間の因果関係を共分散構造分析にて分析した結果,「教員とのコミュニケーション」は「学習意欲」を高め,さらに「大学生活の満足度」にも影響を与えていた.また,「友人とのコミュニケーション」は「大学生活の満足度」にあまり影響を与えておらず,「学習意欲」には関連がないことが示唆された.
著者
湯川 高志 川野 光太郎 福村 好美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.61-64, 2008
参考文献数
4

e-Learningにおいて受講者のモチベーションを維持させるためには,受講者相互のつながりが必要であると考えられる.これに関し,実際のeラーニング受講者を対象としてアンケート調査を行い,受講者が互いの学習状況やリアルタイムで多人数のコミュニケーションを望んでいることを明らかにした.これらを受講中に常時伝達し合うことができれば,受講者同士のつながりを醸成し,モチベーションを維持させることが期待できる.そこで,受講者が互いの学習状況をリアルタイムに把握できるフラクタル表現による学習進度表示機能と,会話に関する情報を速覧できるチャット機能とを提案した.さらに,それぞれの機能を設計・実装し,実際のe-Learning環境に組み込んで使用感やモチベーション維持の度合いの評価した.
著者
佐伯 卓也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-8, 1982-06-20

「よい授業」をしたいとは教師なら誰でも考えることである.この「よい授業」の「よさ」の度合を,学習者の認知構造の変容という側面で把握し,比較的簡単に,視覚的に判断できる,P-Pグラフ分析・DA分析の手法を創出した.基礎データは岩手式言語連想テスト(I式WAテスト)から得ている.I式WAテストは,アメリカで開発されたWAテストを大幅に改変し簡略化した用具である.いまのところ,P-Pグラフは3種のパターンが識別できて,それを見ることにより,ある程度授業の評価ができる,という結果を得ている.
著者
神藤 貴昭 酒井 博之 山田 剛史 村上 正行 杉原 真晃
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.113-116, 2006

本研究では,京都大学教育学部の授業と,鳴門教育大学大学院学校教育研究科の現職小・中・高教員対象の授業を連携させ,教育の理論と実践について議論することを目的とした京鳴バーチャル教育大学(KNV)実践の概要を示し,また,相手大学に現職教員あるいは京大学生という自己とは異なった顔を持つ<他者>がいることによる「フレーム」の変容に関する考察を,インタビュー及び電子掲示板の発言をもとにおこなった.その結果,一部「フレーム」の変容が困難であった受講生もいたが,教育に関する知識に関する「フレーム」変容だけではなく,教育に関する考え方や議論の仕方等,形式に関する一定の「フレーム」の変容が認められた.
著者
嵯峨山 和美 久米 健司 金西 計英 松浦 健二 三好 康夫 松本 純子 矢野 米雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.53-56, 2008
参考文献数
8
被引用文献数
4

近年,SNSは大学生間の新しいコミュニケーションの形として紹介されている.我々は,大学生活を支える新たな学生支援のツールとして2007年1月23日から徳島大学工学部を中心に「キャンパスSNS」の運用を開始した.本研究では,本SNSのログデータを抽出し,参加者の属性を明確に分類したうえで,大学版SNSの特性と学生の動向とを解析した.日記関連の機能に焦点を当てたところ,学生は不特定多数のユーザの最新日記を確認するより特定のユーザの日記を読む割合が高く,仲間同士の閉じたコミュニケーションで終始しまいがちであることが示唆された.明確な目標を掲げて運営側が構造化した形を提示することの必要性が推測された.
著者
中原 淳 前迫 孝憲 永岡 慶三
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.259-267, 2002-03-20
被引用文献数
15

コンピュータによる協調学習支援(CSCL)研究は,コンピュータを用いて,複数の学習者間の相互作用を通した知識構築を支援することをめざしている.学習者の相互作用は,知識構築の必要条件であり,それを誘発し,促進するための機能やインタフェースなどの実装が不可欠である.これまでCSCL研究においては,数多くのシステムが開発・評価されている.それらの研究知見は,研究者がシステムデザインを行う際に参照可能であるように,デザイン対象項目ごとに整理されることが望ましい.本稿は,まずはしめに先行するCSCLの研究知見を,可視化,キューイング,コンテンツの3つの観点から検討・整理し,最後に今後のシステムデザインの課題を指摘する.
著者
村上 正行 西口 敏司 亀田 能成 角所 考 美濃 導彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.253-262, 2005
被引用文献数
7

本稿では,講義自動撮影システムを用いて行っている講義アーカイブ実践において,(1)講義を撮影されることによる講師や受講生への影響,(2)講義アーカイブを理解するために重要な情報,(3)自動的に作成された講義アーカイブの有効性,の3点を明らかにすることを目的として,質問紙調査及びインタビュー調査を実施し,分析及び考察を行った.その結果, (1)授業を撮影されることによって,当初講師や受講生には心理的な負担が若干かかるものの,経験によってその負担は減少していくことが分かった.(2)講義アーカイブを見る際に受講生が重視しているのは,音声情報と教材情報であること,アーカイブ化される授業においては「教材への適切な指示」が非常に重要であることが示唆された.(3)作成された講義アーカイブについては画質や音質の面では十分高い評価を得ることができ,FDに役に立つ可能性があることが分かった.
著者
高橋 純 堀田 龍也 青木 栄太 森下 誠太 山田 智之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.117-120, 2009
被引用文献数
2

教科書に準拠した算数科提示用デジタルコンテンツを活用した授業実践を行い,実物投影機を活用した授業との比較から,本コンテンツを評価した.その結果,提示用デジタルコンテンツを活用した授業では,実物投影機を活用した授業と同じレベルまで理解度が高まっていた.児童や教員を対象にしたアンケート結果では,両群共に4段階評価で平均3を越える高い評価であったが,両群を比較すれば,本コンテンツを活用した授業の方が高い評価であった.児童の楽しさや満足,教員の板書のしやすさといった項目で,より高い評価が得られていた.また,本コンテンツを活用した授業の方が,拡大提示にかかる操作時間は短く,数多くの指導場面で教科書の拡大提示が行われるといった授業の特徴も明らかとなった.
著者
脇本 健弘 苅宿 俊文 八重樫 文 望月 俊男 酒井 俊典 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.209-218, 2010
被引用文献数
1

本研究では,初任教師の育成として授業に関するメンタリングに注目をした.メンタリングとは,経験を積んだ専門家(熟達教師)が新参の専門家(初任教師)の自立を見守り,援助することである.初任教師を対象に授業に関するメンタリングを行う際は,初任教師が授業を行い,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行うことが有効である.しかし,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行う際に,(1)対話内容が授業技術や理論的なもの中心で,具体的な子どもの話がでてこない,(2)熟達教師の子どもの話が初任教師に伝わらない,(3)振り返る子どもに偏りが出るという問題がある.上記問題を解決するために,メンタリング支援システムFRICA(読み方:フリカ)を開発した.その結果,FRICAを利用することにより,子どもの話が引き出され,初任教師に伝わるように熟達教師が子どもの話ができるようになった.また,子どもの偏りに関しても効果がみられた.
著者
長谷川 真里 堀内 由樹子 佐渡 真紀子 鈴木 佳苗 坂元 章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.105-108, 2006

本稿は,日本のテレビ番組の内容分析によって現在のメディア状況を明らかにし,メディア・リテラシー教育に必要な情報を得ることを目的としている.米国のNational Television Violence Study(1996-1998)をもとにコード化マニュアルとコード票を作成し,2003年と2004年の2時点,各1週間の中からフィクション番組を抽出し,向社会的行為にかかわるキャラクターの特徴について内容分析を行った.その結果,向社会的行為実行者はあまり魅力的なキャラクターとして描写されておらず,観察学習の促進要因は乏しかった.また,おおむね女性よりも男性の描写数が多く,現実との乖離も示唆された.最後に,悪人キャラクター,善悪複合キャラクターに対する報酬はほとんどなかった.
著者
宮田 仁
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.165-168, 2006

筆者が2002年に開発した携帯電話対応コメントカードシステムを応用し,愛知万博の中米パビリオンで来館者対象の携帯電話対応万博パビリオン展示評価システムを構築し,実施した.中米7ヶ国のパビリオン関係者に日本のモバイル先端技術を提供するとともに,来館者に混雑したパビリオンでの待ち時間や移動時間にアンケートに回答できるモバイル環境を提供した.その結果,毎日来館者約1,000名から回答が寄せられ,その評価得点や意見をもとにパビリオン展示を具体的に改善し,改善点が来館者から歓迎されたことを確認できた.来館者による本システムの評価も良好であった.
著者
高橋 薫 村松 浩幸 椿本 弥生 金 隆子 金 俊次 村岡 明 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.97-100, 2009

本稿では,総合的な学習の時間にアントレプレナー教育(起業家教育)に取り組んでいる山形県米沢市立南原中学校の実践を,言語力育成の観点から評価した結果を報告する.同校の実践では,一連のビジネスのプロセスの中に,言語力育成に配慮した授業デザインがなされている.生徒の言語力の変容を,実践の前後に生徒が書いた意見文の質(客観的評価)と,実践後のアンケート(主観的評価)から評価した.その結果,実践後は産出する文章の質を向上させており,より高度な論証を行っていることが明らかになった.また,実践後のアンケートから,生徒は自らの言語力の伸張に自信を深めていることが確認された.以上のことから,客観的評価と主観的評価の双方から,言語力の伸張が確認され,授業デザインの効果が推察された.
著者
稲垣 忠 嶺岸 正勝 佐藤 靖泰
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.109-112, 2008
被引用文献数
2

児童が自分の考えを説明する場面において,電子黒板はどのような影響を与えるのだろうか.本研究では,小学校高学年算数科「分数の掛け算と割り算」単元の授業実践において,電子黒板を利用した説明場面を対象に,質問紙調査,ビデオ記録,児童・教師へのインタビュー調査を実施した.その結果,電子黒板を用いることで書きながら説明する行動が観察され,聞き手は口頭での説明と比べ,より話者の考えを理解し,自分の考えと比較しやすいこと,また,手立てとして,画面上に配布資料と同じものを提示することが,書きこみや説明のしやすさをもたらすことが明らかになった.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.57-71, 1991-09-20
被引用文献数
9

本論文は,数学の教科を事例として,教授方略を数理モデルで表現し,その教授方略を反映する学習課題系列を生成し,かつ学習課題系列が与えられたときにその教授方略が何であるかを推定する方法を提案している.その教授方略のモデルとは,学習課題の下位性,基礎性,関連性の組合せで表現されるが,これを数量化することにより,学習課題系列の自動生成や,教授方略の推定をすることができる.中学校数学の学習課題に適用した結果,教授方略の中でも関連性の要因が大きいことがわかった.また本手法は,教育現場で広く利用されている論理分析のコースアウトラインの決定法の考え方を基礎にしており,その拡張になっている.
著者
坂元 〓
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.95-100, 1989-09-20

イタリアでは,1985年に文部省による高校への情報学導入国家計画が始まり,情報教育の教員研修は,4つの中央研修機関による中央研修として第1段が行われ,そこで教育された指導者が,各地方の68の中核学校で地域の教員に対する指導を行うというカスケード方式となっている.第1世代の180人の高校数学・物理の教師が,指導者となるため,4週間の中央研修を受けた.第2世代は210人であった.これらの指導員は,地域で2年間一般教員の研修を行う.その間給料は1/3増し,代替教員も保証される.第1世代によって1年目一般教員2,400名,2年目4,800名.第2世代によって,1年目は6,800名が研修を受けることになる.研修内容は教科教育,既存ソフト教育,授業設計などである.そのほか,20の地方にある教育研究研修所が小学校教員研修の一部として情報教育を行い,国立教育工学研究所も情報教育の講習を教師むけに行っている.
著者
石塚 丈晴 高田 浩二 堀田 龍也 森谷 和浩 前田 喜和
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.77-80, 2008
被引用文献数
4

本研究では,携帯情報端末の中でも児童にとって親和性が高いと考えられる携帯電話を,水族館での学習に使用するシステムを設計し開発した.開発したシステムを用いて実証実験を行ない,児童の水族館での学習への携帯電話端末利用の可能性について検討した.その結果,児童は日本語入力を含め,問題なくシステムを利用していたという結果が得られた.また,携帯電話端末を積極的に利用した児童は,携帯電話を利用した本システムの有効性を評価し,今後も利用したいと回答しており,携帯電話を端末としたシステムの利用可能性が示された.
著者
石塚 丈晴 堀田 龍也 山田 智之 畠田 浩史 青木 栄太 笹田 森 伊藤 博康 田中 優
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.121-124, 2008

教員の情報収集を効率化するため,2006年度に開発・実証実験を行った,教員に有用なWeb情報の所在を配信するシステム"Teacher's Desktop"に,「リコメンド」「検索精度の向上」「ランキング」「マイブックマーク」の4機能を追加し,実証実験によりシステムの評価を行った.その結果,「リコメンド」「検索精度の向上」「ランキング」機能については,使用感・利便性ともに肯定的な評価を得て,教員の教育情報の効率的な検索への効果が認められた.一方,「マイブックマーク」機能に関しては,ほとんど利用されず,実装方法が今後の課題として残った.