著者
常田 邦彦 鳥居 敏男 宮木 雅美 岡田 秀明 小平 真佐夫 石川 幸男 佐藤 謙 梶 光一
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.193-202, 2004-12-25
参考文献数
28
被引用文献数
14 5

最近数10年間におけるシカ個体群の増加は,農林業被害の激化をもたらしただけではなく,シカの摂食による自然植生および生態系の大きな変化を各地で引き起こしている.自然環境の保全を重要な目的とする自然公園や自然環境保全地域では,この問題に対してどのような考え方に基づいて対応するかが大きな課題となっている.知床半島のエゾシカは一時絶滅状態になったが1970年代に再分布し,1980年代半ばから急増して,森林と草原の自然植生に大きな影響を与え続けている.知床半島のシカは冬季の気象条件と餌によって個体数が制限されているとはいえ,メスの生存率は高く,かつ自然増加率が高いために高密度で維特されている.メスも大量に死亡するような豪雪でも来ない限り激減することはない.そのため,自然に放置した場合には,植生への影響は軽減されないだろう.知床におけるエゾシカの爆発的増加が,自熱生態的過程か人為的な影響による要因かを区分することは,現状ではできない.管理計画策定にあたって重要なのは,半島全体の土地利用と自然保全の状況に応じて地域ごとの管理目標を明確にし,総合的な計画を策定することである.また,モニタリング項目として絶滅リスク評価につなげられるような「植物群落の分布調査」が不可欠である.知床国立公園内や周辺地域での生息地復元や強度な個体数管理などを実施する場合は,生態系管理としての実験として位置づけ,シカと植生の双方について長期のモニタリングを伴う順応的な手法を採用していく必要がある.
著者
福嶋 司 高砂 裕之 松井 哲哉 西尾 孝佳 喜屋武 豊 常富 豊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.79-98, 1995
被引用文献数
46

Phytosociological classifications were carried out in order to revise and coordinate data on beech forest in Japan. Reports from different authors as well as our investigations using the BRAUN-BLANQUET method resulted in a total of 2,717 releves. These were used for constructing a vegetation table that produced five beech forest associations. These associations are 1. Sapio Japonici-Fagetum crenatae, 2. Corno-Fagetum crenatae, 3. Sasamorpho-Fagetum crenatae, 4. Lindero umbellatae-Fagetum crenatae and 5. Saso kurilensis-Fagetum crenatae. Associations 1,2,and 3 belong to the alliance, Sasamorpho-Fagion crenatae, which is distributed along the Pacific coast of Japan, whereas 4 and 5 belong to the alliance Saso-Fagion crenatae, which is distributed along the Japan Sea side. These alliances are of the order Saso-Fagetalia and of the class Fagetea crenatae. On the Pacific side, there are more floristic variations because there are many independent mountains with their own characteristic floras. Association 1 is distributed mainly on Kyushu, Shikoku and Kii peninsula. It is characterized by the Sohayaki elements which are historically related to that of East Asia. Association 2 is distributed mainly in the Fuji Volcanic Area whose characteristic features are the Fossa Magna elements. Association 3 is distributed mainly from the Chubu to Kanto regions inland with an extension into the middlepart of Tohoku. Its floristic composition represents the typical Pacific side beech forests. Along the Japan Sea side, there are fewer floristic variations because the covered area is more extensive and has a wider altitudinal range, with heavy snow deposition. Association 4 is distributed from Chugoku up to the low altitudinal areas of Hokuriku. Its floristic composition is basically made up of the Japan Sea elements with some Pacific side flora. Association 5 is distributed from Hokuriku through Tohoku, up to southwest Hokkaido, and floristically this is typical of the Japan Sea side.
著者
寺川 眞理 松井 淳 濱田 知宏 野間 直彦 湯本 貴和
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2008-11-30
被引用文献数
1

大型果実食動物が絶滅した「空洞化した森林」では種子散布者が喪失し、植物の種子散布機能の低下が生じていると危惧されている。本研究では、ニホンザルが絶滅した種子島に着目し、サルの主要餌資源のヤマモモを対象に、種子の散布量が減少しているかを調べた。種子島と近隣のニホンザルが生息する屋久島にて、ヤマモモの結実木を直接観察し、散布動物の種構成と訪問頻度、採食果実数を求めた。屋久島で73時間46分、種子島で63時間44分の観察を行い、調査地の周辺では果実食動物がどちらの島でも10種ずつ確認されたが、ヤマモモに訪れたのは、主にニホンザル(屋久島のみ)とヒヨドリ(屋久島と種子島)に限られていた。ニホンザルは、ヒヨドリに比べて滞在時間が長く、採食速度も速いため、1訪問あたりの採食果実数は20倍以上の差があった。この結果は、ニホンザル1個体が採食したヤマモモの果実量をヒヨドリが採食するには20羽以上の個体が必要であることを意味する。しかしながら、本研究では、屋久島と種子島のヒヨドリのヤマモモへの訪問個体数は同程度であった。ヤマモモ1個体あたりの1日の平均果実消失量は、屋久島ではニホンザルにより893.0個、ヒヨドリにより25.1個の合計918.1個、種子島ではヒヨドリのみで24.0個であり、サルが絶滅した種子島では、ヤマモモの果実が母樹から持ち去られる量が極めて少ないことが示された。本研究の結果は、ニホンザルが絶滅した場合にヒヨドリがその効果を補うことはできない可能性を示しており、温帯においても空洞化した森林での種子散布者喪失の影響を評価していくことは森林生態系保全を考える上で今後の重要な課題であると考えられる。
著者
中村 浩二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.125-134, 1976-09-30
被引用文献数
1

The author carried out three experiments under field and laboratory conditions to evaluate the role of intraspecific regulatory machanisms in the population dynamics of the 28-spotted lady beetle. Experiments were started by introducing the adults at different densitiesinto the field cages. With increasing parental density, the number of eggs laid per female decreased and the percentage of eggs eaten by adult beetles (egg cannibalism) increased, and in consequence of these processes, egg mortality became higher. During the larval stage the mortality was mainly due to food shortage. The number of progeny produced per female was decreased in a density dependent manner. A graphical key factor analysis proposed by VARLEY and GRADWELL revealed that the density dependent regulation mechanisms scting in the adult stage, viz, the reduction in fecundity and egg cannibalism, were the key factors govering the variation in total survival in these experiments.
著者
高川 晋一 西廣 淳 上杉 龍士 後藤 章 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.109-117, 2009-05-30

絶滅のおそれのある水生植物アサザ(Nymphoides peltata)の個体群を土壌シードバンクから再生させるための事業が、霞ヶ浦(茨城県)において、国土交通省により行われた。本論文では、この事業の概要と、連動して実施した研究の成果について報告する。事業では、アサザの発芽・定着適地の条件を、生理生態学的特性と過去の湖岸環境に関する知見に基づき「春先の季節的水位低下で湖岸に露出する裸地的条件」と予測した上で、そのような条件を含む場の整備が行われた。その結果として、工事を実施した2002年に267個体の実生を定着させることに成功した。しかし、定着した実生は陸生型にとどまり、2002・2003年の生育期を通して浮葉型としての栄養成長は認められなかった。そこで、一部の実生を採取し、栽培条件下で過去の霞ヶ浦に存在した水位変動の条件を再現して育成し、2004年に湖に再導入した。その結果、少なくとも10ジェネットが定着し、導入から3年後にはその浮葉は合計488m^2の範囲に広がり、開花、種子生産、およびそれに由来すると推測される湖岸での発芽も確認された。これらの取り組みを通じて、「春先に水位が低下し、その後に上昇する」という、かつての季節的水位変動パターンを回復することが、自立的に存続可能な個体群の再生にとって重要であることが検証された。
著者
大園 享司
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.297-309, 2011-11-30
被引用文献数
2

病原菌は森林における樹種の多様性の維持に貢献することが知られている。寿命の長い多様な木本種からなる自然環境下の森林において、病原菌が樹種の多様性の創出・維持に果たす役割を実証するためには、病害の発生地における長期的な樹木群集の動態データが不可欠である。本稿の目的は、病害の発生地における樹木の長期的な個体群動態や群集動態に関する実証的・記載的なデータをレビューし、病原菌が森林における樹種の多様性に及ぼす影響について議論することである。シュートレベルでの枯死を引き起こすミズキの輪紋葉枯病やスイス落葉病といった病害では、病原菌が樹木個体内のシュート集団の動態に及ぼす影響を定量化し、感染が個体レベルでの物質生産に及ぼす影響を実証的に評価することは可能である。しかし、それが森林における樹種の多様性にどのような影響を及ぼすのかはよくわかっていない。その一方で、成木の比較的急速な枯死を引き起こすミズキ炭疽病、ブナがんしゅ病、ニレ立枯病、クリ胴枯病、エキビョウキンによる根腐病、エゾノサビイロアナタケによる根株心腐病などの病害では、病原菌が樹木個体群の動態や樹種の種多様性に及ぼす影響が実証的に明らかにされている。これらの病害が森林における樹種の多様性の維持に貢献しており、病原菌が森林における樹種の多様性を創出するメカニズムの1つとして機能しうることが実証されている。ただし、病原菌は必ずしも多様性の増加に寄与するとは限らず、変化がない場合や、逆に多様性が減少する場合もあり、多様性がどう変化するかの予測は現時点では困難といえる。
著者
島谷 健一郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-106, 2001-08-30
被引用文献数
8

This paper reviews the point process theory focusing on applications to spatial ecology when data are given by a tree distribution map, often together with additional information such as tree size, species, and genotype.Beginning with a rather intuitive definition of point processes, this paper explains several functions that are useful for illustrating the basic characteristics of tree spatial patterns, followed by remarks about the basic assumption of stationality and isotropy.A variety of convenient statistics that express spatial patterns for additional information are introduced with reference to tree sizes, species, and genotypes.When such exploratory analysis reveals some characteristic spatial patterns, the nest step is to construct mathematical models that can explain a given tree distribution, then checking the model fitting by simulation.Currently, the point process theory itself is at the developmental stage and its practical power in ecology is uncertain.However, it can, at least, be applied to exploratory analysis for finding basic characteristics in spatial patterns.Point processing can be expected to have various other applications for analyzing mapped data.
著者
伊藤 千恵 藤原 一繪
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.143-150, 2007-11-30
被引用文献数
6

トウネズミモチは、中国原産の外来種で、街路樹などに植樹されてきたが、その後植栽地から逸出し分布拡大している。また、都市域の森林群落ではトウネズミモチの実生個体が多く、将来群生地を形成する可能性のある種である。そのため、生活形の似ている常緑小高木で同属在来種のネズミモチとの比較から、トウネズミモチの侵入の実態をとらえ、生態学的特性を解明するため、都市域森林群落における生育地、種子散布特性、発芽特性、初期生存率についての調査・実験を行った。調査の結果、トウネズミモチはネズミモチに比べ小さな果実(長径:6.55±0.68mm、短径:5.53±0.55mm)を多数つけており、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラなど205個体(総観察時間22.5時間)の採餌が確認でき、ネズミモチに比べ果実採餌鳥類種数、個体数ともに多く観察され、多数の種子が鳥類により野外に散布されていると考えられる。トウネズミモチの発芽は、光条件の影響を受けないことが示されたため、森林群落の林床においても発芽可能であると考えられる。一方、実生の生存率は林内(相対光量子束密度4.1%)と林縁(相対光量子束密度16.4%)で有意な違いがみられた。また、トウネズミモチはロジスティック回帰分析の結果、相対光量子束密度6.3%以上で出現頻度が50%(コドラート面積25m^2)を超えることを示した。DBHも相対光量子束密度と正の相関が得られた。トウネズミモチの出現、成長には、光量が重要な要因としてかかわっていたことから、トウネズミモチは実生の成長段階において光要求性の高い種であることが示された。すなわち、閉鎖林冠下などの光条件が悪い場所では成長の段階で枯死する可能性が高く、新たな定着は難しいと考えられる。一方、実生の生存率が高い光条件が良好な場所では、高い定着率であることが予想され、実生は成木へと成長していくことが十分に可能であり、今後新たに個体数が増加する可能性が考えられる。
著者
石田 弘明 戸井 可名子 武田 義明 服部 保
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-16, 2008-05-30
被引用文献数
2

兵庫県、大阪府、埼玉県の都市域に残存する孤立化した夏緑二次林において緑化・園芸樹木の逸出種のフロラを調査した。兵庫県では31地点、大阪府では19地点、埼玉県では16地点の夏緑二次林を調査した。逸出種の出現種数はいずれの地域についても30種を超えており、3地域をまとめたときの総出現種数は60種であった。逸出種の出現種数の70%以上は鳥被食散布型種であったことから、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入は主に果実食鳥の種子散布によっていると考えられた。逸出種の中には在来種が数多く含まれていたが、その種数は逸出外来種の2倍以上であった。逸出種の出現種数と夏緑二次林の樹林面積との関係を調べたところ、いずれの地域についてもやや強い正の相関が認められた。また、兵庫県の夏緑二次林で確認された逸出種の出現個体数と樹林面積の間にも同様の相関がみられた。しかし、逸出種の種組成に基づいて算出された各二次林のDCAサンプルスコアと樹林面積の間には、いずれの地域についても有意な相関はみられなかった。このことから、逸出種の種組成に対する樹林面積の影響は非常に小さいと考えられた。兵庫県の夏緑二次林でみられた鳥被食散布型の5種(シャリンバイ、トウネズミモチ、コブシ、トベラ、ヨウシュイボタノキ)について、樹林の林縁部から同種の植栽地までの最短距離を算出し、その距離と出現個体数および分布との関係を解析した結果、ほとんど全ての個体は植栽地から200m以内の樹林に分布しており、これらの種の夏緑二次林への侵入には植栽地からの距離が大きく関係していることが示唆された。これらの知見に基づいて、緑化・園芸樹木の夏緑二次林への侵入・定着を抑制するための方法を提案した。
著者
田村 典子
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-44, 2004-06-30
参考文献数
26
被引用文献数
3

外来種のタイワンリスが神奈川県において分布を拡大している.2002年にアンケートと現地調査によって確認された生息範囲は304km^2に及んだ.導入された1950年代からの分布拡大パターンを解析したところ,指数関数的に分布域が拡大していることが分かった.7年間にわたる標識再捕法および直接観察から,個体群パラメーターを算出し,個体数の増加速度を推定した.神奈川県におけるタイワンリスのこれまでの分布拡大パターンは密度効果のない個体数増加によって説明可能であることが明らかになった.
著者
柴草 良悦 松下 彰夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.89-94, 1962-06-01

The islet of Kamuishu, one of the most myaterious places in Akan National Park, lies near the center of Lake Mashu (351m). It is located at 43°34′37″NL and 144°31′53″EL. Up to the present, no investigation has been reported on the vegetation of this islet. Fortunately, the writers had an opportunity to research the vegetation of this islet during the 22nd to 24th of June in 1960. The islet is composed of Quartz Andesite, in an emerged part of a central cone of the Mashu Caldera. It is surrounded by cliffs and in the northeast to south side is a steep cliff (15〜25m) which faces directly the lake. There is a rather narrow gravel shore extending in south-west to west direction in front of the cliff. The humus layer of the islet measures only 5〜10cm in the deepest part. The vegetation is mainly composed of the mixed forest dominated by Betula Ermani and Abies sachalinensis, the height of which ranges from 2 to 13m. Generally, the forest floor if covered by the shrub layer(1〜2m) dominated by Rhododendron dauricum and associated with Rhododendron Tschonoskii, Acer Ukurunduense, Menziesia pentandra, Leucothoe Grayana var. jezoensis. Sometimes Hydrangea paniculata var. intermedia forms a pure society. On the other hand, the herb layer is rather poor in species and number. The topography of this islet is not so convenient for research on the vegetation. Only two belt-transects, namely[a]and[b], and one quadrat (5m×5m), namely[A], were taken. Belt-transect[a]shows the cross section of the vegetation ; Belt-transect[b]the longitudinal section ; and Quadrat[A]situated in the Abies sachalinensis grove is the special community on this islet.
著者
湯川 淳一 山内 政栄 永井 定明 徳久 英二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.171-175, 1977-09-30

YUKAWA, Junichi, YAMAUCHI, Seiei, NAGAI, Sadaaki & TOKUHISA, Eiji (Entom. Lab., Fac. Agric., Kagoshima Univ., Kagoshima). 1977. Leaf longevity and the defoliating process in saplings of Actinodaphne longifolia (BLUME) NAKAI. Jap.J.Ecol., 27 : 171-175. This investigation was made as a part of the authors' ecological studies of broad-leaved evergreen trees and associated gall midge populations which have been continued since 1970 in a natural forest of Mt. Shiroyama, situated in the centre of Kagoshima-city. The mean leaf longevity in saplings of Actinodaphne longifolia (BLUME) NAKAI was estimated at 51.58 months by counting both the numbers of surviving leaves and scars of leaves that had been shed. The mean numbers of new leaves per twig fluctuated annualy between 5.13 and 10.60,but the fluctuations were not great in the taller trees or in the younger generations of the shorter trees. The defoliating process from the time of leaf emergence to the end of April in 1976 was indicated by τ-index to be nearly random in almost every year. The simple and easy method adopted in this study may be applicable in some cases for estimating the leaf longevity and the defoliating process of other broad-leaved evergreen trees.
著者
崎尾 均 久保 満佐子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.643, 2005 (Released:2005-03-17)

カツラは冷温帯の渓畔林を構成する林冠木である。埼玉県秩父山地の渓畔林においては林冠木の10%を占めて点在しており、林内には稚樹や実生ははほとんどみられない。このカツラの更新機構を解明するために、繁殖戦略を中心に、生活史特性を明らかにした。 渓流に沿って距離1170m、面積4.71haの調査地を設定し、DBH>4cmの毎木調査を行なった。このときに幹の周りに発生している萌芽数も計測した。この調査地内の0.54haのプロットに20個のシードトラップを設置し、1995年から2004年まで10年間種子生産量を測定した。2000年から5年間は調査地内のすべての個体の開花・結実量を双眼鏡による目視で把握した。 10年間の種子生産には豊凶の差はあるものの、毎年大量の種子生産を行なっていた。雌雄の個体とも林冠木は毎年開花し結実していた。発芽サイトは粒子の細かい無機質の土壌か倒木上に限られており、それらの実生も秋には大部分が消失した。カツラの株は多くが周辺に萌芽を発生させており、主幹が枯死した後はこれらの萌芽が成長することによって長期間個体の維持をはかっていた。カツラの立地環境を把握した結果、かなり大きなサイズの礫上に更新していることが判明した。また、カツラの亜高木は、サワグルミが一斉更新した大規模攪乱サイトのパッチの中に位置し、樹齢もサワグルミとほぼ一致した。 以上の結果から、カツラの更新は毎年大量の種子を散布しながら、非常にまれな大規模攪乱地内のセーフサイトで定着し、萌芽によって長期間その場所を占有し続けることで成立していると考えられた。
著者
山中 正実 岡田 秀明
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.755, 2004 (Released:2004-07-30)

クマ類は中型以上の哺乳類で唯一冬眠を行うことが知られており、しかも、妊娠したメスは冬眠中に出産と育児も行う特異な生態を持っている。冬眠はクマ類の生活史の中で極めて重要な位置を占めるが、北海道に生息するエゾヒグマでは冬眠穴の立地する環境やその構造について十分な研究は行われていない。本研究では、1989年から2004年の間、知床半島において46例のヒグマの冬眠穴の位置を特定し、内21例について計測を行った。ヒグマの冬眠穴は、樹木の根張りを利用してその下に掘り込むタイプ(ST型)と樹木に依存することなく地面に掘る土穴(S型)に分けられる。また、自然の穴を利用するものは岩穴と樹洞に分けることができる。本研究では冬眠穴のタイプを確認できた25例中20例(80%)がS型であった。また、構造は入り口が一つで、その奧に寝床がある単純な構造であった。入り口から寝床まで直線的は位置されたものが13例(62%)で最多であった。奥行きは平均2.14m、最大幅は平均1.32mであった。知床半島では、冬眠穴は海岸段丘斜面など低標高の海岸部から高山帯のハイマツ帯まで幅広い環境に存在しており、46例中半数の23例は高木層を欠く高山・亜高山植生の地域や海岸段丘斜面にも立地していた。これらはダケカンバを中心とする高木層を持つ上部広葉樹林帯の森林内に冬眠穴が集中的に分布するとした大河(1980)による支笏湖周辺での立地条件と大きく異なっていた。また、知床半島では支笏湖周辺では確認されなかった人間の活動域に近接した場所の冬眠穴や平坦地に掘られた冬眠穴も見られた。また、海外の研究例では、一定の地域に冬眠穴が集中的に分布する事例が報告されており、その要因として個体毎の地域選択性や特定の年の個体群の分布特性があげられている。知床半島でも3ヶ所以上の冬眠穴を確認できた個体について、一定の場所を選択的に使う傾向が見られた。
著者
安田 雅俊
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.492, 2004 (Released:2004-07-30)

赤外線センサーを利用したカメラトラップ法は,ある地域の哺乳類の多様性や個体数を調べる際の簡便で優れた調査手法であり,近年多用されているが,日本の山野で適用する場合の標準手法は未だ確立されていない.本研究では,野生哺乳類のモニタリング調査の標準手法を確立するために考慮が必要な諸条件(調査の時期や期間,使用するカメラの台数等)と解析法について,筑波山での事例をもとに検討した.2000-2003年の3年間に,茨城県筑波山山麓の森林内の固定した5つの観察地点において,生落花生を餌として年4回のべ200カメラ日の調査を行い,中大型哺乳類9種の写真を412枚得た.「ある地域の対象種をある確率で撮影するために必要な調査努力量」と定義される“最小調査努力量”という概念を提唱し,何台のカメラをどのくらいの期間仕掛ければ,対象地域の哺乳類の多様性を調べ上げることができるかをブーツストラップ法を用いて解析した.タヌキ,イノシシ,ウサギ,ハクビシン,アナグマといった主要な5種を対象とした場合,94%の確率で,最小調査努力量は40カメラ日と推定された.得られた結果を総合すると,日本の落葉広葉樹林においては,5台のカメラで4日間,すなわち20カメラ日の調査を晩春から晩夏に2回反復することが推奨される.以上の結論は,一つの調査地における事例から得られたものであり,日本全国に適用可能な標準手法を確立するためには,同様の調査を多地点で行うことが必要である.また,既存のデータを同一の方法で解析することも有益であるため,既にカメラトラップで調査を行っている方々には,本研究の解析方法を開示するとともに,解析結果の共有化を呼び掛けたい.本報告の詳細はMammal Study 29(1)に掲載予定である
著者
藤田 素子 小池 文人
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.728, 2005 (Released:2005-03-17)

都市の森林における,窒素(N)及びリン(P)の鳥類の排泄物によるランドスケープ内への輸送について報告する。動物(主に魚類及びそれを採餌する哺乳類、魚食性鳥類)によるランドスケープ間の物質の移動が注目されているが、鳥類は都市およびその近郊においても栄養塩の移動をもたらしていると予想される。横浜市の6つの孤立林内に5m2のメッシュシートを数個設置し、落下した鳥糞を数日後に回収し、C%、N%、P%を測定した。更に、加入する栄養塩の起源を推定するために、NとPの構成比や安定同位体比δ15N及びδ13Cを季節・場所ごとに比較した。森林に加入したP(0-11.8kg/ha/ yr)を他の主な経路と比較すると、風化によるもの(0.05-1.0kg/ha/yr)や降水起源(0.2-0.9kg/ha/yr)よりも有意に大きく、都市林に生息する鳥類、特にねぐらをつくるカラス類の貢献度が高いことが明らかになった。秋にはCが多くNPの少ない植物質の糞が多く、夏にはNの多い昆虫質の糞であった。越冬期にはPが多く、特にカラスのねぐらとなる常緑樹林ではδ15Nが最も高かった(平均4.89)ため、哺乳類・鳥類などの動物質の餌を食べていると予想された。δ15Nは落葉樹林の鳥糞で最も低い値(平均0.62)を示しため、より植物食の鳥が多かったと考えられる。繁殖期の鳥類はテリトリーをもつため、採餌する昆虫由来の栄養塩は数百m以内から運搬されたことが予想される。一方で越冬期には、カラスはねぐらから8km以上離れた餌場への移動が確認されているなど、その採食範囲は広くなっていると考えられる。カラス類によりゴミ由来の栄養塩が都市林に運ばれている可能性もある。
著者
笹木 義雄 森本 幸裕
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.414, 2004 (Released:2004-07-30)

鳥取砂丘では、防風林として植栽されたクロマツやニセアカシアが汀線に向かって砂丘内に侵入する現象が見られ、裸地面が減少し、安定化が進行している。本報告では、海浜植生を持続的に管理することを目的に、砂丘の安定化が、群落構造へ与えた影響について明らかにした。 鳥取砂丘の千代川河口付近の汀線から約500mに位置する砂丘列において、1986年に84箇所のコドラート(2.5m×2.5m)を設置した。各コドラートについて、ブラン_-_ブランケットの植物社会学的手法により、コドラート内に生育する植物種とその被度を測定するとともに、基点から各コドラートの標高を水準測量により1986年11月15日に測量した。これより16年が経過した2002年に、同地点について1986年に調査したのと同様な手法で、植生調査と測量を実施した。また、これらの調査結果をTWINSPAN法による分類、DCA法による序列化により比較した。 調査対象地域の植生は、1986年においては、コウボウムギ群落、ケカモノハシ群落、メマツヨイグサ群落の3タイプに分類されたが、2002年においては、これまでに見られた草本群落に加えて、アキグミ群落、クロマツ群落などの木本が優占する群落タイプも見られるようになった。また、種数は、1986年においては、15種であったのに対し、2002年においては、41種と増加がみられた。なかでもこれまで調査対象地域に見られなかった外来種のコバンソウ、マンテマ、ハナヌカススキなどの草本、ニセアカシアなどの木本の侵入が顕著であった。 このまま、砂丘の安定化が続くと海浜植生の優占する群落タイプが減少するとともに、樹林化が進行し、遷移が進行すると予想される。海浜植生を持続的に維持していくためには、調査対象地域周辺を攪乱することで裸地化を図り、砂丘を再流動化させることが必要と考えられる。
著者
齋藤 大地
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.65, 2005 (Released:2005-03-17)

鳥類の90%以上は社会的一夫一妻で,一見すると雌雄で利害の対立がないように見受けられる.ところが,遺伝子マーカーを用いた親子判定技術の確立により,多くの鳥種で婚外交尾による婚外子の存在が明らかになった.また,行動観察や野外実験からメスは積極的に婚外交尾の誘引をおこない,オスはつがいメスの婚外交尾を防ぐために配偶者防衛行動やその他の行動をとっていることがわかってきている.このような雌雄の対立はペア内の個体の質や状態だけでなく,婚外交尾の相手になりうるペア外のオス,そのオスのつがいメスの質や状態によっても影響されることが考えられる.しかし,一夫一妻種では潜在的にペア内の繁殖に影響を与える個体を把握することは困難であるため,父性の配分がどのような要因で決まっているのかは研究によって結論が大きく異なっている. イワヒバリは,非血縁個体からなる複数のオスと複数のメスがグループで繁殖する多夫多妻性の協同繁殖鳥類である.イワヒバリは配偶がグループ内に限られているため,配偶を争う潜在的な相手を特定することが可能である.今回の発表では,オスとメスの対立の結果である父性の配分が配偶に関係する個体の質や状況によってどのように変るのか,マイクロサテライトによる父性判定の結果を用いて報告する.