著者
青木 然 川村 純平 後藤 航大 島 奈穂 吉田 拓功 林 美都子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2022 (Released:2022-04-20)

本研究では公園でのごみのポイ捨て行動について、Dark Triad(マキャベリアニズム、自己愛傾向、サイコパシー傾向の3特性を総称した概念)と呼ばれるパーソナリティ特性からの説明を試みた。大学生130名程度を対象に、実験参加者には9枚の公園の写真を提示し、その写真に対して、“どれだけポイ捨てを行いやすいか”を5件法で回答を求めた。また、Dark Triad尺度であるSD3-J(下司・小塩, 2017)を用いて、上位群と下位群に分け、Dark Triad得点の上位群と下位群における‘‘どれだけポイ捨てを行いやすいか”得点にt検定を行ったところ、サイコパシー傾向とDark Triad全体では、各上位群が各下位群よりも比較的ポイ捨てを行いやすいことが明らかとなった(t(45)=2.37 , p<.05 ; t(40)=1.92 , p<.10 )。Dark Triadの高い者は自分本位であるが故に周囲を気にせずポイ捨て行動をしやすいことが考察された。今後は紙媒体での質問だけではなく、実際のポイ捨て行動からも検討していく必要性があるだろう。
著者
山本 一希 本多 樹 中尾 敬
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

離人の主要な特徴として,非現実感がある。非現実感とは,自身の思考や行為が外界の環境や自分 自身と切り離されている感覚であり,離人症者は外的刺激を自己と結び付けることに困難を感じてい ることが先行研究により示唆されている。しかし,先行研究では刺激として参加者の自己顔しか用い られていない。そこで本研究では,離人の程度が高い人々は自己顔以外の刺激に対しても自己関連性 の認識に困難を示すのか検討を行った。離人の程度は質問紙を用いて測定し,自己関連性の認識の困 難さは幾何学図形と自己や他人とのマッチング課題遂行時の反応時間と正確さを用いた。その結果,離人の程度とマッチング課題から得られた両指標とには関連が認められなかった。この ことから,離人症者の自己関連性の認識の困難さは,自己顔といった日常的に自己と関連付けられう る刺激に対して引き起こされる可能性が示された。
著者
太田 直斗 相澤 裕紀 厳島 行雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-24, 2020-08-31 (Released:2020-09-24)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

Rosch et al.(1976)をはじめとするオブジェクト認知に関する先行研究では,上位カテゴリー(文具),基本カテゴリー(ペン),下位カテゴリー(赤ペン)というカテゴリーの階層構造において,基本カテゴリーが最初に認識されることが主張されてきた.しかし,そのような先行研究では,「機能」という上位概念がどのように認識されるのかという問題は検討されてこなかった.本研究では,機能カテゴリー(切る)が,オブジェクトの認識システムにおいてどのような役割を担うのかについて,概念へのアクセスの速さに着目して検討を行った.実験1, 2では機能カテゴリーによるオブジェクトの認識が上位カテゴリーよりも速く行われることを明らかにした.RSVPによる検出課題を行った実験3では,機能カテゴリーと基本カテゴリーの検出成績(d’)の差は有意ではなかったが,機能カテゴリーは上位カテゴリーよりも検出成績が優れることが明らかとなった.これらの結果は,機能カテゴリーはオブジェクトの認識の初期段階で認識可能であり,人工オブジェクトを認識するうえで重要な役割を担う概念であるということを示唆している.
著者
後藤 航大 青木 然 川村 純平 島 奈穂 吉田 拓功 林 美都子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2022 (Released:2022-04-20)

川村ら(2021)は、ポイ捨て写真に対する印象を因子分析を用いて、「辟易」「敬意」「世間の目」に分類したが、それぞれどの程度影響を与えているのかは示されていなかった。そこで本研究では、重回帰分析を用いて明らかにすることを目的とした。実験方法は、川村ら(2021)と同様であった。「ポイ捨てのしやすさ」を従属変数、「辟易」「敬意」「世間の目」を独立変数として、ステップワイズ法による重回帰分析を行った結果、「辟易」と「世間の目」が「ポイ捨てのしやすさ」に関連していることが明らかになった。特に「辟易」の影響が強く、ポイ捨てのしやすさとの間に正の影響が見られ、「世間の目」においては負の影響が見られた(y=1.305+0.121x1-0.042x2)。本研究の問題点として、調整済み決定係数の値が低いため、今後も検討の余地がある(調整済R2乗 = 0.095)。
著者
井関 龍太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2022 (Released:2022-04-20)

物語を読んでいるときに,ある場面では大きな盛り上がりを感じるのに対して,他の場面では淡々と進行している,あるいは,つなぎや溜めの場面であると感じることは自然なことである。物語の展開に沿った感情的なダイナミクスを捉える手段として,センチメント分析を利用することで,細かな単位での感情の推移を容易に推測することができる。一方で,そのような分析結果が人間による物語の山場の知覚と対応関係を持つのかは明らかでない。本研究では,センチメント分析に基づいて,比較的盛り上がりの部分が明確な物語文章を選び出し,実験参加者にはそれらを読んで,山場がどこにあったか,その感情的な印象はポジティブかネガティブか,読後感はネガティブかポジティブかの判断を求めた。実験の結果,センチメント分析に基づいて山場が前半のほうにあると推定された物語については,後半にあると推定された物語よりも,山場はより前のほうにあると評定された。
著者
川﨑 采香 上原 泉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-40, 2020-08-31 (Released:2020-09-24)
参考文献数
45

自伝的記憶とは自分史の一部をなすような,過去の個人的な出来事の記憶であり,そのあり方や語られ方に文化差や性差,発達差がみられる可能性が指摘されているが,日本人の思春期を対象とした研究はほぼ行われておらず,その自伝的記憶の内容や発達的特徴は不明である.本研究では,日本人中高生に重要な自伝的な出来事を想起するようにもとめ,その内容と経験時の年齢,伴う感情などを調べた.まず,中高生男女が想起した内容をカテゴリーに分類した結果,カテゴリーは概ね共通し,学校に関する出来事(入学,卒業,部活動など)が多く含まれた.一部の出来事カテゴリーにおいて,中高差や男女差がみられた.また,中学生は12歳,高校生は15歳に経験した出来事をほかの年齢よりも多く想起することが示された.感情別に見ると,これらの時期に想起量の山がみられたのはポジティブ感情もしくは両方(ポジティブとネガティブが混ざっている)感情を伴う出来事のみであった.日本の中高生の自伝的記憶の特徴について,発達差や性差も含めて考察した.
著者
徳永 智子 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.53-61, 2010-08-30 (Released:2010-12-08)
参考文献数
43
被引用文献数
2 2

他者の視線の方向へと注意が捕捉される効果は,手がかりが閾下呈示された場合にも生じることが報告されている.また,視線注意効果が恐怖表情によって影響を受けることも知られている.本研究は,表情による視線注意効果への影響が,刺激に対する意識的気づきがない場合でも生じるかどうかを検討した.視線を手がかりに用いた空間的手がかり課題において,恐怖表情と中性表情の視線を17 msという短時間呈示することで,刺激に対する意識的気づきを操作し,注意効果が生じるかどうかを調べた.実験1では,恐怖表情と中性表情で同程度の視線注意効果が生じ,表情の効果はなかった.これは用いたマスク刺激が参加者に,顔が呈示されているという構えを生じさせたためであったと考え,刺激を変えて実験2を行った.その結果,恐怖表情と中性表情とで視線による注意効果は異なり,視線による注意効果への表情の影響は,意識的気づきを必要としない自動的な過程によって生じることが示された.
著者
山田 陽平
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.49-55, 2009-08-31 (Released:2010-11-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

記憶内の情報の一部を検索手がかりとして与えられると,それ以外の情報が思い出しにくくなる.この現象は,リスト内手がかり効果と呼ばれている.本研究では,リスト内手がかり効果が検索抑制によって生じているのかを調べるために,符号化方略を操作した.実験参加者は5カテゴリ,6項目ずつの計30項目からなる学習リストを記銘し,連続して呈示される二つの項目の相違点か類似点のいずれかを判断した.その後,手がかり群は連続呈示された2項目のうちの一方を残りの項目(非手がかり項目)を再生するための手がかりとして与えられ,それらを読み上げた.統制群は4桁の数字を呈示され,それらを読み上げた.その後,手がかり群は非手がかり項目だけを再生し,統制群はすべての項目を再生した.その結果,相違点判断群では,非手がかり項目の再生率は統制群より手がかり群のほうが低く,リスト内手がかり効果が認められた.一方,類似点判断群では,統制群と手がかり群の間に差はなく,リスト内手がかり効果が認められなかった.これらの結果は,リスト内手がかり効果の検索抑制説を支持するものであるといえる.
著者
伊丸岡 俊秀 松村 信哉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

方向音痴の人は「方向感覚が劣る」、「注意散漫」、「何も見ていない」など何かに劣っている人であると扱われることが多いが、それは偏った見方であり、実は優れたところがあるのではないか。本研究ではこのような仮説のもとで、ある町並みの3Dビュー動画を刺激として方向音痴群と非方向音痴群に対して光景視聴時の視線計測とSD法による評価課題を行った。その結果、評価結果から抽出された因子には群間の違いが見られ、非方向音痴群では評価に町並みを構成する建造物の形状や材質が影響しているのに対して、方向音痴群では町並みに関する感性的評価が影響しているという可能性が示された。
著者
光藤 宏行
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.59-69, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
88

本論文では,輻輳眼球運動と両眼立体視を調べた近年の心理学的・神経科学的研究を概観する.輻輳眼球運動とは2つの眼球の異なる向きの回転である.両眼立体視,すなわち両眼性の奥行き知覚の大部分は網膜像差の皮質情報処理により生じる.近年の研究により,(a)像差によって誘導される水平方向の輻輳・垂直方向の輻輳・回旋方向の輻輳は,視覚刺激の提示に応じて比較的素早く生じ,(b)両眼立体視には複数の脳領域が関与していることが示されている.これらの知見に基づいて,視覚系がどのように水平像差・垂直像差・回旋像差を処理し,両眼対応問題をどのように解決しているかについての仮説を提案する.
著者
金谷 英俊 永井 聖剛
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.29-38, 2022-02-28 (Released:2022-03-25)
参考文献数
33

他者による課題遂行の観察が,実験参加者の変化検出課題成績と不安状態に及ぼす効果について検討した.交互に呈示される画像間で変化している部分を見つける変化検出課題を参加者に課し,検出までにかかった時間を測定した.実験1では参加者は,他者1名が参加者の斜め後ろに立ち,その課題遂行を観察する(他者観察あり条件),もしくは参加者のみ(他者観察なし条件)のいずれかの状態で課題を遂行した.その結果,他者に観察されていると観察なしの場合よりも,変化検出時間が有意に長くなった.続いて実験2で,人間の他者の代わりにビデオカメラを通して課題遂行の様子を観察した場合にも,カメラ観察なしの場合と比べて変化検出時間が長くなり,STAI状態不安尺度の得点が高くなった.以上の結果は,他者による観察によって参加者の不安が増大することにより,課題遂行時に視覚的注意が機能しにくくなる可能性を示唆するものである.
著者
伊藤 友一 田仲 祐登 辻 幸樹 品川 和志 柴田 みどり 寺澤 悠理 梅田 聡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

人の思考には時間(過去/未来),感情(ネガティブ/ポジティブ),自己/他者など様々な方向性があり,特に未来に関する思考のポジティブバイアスが多くの先行研究で示されている。しかしながら,それらは個人的な未来の想像を主な対象としており,他者の未来の想像でも同様のバイアスが生じるのかは明らかでない。本研究では,「私(彼)は/将来/試験に…」のように文手がかりを,主語,時間,内容の順に呈示し,自己または他者の未来について思考するよう参加者に求めた。このとき思考の感情価は参加者が任意に決定した。ポジティブ思考数がネガティブ思考数より多いことを以てポジティブバイアスとし,その傾向が自己に関する思考と他者に関する思考との間で異なるかどうか検討した。その結果,他者の遠い未来を想像するときにより強いポジティブバイアスが生じており,自己-他者間で異なる感情処理がなされていることが示唆された。
著者
Saito H Lin C. Saito G. Gyoba G. Itukushima Y.
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

対面する虚偽報告者(Liar)と虚偽検出者(Detector)の脳活動の同期(coupling)現象を、近赤外分光法(NIRS)を用いて検討した。Liarは、単独で視覚呈示された単文を「音読」するか、あるいは単文内容を右手の「動作」で表現することを求められ、次に実施行動(音読、動作)の再認検査を受けた。最後にLiarは対面状況下で、各単文に付与される命令語(真実・虚偽)に応じた実施行動をキー押し判断し、直後に口頭で「音読」または「動作」しましたと報告した。例えば、ある単文に「動作」を行い、「虚偽」命令を受けると、Liarは「音読しました」と虚偽を報告した。DetectorはLiarの報告に対する真偽判断の直後に各判断の正誤を知らされた。Detectorの虚偽検出(正答)率は約50%であった。両者のNIRSデータは、Detectorの正答反応試行でのみ、右IFGで正の脳間相関を示した。
著者
尾田 政臣
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.148, 2015

顔の選好を表す言葉として「美しさ」「魅力」「好ましさ」が使われている。この三つの評価項目が異なる意味として使われているのか、あるいはほとんど同義として使われているかについてはあまり調べられていない。本稿では顔のイメージを評価させる方法で、12人の有名人の顔について19人の被験者にそれぞれ3項目の評価をさせた。その結果を評定の平均値を用いて分析をすると、美人度と魅力度の間には差が無い結果となった。一方、被験者ごとに3項目間の評定値に違いが生じる率を求めた。その結果、最大でも4割程度の一致率であった。3つの評価項目は異なる意味として使い分けられていることが明らかになった。また、相関係数で比較すると魅力と好みの評価項目間の相関が他のものより高いことが明らかになった。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.143, 2015

「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。
著者
原田 悦子 鈴木 航輔 須藤 智
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

視覚的探索は日常的にもしばしば発生する活動であるが,同一のダミー項目が複数ある中からターゲットを見出す実験室課題とは異なり,日常では,個々別々のダミー項目の中から一つのターゲットを探し出す課題である.そこで本研究では,「本棚から特定タイトルの本を選び出す」課題を作成し,その視覚探索過程において,経験的手がかり(ターゲット発生確率の偏り)もしくは意味的手がかり(カテゴリーによる位置情報の付加)を加えた場合の効果を,手がかりに合致する優先条件/合致しない非優先条件の比較から検討することを目的として,時間圧の付加ならびに加齢効果を分析した.その結果,若年成人では両手がかりとも通常条件,時間圧下条件のいずれでも有効な促進効果を示したが,高齢者の時間圧下では,意味的手がかりにおいて「非優先領域への探索」を抑制することが示された.問題解決場面における手がかり利用と目標維持の関係性について考察する.
著者
今井 史 小川 健二
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>物の動きを描く動的視覚イメージには,身体運動の結果を心的に予測するための運動シミュレーションが関わるといわれている。しかし,たとえば機械を操作するとボールが飛ぶという身体的要素の少ない内容や,ボールが空の彼方まで飛ぶという身体運動では実現できない内容のイメージにも運動シミュレーションが関わるかは,定かではない。そこで本研究では,運動シミュレーションの妨害課題の有無を参加者間要因,イメージ内容の身体的要素の多寡,身体運動による実現可能性の二つを参加者内要因として参加者に飛翔するボールをイメージさせ,その鮮明性を調べた。実験の結果,運動シミュレーションの妨害との交互作用は身体的要素の多寡についてのみ検出され,妨害のない群では身体的要素の多い内容のイメージがより鮮明化したが,妨害のある群ではその効果はなかった。これは動的視覚イメージの身体的要素に運動シミュレーションが関わっていることを示唆する。</p>
著者
李 岩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>本研究では,二つのタイプの漢字四文字表記語(四字成語と四字慣用語)を認識する際の区別,また, 四字熟語を構成する前半部分と漢字四文字表記語全体の関連を,プライミング法を用いた語彙判断課題を使用し,異なる前半部分タイプ「独立語(四字成語),独立語(四字慣用語),結合語(四字成語),統制語」ごとに検討した。その結果,前半部分タイプの効果が有意になり,有意な促進効果が確認された。二つのタイプの四字熟語の認識過程が違うこと,また,四字成語と比べて,四字慣用語を構成する二つ部分の間のつながりがより弱く,熟語全体より部分的の方に意識することが分かった。</p>