著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2019 (Released:2019-10-28)

何度も目にしているはずの建物がなくなり,更地になっていたり別の店舗になっていたりするときに,以前どのような建物や店舗がそこにあったのか思い出せないのはなぜだろうか。本研究は,街並みにおける建物の変化に気付いたり,以前の建物を想起したりすることに影響する要因について実験的に検討することを目的とした。その結果,変化箇所には気付いたものの,変化以前の建物情報がわからない状態は,「異業種,建替え,空き地>同業種(異業種>空き地)」となった。異業種間の変化は,以前と同じ建物に異なる業種の店があるという違和感が検出率を高めたのだろう。また,変化以前の建物情報の完全な想起は,「同業種>異業種≒空き地≒建替え」となった。同業種間の変化は,変化自体には気付きにくいが,一度変化箇所に気付いてしまえば,変化以前と同じ建物と業種が建物情報を想起するうえでの強力な手がかりとなることが示唆された。
著者
大北 葉子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.86, 2013

本研究は空書と非漢字圏日本語学習者の漢字学習との関係を考察する。被験者は日本人9人と初級非漢字圏学習者9人であった。被験者はモニター画面上の視覚刺激が正しい漢字かどうかをキーボードを押して判断した。視覚刺激は五種類で、正しい漢字、曖昧漢字(図形的な間違いがある)、偽漢字(部首と旁の組み合わせが存在しない)、誤漢字(部首の場所が倒置されている)、ハングル文字であった。日本人2人と非漢字圏日本語学習者6人に空書が見られた。すべての被験者は漢字とハングル文字の区別ができた。空書なし3人の非漢字圏日本語学習者は漢字と漢字様刺激(曖昧漢字、偽漢字、誤漢字)の区別ができていなかった。これは空書なし非漢字圏学習者は漢字の細部構造に注意が払われていないことを示唆している。空書なし非漢字圏学習者は漢字練習時に単に書き写しているだけだったかもしれない。空書は漢字学習の内在化の深さの指標になるかもしれない。
著者
鈴木 健斗 福井 隆雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>本研究では、「物理的な刺激がないにも関わらず触覚を経験する」現象である擬似触覚(pseudo-haptics)に着目し、VR空間上でも生成可能か検討し、擬似触覚の主観的評価値と個人特性(この場合、自閉症スペクトラム指数)との関連についても調べた。実験では、ヘッドマウントディスプレイを装着し、右手を台の上に置き、VR空間内に提示されるモデルの手腕に自分の手腕を重ねる姿勢をとり、モデルの手腕が触れている白いチューブ上を左から右へと手腕に向かって流れてくる灰色の円筒がモデルの手腕に触れる瞬間に、当初の速度(5.7deg/秒)から0.1~0.9倍に減速する、あるいは速度変化がない条件を設定した。その結果、減速の割合が大きいほど、実験参加者は強い擬似触覚を経験した。さらに、自閉傾向が高いほど擬似触覚を経験する可能性が示唆された。</p>
著者
竹原 卓真 栗林 克匡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.123, 2007

日常生活では、高頻度で電子メールが送受信されている。電子メールには、顔文字や絵文字など、エモティコンと呼ばれるオブジェクトがしばしば付加されるが、本研究では、それらエモティコンを付加した場合に、電子メールの感情情報がどのように認識されるのかを検証した。その結果、喜び感情については先行研究と同様に、顔文字を付加しない条件よりも、付加した条件のほうが喜び感情の認知が促進された。また、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪の4つのネガティブ感情を表現する電子メールに、対応する顔文字を付加しても、当該感情の認知が促進されることはなかった。中性感情と位置付けられる驚きについては、喜び感情とほぼ同様の結果が示された。他方、感情表出している静止した絵文字を付加した場合、顔文字よりも視覚的情報量が多いため、当初は感情認知が促進されると推測したが、結果的に感情認知が促進される感情と、促進されない感情が存在した。
著者
楊 琬璐 宮谷 真人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2015 (Released:2015-10-21)

音楽と色彩の構成要素を系統的に変化させ,それぞれ単独,あるいはその組み合わせが気分や印象に及ぼす影響や,組み合わせの相応しさを決定する要因について調べた。その結果,長調でテンポの速い曲とvivid toneは覚醒度を上げ,長調でテンポの遅い曲とdull toneは眠気を生じさせた。また,長調でテンポの遅い曲とvivid toneの暖色系,pale toneの全色はポジティブな心理的効果を促進させ,短調でテンポの遅い曲とdull tone全色はネガティブな気分を喚起した。音楽のみ条件と音楽に相応しい色の組み合わせに比べ,音楽に相応しくないと感じられる色を同時に呈示すると,ネガティブな気分が増強された。各音楽に相応しい色彩の組み合わせの結果から,音楽と色彩の組み合わせの相応しさを決める要因として,各音楽や色彩に対する好み,喚起される感情の共通性,および印象評価の共通性の3つが挙げられる。
著者
瀧川 真也 横光 健吾
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.49-58, 2019-08-31 (Released:2019-09-14)
参考文献数
31
被引用文献数
1

これまでの研究により,嗜好品の摂取には心理学的効果があることが確認されている.本研究は,嗜好品の自伝的記憶に着目し,嗜好品に関する回想機能の特性とその加齢の影響について検討を行った.日常的に嗜好品を摂取している20歳から79歳までの1,800名(平均年齢=49.49歳,SD=16.32)を対象にオンライン調査を行った.調査協力者は,コーヒー,茶,タバコ,酒のうち最も好んで摂取している嗜好品に関する記憶について回想機能尺度に回答した.分析の結果,年代間で,“アイデンティティ”や“辛い経験の再現”などの回想機能に差があることが確認された.また,“退屈の軽減”や“会話”などの回想機能では,嗜好品の種類により回想機能が異なることが明らかとなった.
著者
久野 雅樹 青山 毅
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.120, 2009

Google Earth,Google Street View を用いて,国内外8都市(新宿,渋谷,銀座,札幌,大阪,パリ,ニューヨーク,ブリスベーン)の景観画像960点を収集した。この画像中の建築物を対象に,xy色度図を用いて地域色の分析を行った。その結果,全体として低彩度の無彩色が多いことが確認できた。また日本の各都市は黄赤系統に偏りがあり,外国の各都市は黄赤系統と紫青系統に偏りが認められた。得られた各都市の色彩の特徴は既存の知見と整合的であり,また多数でかつ多様なサンプルを対象とした分析が容易に行えることも確認でき,景観イメージの研究に Google のサービスが有用であることが示された。
著者
新村 知里 草野 萌 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.111, 2014 (Released:2014-10-05)

他者の顔を魅力的だと判断するとき、笑顔などの表情の魅力と、顔の形態的魅力のどちらが主要因となっているのだろうか。本研究では、モデルと実験参加者が女性同士の場合に、顔の形態と表情が魅力および印象の評価に及ぼす影響について検討した。笑顔の表出強度は2種類設定した。実験の結果、中立と微笑み表情では美人顔と中間顔の間に魅力に差が生じるが、喜び表情では魅力に差が見られなかった。ただし、微笑み表情のように表出強度が低いときは顔の形態の影響が強いことが示された。また、喜び表情と中立表情の魅力の違いと、中立表情時の顔の形態(美人顔と中間顔)による魅力の違いの効果量を比較した結果、喜び表情による魅力変化のほうが、顔の形態による魅力変化より大きいことが明らかとなった。本研究の結果は、女性同士の場合には顔の形態より表情の方が魅力評価に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
著者
瀬戸 奏音 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2017 (Released:2017-10-16)

夢とは全ての人において睡眠中毎晩生成されている現象である.しかし,夢内容の生成起序や規定要因について,未だ一定の知見は得られていない.不快な夢内容に関する先行研究では,精神疾患との強い関連が報告されている一方で,健常者を対象とした研究は少ない.さらに,夢内容の生成に関する主観的な要因について,個人特性に着目した研究が多い一方で,日中および就床前の気分の影響を検討した研究は少ない.本研究では,健常大学生を対象に,自宅での夢聴取により個人特性と就床前の気分が夢内容に影響する様子を検討した. マルチレベル相関分析により有意な相関が認められた項目について,マルチレベル構造方程式モデリングを用いた媒介分析を行った.その結果,STAIの特性不安,状態不安と夢のネガティブ情動因子得点に関して,特性不安は夢のネガティブ情動因子に対して,状態不安を媒介することで不快な夢内容へ影響することが示された.
著者
前川 亮 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.15-24, 2019-02-28 (Released:2019-03-21)
参考文献数
56

われわれは普段,無意識に他者の動作を模倣している.さらに,他者に模倣されることで相手によりよい印象を持つことが知られている.この被模倣による印象の向上効果は,手や足の動き,表情の変化,また瞳孔径の同期などで起きることが確認されている.一方,瞬目は映画鑑賞時やスピーチを聴くときに鑑賞者の間で同期することが知られており,瞬目においても模倣が生じることが推測されるが,実際に瞬目の模倣や被模倣の影響は調べられていない.そこで本研究では,他者の瞬目を模倣しているかどうか,そして瞬目の被模倣が模倣者の印象を改善するかどうかを調べた.実験では,ランダムに瞬目する画像を呈示し,画像の瞬目に対して参加者の模倣が生じるかどうかを解析した.また,参加者の瞬目に同期して瞬目する画像を呈示し,瞬目の被模倣が画像の印象に与える影響を調べた.結果,参加者は無意識に画像の瞬目と同期して瞬目をしており,さらに,参加者の瞬目を模倣した画像がより好感度が高いことがわかった.
著者
三雲 真理子 高橋 美帆
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.94, 2011

本研究では、多種多様のミネラルウォーターが商品化されている近年の傾向を踏まえ、市場で有名なミネラルウォーターのパッケージラベルが中身の味の評価に影響を及ぼすかを調べることを目的として、20代と60代の対象者に対して実験を行った。実験で使用したペットボトルは、市販の「天然水」、「クリスタル」および本来のラベルの代わりに「水道水」のラベルを貼った3本であり、中身はいずれも水道水であり、ラベルによるプラシーボ効果の検証をおこなった。その結果、20代も60代も「水道水」ラベルの水のほうが市販の他の2本のペットボトルの水より臭みを感じ、逆に市販の2本のペットボトルの水のほうが「水道水」ラベルの水より甘みを感じた。また、20代に比べて60代はプラシーボ効果が大きく、ラベルによる暗示効果が得られた。
著者
宮原 道子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.192, 2007 (Released:2007-10-01)

本研究では,文章の音読再生課題(実験1)と文章の校正つき音読再生課題(実験2)を用いて,課題に無関連な言語音(日本語)とオフィスノイズ(PCやコピー機などの機械音)が及ぼす影響を検討した.実験1では,有意味な言語音によってオフィスノイズよりも有意に大きな妨害効果が得られた.ところが,同音異義語を検出する校正課題と音読再生課題を同時に行った実験2では,オフィスノイズによる妨害効果のみが起こり,言語音による妨害効果は起こらなかった.以上の結果より,音読再生課題では有意味な言語音によってオフィスノイズよりも大きな妨害効果が起こること,言語音による妨害効果と同音異義語の校正課題には同じ認知処理過程が関与することが明らかとなった.この結果はCowan(1995)のモデルによる説明が可能である.
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2016 (Released:2016-10-17)

近年,衛生マスク (以下,マスク) は,風邪や花粉対策等の衛生用途以外にも使われる。例えば,若年女性の一部は,小顔に見せる為にマスクを利用することがある。本研究では,見た目の顔の大きさにマスクの着用が及ぼす効果を検証した。実験はマスク着用 (着用,非着用) と元々の見た目の顔の大きさ (小顔,中顔,大顔群) の2要因被験者内計画で実施した。被験者は,LCDに呈示された顔画像の見た目の顔の大きさを1 (小さい) から100 (大きい) の範囲で評定した。その結果,元々の見た目の顔の大きさに関わらず,マスク非着用画像に比べ,マスク着用画像の方が顔が小さく知覚されることが示された (マスク着用の効果量は小顔群に比べ,中顔・大顔群の方が大きかった)。この効果は,マスク着用で,顔の大きさ判断に用いられる視覚手がかり (咬筋部や下顎周りの皮膚厚等) が利用できなくなること,顔が遮蔽されたことによる錯視効果に基づくと考えられる。
著者
重森 雅嘉 佐藤 文紀 増田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.48-48, 2011

一般的に多くの人に当てはまる事柄であっても、心理検査や占いの結果として提示すると、自分に特別な内容として受け取られやすい(バーナム効果)。この効果を注意や警告を強化するものとして用いることができれば、安全や教育においての有効な活用が期待できる。本研究では日常的な展望記憶課題(一連の実験セッションの最後にID札を返却する課題)を用い、展望記憶エラーに対する警告をおみくじのように被験者が選択することにより、同様の内容を実験者から与えられるよりも警告の効果が高まることを明らかにした。
著者
北神 慎司 村山 航 坂口 結香 武野 全恵 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2019 (Released:2019-10-28)

メタ動機づけに関する先行研究において,金銭的報酬などの外発的動機づけを伴わない課題を行った後の内発的動機づけの自己評価に比べて,課題を行う前の予測的な自己評価が一貫して低いことがさまざまな実験によって示されている。すなわち,内発的動機づけは過小評価される傾向があることが明らかとなっており,これはメタ認知が概して不正確である知見と一致するものである。本研究では,課題前の内発的動機づけの予測的な自己評価を行う前に,「内発的動機づけが過小評価されやすい」ことを事前警告として教示することによって,過小評価が修正されうるかどうかを検討することを目的として実験を行った。その結果,事前警告の効果は現れず,課題に対する自己評価だけでなく課題成績においても内発的動機づけは過小評価されることが示された。つまり,先行研究の知見とあわせると,このような現象は極めて頑健であると考えられる。
著者
生駒 忍
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2012 (Released:2012-07-20)

日本語オノマトペの表記においては、ひらがなを用いるかカタカナを用いるかという表記形態の選択においてある程度の自由が許容されている。一方、認知心理学的知見は、表記形態がオノマトペの認知過程に影響を及ぼすことを明らかにしている。そこで本研究では、触感を表すオノマトペについて、表記形態の主観的評定データの収集を行った。大学生30名に、19種のオノマトペを提示しそれぞれがひらがな・カタカナのどちらで書かれることが多いか、5件法で評定を求めた。その結果、一定のゆれがあることが認められた。そこで探索的因子分析を行ったところ、硬い触感と柔らかい触感との2因子に分かれ、後者のほうがひらがな表記されやすい傾向が示された。また、調査対象者を日常的な読書量の多寡で2群に分けて回答を比較したところ、評定値に有意差は認められず、主観的表記頻度は全般的な接触量に左右されるものではないことが示唆された。
著者
山田 祐樹 Marmolejo-Ramos Fernando Roland Pfister Barrera-Causil Carlos
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2019 (Released:2019-10-28)

科学コミュニケーションにおける障害の一つが実験結果の理解の共有である。データを視覚化・抽象化するために様々なグラフが用いられるが,受け手にとっては難解であったり誤解が生じたりするため,適切な理解共有のためには適切なグラフ選択が必要であろう。そこで本研究では,グラフ化の仕方が受け手のデータ分布の理解に与える影響を検討した。日独豪3カ国の非専門家を対象としデータの正規性の判断を求めた。正規性は,公衆が普段接することの無い一方で,認知心理学にて頻繁に使用されるパラメトリック分析の根幹をなす。ここでは,同一のデータセットから作成された箱ひげ図,ヒストグラム,密度プロット,QQプロットの4種類のグラフを用いた。結果として,グラフの種類ならびに参加者の国籍や統計学習熟度によって正答率は大きく異なった。したがって,提示したい情報と受け手の属性に応じた柔軟なグラフ選択が科学コミュニケーションには重要である。
著者
高橋 翠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.100, 2011

顔の魅力に対する進化的アプローチでは、ヒトは自身の繁殖に有利となる異性個体を見抜く適応上の課題として、望ましさに寄与する特性のシグナルを敏感に察知し、魅力という形で検出していく心的機能を備えていると仮定される。しかしながら、これまで「女らしい」印象を与える女性顔が常に高い魅力評価を受ける一方、男性顔における「男らしさ」は、健康や身体的強靭さといった配偶者として望ましい特性のシグナルであるにも関わらず、必ずしも魅力的と評価されないという。本研究では、「男らしい」印象を与えるような男性顔は、それが無表情時に知覚者に怒りが認知されることで覚知される脅威性が魅力評価を抑制していることを示した高橋(2010)の知見を拡張し、表情と視線方向の異なる条件における「男らしさ」と魅力の関係について検討を加えた。その結果、比較的笑顔や逸視といった脅威性が覚知されにくい条件においては、「男らしさ」が魅力評価に反映されるようになる可能性が示唆された。