著者
北神 慎司 村山 航
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2011-10-02)

自己効力感 (self-efficacy) とは,課題をやり遂げる自信のことであり,これが高いと課題への動機づけが高まり,困難な課題にも粘り強く取り組むようになることが指摘されている。これまで,自己効力感を高めるプログラムはいくつも開発されているが,いずれもコストと時間がかかることが問題として挙げられる.本研究では,課題の図と地のコントラストを操作することにより,知覚的流暢性 (perceptual fluency) を高めるだけで,自己効力感が高まり,課題への粘り強さが高まることを示した。研究1では,知能検査の課題を,低いコントラストで呈示する条件と高いコントラストで呈示する条件で比較したところ,低コントラスト条件に比べて高コントラスト条件では,課題に対する自己効力感が高いことが明らかになった。研究2では,知覚的流暢性の操作が行動に与える影響を調べるため,知能検査の課題に解決不可能課題を挿入し,どちらの条件で実験参加者が粘り強く取り組むかを比較した。その結果,高コントラスト条件の課題の方が,低コントラスト条件の課題よりも,より長く取り組まれることが明らかになった。
著者
池田 慎之介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2022 (Released:2022-11-24)

COVID-19の影響によりマスクを付ける機会が増加しているが,マスクを付けた表情からの感情推測の正確さの個人差についての検討はまだ不足している。本研究では,日本人(n = 123)を対象として,社交不安と社会的感受性がマスクを装着した表情からの感情認識の正確さに及ぼす影響について検討した。その結果,日本人においてはマスクを装着すると悲しみと恐れの感情が読み取りづらくなる一方で,喜び表情は影響を受けず,怒り表情の読み取りはむしろ正確になることが示された。また,マスクを付けていない表情からの感情推測が得意であると,マスクを付けた表情からも正確に感情を読み取ることができるが,そうした関係とは独立して,社会的感受性の高さがマスクを付けた表情からの感情推測の正確さを予測していた。本研究の結果から,マスクを付けた表情からの感情推測は文化によって異なる可能性,そして微妙な手がかりから他者の複雑な心的状態を推測できる人はマスクの影響を受けづらい可能性が示唆された。
著者
満田 隆 田中 晴哉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

他者が視線を向けた対象の好意度は高くなることが知られている。しかし近年はこの効果を否定する研究報告もある。他者視線を挟むように二つの対象を左右に並べて提示し、二者択一で選好を行わせると大きな効果が観測されることから、他者視線は好意度とは関わりなく選択にバイアスを生じさせる可能性がある。そこで本研究では、二肢強制選択課題における他者視線の影響の大きさを、選好課題、選嫌課題、客観的課題で比較した。実験の結果、選好課題だけで、視線方向の画像がチャンスレベルよりも有意に高く選択された(p =.014)。また、参加者が初めに視線方向の画像を見た割合は3つの課題でほぼ等しかったが(選好; .71, 選嫌; .70, 客観; .69)、初めに見た画像を選択した割合は選好課題のみチャンスレベルより有意に高かった(M=.57, p =.03)。選嫌課題では負のバイアスが見られなかったことから、他者視線が画像の好意度に与える影響には課題依存性があると考えられる。
著者
荒生 弘史 平尾 沙央里 諏訪園 秀吾 岩城 達也
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2012 (Released:2012-07-20)

相手の名前を呼ぶことは、相手の注意を引きつける働きを持つほか、感情的な意図を呼びかけに込めるなど、社会的関わりにおいて重要な役割を果たす。とりわけその感情伝達においては、伝達先(名前)の情報が同時に示されるという際立った特徴を持つ。本研究では、非注意の聴覚刺激として呈示される名前および同時に込められた感情に対する自動的反応について、事象関連電位を指標として検討した。実験参加者は、実験中、ビデオゲーム(音響効果なしのテトリス)に集中し、聴覚刺激は無視するよう教示された。事象関連電位のデータは、無視された名前刺激に対しても、200~300msの潜時において自他名の区別がなされていることを示した。さらにその後の潜時帯において、自己名において大きな感情効果が生じた。呼びかけにおける感情情報の独自性と、自他名の区別と感情の時系列処理に関して考察した。
著者
太田 直斗 望月 正哉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2022 (Released:2022-04-20)

動詞の意味が身体動作と関わる程度の身体関連性(relative embodiment:RE)は動詞処理に重要な役割を果たすことが知られる。本研究では,先行名詞の具象性が高RE動詞の処理にどのように影響するかを検討した。実験では名詞の具象性と動詞のREの高低から規定される単語ペアの種類と,名詞と動詞をつなげる格助詞の種類で文法性を操作した。参加者は先行する名詞句のあとに提示される単語が動詞なのか名詞なのか判断した。実験の結果,高具象性名詞と高RE動詞のペアは低具象性名詞と低RE動詞のペアより判断時間が短かったが,低具象性名詞と高RE動詞のペアでは同様の効果を示さなかった。また,単語ペアの種類と文法性の間に交互作用はなかった。動詞に注目する課題設計のため,先行名詞や文法性の影響がみられなかったと考えられる。
著者
三浦 大志 伊東 裕司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第9回大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2011 (Released:2011-10-02)

目撃者が犯人を識別する際、複数の容疑者の中から一人を選択するラインナップ手続きに比べ、単独の容疑者が犯人であるかを判断する単独面通し手続きは誤同定判断が増加すると言われているが、日本では単独面通し手続きを用いた実証研究はほとんどなされていない。本研究では、容疑者は真犯人 である、という思い込みを操作するために、難しい、または簡単な容疑者選定作業を経験した後で、ビデオを見て貰い、それから犯人識別を行って貰った。その結果、単独面通しよりラインナップの方が誤同定判断が多く見られた。またラインナップ群において、簡単な容疑者選定作業を経験した群の方が、難しい作業を経験した群より危険な誤同定判断が多い傾向が見られた。事前の経験が作り出した「写真群の中にきっと犯人はいるだろう」という思い込みが、ラインナップにおける比較判断を増加させ、その結果、誤同定を増加させることが示唆された。
著者
大貫 祐大郎 新垣 紀子 本田 秀仁 植田 一博
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.103, 2017 (Released:2017-10-16)

アンカリング効果とは、与えられた数値情報であるアンカーが、その後の数値推定に影響を与えることである。現在、アンカリング効果の発生原因は、アンカーによって異なる意味が活性化することだと考えられている。もし、異なる意味の活性化が原因であれば、アンカーとして数字を提示する必要はなく、異なる意味を活性化させるような刺激を提示すれば、アンカリング効果が観察されると予測される。本研究では、アンカーとして数字を提示する場合と、数字を提示せず、意味的情報のみを提示する場合とで、アンカリング効果の強さを比較した。その結果、数字を提示した場合に比べ、意味情報のみを提示した場合には、アンカリング効果の強さは微小であることが明らかになった。以上から、アンカリング効果において、数値情報が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
著者
長 雄希 國部 雅大
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.84, 2022 (Released:2022-11-24)

創造性は一般的に, 現在行っている課題から注意が逸れて自発的な思考を行うマインド ワンダリング(以下 MW)と関連があることが明らかになっているが, スポーツ領域におけ る両者の関係性は未だ明らかにされていない。また, サッカーにおいて, スポーツに特化 した創造性はポジションや競技経験との関連が深いことが報告されているが, これらの要 因と MW の関係性は不明である。そのため, 本研究ではサッカー経験者における創造性, MW 傾向の相違, ポジション及び競技経験の各要因の関係性を検討することを目的として, サッカーの競技経験(経験年数:15.6±3.3 年)を有する大学院生 18 名を対象にアンケート 調査, 質問紙調査及び創造性テストを実施した。その結果, 一般的な創造性と MW 傾向や 競技レベル, ポジションとの関係性は示されなかったが, ポジションの違いによって MW 傾向が異なる可能性は示唆された。本検討より, サッカーにおける各要因の関係性を検討 するには, サッカーに特化した創造性の課題や MW の尺度を利用することが望ましいと推 察された。
著者
小野 史典
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第17回大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2019 (Released:2019-10-28)

我々は2つの物体の衝突を観察した際,物体の動きだけでなく,どの物体が他の物体を動かしたか等の因果関係も知覚する。本研究では,こうした因果関係の知覚が時間知覚に与える影響を調べた。実験では,2つの標的刺激を短い時間間隔で異なる位置に瞬間呈示することで,見かけの運動が知覚されるようにした。さらに,標的刺激呈示の直前(もしくは直後)に,標的刺激に衝突する(もしくは標的刺激が衝突する)ように知覚される手がかり刺激を呈示した。その際,手がかり刺激の移動距離を変化させることで,知覚される衝突の激しさを操作した。その結果,物理的には同じ時間間隔であるにもかかわらず,手がかり刺激の移動距離が長い方が,短い時よりも標的刺激の時間間隔を短く知覚していた。この結果は,知覚された衝突の激しさによって,見かけの運動の知覚された時間が影響を受けることを示している。
著者
髙瀨 愛理 大山 潤爾
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-19, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
20

視覚呈示される単語の発音容易性は,その単語の記憶保持成績に影響することが報告されているが,発音容易性が単語の記銘や符号化といった認知過程から影響を及ぼすのか,その後の記憶保持過程にのみ影響するかは明らかになっていない.実験1では,先行研究の発音容易性で分類した発音容易語と発音困難語と,効果の比較のための非単語を用いて,単語呈示時間の認知閾を比較し,発音容易性の影響を検討した.実験2では,単語の読み上げ課題を行い,発音時間による発音容易性の分類を用いて,実験1と同様の分析を行った.その結果,実験1と2の両方で,発音容易語と発音困難語の間で単語呈示時間の認知閾に有意な差は見られなかった.本研究結果から,視覚呈示された単語の認知過程においては音韻的符号化を用いずに視覚的に単語が認知されることで発音容易性の影響を受けにくく,それ以降の記憶保持過程では音韻ループが利用されることで発音容易性の影響を受ける可能性が示唆された.本研究では,動的な情報における表示時間設計への応用可能性についても検討した.
著者
小林 慧 河西 哲子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-7, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
23

複数の他者とコミュニケーションを行うとき,特定の表情を示す人の概数を把握することは,状況を理解するうえで重要である.顔表情の数の推定に関する先行研究では,中立顔に比ベて怒り顔の計数の正答率は低く,数が少なく見積もられた(Baker, Rodzon, & Jordan, 2013).しかし同じ顔画像を複数提示した場合の単純計数課題であり,複数の同一人物が同じ表情を示すため通常は起こらない状況であった.またネガティブな表情として怒りのみが調べられているが,表情によって異なる役割があるだろう.本研究は,損失や喪失を伝達し,他者の共感や向社会的行動を引き出す役割がある悲しみ表情に着目し,それが計数に及ぼす影響を検討した.刺激として人物の異なる四つの顔画像を500 ms提示し,中立顔と笑顔,または中立顔と悲しみ顔の組み合わせから,表情顔を計数する選択的計数課題を行った.結果,ターゲット数が2個以上のとき,笑顔より悲しみ顔に対する正答率は低く,数の過小評価が生じた.このことは,刺激が比較的短時間提示されるとき,悲しみ顔が計数を妨害することを示唆する.
著者
光藤 宏行 中溝 幸夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2009 (Released:2009-12-18)

跳躍眼球運動(サッカード)による網膜像の移動によって,外界が動いて見えることはない。このことは,サッカード時に視野の安定を保持する機構が働くことを示唆している。近年,この視野安定が失われる新しい現象が報告された(光藤,2008,日本視覚学会夏季大会)。両眼で輝度差のある静止刺激をダイコプティックに呈示し,それを見ながらサッカードを行うと,一方の眼の像は静止して見えるがもう一方の眼の像はサッカードに伴って動いて知覚される。本研究では,この運動錯視がサッカードによる見えの抑制で説明できるかを検討するために,刺激呈示中に刺激の一部を短時間変化させ,その検出率を測定した。その結果,さまざまな刺激条件で類似したサッカード抑制がみられた。したがって,光藤(2008)が報告した運動錯視は従来から知られているサッカード抑制では説明できず,視野の安定にはいまだ知られていない視覚過程が寄与していることを示唆する。
著者
齋藤 岳人 井上 和哉 樋口 大樹 小林 哲生
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.4, 2022 (Released:2022-04-20)

本研究の目的は,記憶や流暢性現象(真実性効果など)において重要な要因と考えられている書体の読みやすさに書体への接触,使用経験が関与するのか明らかにすることである。そこで,大学生を対象として,無意味文字列に対する書体の読みやすさと接触頻度,使用頻度のWeb調査(7件法のリッカート法)を行い,これらの関係を検討した。書体ごとの評定値を平均し,相関係数を算出したところ,読みやすさと接触頻度で.69,読みやすさと使用頻度で.77の高い正の相関が有意であった。しかし,特徴的な形態の書体や,特定の種類の書体では接触,使用頻度に関係なく,読みやすさが判断されていた。この結果は,普段から目にすることが多く,使用する機会の多い書体が読みやすいと判断される一方で,形態的要因から読みやすさが判断される書体も存在することを示唆する。
著者
加藤 昂希 杉森 絵里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.32, 2017 (Released:2017-10-16)

Karremans,Claus,&Storoebe(2006)が行った実験によると,パソコン課題をしている被験者の画面に「LiptonIce」という文字を意識下では知覚できない程の短い時間繰り返し提示したところ,喉が渇いている被験者においてのみリプトンアイスティーを飲む人の割合が増えたという。この実験を受け,私は視覚的なサブリミナル効果だけでなく,聴覚的なサブリミナル効果でも同じ様に結果が出せるか否かを検証する事とした。具体的には,喉が渇いている被験者に,サブリミナル音声を忍ばせた音源を聞いてもらい,その後の選択行動に影響があるかどうかを検証した。結果として,サブリミナル効果は出なかったものの,音源をリラックスして聞いてもらった後に直感を頼りに選択してもらう場合において,サブリミナル効果が出やすくなる事が明らかになった。
著者
中村 紘子 眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

目的論とは,「水が存在するのは,地球で生命を生き残らせるためである」というように,自然現象が何らかの目的を持って存在するという考えである。目的論的信念は成人でもみられ (Kelemen & Rosset, 2009), 自然科学者であっても認知負荷がかかると目的論的信念を正しいと判断しやすくなるなど (Kelemen et al., 2013), 対象が目的や意図を持つという目的論的信念は直観的であり, 人のデフォルトの説明機序である可能性が指摘されている。本研究では日本人参加者を対象に,目的論的信念と認知的直観性・熟慮性との関係を検討した。その結果,認知負荷のある状態では目的論的信念を正しいと判断しやすく, また,認知的熟慮性は目的論的信念と負の傾向に関係にあることが明らかとなった。日本人においても,自然現象を理解する際に, 直観的過程では目的論的信念に従った解釈をしやすい可能性が示された。
著者
江口 愛実 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.70, 2017 (Released:2017-10-16)

単調な低音呈示の中で稀な高音とともに呈示された視覚刺激は弁別性が向上することが知られており (Vroomen & Gelder, 2000),このような弁別性の向上は視聴覚統合の発生を反映する。本研究では記憶課題と事象関連電位 (P3成分) を用いて,視聴覚統合が視覚刺激の記憶処理過程に及ぼす効果について検討した。参加者は,瞬時に切り替わる幾何学図形の記銘と,その後に再認が求められた。記銘時における図形の呈示は低音の聴覚刺激と同時に行われたが,稀に高音の聴覚刺激が呈示された。検討の結果,稀な高音とともに呈示された図形で記銘時のP3振幅が有意に増大し,再認率も向上した。これらの結果は,稀な聴覚刺激とともに呈示された視覚刺激に対して視聴覚統合が生じ,刺激の弁別性が向上したことで,記銘処理が促進されたことを示す。
著者
梅原 修一 松井 三枝 倉知 正佳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.125, 2007 (Released:2007-10-01)

健常者における被注察感ならびに妄想傾向が視線感知に及ぼす影響を検討した。実験は様々な視線の角度の顔写真に対して「被験者自身のこと」を見ていると感じるか、あるいは、「被験者のいる方」を見ていると感じるかの評定を求め、見ていると反応した頻度ならびに反応時間を指標とした。その結果、「被験者自身のこと」についての評定を求めた場合、被注察感の強い者が弱い者に比して反応時間が遅い結果となった。そして、「被験者のいる方」の評定の場合、妄想傾向の高い者が低い者に比して反応頻度が低く、被注察感の強い者が弱い者に比して反応が速かった。また、反応頻度に性差が認められ男性に比して女性のほうが頻度が低く、視線について鋭敏に判断することが考えられた。
著者
米田 英嗣 ヒル エリザベス
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2017 (Released:2017-10-16)

発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であるという神経発達障害であり(American Psychiatric Association, 2013)、自閉スペクトラム症との併発が多いことが知られている。本研究では、運動巧緻性と共感性が、時間産出の正確さを予測すると考え、発達性運動障害の成人21名、定型発達の成人21名を対象に実験を行った。時間産出課題の成績を目的変数とした重回帰分析を行った結果、運動巧緻性の低さと情動的共感の低さが時間産出の不正確さと関連することがわかった。また、自閉スペクトラム症得点を共変量とした共分散分析を行った結果、自閉症傾向が高いほど、時間産出が不正確であることがわかり、時間産出が不正確な原因は、発達性協調運動障害の特性自体よりも、併存する自閉スペクトラム症の特性が関連していることが明らかになった。
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。