著者
大和田 英子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ウィリアム・フォークナーは1920年代後半から1940年代前半まで映画脚本の執筆に携わっていたが、その動機は財政問題にあったため、この時期のシナリオ諸作品には、文化的・歴史的視点からのアプローチが欠けていた。しかし、フォークナーと同時期にハリウッドでシナリオ製作、あるいは、映画プロデュースに携わっていた、作家・映画監督などの動向を詳細に検討すると、当時のアメリカ政府による文化政策の影響が色濃く、フォークナーもその影響の範囲内での仕事を余儀なくされていた事実が浮かびあがる。本研究では、フォークナーがハリウッド時代、共に仕事をしたハワード・ホークス文書をユタ州ブリガム・ヤング大学図書館にて調査し、フォークナーとホークスのみならず、ガイ・エンドア、エイゼンシュテインらとの共通認識であったアメリカ海兵隊によるハイチ侵攻及びハイチからの撤退という歴史的事実が与えた映画界への影響の痕跡を探った。映画に携わった当時の映画人・作家は、表現のうえでも、思想のうえでも、アメリカの軍事行動に反発を示し、アメリカ政府がそれに対して検閲制度を強化していったが、そのような制限の中で、いかなる文学作品あるいは映画が生まれ、あるいは闇に葬られていったのかを検証した。ガイ・エンドアの『バブーク』はその好例でもあるが、エンドアとフォークナーが同時期にハリウッドで脚本制作に携わりつつ、全く異なるハイチ表象を選択した背景は、各々の思想的相違というよりは、ハイチに対するイメージの相違と考える。
著者
中島 成久
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1990年代、とりわけアジア経済危機を経て、国際的なミネラルウォーター資本がインドネシアの水道事業に介入した。インドネシアでは民営化の影響で、現在水が危機にさらされている。3年間の研究では、以下の3点について集中的な調査と、文献研究を行った。(1)ジャカルタ市水道公社の民営化委に至る経緯と民営化後の水道サービスへの影響の調査、および、ジャカルタ北部の低所得者居住地区での地盤沈下と海水の侵入、水道サービスの劣化の現状(2)西ジャワ州スカブミ県でのミネラルウォータービジネスの実態とその住民生活への影響の実態調査(3)改革時代の西スマトラ州では共有地返還闘争が頻発しているが、良質な水源をもつ村では地方政府の水道事業による水源利用への補償を求める動きが活発化したので、その実態調査。また、地方自治の時代に権限を拡大した県知事による新たな水道事業で、「水戦争」が発生したことの経緯を調査した。水という公共性の非常に高い資源が民営化されると状況が何をもたらすのかという問題に大きな示唆を与えることができる成果を得られた。
著者
比嘉 実
出版者
法政大学
雑誌
沖縄文化研究 (ISSN:13494015)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.97-142, 1975-10-20
著者
桂 利行 斎藤 毅 斎藤 毅 寺杣 友秀 向井 茂 金銅 誠之 中村 郁 石井 志保子 石田 正典 G. van der Geer
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

代数多様体は、いくつかの多項式の共通零点として定義される図形であり、数学の基本的な研究対象である。本研究では、標数がp>0の世界で、代数多様体を研究し、a-数、b-数、h-数という不変量を定義して、それらの間の関係を明らかにし、応用を与えた。また、標準束が自明であるK3曲面という代数多様体を標数2、3で考察し、超特殊と言われる場合に、その上の非特異有理曲線の配置の様子を解明し、格子の理論と関係を明らかにした。
著者
金藤 正直
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

企業が従業員の健康保持・増進に関与し、健康保険料の増加や疾患リスク上昇に伴う生産性の低下を防ぐための健康経営について、経済産業省は重要な経営課題の1つと位置づけている。しかし、従業員の職務上のストレス削減や能力向上が、企業全体の離職率低下、医療費負担抑制、生産性向上をもたらし、さらには業績向上も実現させる健康経営の可能性を定量的に分析し、評価するような研究は、国内外においても十分に進んでいるとは言い難い。そこで、本研究では、従業員の健康リスク削減により、企業の業績向上を実現させる健康経営システムに資する会計モデルの構築を目指す。
著者
大塚 紀弘
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中世日本に中国などの外国から渡来した人々、すなわち日本中世の渡来人の存在形態について考察し、それに関する歴史像を提示する。主に平安時代末期から南北朝時代にかけての中世前期(12世紀から14世紀)に焦点を絞り、渡来人に関係する史資料を網羅的に収集・整理し、渡来の経緯や活動の実態について、時系列に沿って総合的に考察する。特に、日本全国の寺院などに伝来した、渡来人が日本で書写・刊行に関わった典籍を研究対象の中心とする。これらを順次調査・撮影し、書写奥書や刊記に見える年代、出身地、書写地および筆跡に基づいて、渡来人の人物像を解明する。

1 0 0 0 OA 民法要義

著者
梅謙次郎 著
出版者
法政大学
巻号頁・発行日
vol.巻之3 債権編 31版, 1903
著者
菱田 雅晴 天児 慧 高原 明生 厳 善平 唐 亮 Wank David 朱 建栄 大島 一二 諏訪 一幸 趙 宏偉 加茂 具樹 小嶋 華津子 福田 円 油本 真理 南 裕子 中岡 まり 岡田 実 鈴木 隆 呉 茂松 毛里 和子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、パラドキシカルな中国の腐敗現象を対象として、1)刺激・行為間の誘引/制約に関するインセンティブ・システムおよび市場体制・行政機構の未発現情況に焦点をあてた制度論に依る実態論分析と2)腐敗学構築のための一般分析ツール開発とその検証・適用の両者から構成される。本年度にあっては、既往年度と同様に、研究分担者、連携研究者および研究協力者等から構成される研究組織(=廉政研究会)を法政大学中国基層政治研究所内に設置し、研究計画の全体調整および班別研究組織体制の再確認を行った上で、各種腐敗現象のビジネス領域との関わりに焦点をあてることを本年度課題の核として設定し、各国・地域における経済腐敗、不正ビジネスの構造の検討を行なうこととした。併せて、中国的腐敗の具体的個別事案の事例蒐集を進めると同時に政治社会学的手法に基づく腐敗関知度/寛容度に関する広範なアンケート調査を実施すべく調査票の設計等準備作業を本格化させた。また、中国の腐敗現象に関わる事案、データを中国内外から広く蒐集し、事例研究を進めると共に党・国家による反腐敗のさまざまな法律、制度規定類を併せ蒐集分類することで、公権力の行使に関わる公務員、党幹部らの内部昇任、賞罰制度、登用制度、各級党組織間の関係、更には、“党政関係”(党と行政機関との関係)、“党企関係”(党政機関と市場諸組織・アクター間の関係)等々のあらゆる組織内規定、規則、ルールを検討した。これらの作業を通じ、腐敗現象そのものをどのように把捉すべきか、腐敗研究の原点を再確認することができた。
著者
土山 希美枝 南島 和久 高野 恵亮
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、2015年5月に85歳で逝去した政治学者・松下圭一の政治理論が社会科学と社会に与えた影響を可視化し、包括的に把握することを目的とする。松下の政治理論は社会科学にも社会にも大きな影響を与えた。地方自治、行政学、政治学の分野での活動は、革新自治体、2000年地方分権改革の理論的支柱となった。松下は、丸山眞男と並び「その理論が社会を動かした」研究者だが、影響が広範なために分野ごと時代ごとで分断され、体系的・包括的な把握や評価がなされていない。本研究で、関係者のヒアリングや資料を用い、松下圭一の「社会科学と社会に与えた影響」を、高度成長期以降の現代史的視角とともに進め、明らかにしていく。
著者
鈴村 裕輔
出版者
法政大学
巻号頁・発行日
2008

博士論文
著者
細川 亀市
出版者
法政大学
巻号頁・発行日
1945

博士論文
著者
寺杣 友秀 松本 圭司 志甫 淳 ガイサ トーマス 齋藤 秀司 木村 健一郎 花村 昌樹
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

超幾何関数に代表される特殊関数論を幾何学的な視点から見直し、それによってこれまで具体的に与えられていなかった対象の表示をあたえ理解を深める。とくに代数多様体の周期に関係したものを扱い、超幾何関数だけではなく、多重対数関数、多重ゼータ値、楕円曲線と関連する特殊関数の関係を明らかにする。その手法としてホモトピー修正の理論や曲線の対称積などがありこれらを用いて代数的サイクルを構成することが考えられる。また、多重ゼータ値の重さフィルトレーションに関するより詳しい解析を行った。また混合テイト・モチーフに関しては基礎理論の整備がまだまだ不完全なところもあるので、厳密な構成法などを確立する。
著者
山中 玲子 MCGAUGHEY-SLANE HANNA
出版者
法政大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-09-28

This project's goal is a digital text corpus of Zeami's critical writings, with a focus on his first and most famous text Fushikaden, and their analysis using computational methods. The corpus will include not only transcriptions of historical manuscripts to digitally model their genealogy but also Yoshida Togo's first print publication and Nose Asaji's first annotated edition for an analysis of Zeami's modern reception. A critical evaluation of the results achieved during this fellowship will inform further consideration for building a digital scholarly edition of Fushikaden.
著者
山本 健兒 熊谷 圭知 栗原 尚子 竹内 啓一 寺阪 昭信 山田 晴通
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

欧州の大都市自治体はEUROCITIESを通じてEUに都市政策を推進させる行動や、相互の経験交流を進めてきた。これを受けて、EUも当初、文化遺産の保全や環境問題に焦点をあてる都市政策を、社会的排除、失業、移民の統合、経済的活力などを重視する都市政策を1990年代半ば以降推進している。EU主要都市によるグローバリゼーションとEU統合への文化的対応に関して2つの論点が浮かび上がる。第1は移民マイノリティの生活実態とこれに対するホスト社会の対応、第2は都市の建造環境の整備保全という論点である。第1については、オランダへのモルッカ移民の統合、スペインへの移民のラテンアメリカ化、同じドイツ都市といえどもベルリンとミュンヘンでは移民比率の高い街区の様相に大きな違いがあることが明らかとなった。移民とホスト社会との間で対立が激しいというわけではなく、移民たちはドイツ都市を故郷と認識する傾向にある。しかし、移民は失業などでより厳しい立場にある。また中国を含む世界各地からの移民がパリ、ローマ、バルセロナでも可視的存在となっている。第2の論点について、イタリアでは都市政府の政権交代が建造環境の変化に大きく影響すること、フランスでは文化遺産としての建造物の保全に中央政府の力がより大きく働くことが判明した。ロンドンの影におかれやすいイギリスのその他の主要都市は、欧州文化首都として指定を受けることによって大陸部のEU主要都市との競争に対応しようしている。2つの論点のいずれに主眼をおこうとも、都市住民あるいは訪問外国人に対して都市の物理的な構成は大きな意味を持つ。欧州各国主要都市の動向を総括するならば、外的圧力に対する文化的対応は政治的対応とならざるを得ず、中央政府の力が強いフランスと地方政府の力が強いドイツを両極として、各都市を位置づけうる。その際に鍵をなすのは、参加と自治のありようである。
著者
松本 洋子
出版者
法政大学
雑誌
日本文學誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.13-34, 1987-07-01