著者
城本 修 森 一功
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉短期大学紀要 (ISSN:13420070)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.111-118, 1996-03

The purpose of this study is to clarify the mechanism of the adduction of ventricular folds during phonation. We assessed the type and degree of adduction of ventricular folds during phonation by fiber-stroboscopy in 277 cases of unilateral laryngeal nerve paralysis. In 169 cases of the 277 assessed, adduction of the ventricular folds occurred during phonation (61%), which was produced by the unaffected ventricular fold. Five cases (2%) exhibited adduction of the affected ventricular fold. There was no sex difference observed in the cases in which adduction of ventricular folds occured during phonation. As compared to nonadduction, the incidence of marked hyperadduction significantly increased with age in the later part of life. As for the maximum phonation time (MPT), the mean flow rate (MFR), and the SPL-range during the vocal function test, cases of marked hyperadduction of the ventricular folds showed significant reduction as compared with these with nonadduction. Regarding the pitch perturbation quotient (PPQ), the amplitude perturbation quotient (APQ) and the normalized noise energy (NNE) determined during the acoustic analysis, cases of marked hyperadduction of the ventricular folds showed significant reduction as compared with those of nonadduction. In many cases, reduction of the affected vocal fold function was observed in cases in which the fixed position of the vocal fold on the affected side was intermediate. In other words, the adduction of the ventricular folds was regarded as a compensatory reaction to glottal insufficiency. In 206 cases in which a silicon injection was performed, we compared the degree of adduction of the ventricular fold before and after the silicon injection. It is notable that following a silicon injection the degree of adduction was reduced in 106 (84%) out of the 126 cases in which adduction of ventricular folds was observed prior to injection.国立情報学研究所で電子化
著者
野村 幸子 河上 智香 長谷 典子 藤原 千恵子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.169-180, 2007-03
被引用文献数
2

本研究の目的は,入学したばかりで小児看護学受講前の学生は,子どもとの接触体験をどの程度持っているのか,またどのような子どもイメージを持っているのか,子どもとの接触体験は,イメージの形成にどのように影響するのかを明らかにすることであった。対象者は,研究の目的に同意が得られた2大学の1年生143名である。結果は,接触体験で最も多い項目は,「赤ちゃんを抱く」や「子どもとの遊び相手」で世話に関する体験は少なかった。接触体験やきょうだい数が多いほど,子どもの『行動特性』からくるイメージは肯定的となっていた。他のイメージの側面には影響がみられなかった。また接触体験の多さは,子どもへの関心とも関連がなかった。むしろ接触体験が多いと苦手意識になることも示唆された。学生は,子どもへの関心は高いが,そのイメージは,子どもとの浅い関わりや外観から得られるイメージであることがわかった。
著者
福場 良之 辻 敏夫 林 直亨 三浦 朗 山岡 雅子
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

昼食後の眠気による作業効率低下対策として知られている短時間仮眠が,その後の運動パフォーマンスやそれを支える基礎的な生理機能に与える効果について,包括的かつ実践的な検討を行った。結果として,1)昼食後に睡眠ステージ2までの浅い短時間仮眠(napと呼ばれ,10-20分程度)をとると,覚醒したまま安静で過ごすよりも,スポーツ競技時に必要と想定される脳の情報処理能力や視力に正の効果がありそうであること,2)昼食後に睡眠ステージ4まで含む1時間程度のより深い仮眠をとると,安静やnapをとる過ごし方よりも,無酸素性最大発揮パワーに正の効果がありそうであること,の2点が示唆された。
著者
吉畑 博代 本多 留美 沖田 啓子 綿森 淑子
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉短期大学紀要 (ISSN:13420070)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.129-135, 1999-03

音声言語の表出が困難な重度失語症者のために, コンピュータ上で視覚シンボルを操作して文を伝達する視覚的コミュニケーションシステムを作成した。このシステムには検索を行うためのボタンとして, 動作主を表す「人々」ボタンと, 名詞や動詞を表す「名詞」, 「動詞」ボタンを設置し, 「名詞」中のシンボルはC-VIC(Computerized Visual Communication System, Steeleら;1989など)の考えを参考に, カテゴリーごとに階層構造をなすよう構成した。文構成は各ボタンを開いて適切なシンボルを選択し, コンピュータ画面中央に配置した文構成場所に順序よく配列する方法で行うことにした。その結果, 本システムは(1)重度失語症者の文構成の学習手段, (2)AAC(Augmentative & Alternative Communication)として利用することが可能になった。今後本システムを重度失語症者に適用して, 学習手段ならびにAACとしての有効性について検討する。
著者
西上 忠臣 近藤 敏 北川 美智子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, 2007-03

我々は,広島県三原市内の町内会と連携し高齢者の健康づくりを目的とした作業療法プログラムを行ってきたので効果と本学の連携について報告する。プログラムの参加者は30名(73.2±6.3歳,男性18名,女性12名),介入期間は平成17年7月28日〜12月8日,頻度は2週間に1回,全11回実施した。効果判定には,作業遂行能力を評価するカナダ作業遂行測定(COPM ; Canadian Occupational Performance Measure)と主観的健康観を測定するSF-36を用いた。プログラム終了後に,COPMの遂行度が有意に高く(t=-2.21,p=0.03),SF-36では社会生活機能が有意に高くなっていた(t=-0.61,p=0.02)。今回の作業療法プログラムのノウハウを活かし,地域に還元するため,本年度は三原キャンパス地域連携センターの事業として,学生のボランティアを募り,三原地域連携推進協議会,三原市社会福祉協議会との連携のもとで地域の「いきいきサロン」を支援している。学生という循環型の資源を生かして,地域と本学との交流が学生により行われ,まち作りの役割を担っていくシステム作りをすすめている。
著者
岸田 典子 小田 光子
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島大学人間文化学部紀要 (ISSN:13467816)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-45, 2006-03-03
被引用文献数
2

小児生活習慣病予備軍のスクリーニング手法を開発することを目的に、学童の保護者1,619人を対象とした生活習慣実態調査及び肥満児等107人を対象とした健康教室を行った。その結果、肥満度と動脈硬化初期病変の血液指標との関連が認められたことから、肥満度と関連があった好ましくない生活習慣等13項目(不健康、BMI、家族の肥満、睡眠時間、就寝時刻、戸外遊び、保護者の悩みの食べすぎ・早食べ・噛み方・間食夜食・テレビをみる時間、多脂肪食品や野菜の摂取)をスクリーニング項目とした。更に、先行研究における肥満度との関連が認められている3項目(ジュース、甘い及び塩辛いおやつの摂取)を追加し、計16項目について有意水準をもとに傾斜配点を行った。更に、生活リズム及び排便の2項目は、肥満度との関連に関する先行研究はなかったが生活指導上重要な項目であると考え、結果的には未配点として追加し、最終的なスクリーニング票は18項目とした。18項目を用い、スクリーニング得点と血液検査にもとづく異常者数が一致した得点によって、傾斜配点したスクリーニング票を完成した。今後、スクリーニング票の活用によって、検診や健康教育の必要な子ども達を選択するための負担の軽減や生活習慣病に関する経費を節減できることが示唆された。
著者
住居 広士 江原 勝幸
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉短期大学紀要 (ISSN:13420070)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.57-63, 1998-03

我々は, 要介護高齢者における介護支援量を示す介護度と日常生活自立度との関係を検討した。介護度は, 介護業務における関わり度・困難度・必要度の介護評価で数量化して設定した。それと厚生省の障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)と痴呆性老人の日常生活自立度(痴呆度と略す)との関係を検討した。1995年12月の西日本における配票調査で, 要介護高齢者1208名を分析した。寝たきり度が増悪すると介護度も上昇していた。寝たきり度B-2で高値となり, C-1で若干低値となって, C-2でさらにB-2より高値となる二相性の傾向を示した。介護度と寝たきり度との相関係数は0.245で若干の正の相関を認めた。介護度と痴呆度では, 痴呆度が高くなるに従って次第に介護度も高くなる傾向を認めた。介護度と痴呆度との相関係数は, 0.277で若干の正の相関を認めた。介護度とBarthel Indexは-0.254,老研式活動能力指標とは-0.240と若干の負の相関関係を認めた。寝たきり度と痴呆度等の心身の障害により, 相加的には介護度が上昇するも, その相関関係は低かった。日常生活自立度は, 心身の障害度を捉えてだけでは, 個々の生活での介護支援量は把握できない。介護保険制度において, 障害モデルによる日常生活自立度や要介護度(要介護状態区分等)だけでは介護支援量を判定できないので, 介護モデルによる介護度を新たに構築する必要がある。
著者
大知 徳子 本多 博之 秋山 伸隆
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、宮島に伝来する文書のうち、「野坂文書」「大願寺文書」等の近世文書を整理し、未整理の文書の編年目録を作成・分析し、主要な文書を活字化することにより、近世における厳島神社及び大願寺の継承と変質を明らかにしようとするものである。
著者
黒田 寿美恵 山内 栄子 松井 美由紀 安田 千香 中垣 和子 菊内 由貴 澤岡 美咲 滝口 里美
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題では,自宅や居宅系施設など,住み慣れた地域で暮らすがん患者がより充実したエンドオブライフを送り,その人らしく生き抜くことが可能となることを目指すための,外来看護師と訪問看護師の連携モデルを構築する。具体的には,訪問看護を受けながら地域で暮らしているがん患者の療養生活を支えるうえでの看護実践内容や連携の実際,連携上の課題を明示する基礎研究と文献調査とを基盤としてモデルを開発し,訪問看護を受けながら自宅や居宅系施設など,地域で暮らすがん患者への看護実践に適用して妥当性を評価し,必要な修正を行うことでより現実に適合する看護連携モデルに発展させる。
著者
内藤 佳奈子 坂本 節子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

人工合成培地を用いた無菌培養実験により、赤潮原因藻類の増殖における鉄利用能の検討を行った。その結果、ノリ色落ち原因珪藻Eucampia zodiacusと有害渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesの利用鉄種と有機配位子の産生能を明らかにした。また、主要な赤潮藻8種の最小細胞内鉄含量を求め、現場海域における増殖可能な細胞密度と他種との競合における優位性を評価した。瀬戸内海沿岸域の調査研究では、有害赤潮藻類の細胞密度と溶存鉄濃度との間の相関性を示すことができた。
著者
島谷 康司 島 圭介
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

姿勢制御戦略では,身体状況に応じて視覚・体性感覚・前庭系の情報をどのように重みづけをするかが重要となります。 著者らはヘリウムガス入り風船を把持させると歩行中の乳児の身体動揺が減少することを報告しました。本研究では,「浮遊する風船を把持することによって被験者の立位姿勢制御戦略がどのような影響を受けるのか」を目的に,指先感覚情報の“揺らぎ”解析をし,風船把持歩行の効果の謎に迫りました。結果,風船との物理的な接続によって指先への体性感覚情報が変化(感覚情報の再重みづけ)し,風船を把持することによって姿勢制御システムの複雑性が増し,身体動揺を低減させることに有用であることが明らかとなった。
著者
和田 崇 荒井 良雄 箸本 健二 山田 晴通 原 真志 山本 健太 中村 努
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,日本の諸地域における通信インフラを活用した情報生成・流通・活用の実態を,いくつかの事例分析を通じて解明した。まず,通信インフラ整備の過程を地方行政再編とデジタル・デバイドの2つの観点から把握・分析した。そのうえで,医療と育児,人材育成の3分野におけるインターネットを活用した地域振興の取組みを,関係者間の合意形成と連携・協力,サイバースペースとリアルスペースの関係などに着目して分析した。さらに,地方におけるアニメーションや映画の制作,コンテンツを活用した地域振興の課題を指摘し,今後の展開可能性を検討した。
著者
堀尾 茂子
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島女子大学生活科学部紀要 (ISSN:13467816)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-32, 2004-12-22

現在、高齢社会の中で、高齢者が自立しで快適な衣生活を送るためには、多くの問題を改善する必要がある。福祉用機器具やバリアフリー住宅などの研究開発はかなり進んでいるが、既製品の寝衣にはサイズが少なく、袖丈やズボン丈は長く、股上は短い、ポケットが付いていないなどの多くの苦情が寄せられている。そこで本研究では、寝衣についての市場調査や、アンケート調査を行い、高齢女性が望む3着のパジャマ製作を試みる。さらに、苦情の多い項目を配慮に入れた1着のパジャマを製作する。それらに、素材が異なり、留め具の違う既製のパジャマ2着を加え、計6着の視覚・着装評価を行った。その結果、次の事が明らかとなった。1.素材は綿で、色は淡く花柄が適する。2.上衣は、前明きのボタン付きで衿なし、身頃はゆったりで後丈を長くする。ラグランスリーブのゴム入りで袖丈は短めにする。ポケットは左右に付ける。3.下衣は、股下丈を短くし、裾口はゴム入りで、ポケット口などで前後の見分けが出来る工夫をすると良い。4.衿ぐりは、既製品は窮屈なため、くり落とす必要がある。以上のことから、僅かの長さや幅の違いが着心地を左右することが判明した。今後は、高齢者体型を特徴別に捉えたパターンをサイズ別に提供する必要があり、質の高い寝衣の開発が望まれる。本研究にご協力いただきました高齢者の皆様、ならびに吉田倫子さん、稲場亜希子さん、成光未知子さんに深謝申し上げます。
著者
佐伯 惠子
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島大学人間文化学部紀要 (ISSN:13467816)
巻号頁・発行日
no.6, pp.143-156[含 英語文要旨], 2011

Resurrection Blues is Arthur Miller's penultimate play. It is an extreme satirical farce about modern politics, faith and contemporary media-obsessed society. The story is set in an unnamed Latin American country that is a so-called banana republic. A Christ-like man was arrested. He is said to be able to perform miracles and has achieved popularity among the impoverished citizens. The military dictator of the country, Felix, has sentenced him to be crucified and comes up with an idea of selling the rights to broadcast the crucifixion to an American television production team, which would offer big money to him and his country to help the national economy. There are many conflicts among people who urge the crucifixion or try to prevent it. At the end of the play, the Christ-like man disappears without giving any message. Critics have criticized this playas feeble, week. lumbering, rambling or unfinished. Certainly we needn't compare this play with Death of the Salesman or The Crucible. But is this "the great man's Swan song"? Even if it is, this swan is angry against the commercialism of opportunistic media, the venality of politicians, a media-obsessed society, blood-thirsty common people, obsessive religion, and art which takes people's eyes away from the actual reality. This is an imaginary story of an imaginary country, but by writing this play Miller is directing his attention to actual societies, especially the U.S.A. In fact, his characters say, for example, "after they kicked Nixon out of the White House he had one of the biggest funerals since Abraham Lincoln. … nobody clearly remembers anything" or "it's now a quite certain the attack [by a Vietnamese gunboat in the Gulf of Tonkin] never happened. This was a fiction, a poem," or "people are shot on television every ten minutes; bang-bang, and they go down like dolls, it's meaningless." Resurrection Blues makes us recognize our actual worlds - for example, the American media that accompanied by bids to carry the execution of the Oklahoma bomber, Timothy James McVeigh live on the internet, or countries rushing to war under false pretenses after 9/11, or common people concerned about money more than a life or moral. It seems obvious that Miller was conscious of The Crucible when writing Resurrection Blues. Both plays center on religious folks and crushing governors, an injudicious witch-hunt and the planned execution of a seemingly God-like prisoner, as one critic writes. Furthermore, Miller is writing Resurrection Blues in the context of his contemporary worlds, as he was writing The Crucible in the face of McCarthyism. This play gives us a question, "what would happen if Christ were to appear in the world today?" After the Christ-like man disappeared without showing himself and giving any message, a character, who has professed to be his disciple, says, "the actual improvements would just have to be up to us." This satirical farce is Miller's rebuke to the contemporary society and a serious warning to us all. He wants all of us bear responsibility for our future.
著者
山岡 雅子
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,運動後のグルコースあるいはフルクトース溶液摂取が中心ならびに末梢循環応答に及ぼす影響について検討した.運動後低血圧時にグルコースを摂取すると,消化管の血管拡張に対して,体肢の血管応答をすばやく変化させ,さらなる血圧低下を防ぐよう調節されることがわかった.安静時にフルクトース溶液を摂取すると,血圧は上昇するが,運動後にフルクトース溶液を摂取すると,運動由来の体肢での血管拡張持続によって,血圧上昇の程度が抑えられることがわかった.これら両糖質溶液摂取時の血圧や局所の血管応答の違いに,両糖質溶液の胃から十二指腸への排出速度(胃内容排出)は関与していない可能性が示唆された.
著者
武藤 徳男
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ヒトモデルとなるビタミンC生合成不能ラット(ODS ラット)を用いて、脳内ビタミンC動態と神経細胞に対する作用を解析した。加齢・老化・酸化ストレス負荷を反映するビタミンC半欠乏群(潜在的ビタミンC欠乏群)では、血液や臓器中のビタミンC濃度は顕著に減少したが、脳内のビタミンC濃度は減少傾向のみであった。このことから脳内におけるビタミンC保持機構の存在が示唆された。またビタミンCは未分化神経細胞の神経分化を有意に促進し、また酸化障害に対しても防御効果を示した。以上のことから、ビタミンCは脳内に特異的に保持され、神経細胞の維持・再生に寄与する必須栄養成分であることが実証された。
著者
小川 正巳 猪谷 富雄
出版者
県立広島大学
雑誌
生命環境学術誌 (ISSN:1883650X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.57-71, 2011-03

わが国の陸稲(おかぼ/りくとう) の文化史の考察の一つとして陸稲という作物名の別名(地方名/方言/俗語) について文献学的調査を行った。今日の陸稲という呼称に対して、中世以降多くの別名が全国各地で使用されてきた。江戸時代の陸稲の主な呼称には3種類あり、関東中心のオカボ系、九州中心のノイネ系そして北陸地方をはじめ全国的にハタケイネ系があった。近年に採録された陸稲の地方名(方言) には野稲・畑稲(畠稲)・岡穂・岡稲・旱稲・イギリス・けしね・とうぼし・はいもんなど多数の名称が確認できた。それらの地方名の背景には当該地の歴史などが深く刻み込まれているものがあった。
著者
岡村 雅仁 西脇 廣治
出版者
県立広島大学
雑誌
県立広島大学経営情報学部論集 (ISSN:18827985)
巻号頁・発行日
no.2, pp.51-63, 2010-02

平成18年度の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)として「経営情報実践的総合キャリア教育の推進」が文部科学省により採択された。このプログラムは,35人の学生が参加して平成19年度で終了したが,平成20年度以降は,フォローアップ事業として継続している。平成20年度は,前期18人,後期9人の計27人の学生がインターンシップ受入先15社で約2週間の実習を行った。学生,受入先責任者,教員の三者が自己点検シートを使ってインターンシップ派遣前(事前評価),派遣後(事後評価)の2回,情報スキル,規律性,協調性,積極性,プロセス貢献を合む成果など15評価項目についてのアンケートを実施している。本論文は,アンケート結果をまとめたものである。その概要は,①全体として事前評価よりも事後評価の点数が高い,②学生自身の評価をみると,学生27人のうち15名が目標とのギャップを解消する方向に進んでいる,③受入先による評価をみると,目標とのギャップが計算できた学生20人のうち19人が目標とのギャップを解消する方向に進み,④教員による評価では,学生27人のうち26人が目標とのギャップを解消する方向に進み,目標達成に近づいた。アンケートでは事前評価と事後評価の点数が同点のため目標達成度がゼロになるケースや未回答の評価項目がみられた。特に,平成20年度前期は,受入先13社のうち新規受入先が半分強の7社と多いために,回答率が低くなったものと思われる。また,実習内容の多様化により,平成20年度前期の「業務プロセスのモデリングの意義,目的」,「業務プロセスの改善策の提案,またはモデル化」,「成果」の3項目の回答率は,他の評価項目と比べて低くなったと考えられる。同じ評価項目を使用した平成20年度後期の回答率が100%に急回復しているとはいえ,実習内容の多様化に応じて質問内容を見直す必要がある。
著者
勝見 吉彰
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.129-136, 2014-03

ステップファミリーでの生活経験のある青年期女性2名との面接結果を提示し,ステップファミリーにおける親子関係のあり方について,子どもの視点からの検討を行った。提示された2事例では,再婚により新しい関係が始まった時点から,継親との関係は対照的に展開していった。1例目は継父との関係を築くことには消極的で,継父を" 単なる同居人" としか見ていないこと,2例目では継父との関係は初めから肯定的であり,自分の親として認知していることが明らかとなった。いずれの事例においても別れた実親への思いが整理されないままであり,子どもの心の成長という点から,別れた実親をめぐる体験についても家族間で整理される必要性が検討された。親の再婚後に生ずる同居する親との関係の変化に注目することの重要性が指摘された。資料