著者
那須野 三津子
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

外国において特殊教育を必要とする児童生徒の教育の機会均等化を促進するために求められる実現性のある解決策や対策を提言するため、今年度は以下の研究を行った。障害児童生徒の教育機会均等化を外国において実行可能とさせる条件を総合的に考察するために、いち早く1982年より障害のある児童生徒を受けいれ、その後も障害の種別や程度の異なる児童生徒の受け入れ体制を展開してきたシンガポール日本人学校を取りあげた。具体的には11月24日から12月5日の間にシンガポール日本人学校(クレメンティ校小学部・チャンギ校小学部・中学部)を訪問し、管理職及び養護教育担当者に養護教育の現状と課題について聞き取り調査を行った。また、プライバシーの保護を厳守することを条件に、養護教育展開の経緯を示す資料の閲覧を行った。さらに、12月から2月の間に、養護教育展開過程の経緯に記録されていない初期の時期について、当時の保護者および教育関係者を対象に聞き取り調査を実施した。その際、氏名の公表の可否について尋ねた。特殊教育のはじまりは20年ほど前に遡るため、当時の特殊教育関係者の記憶があいまいな点もあった。そのため、聞き取り調査においては、まず文書で残された記録の有無を尋ねた。(現在、執筆中)また、アメリカ合衆国と国内において他言語環境下にある障害児童生徒については、前年度の調査結果を基に、分析、比較、検討を行っている。
著者
名川 勝
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

一般には後見申立にかかる提出書類のうち基礎資料、財産資料、医学所見にかかる資料以外で、本人に関する社会的、心理的情報などをソーシャル・レポートと呼んでいるようだが、本研究では申立添付書類以外でも本人の後見事務に関して取り扱われる資料を含めた。そのうえで研究動向の調査ならびに実務の実際に関する調査を行った。各地の家庭裁判所における書式は所定の申立書類様式に身上監護に関する情報もあらかじめ求めるようになってきており、これをソーシャル・レポートに含めることもできるかもしれないが、十分とは言えないとの指摘が得られた。この場合、ソーシャル・レポートは本人のより正確な審判を得るため、とりわけ類型判断に有用な情報であるとの意見があった。また第三者後見の場合に候補者となるべきかの情報になり得るとの意見もあった。しかしながら、そのような詳細な情報収集を申請時書類に含めることは、却って申請を困難にするとの指摘も同時に得られている。ただしいずれの回答者についても申請前あるいは申請後によりよい後見事務を執り行うためにこれらソーシャル・レポートに関連する情報は必要との点では異論は無かった。ソーシャル・レポートに関わる情報は生活支援との関連が強いことから、今後はさらに審判前後それぞれの取り組みと他機関も含めた連携のあり方からよりよい情報のあり方を検討する。
著者
鍋倉 賢治
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.74-77, 2000-11

昼休みや夕刻の学内ループに、ジョギングやウォーキングをする人を多く見かけます。健康・体力を維持するため?仕事の息抜き?気晴らし?ダイエット?それともマラソンで記録を更新するため? 学内関係者にとって、ループは手頃なジョギング(ジョグ)コースといえるでしょう。 ...
著者
工藤 寿美 堀 哲夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

我々はこれまでに鎖肛ブタ家系を構築し責任遺伝子の主座が15番染色体上にありGLI2遺伝子を候補遺伝子として同定した。本研究の目的はSNPをマーカーとしてGLI2遺伝子における連鎖解析を行い鎖肛発症に関連する領域を特定することである。DNAサンプル調整を行い遺伝子相同性を利用してGLI2遺伝子領域のSNPを同定した。ブタゲノム計画の進行により高速かつ大量のSNPタイピングを行う予定である。
著者
村上 正子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

環境国際紛争において民事司法へのアクセスを確保するためには、環境紛争の特殊性を考慮し、紛争の性質・内容、紛争当事者の多様性にあわせて救済の方法(紛争処理方法)も被害者のニーズに合わせて多様化すべきであると同時に、裁判所への提訴の確保のみならず、損害賠償も統一的に確保するためには、特定の分野で条約による統一ルールを作成する必要があり、それを国内法で受け入れられるだけの制度(環境団体訴訟も含む)の整備が不可欠である。
著者
荒木 正純 吉原 ゆかり 南 隆太
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

・平成15年度予算で、荒木編集の論文集『<翻訳>の圏域:文化・植民地・アイデンティティ』(2004年2月刊)を出版し、全国および海外の研究施設に送付し好評を博した。また、雑誌『英語青年』(研究社出版)でリレー連載の形で、東アジア圏の研究者に自身の国で英米文学がどのように受容され、教育・研究がなされているかについて執筆してもらった。・平成16年度は、この2つの成果を受けて、3月19日・20日・21日の3日にわたり「国際シンポジウム」を開催した。発表はすべて英語で行った。・このシンポジウムを通じて、英語を第一言語としているマレーシアやシンガポール、インド、そして英語を第一外国語としている日本、韓国、台湾、トルコでは、事情が異なることがわかった。英語教育の場合でも、前者では国語教育の一環であり、後者では外国語教育となる。世界シェイクスピア学会副会長のマレシアのリム氏やインドのトリヴェディ氏からは、このシンポジウムが世界で最初の試みであり、今後こうした会議を継続的に行いたいという評価と提言があり、この会の発表をまず一年以内に論集の形で出版し、その後、研究誌を発刊したいという統一見解ができた。つまり、ポスト・コロニアル的状況下で、「アジアの英語文学」研究を推進するさらなるプロジェクトを立ち上げることになった。・こうした二つの成果を、「平成16年度科学研究費補助金研究実績報告書」として作成した。報告書の内容は以下のとおり:内容:・筑波大学国際シンポジウム・プログラム(Reception and Transformation of English Literature in Asia and Japan), pp.1-15・English Studies Relocated in New Asias(1)-(7)(『英語青年』連載), pp.16-51・さらに、現在、この論文を核として、上記シンポジウムに参加し発表した研究者の論文と他の研究者数名の論文をまとめ編集し、英語圏のマレーシアの出版社で出版するため、編集作業を行っている。
著者
江藤 光紀 城多 努 辻 英史 水田 健輔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各地に劇場が林立し、劇場大国と呼ばれるドイツだが、地方分権が行き届いているため、各地の劇場のあり方も様々である。本研究では、それぞれに性格の異なる劇場をサンプル的に抽出し、その地の歴史性・特殊性/日々の公演の実際・運営上の工夫/財務構造とその問題点、という三つの視点から分析することにより各劇場の特性を総合的に捉え、「劇場大国」と一口にくくられるドイツの劇場が抱える問題の共通性と個別性を明らかにした。
著者
金 顕哲
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は日本型マーケティングの全容を明らかにすることである。日本企業の典型的なマーケティング活動は何なのかを軸にその因果関係を解明することである。そのために主に文献調査とアンケート調査方法を利用する計画である。初年度の去年は、おもに文献調査を行ったが、二年目の今年は、2件のアンケート調査を行った。1件目は、日本企業のマーケティング活動全般に関するアンケート調査であった。製品戦略と価格戦略、チャネル戦略、広告プロモーション戦略に分け、各企業がどのようなマーケティング活動を行っているのかを調査した。調査では、最近のマーケティング活動と10年前のマーケティング活動に分け、比較する形式を取った。調査対象は上場企業2000社であったが、アンケートの量が多かったのが回収率は8%に満たなくてデータも良くなかった。現在、分析中であるが、ただ営業を重視する日本企業の姿勢は特に明確になっている。この調査結果を踏まえ、もう一つのアンケート調査では営業活動を重点的に調査した。日本企業はどのような営業活動を行っているのか、なぜそのような活動を選択しているのか、その成果はどうなのかなどを調査した。この調査では、1件目の調査の低い回収率の教訓を生かし、店頭公開企業をも調査対象にするなどの工夫をした。現在、回収中であるが、回収率は20%前後になりそうである。これからデータを入力し、分析する予定である。2件のアンケート調査の分析作業は今年の冬休みを利用し、集中的に行う予定である。
著者
滝沢 茂 大槻 憲四郎 宮崎 修一 田中 秀実 西川 修 松井 智彰 八田 珠朗 興野 純 小澤 佳奈
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地震断層を引き起こした地殻の歪みエネルギーは主に粉砕粒子の非晶質化に費やされると予測して、粉砕粒子内の非晶質化を示し溶解熱測定を行った。この溶解熱測定はフッカ水素酸液用の試料カプセの開発に成功した。このカプセルは国内外を通じて例がない。特殊なカプセルで溶解熱を測定した結果、石英結晶をアモルファス化するのに要した熱量は約2000J/gであり、これをエネルギー量に換算すると1011ergオーダーとなる。この新知見に基づくと地震断層時の破壊エネルギーは表面エネルギー、すべり摩擦熱エネルギーおよび波動エネルギーとして分配され、主に消費されるエネルギーはすべり摩擦熱エネルギーと波動エネルギーと考えらているが、本研究課題の結論は最も消費エネルギーの大きいのは、結晶内消費エネルギーで、この事は新知見で物質地震学の新展開となる。
著者
矢澤 真人 橋本 修 和氣 愛仁 川野 靖子 福嶋 健伸 石田 尊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

代表者、分担者、協力者の協力も得て、以下のことを行い明らかにした。国文法理論に関しては、形態論重視の文法理論と、それに対抗する意味論重視の文法理論とを検討し、包括性・初学者への分かりやすさでは前者に、認知論との関連・直感的な興味深さでは後者にメリットが多いことを明らかにした。これと相関して学習指導要領における文法教育・言語事項の位置づけや、教育現場での実際の取り扱い等を検討し、現況にあった有益な文法教育の目標としては、言語感覚の養成・母語への愛着の涵養等がより中心的になるべきであることを示した。他の文法理論については、それぞれ、存在動詞構文・ハイパレージ現象に対して構文文法的アプローチ、中世日本語述部(特にテンス.アスペクト)に対して形態・機能論的アプローチ、非分末の「ですね」に対して談話文法論・情報管理理論的アプローチ、自他の形態(の少なくとも一部)に対して認知・計算意味論的アプローチ、テイル文に対して(生成)統語論的アプローチが、有生性の心的実在性に対しては実験心理学(脳科学)的アプローチが有効であることが、それぞれの具体的分析・実験等により示された。また、教育文法に関しては、枠組みとして、身体活動も含めた言語行動ルールとしての文法の必要性、国語教材の選択・使用法について具体的手順(活用の既定の一部修正・教授順序の変更)を経たカスタマイズのありかた、生徒が作成する要約文の特徴と字数との関連等が示された。
著者
横浜 康継 蔵本 武照
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

イセエビ(Panulirus japonicus)とウミザリガニ(Homarus americanus)を用い、それぞれ、個体の酸素消費(呼吸=代謝)速度を差働式検容計と酸素電極法とを併用して観測し、代謝速度と温度との関係を調べた。その結果、ともに、体温の低下に抗して代謝速度が維持あるいは促進される温度域があり、ウミザリガニでは5-13℃であるのに対し、イセエビでは13-20℃であることが明らかとなった。イセエビは15℃以上の暖流域に棲み、ウミザリガニは15℃以下の寒流域に棲んでいる。それ故、この棲息地の環境温度が代謝促進のある温度域と関連しているものと考えられた。囲心腔ホルモンの1成分のセロトニンにより、心筋や腹部緊張筋の酸素消費速度が大きく増大した。それ故、セロトニンが囲心腔器官などから分泌されて、体内に存在していれば、少なくとも筋組織は、体温低下に抗して代謝速度を維持または促進しうることが示唆された。一方、他の囲心腔ホルモン成分のオクトパミンやプロクトリンは筋膜の興奮度を高めた。温度低下に伴い、筋の興奮-収縮連関の効率が落ち、収縮の強度は減少するが、オクトパミンやプロクトリンが存在すれば、膜の興奮度がより高まる結果、興奮-収縮連関の効率の低下が補正されることになる。従って、体温低下に伴う筋収縮度の低下は、囲心腔器官からオクトパミンやプロクトリンが分泌されることにより、防げると考えられた。蔵本らは、イセエビで、5度程度の体温低下に伴い囲心腔器官からセロトニンやオクトパミンが分泌されることを実証している(Biol.Bull.,86,319-327,1994)。かくして、エビ生体内においては、環境温度の低下に伴う体温の低下で、筋の代謝速度が下がらないだけでなく、筋の収縮力も落ちないことが解明できた。低温の酸欠下で、10数分間に渡り心拍が維持される現象が見つかった。この酸欠状態での代謝調節機構は不明で、今後の研究課題である。しかし、面白いことに、イセエビは、腹部の屈伸運動による特異な後方遊泳により、15分で3km位は移動できるので、低温の酸欠水塊に遭遇しても、この悪環境から逃避しうることが示唆された。
著者
藤田 統 加藤 宏 牧野 順四郎 岩崎 庸男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

行動の個体差の原因と形成過程を知るために、我々の研究室で選択交配により作り上げた情動反応性に関する近交系ラット2系統(Tsukuba情動系ラット)および活動性に関する近交系マウス2系統等を用いて、様々な行動遺伝学的、生理生化学的研究を行った。また、Tsukuba情動系ラットを野外フィールドにおいて自然繁殖させ、生態学的研究を行った。1.Tsukuba情動系ラット(THE系とTLE系)のP_1、P_2、F_1、F_2、B_1、B_2を用いてランウェイ・テストの諸測度について古典的遺伝分析を行い、それぞれの遺伝構築を検討したところ、例えば、選択指標である通過区画数には、♀では優勢効果のない中間遺伝が、♂では高情動側への指向優勢が見いだされた。また、各測度間の遺伝相関、諸測度の遺伝率、遺伝子座の推定値を求めたところ、遺伝子座の最小推定値は♀で2〜4、♂で2〜3であった。2.Tsukuba情動系ラットの脳内生化学物質を定量したところ、例えば視床下部のAD濃度がTLEの方がTHEより高いなど、両系の脳内モノアミンおよび代謝産物濃度に様々の生化学的差異が見いだされた。3.Tsukuba情動系ラットのシェルター付きオープンフィールド・両端部屋付き直線走路・I迷路における諸行動、ホーディング行動、穴掘り行動、攻撃行動等が研究され、両系の行動上の差異が比較・検討された。4.Tsukuba情動系ラットの味覚嫌悪学習が、その習得、把持、消去、外部刺激の効果に関して研究された。消去において系統差が見られた。5.ランウェイ、オープンフィールド、I迷路におけるラットとマウスの諸行動を主成分分折して、主因子を抽出した。6.野外フィールドでのTsukuba情動系ラットの性行動、社会行動、日周リズム等が研究され、個体数の推移も分析された。また、野外フィールド育ちによる行動変容についても研究された。
著者
福林 徹 宇川 康二 新津 守 阿武 泉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

2種類の前十字靱帯再建例に対してその筋萎縮とリハビリテーションによる回復過程をMRIを用いて検討した。1.腸脛靱帯を用いて関節内外2重再建を行い術後1年を経たスポーツ選手10名の検査結果では健側と比較して大腿四頭筋の体積は平均97%、大腿屈筋の体積は102%と膝伸筋に萎縮が見られた。大腿四頭筋の中でも内側広筋は健側の92%と最も萎縮が強く以下中間広筋、外側広筋、大腿直筋の順であった。また靱帯再建のため腸脛靱帯を採取したことにより大腿四頭筋全体に外旋傾向が見られた。外旋は外側広筋に一番強くまた末梢に行くほど増加し、平均として健側に比較し40%程度増加していた。CYBEXによる筋力測定では60deg/sec、180deg/secとも10〜15%程膝伸展筋筋力は健側より劣っていたが、屈筋筋力に差はなかった。MRIにより等尺性筋収縮時と筋弛緩時を比較すると筋収縮時は大腿四頭筋の外旋傾向は減少していた。2.半腱様筋腱と薄筋腱を用いて前十字靱帯の再建を行い1年以上経た33例では、大腿の外旋傾向は見られなかったものの、やはり内側広筋や中間広筋を中心として5〜9%程度の筋萎縮があった。靱帯再建のため採取した薄筋と半腱様筋はまだ正常な筋力ボリュームの60%と71%を維持しておりTagging Snapshotにて筋肉収縮が確認された。半膜様筋と大腿二頭筋のわずかな肥大が半数に観察された。薄筋腱と半腱様筋腱の再生は見られなかった。大腿筋群のこれらの形態変化は、膝関節伸展と屈曲のピークトルクと軽度の相関があった。
著者
安藤 隆男 西川 公司 川間 健之介 徳永 豊 千田 捷熙
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の二つから構成した。まず、(1)学習の主体である脳性まひ児の学習特性、(2)脳性まひ児の教科指導を行う担任教師、(3)地域における支援の担い手である肢体不自由特別支援学校の支援体制に注目し、通常学級における脳性まひ児の学習支援モデルの開発に関わる基礎的な資料・知見を得る研究である。次に、これらの基礎的な知見をふまえて、とくに附属肢体不自由特別支援学校との開発と展開に関わる共同研究である。この共同研究は、脳性まひ児の学習特性をふまえた教科指導モデルの構想と実践(第一研究)と通常学級における脳性まひ児の学習支援の展開(第二研究)からなる。前者は通常学級における脳性まひ児の学習支援に資する教科指導モデルを、肢体不自由特別支援学校において培ってきた専門性に基づいて構想、実践するものである。後者は前者で構想、実践した教科指導モデルを通常学級に適用、展開するものである。まず、第一研究では、WISC-IIIなどの結果から、認知的な課題がある児童生徒を対象とした各教科の指導の手だて等を開発し、授業において検証した。その結果、認知的な特性をふまえた指導の導入が脳性まひ児の学習パフォーマンスを高めることが事例的に明らかになった。第二研究では、第一研究で構想した教科指導モデルを通常学級の脳性まひ児に適用してその有効性を明らかにしつつも、脳性まひ児の認知に関わる担当教師の気づきの位相によって彼らへの支援を細かく想定する必要性が示唆された。脳性まひ児の学習パフォーマンスに関しては、認知的特性のみならず、運動動作の障害との因果関係も示唆され、改めて自立活動の指導との関連から課題を整理する必要がある。
著者
DARRYL Macer
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

様々な職業の人を対象にしたインタビューやアンケート調査が日本で行われた。オープンコメントの分析方法が検討され、書き込み式のアンケートと、対面式のインタビューとの方法の比較が行われた。結果から、社会を構成する全ての人が、科学に関する議論に様々な見解を持って参加できることが示唆された。利益やリスク、道徳的容認度等に重点を置く人には、統計学的傾向があるように思われる。生命倫理の教科書に、どのような内容を含めるか、というプロジェクトが、研究の第二段階として開催された。これは、諸外国における生物・社会科の教師や、生命倫理の専門家との対話を基に行われる。医療倫理への関心が依然として強いように思われるが、環境問題への関心も増加しているようだ。生命倫理教育のためのチャプターが20篇執筆され、現在編集中である。チャプターには次のトピックが含まれる。チャプターが執筆され、改変、編集されるに伴い、それぞれのチャプターが異なる国々で、先生達によって試行される。2004年2月13日から16日にかけて、つくばにおいて専門家や先生方が意見を交わした。オーストラリア、中国、韓国、インド、日本、メキシコ、ネパール、ニュージーランド、フィリピン、ポーランド、そして台湾の先生方、およびコーディネーターとの意見を交換した。数名の先生が大学および高校において授業を実践した。プロジェクトの主な産物は1)生命倫理教育のための教材2)生命倫理の問題について学校および大学で使用することの出来る教科書3)異なる国々の先生同士のネットワークである。生命倫理教育の成功はいくつかの方法で量ることが出来る。1)生命の尊重が増加2)科学と技術の利益とリスクのバランスを取る3)異なる人々の多様性をより良く理解する。これら全てを達成しなければ成功したと呼べないわけではない。また、教師によって、重きを置くゴールが異なってくるであろう。
著者
小波蔵 純子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

これまでに我々は、中性子照射量の増大に伴う半導体検出器X線感度の劣化、また検出器印加電圧の増大に拠る感度の改善等を明らかにし、これらの物理機構が、我々が提唱した「半導体検出器新感度理論」の描像とコンシステントであることを示し、2つのキー・パラメータ、即ち、「信号電荷三次元拡散長」並びに「空乏層厚」が、中性子損傷を受けた半導体感度に対しても主要な本質的パラメータであることを明らかにした。本研究では、p型半等体(p型は中性子照射に強いと考えられている)、並びにn型半導体(n型は廉価でプラズマ計測に広く用いられている)に対する中性子照射効果の差異、また今後の中性子環境下での実用性を調べるために、中性子フルエンス0.1〜100×10^<13>n/cm^2の範囲で原研FNSに於いて照射実験を実施し、半導体X線感度変化と中性子照射量の相関の系統的データ収集を行った。この一連のDT中性子照射実験による、n型、並びにp型シリコン半導体検出器の中性子照射量に対するX線感度特性の評価・比較について以下の結果が得られた。(i)JETで用いているn型X線トモグラフィ検出器の中性子照射積分量に対するX線感度変化データより、n型半導体のX線感度変化の「非線形的振舞い」、即ち「X線感度は、ある中性子照射量の範囲に於いて照射量増大に伴い一時的に増大し、その後減少する」ことが見出されたのに対し、(ii)p型では、n型と同様に照射前に対する感度劣化は見られるものの、n型の非線形的な振る舞いと異なり、「照射量増大に対し緩やかな単調劣化を示す」ことが定量的に確認された。(iii)また、今回用いたp型半導体では、10^<15>n/cm^2を超える照射に対しても、照射前に比べ80%程度の感度を保つことが明らかとなった。これらの結果は、n型に比しp型半導体の優れた耐放射線特性を示すデータと位置づけられる。
著者
吉水 千鶴子 佐久間 秀範 小野 基
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、チベット人シャン・タンサクパ著『中観明句論註釈』の写本解読により、インドからチベットへ、チャンドラキールティの帰謬論証を用いる中観思想がインドの仏教論理学と融合しながら伝承された11~12世紀の時代思潮を明らかにした。すなわちチャンドラキールティ自身が先行するディグナーガの論理学を取り入れており、中観派によって他者に真実を知らしめるための命題と論理の使用は是認される。この新しい知見により、本研究は中観仏教思想史を見直し、論理学との融合過程に焦点をあてて再構築した。
著者
佐久間 秀範 吉水 千鶴子 ALBERT Muller 馬淵 昌也 吉村 誠 橘川 智昭 岡田 憲尚
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究期間内に以下の三つのプロジェクトを完成させた。1.『大乗荘厳経論』第三章、第六章、第十九章の偈頌(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、世親釈(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、無性釈(チベット語訳)、安慧釈(チベット語訳)の対照テキスト。2.研究チームで五姓各別のインド、中国、韓国、日本の総合研究。3.研究チームで玄奘訳『仏地経論』全体の日本語訳(日本初)の吟味。