著者
掛谷 英紀
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

昨年度までに、多視点高解像度立体ディスプレイの基本は完成したが、今年度は、画質の向上、視野角の拡大、輻輳調節矛盾の解消による目の疲労の低減の3点について、改善を試みた。まず、画質の向上については、昨年度までのシステムで使っていたフライアイレンズを使わないシステムの構築を試みた。この場合、頭を動かしたとき、画像が不連続に切り替わるような違和感が生じていたが、それを取り除くためのレンズ光学系を設計した。この設計で、不連続感が低減されるとともに、視野角の拡大も同時に解決された。ただし、このレンズ光学系だけで、完全に不連続感が取り除かれるわけではない。この不連続感を取り除く方法として、多層にわたる弱拡散を行う方法を試み、一定の効果を上げた。この方法は、同時に輻輳調節矛盾による目の疲労を緩和する効果も確認された。輻輳調節矛盾の解決方法としては、昨年度まで行っていたシリンダーレンズと高周波縞状パターンの組み合わせ方法について、より詳細な解析を行い、その理論はほぼ完成された。ただし、この方法は上述の多視点方式に組み合わせることは難しい。そこで、多視点方式に組み合わせが可能な方法として、多視点立体ディスプレイとボリュームエッジを組み合わせる方法を昨年度提案したが、今年度はその実装を行った。アグティブなエッジ提示方法としてはモノクロ液晶パネルを多層に重ねる方法を試み、一定の成果をあげた。また、より廉価な方法として、メッシュテクスチャを多層にばらまく方法を新たに提案し、レフラクトメータを使った目の測定実験で、この方法でも輻輳調節矛盾の解消が期待できることが確かめらた。この3年間の研究成果により、提案する多視点立体ディスプレイは商品化できるレベルのシステムを達成したということができよう。
著者
中野 敦
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ゲームプレイヤーがモーションを自由にクリエイションできるようになるとゲームの話の展開が変化するため,その変化した展開に対してキャラクタが柔軟に対処することが求められています.そのため,基盤システムの重要な機能として,ゲームプレイヤーからの自由なタイミングでのインタラクションに対してキャラクタが人間のように知的に振る舞い,かつそれらのキャラクタの能動的な行動によって長期的な話の展開を生成する行動制御技術が必要となっていました.そこで,話の流れを保ちつつ,状況に合わせて豊富で能動的な反応を生成するために,エピソードツリーと名付けた統一的な制御構造を用いて反応行動を生成するシステムを提案しました.このシステムでは,各キャラクタが状況に合わせて断片的なエピソードを表すエピソードツリーを取捨選択していくことで,全体の話の流れを構成します.また,キャラクタが干渉された場合には,エピソードツリーに付随された中断処理を挿入し,反応行動へ移り,反応行動が終了した際には復帰処理を挟み,元の行動に復帰することでキャラクタの行動の連続性を保ちます.ユーザが自由なタイミングでアニメーションに干渉するためのインタフェースとして,「触る」,「掴む」,「オブジェクトを追加する」の3つの異なる特徴を備えたゲームコンテンツを実際に制作しました.このコンテンツ上で,これらのインタフェースを用いて,自由なタイミングで相互作用できるキャラクタアニメーションを生成できることを,インタラクティブ東京やDiva展といった複数の会場で展示し,示しました.その結果,芸術科学会論文誌で論文賞をいただくといった学術的な成果に加えて,芸術科学会展のデジタルシネマ部門で優秀賞,そして国内の優秀なコンテンツが展示されるインタラクティブ東京に推薦されるなど,展示作品としても大きな成果を得られました.
著者
有田 智一
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、建築許可制導入を想定した際の今後の建築審査会のあり方に関する研究を行うことである。全国の建築審査会を対象として、特例許可、審査請求、運営等に関する実態の分析を行った。また比較対象としてアメリカの特例許可の運用実態との国際比較を実施した。今後の日本の建築審査会では、「民主的観点:民意の反映」の仕組みと、「科学的客観性:専門的知見に照らした裁量的判断」のバランスが求められる。
著者
榧根 勇 嶋田 純 田中 正
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1)東京都内の湧水を分類し、崖線タイプの代表として深大寺湧水を、谷地形タイプの代表として善福寺池を選定し、湧出機構の解析を行い、以下の結論を得た。(1)崖線タイプの湧水は、武蔵野礫層中をほぼ水平に流下する地下水が、礫層の露頭面で湧出するものである。(2)崖線タイプの湧水の集水面積は10^5〜10^6m^2のオーダーで、その涵養域は水流側200〜2000mの範囲である。(3)谷地形タイプの湧水は、武蔵野台地全域にわたる地下水位の低下によって枯渇している。(4)谷地形タイプの湧水の復活には、武蔵野礫層中の地下水位を約2m上昇させることが必要である。2)東京都の台地部及び平地部を対象に、既存のボーリング柱状図及び東京都地盤沈下観測井水位資料を整理し、1970、1980、1987の3年について南北6断面、東西6断面、深さ600mまでの鉛直二次元地下水ポテンシャル分布図を作成し、地下水の開発と揚水規制に対して、東京都の帯水層・加圧層システムがどのように応答したかを明らかにした。3)ボーリング孔内の地下水ポテンシャルを測定するためのダブルパッカー式地下水圧測定装置を試作し、1992年5月及び10月に100m深の花崗岩中のボーリング孔を利用した性能確認試験を実施した。25mから95mの間の孔内6ヶ所の約5m区間において、各々20〜40分間の測定時間にて、平衡地下水圧に到達することが確認できた。また、フィールド用データロガーを利用しているため、1日間程度は無電源で使用できる。更に、上下パッカーの膨張に伴う水圧上昇とその後の区間地下水圧と平衡状態に至る迄の圧力の時間変化データを利用して、非定常単一パルス透水試験の解析を適応した結果、地下水圧測定区間岩盤の透水係数(10^<-6>〜10^<-8>cm/sec)の測定も可能であることが明らかになった。
著者
関口 章
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

アセチレンのsp炭素をケイ素原子に置き換えたケイ素-ケイ素三重結合化合物「ジシリン」を世界に先駆けて安定に合成することに成功し、その分子構造を決定している。炭素-炭素三重結合化合物アセチレンが直線構造を持つのとは対照的にジシリンはトランス折れ曲がり構造を持ち、三重結合を形成する二つのπ結合は非等価であり、そのπ軌道準位はアセチレンのそれと比較すると著しく高いなどの特徴を有する。今回、ジシリンの物性、及び反応性を明らかにすると共にそれらに対する置換基の電子的、立体的効果を評価した。特に、今回、ジシリンと炭素-窒素三重結合を有するニトリル類との反応性を検討したところ、炭素パイ電子系と全く異なる反応性を示すことを明らかにした。1. 三重結合ケイ素化合物ジシリンに対して過剰量のトリメチルシリルシアニドを無溶媒条件下、室温で加えると、溶液の色は赤褐色へと変化した。ベンゼン中から再結晶することでジシリンービス(シリルイソシアニド)錯体の紫色結晶が得られた。一方、ジシリンのヘキサン溶液に対して2当量のトリメチルシリルシアニドを加えた場合、微量のビス(シリルイソシアニド)錯体とともに1, 4-ジアザ-2, 3-ジシラベンゼン類縁体が主生成物として得られた。2. ポリアセチレンの化学ドーピングによるソリトンやポーラロンの発生などの諸物性との関連から、ケイ素-ケイ素三重結合化合物、ジシリンのアルカリ金属による-電子還元反応を検討した。その結果、カリウムグラファイト、^tBuLiとの反応で容易に電子移動を起こし、安定なジシリンアニオンラジカルを生成することを明らかにした。これらのアニオンラジカルの分子構造や電子状態をX線構造解析、ESR測定、理論計算などを用いてアニオンラジカルの諸物性を明らかにすることができた。最終目標のポリジシリンの合成には至っていないが、新しいπ電子化合物三重結合ケイ素化合物ジシリンの興味ある反応性を明らかにすることができた。
著者
関口 章
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

ケイ素などの第3周期以降の高周期典型元素におけるπ電子系化合物(多重結合化合物)は炭素などの第2周期元素π電子系化合物に比べ、占有π軌道準位が著しく高く、非占有π*軌道準位が著しく低いという特徴を持つ。またケイ素-ケイ素σ結合(単結合)の軌道準位は炭素-炭素π軌道準位に匹敵するほど高く、ケイ素-ケイ素単結合で連なったポリマー(ポリシラン)では主鎖を形成するσ電子が、炭素π共役系におけるπ電子のように非局在化するσ共役を発現することも知られている。従って、ポリアセチレンのケイ素類縁体であるポリジシリンでは、高周期元素特有の非局在化したσ電子によるσ共役に加えてπ共役の複合化による新規な物性発現も期待される。本研究では、筆者らが初めて安定な化合物として合成・単離することに成功したケイ素-ケイ素三重結合化合物(ジシリン)の反応性を検討してきた。有機リチウム開始剤によるアニオン重合を行うべく、種々の有機リチウム試剤との反応を行ったところ、tert-ブチルリチウムでは1電子移動とそれに引き続く水素移動を経て、水素置換ジシレニルリチウム種を与え、単独重合は進行しなかった。また、ジシリンの重合活性の向上を目指して新規な置換基を導入したモノマー(ジシリン)の合成検討を行った。その結果、ジアルキル(アリール)シリル基を導入したジシリンは、spケイ素が空間的に接近するアリール基に対して反応活性であり、spケイ素が空間的に接近するアリールC-H結合へ挿入を経て異性化するため、ジシリン自体を安定に単離することが出来なかった。一方、トリアルキルシリル基を導入した第2のジシリンを安定に合成することには成功し、その分子構造を単結晶X線結晶構造解析で決定した。
著者
イアン カラザース 南 隆太 吉原 ゆかり 清水 裕之 本橋 哲也 BRANDON Jim RIMER J. Thomas POWELL Brian TIERNEY Robert GOTO Yukihiro 呉 佩珍 松田 幸子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、日本の現代演劇の成立過程と現状を、上演テクストに注目して考察することで、日本現代演劇史を見直す視点を提供することを第一の目的として研究を行ってきた。現代日本演劇史において、西洋演劇が与えた影響や、日本演劇が西洋演劇に与えた影響を視野に収めることで、グローバルな視覚から世界演劇史に切り込むことが可能となった。本研究の最も大きな成果は、現代日本演劇史を上記のような視点から見直した結果としてのA History of Japanese Theatre『日本演劇史』の出版である。研究代表者は、3年間の研究を基に、研究分担者および研究協力者とともに演劇史の執筆を開始し、ケンブリッジ大学出版局との出版が決まっている。
著者
松本 浩一 浅野 春二 丸山 宏
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年道教研究は、中国文化を理解するにあたっての重要性が認識され、注目を集めるようになっている。しかし中国人の生活・文化のあらゆる面に影響が及んでいる道教の研究を進めるにあたっては、道教を実践する道士ばかりでなく、一般の人々との接点にも目を向け、さらに祠廟の祭典や葬送儀礼あるいは様々な呪術儀礼などの宗教儀礼の意味と、それらを提供する道士をはじめとする様々な宗教職能者の活動の実態、そしてその変遷を実態調査と文献資料の両面からアプローチしていくことが要求される。この研究では、外国人が実態調査を進めるのに制約が少ない台湾を対象とし、台湾の近現代の社会変化を巨視的に押さえた上で、道教と民俗宗教が交差する領域の儀礼・宗教職能者に具体的に現れた変化の相を解明すること、宗教儀礼の文字資料や宗教者の口承資料を努めて収集し分析すること、台湾独自の歴史的動態に即した宗教変化の論点を提起することを目標においた。そして何回かの実態調査と、その際に収集した文献資料とによって、特に彼らの提供する儀礼とその伝承の実態とに関して、それぞれに次のような成果を得ることができた。松本は主として台湾北部の紅頭道士の行う呪術儀礼の実態調査と、その際に用いるテキストの分析を行い、さらにそれらを台湾南部の法師の行う呪術儀礼と比較することによって、儀礼の構造と社会的役割について明らかにすることができた。丸山は南部の高雄・屏東地区の道士について、実態調査と文献の収集を行うことによって、彼らの入門・資格取得儀礼の実態を明らかにし、さらに世代ごとの違いについて比較を行い、彼らに儀礼を依頼した地域の民衆との関わりについても明らかにした。浅野は台南市・高雄県の道士について聞き取り調査を進めるとともに、祠廟の祭祀についての資料を収集し、道士のライフヒストリーとともに、地域の祠廟信仰や家庭祭祀との関係について明らかにした。
著者
唐木 清志
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.69, pp.128-130, 2005-03

Kabuki, Kiyoshi「あなたの専門は?」と聞かれたら、私は「社会教育です」と答える。しかし、この答え方で、即座に「ああそうですか」と納得してくれる人は少ない。教育関係者ならまだしも、それ以外の専門をお持ちの方にはもう少し説明が必要である。(詳しい説明をしても、未だに理解してくれない私の両親のような人もいる。) ...
著者
長崎 勤 菅野 敦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ディスコースにおいて重要な自他の意図に関する意識や理解の発達を検討するために、複数の中から相手の意図(好み)を尋ねる選択質問を使って健常児のディスコースの発達と発達遅滞児の指導プログラムについての検討を行った。研究Iでは、健常児における他者の欲求意図理解の発達について検討を行った。その結果、2歳〜3歳児は、自他の欲求意図を同一化する傾向があり、4歳〜5歳児になると、自己と他者の欲求意図の自律性の理解ができていた。研究IIでは、研究Iのディスコースユニットモデルを基に工作場面とおやつ場面を設定し、言語発達遅滞児の会話技能の指導を実施した。7歳のダウン症女児に、工作場面で身体援助、言語指示、モデル提示などの段階的な援助を与え、聞き手の意図を想定した発話行為の遂行を促したとごろ、セッションの経過と共に相手の意図を尋ねる行為が可能になった。研究IIIでは、場面によるディスコースの特徴を検討するために、健常児2歳、3歳とダウン症児(MLUマッチング)の母子相互交渉を観察した結果、母子間で知識が共有され、認知的負荷が軽減されている日常生活ルーティン場面の方が、玩具遊び場面よりも時空間的に離れた事象への言及といった、高次な言語使用が多いことが示された。会話内容が「今、ここ」に限定されることが指摘されているダウン症児は、会話初期から既に未来事象への言及が少ないことが示され、指導の必要性が示唆された。研究IVでは、おやつスクリプトの獲得について、10〜20ケ月の健常児とダウン症児(MAマッチング)について縦断的検討を行った結果、スクリプトの中心的要素から細部要素へ(18ケ月頃)という獲得の順序性が示され、また同時期に言語による伝達が開始されたことから、スクリプトの獲得と言語獲得及びディスコースとの関連性が示された。ダウン症児は、スクリプト獲得に遅れがみられ、言語獲得やディスコース発達の遅れの1つの要因である可能性が示唆された。研究Vでは、6歳のダウン症女児にファーストフード店場面を設定し、誤提示を用いて伝達意図の調整を指導したところ、調整を求める選択質問への応答や、相手の要求に応じて意図を調整すると言った伝達の柔軟な調整が可能になり、実際のファーストフード店での般化も確認された。
著者
河野 一郎 清水 和弘 清水 和弘 赤間 高雄 秋本 崇之 渡部 厚一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,唾液中のヒートショックプロテイン70(HSP70)が競技選手および高齢者のコンディション評価指標としての有用性について検討した.一過性高強度運動で唾液HSP70が増加することを示した.また継続的な高強度運動で安静時のHSP70は顕著な変動はしないが,その原因として高強度運動に対するHSP70応答の個人差が考えられた.さらに継続的な運動で高齢者の安静時HSP70が高まり,さらにHSP70がT細胞活性経路の亢進メカニズムに関わる可能性が示された.以上より,唾液HSP70によるコンディション評価は,競技選手では個々の変動が異なるため検討が必要であり,高齢者では有用である可能性が示された.
著者
柳原 英人
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

MBE装置を用いてルチル型遷移金属酸化物薄膜の成長を目的とした実験を行った.ルチル型遷移金属酸化物の中でも室温で金属強磁性を示す事で知られるCrO_2単結晶膜をMBEで成長させることを第一の目標とした.遷移金属酸化物はその価数によって様々な化合物が存在し,Crの場合には3価が安定であるため,単純な酸化法ではCr_2O_3が成長する,Cr^<4+>として安定化して成長させるためにまず,酸化源としてオゾンを選んだ.まず初年度にはオゾン純化装置を開発し純度90%以上のオゾンビームをMBE装置内に導入できるようにした.またRHEED像の観察システムを開発し,オゾンビーム中での薄膜成長をRHEEDを用いてリアルタイムに測定ができるようになった.CrO_2単結晶膜のMBE成長については,ルチル(TiO_2(100))単結晶を基板として,純オゾン中でのMBE成長を試みた.基板温度を室温から500℃まで様々に変化させ,オゾン分圧を,×10^<-4>〜×10^<-6> Torrと変化させて成長条件の探索を行ったがいずれのオゾン圧においても150℃以下ではアモルファスに,それ以上の温度では,Cr_2O_3(100)が成長した.このことからCr^<4+>の成長には高い酸化力を持つ酸化源(オゾン)のみでは十分でなく,比較的高い圧力下での成長が不可欠であると考えられる.本課題の遂行過程において開発,改良したMBE装置を用いて,いくつか副産的な成果もあった.一つ目は,RHEED装置の改良の結果,格子不整合の大きな金属多層膜において,その格子歪みが膜成長とともに緩和していく様子を定量的に観察することが可能となり,Co/Rh超格子の格子歪みと磁気異方性の関係を定量的に理解することに成功した.また二つ目の成果としてMgO(001)を基板としてオゾン中でFe酸化物を成長させるとγFe203エピタキシャル膜が得られるという発見である.この成果は今後様々な方向に展開する可能性がある.
著者
吉田 薫 岩本 義輝
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

前庭眼反射やサッケードの正確さは適応学習により維持されている。本研究では、1)これらの眼球運動制御に抑制系が果たす役割、2)サッケード適応の時間空間特性と適応を引き起こす誤差信号の伝達経路を調べた。1)マルチバレル電極を用いて単一ニューロン活動を記録しながら、GABA受容体、グリシン受容体の阻害薬を電気泳動的に投与し抑制入力の寄与を解析した。半規管系前庭二次ニューロンはGABA作動性抑制を受け、その遮断により頭部回転応答の振幅が著明に増大した。この抑制はおそらく片葉に由来し、前庭性運動のゲイン調節を担うと考えられた。一方、サッケード運動指令の形成には、グリシン作動性抑性が重要な役割を果たすことが示された。バーストニューロン(BN)とポーズニューロン(OPN)の相互抑制、OPNへのトリガー抑制はいずれもグリシン受容体を介すること、これらの抑制によりサッケードと注視の急速な切り替えと安定な注視が起こることが明らかになった。2)サッケード適応課題遂行中に視覚誤差の方向を2度逆転させる実験により、学習反復の効果を調べた。先行適応が次の適応を促通し学習速度が上昇すること、この促通効果は誤差ゼロのサッケードにより消去されることが明らかになった。また、方向の異なるサッケードへの促進効果を解析した結果、適応を担う可塑的変化と、促通を起こす可塑的変化は類似の方向特異性を持つことが示された。サッケード適応を引き起こす誤差信号の経路を調べるために電気刺激で適応が誘発される部位を探索した。その結果、中脳被蓋内側部に刺激を加えるとサッケード直後にその終点が次第に変化すること、効果は刺激と組み合わせたサッケードに特異的であることが明らかになった。視覚誤差を伝える経路が中脳披蓋内側部を通ることが強く示唆された。
著者
岡本 栄司 膠 瑩 岡本 健
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

情報セキュリティで用いられる暗号鍵は、盗難や再発行などに対して大きなリスクがあり、社会問題となっている。これらの問題を解決するために、秘密情報分散方式を用いた鍵紛失対策について研究を行った。研究に対する要素技術としては、楕円曲線状のペアリングを利用した。本研究では、初期段階においてシェアの分散保存・回収の際に管理者サーバを経由しないHybrid-P2Pモデルについて検討を行った。この方式では、モバイルPCとUSBキーの同時紛失という不測の事態においてもデータの安全性を保障できるという利点をもつ。また、パフォーマンスを考慮した秘密情報分散を実現するため、管理者サーバでのクライアントの認証とクライアントにおける(k, n)閾値法について提案し、シェアの作成およびデータ回復機能に対して、安全性の検討や性能評価を行った。ペアリングを用いた暗号鍵管理システムに関する研究では、IDベース暗号系やShort Signatureなど、既存の暗号アプリケーションに対する鍵紛失対策について検討を行った。また、暗号鍵の供託や再発行等において、高いスループットを実現するため、高速なペアリング演算について研究を推し進めた。具体的には、ペアリングのプリミティブな部分に注目し、ペアリングを用いた暗号系における最適パラメータの設定方法やペアリング演算時のループ回数を削除することにより、新しいペアリング演算手法を提案した。これらの手法に対してソフトウェア実装し、性能評価を行うことによって、提案したペアリングは理論値における高い評価に加え、実装においても高速な演算処理が実現できることを示した。
著者
石黒 浩毅 有波 忠雄
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

神経細胞接着因子遺伝子NrCAMの低発現が依存形成阻害の表現型を示すこと、NrCAM遺伝子発現変化に伴いグルタミン代謝酵素GLS遺伝子の発現が変化することが申請者の先行研究から明らかとなっている。薬物依存症に関連が報告されている新奇求性(novelty seeking)および不安(harm avoidance)という性格行動にNrCAMならびにGLSがどのように関与しているかについて、前者は新奇オブジェクトや初見マウスに対する探索行動、後者はゼロ迷路における行動で評価を行った。Nrcamノックアウトマウスは新奇オブジェクトとマウスともに探索行動が野生型に比して少なかった。ノックアウトマウスはゼロ迷路における不安行動が野生型に比して少なかった。モデルマウスに認められた行動はヒト依存症患者に認められる性格傾向を説明できるものであり、NrCAMはおそらく依存獲得に密接に関係する性格行動特性を介して薬物依存症の易罹患性に関与することを示唆するものである。さらに、近交系C57B6マウスにGLS阻害剤を投与したところ上記の新奇求性および不安においてNrCAMマウスと同様の行動特性や、モルヒネ・コカイン・覚せい剤に対する報酬効果・活動性亢進効果の阻害が認められた。本研究にて神経接着因子に関わる神経ネットワークの一端ならびにこのネットワークが制御する依存症の表現型を解明することができた。
著者
石黒 浩毅
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は神経細胞接着因子NrCAM低発現が依存易形成性にnegativeに働くというヒト死後脳や遺伝子改変マウスの先行研究成果を発展させたものであり、依存形成の阻害に働く分子ネットの一部を明らかにすることにより病態解明と治療法の確立等に寄与することを目的とした。まずはNrCAM以外の神経i接着因子についても遣伝子多型と依存症との関連が示され、これら神経ネットワーキングに関わる分子が依存形成に重要な役割を果たすことがわかった。さらに、ニューロン由来およびグリア由来の培養細胞におけるNrCAM遺伝子に対してsiRNAを用いて発現抑制を行うこと、ならびにNrcamノックアウトマウスの脳の遺伝子発現解析を行うことにより、NrCAMが影響を与える分子群の遺伝子発現を網羅的に検討した。ヒト死後脳を用いたNrCAM遺伝子多型が及ぼす遺伝子発現変化の割合は約50%であると定量できたので、50%程度の遺伝子発現抑制効果を得たsiRNA実験系組織ならびにheterozygoteノックアウトマウス脳を解析した。それぞれの組織に対するイルミナビーズァレイ解析装置による網羅的遺伝子発現解析では、主にグルタミン酸系やGABA系、その他の神経系の分子をコードする遺伝子の発現変化が認められた。その内、培養細胞系およびノックアウトマウス脳において共に遺伝子発現変化が確認されたグルタミン酸系酵素分子は、その阻害剤がモルヒネをはじめとする依存性薬物への形成阻害を起こすことから、治療薬としての可能性を示唆するもめと考えられた。
著者
椿本 昇三
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本年度は、着衣で泳ぐ時の生理学的影響をみるために心拍数を用いて、着衣で泳ぐときの運動強度を推定した。また、最終年度のまとめを行った。研究費で購入したキャノン製心拍計で着衣泳中の心拍数の変動をみた。実験で得られたデータの整理はされたが、その結果は、まだ学会誌等に発表されていない。水着泳と着衣泳との10分間における泳ぎの平均心拍数の間は、10分間泳いだ後で、水着泳127.8拍/分(±23.45)、着衣泳116.9拍/分(±23.81)であった。このことから、水着泳と着衣泳の平均心拍数の間には有意な差(p<0.001)本研究のまとめは、以下のようなものである。着衣で泳ぐ時には、水着泳よりも大きな抵抗を受け、そのために普段の泳ぎができなくなる。特に、着衣で泳ぐときには体幹から下肢にかけて沈む姿勢になるために非常に泳ぎ難いことが指摘された。また、心拍数からみた運動強度では、水着泳と着衣泳には大きな違いがみられなかった。このことは、今後の課題でもある。最後に、本研究結果から、水泳指導における示唆としては、以下のことがあげられる。着衣泳では、低速のスピードでは、浮力を利用した浮漂技術の習得が重要であると思われる。また、全力泳のような速いスピードでは大きな抵抗を作りだし、疲労を早めることになると思われるので、着衣では速いスピードでは泳がない方がよいと思われる。
著者
大塩 寛紀 GRAHAM Newton NEWTON Graham
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、高い分子設計の自由度と電子状態の多様性をもつ金属多核錯体の特徴を生かし、適切な有機配位子を選択し、反応条件の試行錯誤を行うことにで、金属イオン間の相互作用や相乗効果による特異な物性・反応性の発現を目指して研究を行う。特に、自己組織化を伴う超分子錯体合成においては、生成物質を正確に予測することは困難であり、高度に分子設計することでプログラミングされた自己組織化を行うことは機能性分子材料の開発に不可欠であるといえる。本研究では特異な分子構造・結晶構造および電子状態をもつ超分子の創出を目的とし、以下の実験を行った。金属イオンの多核化に必要な架橋配位子であるトリアミン誘導体の合成を行い、これを原料とする新規配位子を合成した。さらに,これまで合成したコバルトクラスターや他の骨格構造をもつクラスターのコリガンドを変えることにより、反強磁性的相互作用をもつ多核錯体など、多様な磁性を示す物質系の合成に成功した。トリアジン骨格を持つリジッドな新規配位子をもちいた場合、金属イオン間に反強磁性的相互作用を示す、混合原子価多核金属錯体M_6(M=Ni, Co, Mn)の合成に成功した。また、異種金属錯体である{M_3M'_3}錯体(MおよびM'=Ni, Co, Mn)の合成にも成功し、元素分析・構造解析および磁気測定から、混合金属多核錯体であることが明らかとなった。これらの結果から、適切な配位子選択と合成条件の試行錯誤により、特徴的な磁気的相互作用を示す様々な多核金属錯体の構築に成功した。
著者
宮永 豊 向井 直樹 白木 仁 下條 仁士 石井 良昌
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

スポーツ選手に多発する軟部組織損傷の治癒促進を目的に高気圧酸素療法(HBO療法)の有用性を検討した。一連の実験的、臨床的研究により次の結果を得た。1.実験的筋断裂の修復:HBOの投与は筋線維の連続性の回復の促進とhydroxyprolineの代謝を亢進させたことから、コラーゲンの代謝の亢進が示唆される。2.実験的靭帯断裂の修復:HBOは組織学的に治癒の促進と線維芽細胞数の有意な増加(断裂3〜14日後)を招き、分子生物学的にはpro-α_1(I)mRNAの合成量の有意な増加が断裂7〜14日後に認められた。コラーゲン代謝に有利に作用していると思われる。3.設定条件の違いによる実験的靭帯断裂の修復:組織学的な治癒と線維芽細胞数の増加はHBO群の方が、また高気圧、長時間ほど有効であった。pro-α_1(I)mRNAの発現量は1.5〜2ATA(30〜60分間)のいずれの範囲でも増大していた。4.スポーツ選手の傷害やコンディショニングへの臨床的有用性:軟部組織損傷を生じたスポーツ選手22名に対し1.3〜2絶対気圧(ATA)、暴露時間30〜90分、平均3.6回投与したところ、17例、77%に改善がみられた。急性期における投与の方が軽快する傾向を認めた。軽度の耳痛5例以外は副作用はなかった。長野冬季オリンピックの代表選手7名のコンディショニング調整や試合後の筋肉疲労回復を目的とした。オリンピック期間中1.3ATA、30〜40分、平均2回の投与で全例に改善効果や良好なコンディショニング効果が得られた上に、高い競技能力を発揮させることができた。5.血清乳酸の除去:男子6名に疲労困憊にいたるまでの自転車駆動後の乳酸値の除去が1.3ATA、2ATA条件下で促進された。しかも1.3ATAの方がより有効であった。6.安全性の検討:自覚的には「体が楽になった」、「気分よく寝てしまった」、「投与後にリラックスした」など多くは肯定的な感想であったが、副作用として軽度な耳痛、頭痛がみられた。最近のフリーラジカル分析システムによる活性酸素の測定では投与前平均210.6、投与後201.2といずれも正常範囲であった。7.その他:トレーニング効果なども期待されるが、今後の検討課題とする。以上より高気圧酸素療法(2ATA以下)は傷害治癒促進に有用性が高いことが実証された。
著者
近藤 良享 野津 有司 真田 久 河野 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

この研究は、国内外のスポーツ界における薬物等ドーピングを防止するために,教育プログラムや啓蒙を行うための基礎的資料を得ることを目的とした。本研究では,まずアンチ・ドーピング対する実態を把握するために,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)と日本アンチ・ドーピング機構(JADA)との共同プロジェクトと絡めて、ドーピングに対する意識調査項目(60項目)を作成し、日本の体育系大学のトップレベルの選手、288名に対する予備調査を実施した。この調査結果をふまえ、JOC五輪強化指定選手およびJADA加盟団体選手に対する意識調査(調査項目を10項目に精選)を2,800名に行った。さらに,JADA加盟団体所属選手らと同じドーピングに対する意識調査を体育・スポーツ系のT大学の学生(744名)に実施した。その結果,T大学生とJADA調査との比較検討から,今後の日本におけるアンチ・ドーピング教育の多くの課題が引き出された。具体的には、アンチ・ドーピング意識が,JADA調査の選手らよりもかなり低く,アンチ・ドーピング意識が不完全であること、また,ドーピングに関する知識・情報が,大学生も日本代表選手らへの提供も全く不十分な状況が示された。アンチ・ドーピングの教育・啓蒙のための教材づくりや支援システムを構築する必要性が浮き彫りにされた。世界アンチ・ドーピング規程へのWADAとIFsの締結期限が2004年8月のアテネ開会式前日であり、これより国際レベルでのアンチ・ドーピング活動が開始された。さらにユネスコ国際条約として,2006年2月の政府関係機関の締結が終われば、アンチ・ドーピング運動が国際スポーツ団体・国家レベルで一体となって展開されることになり、ハード面のドーピング撲滅への足がかりが整うが、未だに不十分な健全なアンチ・ドーピング観の形成を行うためのソフト開発が求められる。