著者
礒田 正美 大谷 実 二宮 裕之 溝口 達也 岸本 忠之 小原 豊 讃岐 勝
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、授業力を改善する教師教育教材書(含むビデオ)を海外共同研究者等と日本語・英語で開発することを目的に行われた。ビデオ教材と日本語の教員研修書、英語版教材書の開発がおこなわれ、教師向け日本の指導法教材書出版、算数教科書英語版、教師教育用算数問題解決教科書が開発された。 本研究の成果を教員研修ツールとして採用した国・機関は、オーストラリアNSW州教育省、タイ教育省教員研修プロジェクト、東南アジア教育大臣機機構などである。成果は、国際的に注目され、筑波大学・アジア太平洋経済協力国際会議をはじめとする著名な国際会議で全体講演の形などで報告された。
著者
日下 博幸
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

つくば市のヒートアイランドの実態と要因を解明するために、2008年~2010年の夏季と冬季に道路沿いと公園内で気温の定点観測を実施した。その結果、2010年8月平均と2010年1月平均としてのヒートアイランド強度はそれぞれ1.6℃、0.8℃であることがわかった。また、規模の大きな公園ほど気温が低いこと、小規模な公園はその周囲の街区の気温とほとんど差がないこともわかった。つくば市の気温分布は都市規模のヒートアイランド効果と局所的な土地被覆効果の重ね合わせによって形成されていることがわかった。
著者
田中 喜代次 奥野 純子 重松 良祐 大藏 倫博 鈴木 隆雄 金 憲経 鈴木 隆雄 金 憲経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

要介護化予防を目的とした包括的指針作成において,1)下肢および上肢筋力,平衡性体力,歩行能力,移乗能力および日常生活動作の遂行度に基づく身体機能評価が望ましいこと,2)運動プログラムは体力差や年齢などを考慮し,教室において集団指導,小集団指導または個別指導を適宜選択し,さらに運動習慣化のために在宅運動プログラムの提供が必要であること,3)運動指導ボランティアとその活動を取り巻く自治体や関連団体との連携を強め,長期的活動形態を構築することが必要となることの3点が重要であると考えられた.今後はこれらの研究結果を踏まえ,要介護化予防事業をさらに発展させるために,実践的な検証を推し進めていきたい.
著者
渡邊 達也
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

周氷河地形は、岩石・土壌中の水分の凍結融解作用、永久凍土の破壊や変形など寒冷地域特有のプロセスによって形成される.周氷河プロセスには気候・水文・地質条件など様々な要因が影響するため、未解決な問題が数多く残されおり、詳細な現地調査・観測が必要とされる。本研究では、代表的な周氷河地形の一つである構造土の内部構造、形成環境や変形が生じる条件を理解することを目的とし、特にローカルなスケール(同一気候条件下)で多様な構造土が形成される要因の解明を目指した。そこで、北極圏スピッツベルゲン島のスバルバール大学に長期滞在し、多様な構造土の内部構造調査や土層変形・破壊、地温、土壌水分、積雪深の観測を実施した。調査結果に基づいて、各構造土の分布と地盤・水文条件の関係や温度条件について調べた。その結果、円形土と大型多角形土の分布域では粘土含有量,飽和度,凍結構造に明瞭な違いがみられた。また、急冷による凍結クラックを形成プロセスとする大型多角形土は、円形土に比べて冬季の地温低下が著しい傾向があり、積雪深や地盤の熱的性質の違いがその分布に影響しているとみられる。また、円形土を取り巻くように発達する小型多角形土は、円形土の凍上・沈下に対応するように収縮・膨張する変形パターンを示しており、大型多角形土とは変形条件が異なる可能性が示唆された。研究経過に関して、スバルバール大学にて開催されたヨーロッパ永久凍土学会でポスター及び野外巡検コースでの発表を行った。
著者
岡崎 敏雄 嶺井 明子 一二三 朋子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、持続可能性の内容重視日本語教育における学習者意識の変容を分析する。持続可能性とは、グローバル化のもとで加速化する環境危機、開発、貧困、雇用・社会保障不安等の諸困難により持続不可能な、個人・社会の転換を目指すライフスタイル、社会経済のあり方を指す。従来の内容重視の言語教育は、専門学習の準備として行われてきた。国内外でグローバル化への対応に向け、教育の専門化・細分化による産業界即戦力養成が急である。このような専門化・細分化に対して個人のライフスタイル、社会経済の転換など人としての生き方に関わるジェネラルな教育を横断的カリキュラムで行う教育システムの形成が必要である。本研究の対象となる日本語教育は、そのようなリベラルアーツ教育を目指す場として実現する点に独創的な価値がある。本研究では、従来取り上げられなかった学習者が持続可能性と自分との関連(レラヴァンス)を見出す切り口を多面的に設定する日本語教育により促される意識の変容を取り上げる一例(グローバル化に対応するための構造改革による雇用・社会保障上の不安等)持続可能性の社会レベルでの揺らぎに対する(「就職・子育ての選択」「就職と直結する専門学習など」学習者が迫られる切実な問題に対する「問い」(自分はどんな生き方をしていくのか(行動基準)など)の切り口。その問いを考える手がかりとして、日本語による資料・文献の読み、ビデオ視聴、タスク活動、内省レボート記録を実施し、分析結果を公刊した。
著者
山下 浩
出版者
筑波大学
雑誌
言語文化論集 (ISSN:03867765)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.238(1)-230(9), 1989
著者
長崎 勤 宮本 信也 池田 由紀江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では[研究I]の「心の理解」の発達機序についての解明と、[研究II]の「心の理解」の発達援助に大別して研究を行った。[研究I]では、0-1歳の取り上げ場面での、実験者による応答条件と非応答条件の比較検討を行った結果、「待つこと」は、15ヶ月以降、応答条件が非応答条件に比べ持続時間が長くなり、高次な手段に変換するようになり、1歳半ばから他者意図の想定が明確になることが示された。また、1-2歳児における誤提示条件への応答の分析から、1歳半頃から「他者意図の気づき」の反応がみられ、その後、相手の反応に応じ伝達手段の変更を行い、2歳前半では大人の関わり方に左右されず、伝達手段を修正できた。2、3歳児の母子場面の心的状態語の表出を分析した結果、2歳では自己欲求に関する発話が中心であり、3歳では自己叙述が増加し、他者叙述も増加することが示され、自己から他者へ、欲求から叙述へという発達過程が考えられた。高機能自閉症児の「心の理解」の発達と談話の発達の関係を分析した結果、誤信念課題等の「心の理論」課題の通過群では、自分の過去経験についての語りは他者や自己の心的状態に言及することが多かったが、未通過群ではそれらが少なく、また未通過群は出来事を時系列的に並べず並列させていた。[研究II]では「『心の理解』発達援助プログラム(MAP)」を開発し、発達障害児に対し発達援助を行った。広汎性発達障害児およびダウン症児に対し、「宝探しゲーム」やおやつ場面を用いて他者の欲求意図理解と信念理解の発達を援助し、「心の理解」発達の効果を認めた。また、自閉症児に対し相談機関と通園先の保育所において、小集団の模倣遊びと鬼ごっこルーティンを用いた指導を行った結果、指導場面で役割の自発的遂行が可能になった。
著者
中井 直正
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本科学研究費補助金による研究の目的は、20GHz帯受信観測システムを開発製作し、筑波大学の近くにある国土地理院つくば32m鏡に搭載して電波望遠鏡として整備し、水メーザーの観測からセイファート銀河中心核の構造を明らかにすることである。特にセイファート銀河の1型(可視光のスペクトル線が極めて広い)と2型(狭い)の違いが従来言われていた降着円盤を見る角度が異なるため(統一モデル)だけではなく、降着円盤の厚さに薄いものと厚いものがあり、降着円盤を同じ斜めの方向から見たとしても薄いものは1型に、厚いものは2型に見えるという我々の仮説を立証することが目的である。研究成果の主なものは以下のとおりである。1.国土地理院32mアンテナに20GHz帯受信観測システムを開発製作し搭載した。アンテナの主ビームの半値幅(角度分解能)はHPBW=100"、主ビーム能率と開口能率は仰角40度付近でそれぞれ50%と42%である。受信機の周波数帯域は19.5-25.2GHzであり、中間周波数は4-8GHzである。大気込みのシステム雑音温度は冬季天頂で60-80K程度と良好な値が得られた。分光計はフーリエ変換型デジタル分光計で周波数帯域幅1GHzを1万6千点の分光を行う。望遠鏡制御ソフトウェアーシステムもVLBI(超長基線電波干渉計)観測とは独立に、単一鏡観測用に独自開発を行った。これらにより、22.235GHzにある水メーザーの定常観測が可能となった。2. 開発した上記観測システムによりセイファート銀河の水メーザーの速度モニターを開始した。またVLBI観測により2型セイファート銀河IC1481の水メーザー円盤が厚いものであることを明らかにし、我々の仮説を証明した。
著者
好井 裕明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「ヒロシマ」をめぐる一般映画、アニメーション、ドキュメンタリー作品などを、可能なかぎり入手し、その映像のなかで被爆やその後の情景など「ヒロシマ」に関連することがどのように描かれているのかを解読した。その結果、「ヒロシマ」の具体性の稀少と一般的な核イメージの過剰を確認した。つまり、被爆した瞬間、直後の惨状など歴史的な時間に依拠された「ヒロシマ」を表現する映画が稀少である一方で、より一般的に原水爆の恐怖、悲劇を利用する作品が過剰であったのである。そのうえで、いわば「ヒロシマ」表現の原点である映画における表現のありようを詳細に解読した。具体的にとりあげたのは『原爆の子』(新藤兼人監督、1952年)、『ひろしま』(関川秀雄監督、1953年)、『はだしのゲン』(真崎守監督、1983年、アニメーション)である。3作品はそれぞれ独自の「ヒロシマ」表現を持っている,ことを例証した。他方、こうした作品は製作後半世紀がすぎたものであり、古い映像と言える。原点としての「ヒロシマ」映画が、現代の若者にとってどのような意味があるのかを例証するために、これらの映画を見せ、感想レポートを作成させた。レポート内容を整理し解読を試みた結果、原点としての映画は、現代においても、十分に「ヒロシマ」を理解するうえで意義あることが確認された。過去の作品として整理するのではなく、こうした映画を今後どのように活用するのかを考えることは「ヒロシマ」理解において極めて重要な作業であることも確認した。他に、今後の課題として、強大な破壊力の象徴としての核イメージの解読、「ヒロシマ」をめぐるTVドキュメンタリーの詳細な解読などをあげることができた。
著者
池田 潤 乾 秀行 竹内 茂夫 IZRE'EL Shlomo
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

紀元前2-1千年紀の北西セム語文書がXML でマークアップされ、個々の言語データが位置情報を有する言語データベースを検索し、検索結果を地理情報システムに送って地図化するプログラムのパイロット版を作成し、それを用いて事例研究を行った。一例として、動詞語尾-(n)naや定形動詞として用いられる不定詞の地理的分布を可視化し、それらがフェニキア以北から南へ伝播した言語的改新であったという新たな知見を得た。
著者
中込 四郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

スポーツ競技者の現役引退並びに運動部集団からの離脱後の適応過程について、主に、自我同一性の再確立に着目して以下のような側面から研究を行った。(1)部離脱に関する相談事例の提示:研究者が心理相談室で担当した運動部離脱に関する6事例をまとめ、部離脱が危機的状況あるいは同一性再確立の困難な状況もたらしていることを示した。(2)退部後の再適応に寄与する要因:退部後かなりの時が経過し、現在、比較的適応状態にある元大学スポーツ競技者10名ドロップアウトならびにトランスファー者)への面接調査により、再適応を促進したと考えられる心理社会的要因を明らかにした。(3)引退後の再適応過程の統合モデルの構築:わが国を代表する元アマチュア競技者8名への面接調査を行い、具体的な事例提示並びに、それらの資料から再適応過程を説明する一般化された「統合モデル」を提示した。(4)各同一性再体制化のタイプごとの特徴:T大学時代に活躍し、さらに卒業後何年か引き続き現役競技者としての競技経験を有する元スポーツ競技者115名に対して調査を試みた。ここでは、それまでの事例研究で主張したことを中心に、操作的な方法により確かめた。(5)再適応への心理的援助の方法:本研究の一貫として行った文献研究の中から、すでに開発されているいくつかの心理的援助プログラムの紹介を行った。今後は、プスポーツ選手に対象を拡げ,同種の研究を試みる予定である。また、それまでの研究成果を踏まえて、再適応を促進するための援助プログラムの開発を行いたい。
著者
細川 淳一 田神 一美
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

競技スポーツ選手として、思春期から成人に至るまで激しい運動を続けてきたことが、その後の健康状態にどのような影響を及ぼすかを衛生学的観点より研究した。競技スポーツ選手は、現役引退に際して永続的な運動量減少を体験する。この時期の一般人は、成人病リスクが高まり運動を推奨されるが、この時期に運動量を低下させる競技スポーツ選手の場合、その後の健康にマイナスの要因となっているか否かを動物実験モデルにより細胞性免疫機能の一つであるナチュラル・キラー細胞の活性を指標として検討した。水泳運動中止13週間後では、対照群との間に細胞性免疫能に明かな違いは認められなかった。つまり、運動の有無にかかわらず、健康な状況下では細胞性免疫機能に検出可能な差異は現れないと考えられる。そこで、免疫抑制剤(シクロスポリン)を投与し、この負荷に対する耐性をナチュラルキラー細胞の活性を指標として測定することにした。運動トレーニングとして、ラットに穏やかな流水遊泳(30分/日、4回/週)を17週間(7週齢から24週齢まで)負荷した。負荷中止後9日目に50mg/kgのシクロスポリンを腹腔投与し、10日目にネンブタール麻酔下に開腹して無菌的に脾臓を摘出、ホモジナイズした後、これをコンレー・フィコル液に重層して比重遠心分離する方法で白血球を得た。この白血球と^<51>CrでラベルしたK562細胞とを混ぜ合わせて4時間培養し、この間に破壊された標的細胞から培地中に流出した^<51>Crをガンマー線カウントする方法で測定した。比較は運動負荷を行なっていない対照群との間で行なった。この結果、運動はナチュラル・キラー細胞に対する免疫抑制剤の作用を緩和することが分かった。この作用を通じて運動は、腫瘍などの成人病から防護していることを示唆するものと考えられる。
著者
鈴木 英一
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

最終年度の本年度には,過去二年間の研究を踏まえ,インターネット上の英語データから作製する言語データベースを英語研究・英語教育に利用し易いフォーマットに変更する方法を検討し,インターネットから良質の英語のウェブページを収集し,それから英語のデータベースを作成するための方法を検討した.このような方法をできる限り容易に実現できるように次のような検討を行った.(1)どのようなフォーマットをもつ言語データベースが一般的に最も柔軟で多目的であるかの検討(2)これまでの言語データベースを使用した経験に基づいた,言語研究・言語教育に最適なフォーマットの検討(3)データベースのフォーマットを使用者の希望に応じて再構成できるプログラムの検討(4)英語データの検索→英語文の抽出→英語データベースの作製→データベースのフォーマットの変更という手続きを簡単に行う方法の検討英語研究と英語教育に最も適切なデータベースの形式は,一つの文が一行になっている,すなわち,一つの英文が改行によって複数の行に分けられていないフォーマットであることが確認された.このような形でインターネットのウェブページを最も容易に利用できる方法は,MicrosoftやGoogleやYahooが提供する,いわゆるDesktop Searchと呼ばれるものである.これは,使用者のハードディスクの内容とインターネットのウェブページをシームレスに検索してくれるものである.また,データベースを作成するためにはhtmlファイルを効果的にテキストファイルに変換する必要があるが,最近,「html→テキスト変換」のソフトウェアがフリーウェアを含めて,かなりのものが出回っているので,どれがより使いやすいかを詳細に検討した.Desktop searchや「html→テキスト変換」によって得られたデータは,出典をタグとして付加し,さらに,行数も付け加えることによって,使い易くなることが明らかになった.今後は,3年間の研究を踏まえて,データベースの作成のためのプログラムの紹介や利用方法,作成された英語データベースのサンプル,英語データベースを利用した英語研究や英語教育への応用にいてまとめて,公刊したいと考えている.
著者
八神 健一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、パルボウイルス非構造タンパク(NS)がTリンパ球にDNAメチル化を誘導し、アポトーシス抵抗性や細胞増殖性等の形質変化を起こすことを明らかにし、in vivoにおいてNSの発現によりコラーゲン誘導性関節炎の発症率への影響を検討した。NSを発現させたマウスTリンパ球は大半の細胞がアポトーシスにより死滅したが、生存細胞ではDNAメチル化の亢進によりBmperの発現が抑制され、ウイルス再感染抵抗性を獲得することが明らかとなった。また、NS発現ベクターを接種したDBA/1マウスにコラーゲン関節炎を誘導したが、その発症率は対照群との間に有意な差は認められなかった。
著者
畔上 泰治
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

第二次世界大戦後のドイツにおける教育は、戦争に対する深い反省から出発した。取り分けアメリカ合衆国やイギリス、そしてフランス占領地区においては、ナチ政権がユダヤ人やシンティ・ロマなどを「共同体異分子」とし、暴力を用いて排除したことに向きあい、徹底した脱ナチ化政策が実行された。こうした中において宗教や言語など文化を異にする人々との共存を目指した異文化・他民族理解教育は大きな位置を占めていた。その重要性は、東西分裂後の西ドイツにおいては、「奇跡的な経済復興」にともなう「外国人労働者」およびその子弟の増加を前に、ますます高まっていった。その中においては、非キリスト教文化圏出身者、取り分けトルコ人労働者・子弟との共存が大きな課題であった。1990年の東西ドイツ統一後は、厳しい社会的な現実に対する不満が次第に顕在化するようになった。統一にともなうインフラ投資のための増税、経済不況による高い失業率などを背景に、ネオナチ等の極右勢力の不満は外国人や東欧からの帰国移住者、難民など社会的弱者に向けられ、暴力行為が頻繁に起こるようになった。これは戦後一貫しで脱ナチ化を唱えてきたドイツの教育界にとって、大きな衝撃であった。その中でまた、マルチメディアの発達が青少年の行動に与える影響も大きなテーマとして登場してきた。即ち、インターネット等を通した外国メディアとの接触は、異文化理解教育に大きな貢献をなしうる一方で、他方においては犯罪の助長という負の側面をも露呈した。いま、インターネット、コンピュータゲーム、CD、DVDなどのメディア・ソフトを通した多量の情報を前にして、如何に若年者を保護するかという課題が突きつけられている。
著者
宮本 陽一郎 鷲津 浩子 竹谷 悦子 馬籠 清子 ロンベール ラファエル
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

筑波大学プレ戦略イニシアティブ「〈知識のコズモロジー〉、あるいは〈わかる〉とはどういうことか」と〈デザイン〉をキーワードにした共同研究を行なった。また『アメリカ文学評論』21号〈特集ネットワーク〉(2008年)と22号〈特集デザイン〉(2011年)、共著本『知の版図』(悠書館、2008年)を出版した。
著者
赤木 和夫 朴 光哲
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

導電性高分子のポリアセチレンにらせん構造を付与したヘリカルポリアセチレンを合成し、さらにその種々のキラル化合物を合成することにより、不斉液晶場でのアセチレン重合を展開した。(1)キラルネマティック液晶からなる不斉反応場でアセチレンを重合することにより、らせん構造をもつヘリカルポリアセチレンを合成した。ポリアセチレン鎖およびそれらの束であるフィブリルのらせんの向きは、左旋性と右旋性のキラルドーパントを使い分けることで自在に制御できることを見出した。(2)次に、軸性キラル化合物以外のドーパントして、不斉中心を持つフェニルシクロヘキシル化合物を合成した。軸性キラルバイナフトール誘導体よりも半分以下の旋光度をもつこの分子系からなる不斉液晶場においても、ヘリカルポリアセチレンが合成できることを示した。同時に、ヘリカルポリアセチレンのねじれの度合いは、キラルドーパントの旋光性によって制御できることを明らかにした。(3)軸性キラルバイナフトール誘導体や含不斉中心化合物をチタン錯体の配位子として用いることで、キラルドーパントのみならず、触媒能をも有する新規キラルチタン錯体を合成した。これを用いた不斉反応場においても、ヘリカルポリアセチレンが合成できることを見出した。(4)基板に対して垂直に配向するホメオトロピックなネマティック液晶に、軸性キラルバイナフトール誘導体をキラルドーパントとして加えることで、垂直に配向したキラルネマティック液晶を調製した。これを反応場とするアセチレン重合により、フィブリルがフィルムの膜面に対して垂直に配向した、垂直配向へリカルポリアセチレンを合成することができた。
著者
赤木 和夫 後藤 博正 朴 光哲
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

キラルネマチック液晶を溶媒とする不斉反応場でのヘリカルポリアセチレンの合成を展開するとともに、らせん状モルホロジーの制御を目指した。(1)軸不斉キラルビナフティル誘導体をキラルドーパントしてネマティック液晶に添加して、キラルネマティック液晶を調製した。これに所定量のチグラー・ナッタ触媒を加えた後、5テスラーの磁場を印加して、キラルネマティック液晶が一方向に配向したモノドメイン構造を構築した。配向した不斉反応場でアセチレンの重合を行い、磁場方向に平行にかつ巨視的に配向したヘリカルポリアセチレン薄膜を合成することに成功した。従来の通説では、キラルネマティック液晶に磁場を印加すると、らせん構造が消失しネマティック液晶になるといわれていたが、本研究により、少なくとも5テスラーの磁場強度を印加する限りでは、液晶のらせん構造は壊れることなくキラルネマティック相が維持されたまま配向することがわかった。(2)ヘリカルポリアセチレンのねじれ方向をより一層厳密に制御すべく、ネマティック液晶に加えるキラルドーパントを分子設計し、種々の軸不斉ビナフチル誘導体を合成した。その中で、ビナフチル環の2、2'位をメチレン鎖で連結した架橋型バイナフチル誘導体は、非架橋型と同じ旋光性(R体ないしS体)であっても、ネマティック液晶に加えた段階で逆のらせん構造を形成し、結果的にヘリカルポリアセチレンのねじれも逆転することを見出した。すなわち、ビフェニル環同士の相対的ねじれ方向は同じであっても、ねじれの度合いが架橋型と非架橋型で異なるため、母液晶のネマティック分子のねじれ方向をも変えうる作用が働いていると理解された。すなわち、ヘリカルポリアセチレンのねじれ方向を制御するには、同じキラル化合物でR体とS体という二種類の旋光性を使い分けるアプローチの他に、同じR体ないしS体のビナフチル誘導体でも架橋型と非架橋型に分子修飾することで制御可能であることが明らかとなった。
著者
住 斉
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

化学反応の速度に関する標準理論は遷移状態理論(TST)である。ところが80年代に入って、種々の溶液反応においては溶媒のゆらぎが遅いためにTSTの基本仮定が成立しないことが明らかになり、非常な注目を集めてきた。これを記述するため二つの異なる理論の流れが生じた。一つはGrote-Hynesの理論(1980年)である。他は住と(1992年度ノ-ベル化学賞受賞者)Marcusの理論(1986年)であり、住は1991年この住・Marcus模型の与える反応速度定数の一般形を明らかにした。実験においては1992年浅野(大分大工)は、圧力により溶媒粘性率を大幅に変え、TSTが成り立つ領域から非TST領域までを覆う光異性化反応の速度定数のデータを提出した。1994年住は浅野と協同して、このデータが住理論の与える光異性化反応速度の一般式を検証することを明らかにした。今年度は、このデータとGrote-Hynes理論との対応を調べた。溶媒中における溶質分子の溶媒和構造は、溶媒の熱ゆらぎにつれてブラウン運動ゆらぎをする。この揺らぎが遅いことがTSTが成立しない原因である。このブラウン運動ゆらぎの動力学は、ゆらぎを励起する乱雑な力とそれを減衰させる摩擦力によって規定されている。Grote-Hynes理論では、摩擦力の相関時間が基本的に重要な役割を演ずる。もしこの理論が適用できるならば、観測データを再現するのに必要な摩擦力の相関時間が観測データ自身から得られることを明らかにした。一方、揺動・散逸定理により摩擦力の相関時間は乱雑力の相関時間に等しい。従ってそれは、理論的に、溶質分子の異性化部分と同程度の波長をもつ溶媒励起のエネルギーの広がりに関係している筈であり、これも他の実験から推定できる。このことを基礎に、Grote-Hynes理論は実験データを記述できず、その適応性には基本的問題点があることを明確にした。