著者
鈴木 道子 片山 一男
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.262-273, 2012 (Released:2012-09-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】諸外国の栄養専門職養成システム及びその関連事項の概要を明らかにし,日本のシステムとの比較を行う。【方法】国際栄養士連盟(ICDA)のホームページ及びICDA加盟栄養士会の英文ホームページの掲載内容から,栄養専門職の資格,その養成システムの概要とともに,関連事項(情報提供者である栄養士会のプロフィール等)を抽出する。【結果】(1)ICDA加盟42カ国のうち,職業上の肩書及びその認定機関を記載しているのは約半数であり,その認定機関は栄養士会を含め多様である。(2)資格認定のための学士等の取得条件については26カ国で記載され,その多くが学士以上の条件をつけているが,一部はそれ以外としている。(3)実習プログラムについては,24カ国で記載があり,500時間以上とされるICDAの国際基準を満たした実習プログラムが含まれていないとしている国は,台湾,日本,フランスの3カ国である。(4)養成数は記載がある国の中では,アメリカ合衆国の年間3,000人が最多である。(5)教育内容は,学術と実践の両面からなり,その内容は基礎的科学から応用分野まで幅広い国が多い。【結論】諸外国の栄養専門職養成システムは多様であるが,日本における実習要件の国際基準不充足は特記すべきである。諸外国の養成システムに関する研究を進めながら,日本におけるより良い栄養専門職養成システムを構築していく必要がある。
著者
松本 豊寿
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.473-482, 1960-09-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
6

Yamaguchi and Sumpu which newly became capitals of “Han” in the middle of the 19 th century had peculiar characteristics in their town-area formation. Firstly their castles had been turned into administrative offices and had lost their military significance. “Samurai Yashiki” existed in fact, but “Samurai Machi” had not been set up yet. It was a residental quarter for scattered bureaucratic retainers. “Machiya” had lost their privileged township characteristics. “Machiya” had been abolished and the phenomenon of confining a special trade to a special section had ceased to exist, so that business in general had been diffused all over the town. A new centrall street had taken the place of the old business center, and the core of the town had moved to the centrall street from the castle. In short, this new capital was by no means a castle-town, and the writer of this article calls this new capital “Hanto” and considers this phase the last stage of a feudal castle and the forerunner of a modern city.

1 0 0 0 OA 『波』覚え書

著者
増山 学
出版者
京都大学教養部英語教室
雑誌
英文学評論 (ISSN:04208641)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.109-122, 1965-03
著者
渋谷 由里
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.p84-117, 1993-06

This paper aims to explain the logic and actual conditions of the rule over regional society, and regional society's wishes for and participation in politics in Fengtian under the regime of Zhang Zuolin (1916-28). Specifically, it considers the civil administration and finances of Fengtian, during the Baojing Anmin 保境安民 period (1922-24), with special attention given to Wang Yong Jiang, a central figure from the last years of the Qing to the rebellion of Guo Songling 郭松齡. Wang aimed for the stabilization and the independence of the administration and finances of Fengtian, being problems since the last years of the Qing. To accomplish his goals, it was necessary for him to make the Fengtian Army contribute to public order, to absorb regionally influential men into the lower levels of the regime, and to reflect in politics this group's desire for regional development. While the desires of locally influential men were manifested in the Rights Recovery Movement and while there were some successes such as the construction of railways and the establishment of Northeastern University 東北大學, political policies which demanded the long-term plan of the actualization of rule in the areas of financial stabilization and civil administration were not maintained under the strengthening of the military governance. So, it could be said there was a kind of limit. Nevertheless, for regional society, the Zhang Zuolin regime was the first regional government that may be judged as having made some contribution to society, and the first in which men from the Fengtian region assumed responsibility for both military governance and civil administration.
著者
秋谷 行宏 恩田 昌彦 古川 清憲 鈴木 英之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1781-1787, 1998 (Released:2011-08-23)
参考文献数
24

血清総コレステロール値を用いて術後感染症の早期診断について検討した. 1995年7月から1997年6月までの胃・大腸切除症例111例を対象に術後10日目までの術後感染の有無により感染群 (13例) と非感染群 (98例) に分けた. 術後3日目の血液生化学検査項目を含む臨床データを両群間で単変量解析で比較したところ, 感染群のリンパ球数, 総コレステロール (TC), 総蛋白は有意に低く, 体温, 脈拍数, CRPは高かった. 多変量解析のロジスティック回帰分析では臓器別で, 胃手術例ではTCを含む8項目, 結腸手術例ではTCを含む3項目の組み合わせが良好であり, overallの正診率はそれぞれ95.1%, 95.4%, sensitivityはともに80.0%であった. なお, 直腸ではoverallの正診率は高かったがsensitivityは低かった. 以上より, 術後感染症は, 術後3日目の総コレステロールを含む臨床データを用いたロジスティック回帰分析から早期診断可能であった.
著者
BAVIN P. M. G.
雑誌
J. Chem.
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1614-1615, 1959
被引用文献数
2 10
著者
塚原 直樹
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、「カラスがディストレスコールのどの音響的特徴を忌避するか?」を明らかにする。動物の声帯模写を得意とする演芸家の協力を得た鳴き真似などにより、ディストレスコールの音響的特徴を変化させた音声を用意し、カラスに聞かせ、忌避行動が誘発された音声とそれ以外を比較することで、忌避行動の誘発に重要な音響的特徴を炙り出す。本研究は、知能が高いとされるカラスの認知能力や、音声コミュニケーションに関する種を超えた普遍性に迫り、動物心理、行動生態、行動進化に関わる学術的価値の高い発見につながることが期待できる。また、カラス被害を防ぐ方策の開発に繋がり、応用研究と直結する社会的意義の高い研究課題である。
著者
新居 直祐
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.160-170, 1980
被引用文献数
2 11

カキ果実 (品種富有) の肥大生長を解析するために, 果径と果実重の生長速度及び相対生長率の季節的変化並びに果柄部維管束の発達過程について調査を行った.<br>生長速度からみて, カキ果実の肥大生長は2重のS字曲線を描いた. 第1期生長期 (開花期~8月上旬) では果径肥大の生長速度の上昇とピークに達する時期が, 果実重より数週間早く, また生体重増加の生長速度が乾物重増加のそれより約1週間早かった. 第1期の果径生長期には, 果実の水分含有率が高まり, 7月中&bull;下旬の果実生体重の増加期には乾物率の低い期間が続いた. なお, 開花直後の2週間は乾物率の高い期間があったが, これはこの時期, 果肉中に占めるタンニン細胞の密度が高いことと関連していた.<br>第2期の生長停滞期には, 果実は乾物率が高まった. また種子重並びに種子の乾物率は, 顕著に増大した.<br>第3期生長期では, 果実は急速に肥大して果実重が増大するとともに, 乾物率も増加を続けた.<br>果径肥大の生長速度は第1期が第3期より高く, 生体重については第1期と第3期でよく類似し, 乾物重では第3期で顕著に高かった.<br>6月から7月の果実発育の初期には, 種子と果実重との間に高い正の相関関係がみられたが, 1果実中に含まれている種子数別にみた果実の肥大曲線には著しい相違はみられなかった.<br>果径と果実重の開花後の相対生長率 (RGR) のピークは開花後数日間にみられ, その後しだいに低下し, 第3期にわずかに高まった.<br>果柄径の肥大は第1期で著しく, 8月中旬まで肥大が続き, その後はほぼ一定となった. 果柄部横断面の維管束の発達状況をみると, 開花約1か月前にすでに維管束の分化がみられたが, 道管, 師管の発達程度はまだ小さかった. その後開花期にかけて道管数, 道管径並びに師管, 随伴細胞の分化, 発達も著しくなり, これらの生長は開花4週目ごろまで顕著であった. 果実生長の第2期には維管束の発達も停滞する傾向がみられたが, 果実生長の第3期になるころより再び木部, 師部の発達がみられるようになり, 果実の肥大生長とよく対応していた.
著者
久我 貴之 重田 匡利 矢野 由香 坂本 龍之介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.114-119, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
11

消化器癌化学療法患者は有害事象や癌進行で食欲不振の症状がみられ,栄養低下や体重減少をきたし易い。イノラス®配合経腸用液(本剤)は,少量で効率的に栄養素やエネルギーを補給する高濃度半消化態経腸栄養剤である。2019年7月から2020年1月に本剤を投与された21例を対象に投与前後のアルブミン値(Alb),コリンエステラーゼ値(Ch-E),リンパ球数(Lymph),ヘモグロビン値(HGB),体重(BW)により栄養保持および体重維持効果を知ることを目的として,後ろ向き研究を行なった。また投与中止理由等も検討した。男性15例,女性6例で年齢は57~87歳で,癌種は胃8例,大腸7例,胆管4例,食道3例であった。病期分類はⅡ:1例,Ⅲ:6例,Ⅳ:8例,再発:7例であり,2020年2月時点で生存16例,死亡5例であった。投与期間は6~210日で,中止19例の理由は甘すぎ8例,PD6例,食欲改善4例,手術1例であった。全症例で服用前後のAlb,Ch-E,Lymph,HGBおよびBWの変化量に差はなかった。生存群が死亡群と比較してCh-E変化量が有意に良好であった(p=0.0258)。服用期間30日以上群が未満群よりBW変化量が良好な傾向を示した(p=0.0696)。Stage 3以下群がStage 4又は再発群よりAlb変化量が良好な傾向を示した(p=0.0932)。本剤は消化器癌化学療法患者において栄養及び体重維持の補助に役立つ可能性が考えられた。
著者
時松 一成 門田 淳一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.155-159, 2006-07-31
参考文献数
20
被引用文献数
1

2002年に発売開始されたミカファンギンや2005年に発売開始されたボリコナゾールは, アスペルギルス属に対して抗真菌活性を有する薬剤である. 欧米における大規模臨床試験の結果, ボリコナゾールは, アムホテリシンBに比べ, 侵襲性肺アスペルギルス症に対し優れた有効性を有し, ミカファンギンと同じキャンディン系抗真菌薬であるカプソファンギンは, 好中球減少期における発熱に対し有効性を示した.<br>このように, 今後, ますますアスペルギルス症に対する治療薬剤の選択肢は増加し, その治療方法も大きく変化すると予想される一方, 薬剤選択の多様性から生じる臨床現場の混乱を避けるため, 新たな標準的治療法の確立が望まれる.<br>本稿では, 新規抗真菌薬をめぐる問題として, non-<i>fumigatus Aspergillus</i> の中でも最近増加が懸念されている<i>Aspergillus terreus</i> 感染症に対する新規抗真菌薬の有用性と, 新規抗真菌薬使用下に発生するブレイクスルー感染について記述した.
著者
小林 謙一 國木田 大 遠部 慎 下釜 和也
出版者
中央大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

ユーラシア各地の旧石器時代の終わり・土器の始まりから土器の普及まで約10,000年間を対象とし、土器型式による相対年代と多様な測定法によってきた自然科学的年代を整理し、不足部分を新たに測定して、実年代の枠組みを完成させる。朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部、中近東など、年代測定を集積して時期区分を相互に比較できるよう対比年代を明確にし、土器の広がりが伝播か多元発生かを明らかにする。実年代でのユーラシア先史文化の枠組みを完成させ、環境変動と文化史的変化と検討する。同時に、炭素14年代・酸素同位体と年輪・貝輪年代など年代測定法の多様な方法論の相互検証と補完を重ね、新たな年代決定の方法を構築する。
著者
堅田 修
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-11, 1974-06
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.286, 2005-03-10

大正4年に発表された『硝子戸の中』には,若い頃の漱石に「不思議の国のアリス症候群」を思わせる症状があったことをうかがわせる記述がある. 『硝子戸の中』の38で,漱石は自らの思春期を振り返って,「その頃の私は昼寝をすると,よく変なものに襲われがちであった」として,次のような不思議な体験を語っている.「私の親指が見る間に大きくなって,いつまで経っても留まらなかったり,或いは仰向けに眺めている天井が段々上から下りてきて,私の胸をおさえつけたり,又は眼を開いて普段と変わらない周囲を現に見ているのに,身体だけが睡魔の虜となって,いくらもがいても,手足を動かす事が出来なかったり,後で考えてさえ,夢だか正気だか訳の分からない場合が多かった」.
著者
渋谷 隆一
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢大学経済学論集 (ISSN:03899853)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.36-56, 1973-09

以上,明治維新以降昭和10年前後にいたる質屋対策立法の変遷過程について素描してきた。ここで確認できた諸問題について要約しておきたい。第1に,私営質屋業の展開をチェックする要因として金融諸機関(銀行,信用組合,公益質屋など),官庁,大企業を中心とする共済組合や健康保険組合制度の普及,労働者階級の実質賃金の上昇などを挙げることができるが,苛酷な質屋取締立法もまたその1つであった。第2に,この質屋取締立法の性格は,従来しばしば指摘されてきた行政府の犯罪捜査の利便のためだけでなく,日本資本主義の後進性に規定された社会問題の早期発生と独占資本の形成・確立期における社会問題の深化の態様に照応しながら徐々に変化している。そしてこの変化は,開明的官僚たちの社会政策的理念の予防先行的な導入によって開始され次第に現実的基盤をえたが,一方これに対する私営質屋業者の熾烈な反対運動によって著しく歪曲されたのである。すなわち欧米の自由主義の導入=幕藩体制下の質屋立法の緩和(「古着古金類等渡世之者取締規則」,「八品商取締規則」の制定<明治初年〜同13年>)→原蓄諸政策の強行・農業問題の発生=質屋撲滅論の台頭(「八品商取締規則」の改正,「質屋取締条例」の公布<同14年〜同18年>)→産業資本確立期における社会問題の断続的発生=官僚の社会政策的理念の導入と自由化を要求する私営質屋業者との対立(「質屋取締法」の公布<同28年>)→独占資本形成期における社会問題の本格的・重層的発生=官僚と私営質屋業者の対立激化(社会政策的な質屋取締法の改正法案の作成と挫折<明治末〜大正9年>)→独占資本確立期における社会問題の深化=両者の対立と妥協・質屋の公私併立主義の容認(「公益質屋法」の公布とその拡充・強化<昭和2年〜同10年>)がそれである。第3に,わが国における質屋対策の限界は,結局わが国資本主義の後進性に規定された質屋業の存立基盤の広汎かつ強固な残存,および労働運動の脆弱さにもとづく社会政策の貧困に求めることができよう。質屋の公私併立主義の採用こそ,正にその象徴的な帰結なのである。
著者
大久保 倫子
出版者
東京農業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

北海道ではエゾシカに対する農林業被害対策の1つとして、色や光を用いた鳥獣忌避装置が使用されている。しかし、色彩が動物にどのような影響を与えているかは解明されていない。解剖学的、および電気生理学的研究によれば、シカの網膜にはS錐体とM錐体の2種類の錐体細胞があり、シカは2色覚であることが示唆されている。そこで本研究では、シカの色覚特性を解明することを目的とし、行動学的アプローチに基づき、エゾシカが識別できる色の組み合わせを調査することとした。さらに得られた結果からエゾシカにおける混同色線を作製し、エゾシカが認識できる色が、シカに対して認識性や忌避性があるのかを検証する。