著者
カーター ジェフリー
出版者
東海大学教養学部
雑誌
東海大学紀要. 教養学部 (ISSN:03892018)
巻号頁・発行日
no.36, pp.141-166, 2006-03-30

筆者は2001年に特別助成を受けて,アフリカのエイズ危機に関する調査を実施した。この疫病は,アメリカやヨーロッパなどの先進諸国におけるエイズ問題とは比べものにならないほどの深刻な打撃をアフリカに与えた。アフリカ地域での最初の調査に続き,筆者は東海大学の3つの学生ボランティア・グループを引率して,南アフリカで最も被害が大きいクワズール・ナタルのエイズ孤児保護センターを訪問した。本論文では,この5年間におけるエイズ危機という健康被害の進行状況をまとめるとともに,学生グループのボランティア経験を振り返ることにする。様々な理由により,世界の注目が集まり,何十億ドルもの支援が寄せられたにもかかわらず,5年間たっても,エイズ危機は改善していない。しかしながら,この危機に対する寄付金が訪問先のボランティア・センターを改善したように,エイズ孤児介添えの経験は,大きな変革を促してきたのも事実である。
著者
小澤 正直
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

量子力学の観測命題の論理である量子論理の上に数学を構築することは、経験と論理と数学を繋ぐ興味深いプログラムである。竹内外史は量子集合論を構築し、そこで定義される実数と量子物理量の同等性を示して、このプログラムに先鞭を着けた。本研究では、量子集合論とトポス量子論の関係を明らかにする問題と竹内の量子集合論で有界量化に対するド・モルガンの法則が成立しない問題の2つの懸案を研究し、解決に導いた。この成果により、量子論理、直観論理、パラコンシステント論理に基づく集合論の間に新しい統合が生まれた
著者
清水 誠
出版者
日本独文学会
雑誌
ドイツ文学 (ISSN:24331511)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.1-11, 2015-03-25 (Released:2018-03-31)
著者
清水 誠
雑誌
消化と吸収 (ISSN:03893626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.6-12, 2009-03-19
参考文献数
21
著者
時松 一成
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.26, 2007

深在性トリコスポロン症は、<I>Trichosporon asahii</I>によって起こる重篤な日和見感染症であるが確立された診断法や治療法はない。また、<I>T. asahii</I>は夏型過敏性肺炎の原因真菌でもありシックハウス症候群の一つとしても注目されている。同一の菌種が一方では重篤な感染症を引き起こし、もう一方ではアレルギー反応を惹起するという興味深い真菌であるが、その要因には生体と真菌の接触の結果生じる真菌の形態や形質変化と、生体側の免疫応答の変化が関与していることを我々は明らかにしてきた。生体との接触でおきる最も大きな変化は、グルクロノキシロマンナン抗原量の増加であり、この結果、<I>Trichosporon</I>は生体からの免疫能を回避し、生体環境に順応して潜伏し、宿主の免疫能が低下すると播種性感染症へと進展するこが予想される。<BR>このセミナーでは、環境に常在する真菌が、ヒトとのかかわり合いの結果、どのように変化して、様々な病態、すなわち、過敏性肺炎や日和見感染症を発現するのか、そのメカニズムについて解説し、さらに、最近の全国の疫学調査の結果から明らかになってきている、本症の発症に地域性はあるのか、新しい抗真菌薬が開発された今日、以前と比べ本症の死亡率は改善されたのか、以前から問題とされているブレイクスルー感染症があるのか、血清β―グルカン値が上昇するのか、<I>Trichosporon</I>の薬剤感受性に変化が生じているのか、など、臨床上の重要な問題点にも迫る。
著者
福田 雅夫
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.84-88, 2008
参考文献数
12

高残留性環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)の分解細菌Rhodococcus jostii RHA1株は,放線菌群に属するグラム陽性無芽胞桿菌で,妹尾らにより分離されたγ-HCH(リンデン)分解菌と同じ圃場に由来する。RHA1株においてPCB分解を触媒するビフェニル代謝酵素系では,(1)各分解ステップに複数の同種酵素(アイソザイム)が関与し,(2)5つのオペロンに分散した酵素遺伝子が巨大な線状プラスミドにコードされ,グラム陰性PCB分解菌とは異なるベクトルで分解酵素系を進化させてきたと想像される。RHA1株のゲノム解析はブリティシュコロンビア大学(UBC,カナダ)のグループとの共同研究で進められ,2005年に9.7メガベースの巨大ゲノムのシーケンスが完了し,上述のアイソザイムの分布や,多数のオキシゲナーゼ遺伝子をもつことなどが明らかになった。我々は農業環境技術研究所の小川(現・静岡大学)らとRHA1株の滅菌土壌中での増殖における遺伝子発現を,DNAマイクロアレイ技術を用いて調べ,滅菌土壌中で特異的に発現すると考えられる遺伝子を同定することに成功した。
著者
堀田 英之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.762-766, 2016

<p>太陽内部で,カオス的速度場・磁場から秩序だった構造を作り出すメカニズムの発見について解説する.太陽には黒点という強磁場領域があり,この黒点の個数は11年の周期を持って変動している.黒点は,太陽内部で乱流によって生成された磁場が表面に浮き出た断面と考えられている.黒点には様々な極性や向きに関するルールがあり,90%以上の黒点がこのルールに従う.黒点は3万km程度の構造であり,円周440万kmの太陽から見ると局所的な構造であるにも関わらず,ただランダムに黒点が現れるのではなく,大局的なルールを持っているということは太陽内部に全球スケールの大規模磁場が存在することを示唆している.</p><p>太陽内部の外側30%である対流層は,お湯を沸かしたように熱対流不安定な状態にあり乱流で満ち溢れている.その巨大なシステムサイズと低い粘性によって,乱流を駆動する空間スケールと散逸するスケールに非常に大きな差があることが知られている.いくつかの仮定が必要だが,理論的にはこの二つのスケールには10<sup>7</sup>ほどの比があると見積もることができる.磁場は小スケールでの生成が短い時間スケールを持っており,与えられた乱流の中で磁場を生成することを考えると,太陽では乱流の最小スケールであるcmスケールの磁場のみが卓越し,観測される大規模な磁場はできないと考えられる.このスケールギャップを如何にして埋め得るかが,本記事の主題である.</p><p>この考察の妥当性は,すでにアメリカやカナダのグループによる数値計算で確かめられている.2010年頃に達成した解像度の数値計算では,大規模磁場やその磁場の周期性を確認できたのだが,計算の高解像度化が進むにつれて,太陽で予想されるような大規模磁場が作られにくくなっていってしまった.これは高解像度化によって自由度が増え,小スケールの乱流が大規模磁場を破壊してしまったことが原因なのであるが,太陽は言うなれば超高解像度のプラズマ流体であるので,どのようにして,大規模磁場を生成・維持しているかは大きな謎になっている.</p><p>この状況を解決しようと,筆者らはこれまでにない高解像度計算に挑戦した.超高解像度化したときのみに現れる物理現象を見逃しているのだろうと考えたのだ.大規模計算機を扱うための新しい計算手法,低粘性・低磁気拡散の計算スキーム,そしてスーパーコンピュータ「京」によってこの高解像度化は実現した.計算の結果を見ると,これまでの研究で実現できている範囲ならば,高解像度化したときに大規模な磁場エネルギーは小さくなり,過去研究と調和的であった.しかし,さらに高解像度化を進めると,大規模な磁場が再度強くなるという現象を発見した.今回達成した解像度では,小スケール乱流による磁場生成能力が非常に効率的になり,小スケールで磁場のエネルギーが運動エネルギーよりも大きくなった.この結果,小スケールの乱流が強く抑制され,大規模な磁場を破壊していた運動を避けることができたのだ.今回の発見では強い粘性を仮定しなくてよく,実際の太陽でも起こりうる重要な発見であると考えている.</p>
著者
小久保 秀之 蛭川 立 清水 武 根本 泰行
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, 2011

意識が微小スケールの確率現象に特異な影響を与えるといわれており、その作用を研究する装置として乱数発生器(RNG)がよく使われている。しかし、乱数発生器がどのようにして特異な作用を検出しているのか、どのように実験すれば効率的なのかなど、不明な点も多い。このワークショップでは、次の3点を中心に、乱数発生器を用いた測定系の問題を討論する。1) これまで波動関数は直接測定できないとされていたが、2011年、カナダのグループの実験によって波動関数の直接測定が可能であることが実証された。これは従来の波動関数の解釈に変更をもたらすだろうか? また、RNGの実験結果を意識の量子的な作用で解釈しようとする試みに、どのような影響があるだろうか?2) RNGの装置本体、あるいはデータ処理の最初期において、XOR処理が行われることが多い。この処理を行うと乱数が「なまった状態」になるため、検出器としてのRNGの性能が低まることが懸念されている。XOR処理は本当に必要なのだろうか? XOR処理をせずとも実験が可能だろうか?3) 近年、実験における距離や方向の重要性が認識されつつある。たとえば、地球意識計画(GCP)は第1期の研究として、地球規模のスケールの現象の研究を行っていたが、第2期では、やや到達距離の短い、地域的な影響を研究している。また、生体センサを使った非接触ヒーリングの研究では、ヒーリング時の人体の近傍(2m程度の範囲)に波型のポテンシャル分布が生じることがわかっている。では、10~数100m規模のスケールで実施されるフィールドRNG実験は、距離や方向の問題をどう考えればよいだろうか?
著者
日野 もえ子 石和田 稔彦 青木 孝浩 岡田 玲緒奈 奥主 朋子 大楠 美佐子 渡邉 哲 亀井 克彦 下条 直樹
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.171-176, 2018

<p>小児がん患者では,真菌感染症が疑われる場合でも,真菌の分離同定はしばしば困難であり臨床経過により診断治療が行われることが多い.2004年1月から2014年12月までに当科で治療を受けた小児血液がん患者6人より分離同定された糸状菌2株,酵母5株に関し,薬剤感受性試験を行い,分離同定することの意義について後方視的に検討した.糸状菌はいずれも耳漏より検出された.1例では好中球抑制期間に外耳炎を繰り返し,<i>Aspergillus terreus</i>が同定された.薬剤感受性試験の結果よりミカファンギン(MCFG),ボリコナゾール(VRCZ)を併用し造血幹細胞移植を行った.酵母はすべてカンジダで,血液より分離同定された.<i>Candida tropicalis</i>分離例は治療開始後にβ-Dグルカンの上昇,脾膿瘍の悪化を認めたが感受性試験にてMCFG感受性良好であることを確認し治療遂行できた.<i>C. parapsilosis</i>,<i>C. glabrata</i>分離例はいずれもMCFG投与下のブレイクスルー感染であった.MCFG感受性良好として知られている<i>C. glabrata</i>に関しては薬剤感受性試験の結果,キャンディン系薬剤に対するMICの上昇が確認された.近年米国でもキャンディン系耐性カンジダが問題となっており,今後小児がん患者においても,治療効果が思わしくない際には薬剤感受試験を行うことが必要だろう.</p>
著者
西村 峯裕 古座 昭宏
出版者
京都産業大学法学会
雑誌
産大法学 (ISSN:02863782)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.236-196, 2007-07

序節第1節 判例の変遷 1 大審院時代の判例 2 最高裁時代の判例 3 判例の根拠第2節 学説の概観 1 実質的所有者説 2 登記名義人説第3節 検討 1 移転登記未了型 (1)土地所有者は民法177条の第三者であるか (2)登記懈怠からの考察 (3)物権的請求権の相手方 (4)二重譲渡事例の検討 (5)本類型における私見 2 仮装名義型 (1) 本類型における民法94条2項の類推適用(⑧判決少数意見)の検討 (2)本類型における私見 3 未登記建物移転型 (1)本類型における私見 4 実質的所有者の運命第4節 物権的請求権の相手方の拡張の可能性 1 侵害状態作出者が物権的請求権の相手方となるとされた事例 2 若干の検討 3 残される問題結び
著者
浅野 一弘 アサノ カズヒロ Kazuhiro Asano
雑誌
札幌法学
巻号頁・発行日
vol.27, no.1/2, pp.7-37, 2016-03