著者
高橋 義雄 難波 祐三郎 岸本 晃司 光嶋 勲
出版者
Okayama Medical Association
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.279-284, 2001-12-31 (Released:2009-03-30)
参考文献数
9

GENDER IDENTITY DISORDER (GID) is a unique human condition that is classified behaviorally and treated medically with hormones and surgery in the severe form. This condition has been and still somewhat remains controversial by religious beliefs, social institutions and health care delivery systems. We described the surgical management of transsexuals, so called SEX REASSGINMENT SURGERY (SRS) and showed the team for gender treatment, GENDER CLINIC. A gender treatment team composing staff members from the Psychiatric, Plastic Surgery, Urology, Obstetric/Gynecological Surgery, and the Social Service, was established at the Hospital of Okayama University Medical schools in 1999. Female-to-Male procedures include mastectomy, phalloplasty, Phalloplasty are completion and an appurtenance, something pleasing to others. Male-to-Female program includes the genital surgery. The genital change surgery consists of the penile inversion, orchiectomy, vaginoplasty. Other procedures include reduction thyroid chondroplasty, hair transplant, voice change, laryngeal surgery, epilation with the laser.SRS is the only effective treatment available today in the management of GID. The aesthetic and functional results achievable from various procedures are generally satisfactory and are acceptable to the patients. On the other hand, we should remember that the numerous steps of information for SRS will be required.
著者
林 雅秀 金澤 悠介
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.241-259, 2014 (Released:2016-07-10)
参考文献数
72
被引用文献数
1

多くのコモンズ研究は,人々の過剰利用によりコモンズが荒廃するリスクがあるという想定のもと,過剰利用を防ぐ制度的な仕組みを解明してきた.しかし,現代日本のコモンズに目を転じると,近代化や少子高齢化といった社会変動の結果,従来のコモンズ研究が想定しない状況が生じてきた.本研究の目的は,既存の研究を検討することで,このような新しいコモンズ問題を解明する糸口を探ることである.まず,新しいコモンズ問題の特徴を把握するために,従来のコモンズ研究の到達点を確認した.次に,新たなコモンズ問題として,社会変動の問題,資源利用の多様化の問題,過少利用問題をとりあげ,それぞれの問題の解明を試みた.その結果,社会的ジレンマモデルに基づく従来の研究では利用者のコミュニティが大きな役割を果たしているが,新しいコモンズ問題では利用者のコミュニティとその外部の関係が大きな役割を果たしていることが判明した.加えて,新しいコモンズ問題を探求する研究の絶対数が少ないことも判明した.
著者
池田 寛二
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-37, 1995-09-01 (Released:2019-03-27)

今日、環境問題を研究するうえでもっとも重要な課題のひとつは、地球環境問題を地域環境問題と相互に関連づけて解明できる枠組みを構築することである。そのためにはまず、世界の諸地域において人々はどのように環境に働きかけているのか、という基本問題に立ちかえる必要がある。この問題にアプローチするために有効な枠組みとなるのが所有の概念である。所有とは環境をめぐる社会関係を意味している。従来の環境問題のとらえ方は、「コモンズの悲劇」論のように、所有を社会関係として理解する視点を欠いていたため、私的所有対共同所有という二項対立を絶対視し、環境と人間社会とを結びつけている所有の多様性と複合性を捨象する傾向があった。本稿は、所有の地域的・歴史的多様性を幅広く把握し得る類型論を試み、それが地球環境問題と地域環境問題とを関連づけて理解するために有効であることを例証することによって、環境問題研究における所有論の欠落を補おうとするものである。類型論では、環境問題を所有の視点から理解するには、自然人所有と法人所有の対立を軸にして得られる共同占有・共同所有・私的占有・私的所有・専有・個体的所有・私的法人所有・公的法人所有・管理の9つの所有類型が有効な分析枠組みになることを明らかする。そして、現代の地球環境問題は「グローバル・コモンズの悲劇」ではなく、世界の諸地域において、国家や企業を主体とする法人所有がグローバルな市場システムと結びついて自然人の多様な所有の可能性を排除することによって連動的にひき起こされている社会問題にほかならないことを、主にインドネシアの森林問題を取り上げて例証する。
著者
飯國 芳明
出版者
高知大学経済学会
雑誌
高知論叢. 社会科学 (ISSN:03888886)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.19-33, 2010-03-20
著者
関口 仁子
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.912-920, 2015-12-05 (Released:2017-10-05)
参考文献数
40
被引用文献数
1

2体力は2粒子の間に働く力であり,古典論,量子論問わず基本的な力である.また,それがわかれば2粒子(2体系)系の運動は完全に理解することができる.では多粒子系(多体系)の運動ははたしてその2体力の積み重ねだけで説明できるのであろうか?あるいは,3体力といった3粒子以上の系になって初めて効果が現れるような力が存在するのであろうか?近年,原子核物理学ではこの「3体力」の存在が注視されている.原子核の中では数多くの陽子と中性子(これらを核子と呼ぶ)が一辺が1兆分の1cm(1^<-14>m)程度の非常に狭い空間に閉じ込められている.その中で働く核力と呼ばれる力は,湯川秀樹の中間子交換理論に基づき,2つの核子の間に中間子という粒子を交換することで説明される"2体力"として考えられてきた.その一方,2体力の和で表せないような3体力(3体核力)の存在も長らく予想されてきた.一般に3体力は2体力に比べて小さく,実験的な検証は難しい.1990年代,この事情が変わってくることになる.豊富な核子-核子散乱データを精度よく記述する2体の核力が確立し,コンピュータの高速化を背景にその2体力を厳密に用い3核子系以上の原子核を記述するような第一原理計算が実現され始めた.原子核物理は模型を経ることなく核力から原子核・核物質を理解する道具を得たともいえる.その結果,原子核の構造や,中性子星に代表される核物質,また3核子系散乱において,2体力のみでは理論計算と実験・観測値との間に思いのほか大きな差が生じ,3体力を考慮することによって初めてその差が説明できるということが明らかになってきた.これより3体力は原子核の性質を理解する上で欠かせない力である,という新たな視点が生まれることとなった.3核子系散乱である核子-重陽子散乱は3体力の状態依存性(運動量,スピン,荷電スピン)を明らかにする上で有効なプローブである.この系における3体力の最初の明らかな証拠は,高精度実験と3核子系を厳密に記述するファデーエフ理論計算との比較から,核子あたりの入射エネルギーが100MeV付近の散乱微分断面積に見つかった.これをきっかけに,核子-重陽子散乱の高精度測定が理化学研究所のRIBF,大阪大学RCNPのリングサイクロトロン施設をはじめ世界中の実験施設で精力的に実施され,理論との直接比較による3体力効果の定量的な議論が始まった.その結果,現在理論計算で考慮されている3体力(藤田・宮沢型が主要成分)の大きさは基本的には正しいものの,スピン観測量の実験結果から3体力のスピン依存部の記述が不十分であること,また,比較的高いエネルギーにおける後方角度散乱の実験値から,核子の運動量移行が大きい領域で更に新たに短距離型の3体力を考慮する必要がある,などの指摘がされるようになった.核力によって原子核,核物質を統一的に理解しようという研究が進みつつある中,核子-重陽子弾性散乱から得られた結果は,今後,3体力をも含めた核力の解明により精度を高めた議論が必要であることを強く示唆している.
著者
加藤 雅明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.1009-1012, 2012-08-15 (Released:2014-03-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
大牟禮 和代 若山 曉美 角田 智美 渡守武 里佳 下村 嘉一 松本 富美子 中尾 雄三
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.131-137, 2003-07-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

目的:後天性眼球運動障害による複視が患者の日常生活にどのような影響を与えているかについてアンケート調査を行い、両眼単一視野の障害程度と日常生活の不自由との関係について検討した。対象及び方法:対象は、発症から6ヵ月以内の複視のある後天性眼球運動障害47例とした。内訳は、動眼神経麻痺4例、滑車神経麻痺11例、外転神経麻痺18例、眼窩底骨折14例である。年齢は13歳から77歳であった。複視によって生じる日常生活の不自由な項目について評価表(18項目)を用いて調査を行った。両眼単一視野の測定は、Bagolini線条ガラスを用いて行った。結果:日常生活に不自由があった症例は47例中40例(85%)、不自由がなかった症例は7例(15%)であった。不自由のある項目については、動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、外転神経麻痺では共通して、「歩行」、「階段」、「テレビ」、「車の運転」という動きを伴う項目があげられ、障害神経別による大きな違いはなかった。不自由度は動眼神経麻痺では高く、眼窩底骨折では低かった。日常生活での不自由度と両眼単一視野の関係では、第一眼位で両眼単一視野が存在しない症例は存在する症例に比べてばらつきが大きく不自由度は高かった。日常生活の不自由度の改善には、第一眼位での両眼単一視野の獲得が重要であり、周辺に関しては下方の両眼単一視野の獲得が他の方向に比べ重要であった。結論:日常生活の不自由度の評価を行なうことは、治療または眼球運動訓練後の自覚的な改善を定量的にとらえることができるため後天性眼球運動障害の評価法として有用である。
著者
Lea KRUMP Ríona G. SAYERS Emer KENNEDY Jim O’MAHONY Gearóid P. SAYERS
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1715-1721, 2021 (Released:2021-11-16)
参考文献数
35

An observational study was conducted to comparatively assess the efficacy of three different oral rehydration and buffering solutions, differentiated by their strong ion difference (SID) concentration, for treatment of neonatal calves with naturally acquired diarrhea. The SID concentrations tested were 100 mM, 170 mM and 230 mM for treatments SID100, SID170 and SID230, respectively. Clinical assessment and blood gas analysis were completed for 18 diarrheic calves once pre- and twice post- (6 and 24 hr after) oral administration with one of the three treatments. A repeated measure mixed model approach was used to analyze (a) the within-group efficacy of each treatment over time and (b) the between-group comparison at each timepoint. SID230 treatment resulted in a significant increase in blood pH, HCO3−, BE, SID and Na+ at 6 and 24 hr after treatment, and a significant decrease in AG and K+ by 24 hr after treatment. There were no significant changes in any of the blood gas parameters after treatment with SID100 and SID170. SID230 treatment also resulted in blood gas parameter changes that were significantly different to the other two groups. These results suggest that the optimum SID concentration for the treatment of calves with diarrhea is likely to be higher than current recommendations.
著者
林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本支援対話学会
雑誌
支援対話研究 (ISSN:21882177)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.75-80, 2013 (Released:2018-01-24)

国際コーチ連盟(International Coach Federation 以下、ICF)という団体が存在するのを皆さまはご存知でしょうか。私が日々お目にかかるクライアント様やプロコーチからよくお聞きする声として、名前は聞いたことがあるがその活動内容については詳しく知らない、というものがあります。この記事では国際コーチ連盟日本支部(以下ICFジャパンと呼びます)の代表として、またICFジャパン創立当初から関わる関係者として、設立経緯、これまでの活動、これからのビジョンについてお伝えします。
著者
渡邊 貴洋 大端 考 佐藤 真輔 高木 正和 伊関 丈治 室 博之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.2087-2092, 2012 (Released:2013-02-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1 4

症例は16歳,男性.平成18年頃から腹部膨満感を自覚しており,平成23年6月腹痛にて近医を受診し,腹部エコー検査で腹腔内腫瘤を認め当科へ紹介受診された.造影CT検査で腹腔内正中に最大径13cm大の造影効果のない多房性嚢胞性腫瘤を認め,一部低濃度成分と高濃度成分がfluid-fluid-levelを形成していた.また,腹部MRIではT1・T2強調像でともに低~高信号域が混在していた.以上から出血を反復した腸間膜リンパ管腫と診断し開腹手術を施行した.術中所見では,Treitz靱帯近傍の空腸間膜に10cm大の腫瘍を認め,近接した空腸の部分切除を伴う小腸間膜腫瘍切除術を施行した.術後病理組織学的に腸間膜リンパ管腫の診断を得た.小腸間膜リンパ管腫は比較的稀な疾患であり,自験例を含めた本邦報告30例について文献的検討を加え報告する.
著者
臼井 千恵
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.81-92, 2000-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Hess赤緑試験は、中心窩投影および眼筋におけるHeringの法則・Sherringtonの法則を基盤に、両眼を赤フィルターと緑フィルターによる「色」で完全に分離し、融像を除去した状態で各向き眼位における眼位および眼筋の働きを測定するものである。Hessスクリーン上の●印は15°偏位、◆印は30°偏位を表し、碁盤目の各1辺は5°に相当するため、水平および上下偏位の大まかな定量が可能である。結果は、左右各眼1個ずつのまとまった眼位図として、Hess chartに図示し記録する。臨床では、主として麻痺性斜視の眼位検査として用いられる。本検査法の利点は、9方向眼位が短時間に測定できること、眼筋麻痺の状態をビジュアル的に把握できるため治療における経過観察が容易であること、検査用紙が全世界共通であるためデータ提供や比較に便利なことである。問題点(限界点)には、回旋偏位が定量できないこと、自覚的検査であり患者の応答を過信する傾向があることなどがあり、微細な偏位も検出するため直接眼球運動を観察して麻痺筋を判定し難い時には有用である一方、斜位が含まれた眼位図であるため、得られた偏位に対する評価を慎重に行う必要がある。検査に際しては、事前の遮閉試験および視診による眼球運動検査が不可欠であり、得られた眼位図が患者の眼所見を正しく記録しているか否かを常にチェックすることが大切である。