著者
王 桂云 阿部 利徳 笹原 健夫
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.307-311, 1998-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

無農薬・無化学肥料栽培(有機栽培)および慣行栽培した水稲白米の全窒素・アミロース含量およびアミノ酸含量・組成を検討した.白米の全窒素含量は供試した2品種(コシヒカリ, ひとめぼれ)とも無農薬・無化学肥料栽培に比較して, 慣行栽培で有意に高くなった.しかし, アミロース含量は無農薬・無化学肥料栽培米と慣行栽培米とで2品種間に有意の差異が見られなかった.一方, 白米粉末のアミノ酸含量についてみると加水分解アミノ酸は, 慣行栽培の場合の全窒素含量の増加傾向を反映して, 検出できた16のアミノ酸はむしろ慣行栽培で高まる傾向を示した.遊離アミノ酸含量は加水分解アミノ酸含量の1/100ないしそれ以下であった.しかし, 遊離アミノ酸のうちアスパラギン酸, グルタミン酸, アスパラギン, グルタミンがコシヒカリおよびひとめぼれ2品種とも, 慣行栽培に比較して無農薬・無化学肥料栽培で有意に高くなった.以上の結果は, 無農薬・無化学肥料栽培で白米の窒素含量が低下し, 遊離のグルタミン酸, アスパラギン, グルタミン含量が増加することを示している.今後, これらの結果と炊飯米の食味との関係を検討する必要がある.
著者
牧野 晃典 梶川 裕矢
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.74-79, 2009-05-16 (Released:2009-06-27)

本研究は,利用者の書いた任意の文脈に対して適切な引用文を,web上に蓄積された膨大な文書の中から推薦するシステムを開発することを目的としている.今回はこの引用文推薦システム開発の第一段階として,代表的な引用文のひとつである格言に注目した.文脈と格言の間のマッチングを取ることで,文脈に即した格言を推薦するアルゴリズムを複数提案し,性能の比較評価を行った.
著者
伊藤 伸泰 尾関 之康 野々村 禎彦
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.336-347, 1999-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
47

非平衡状態から熱平衡状態への緩和の様子から系の熱力学的性質を解析する方法が提唱され, さまざまな問題へと応用が広がっている. 簡便かつ効率的で信頼性も高い「非平衡緩和法」と呼ばれるこの方法の特徴と実例とを計算物理の視点から紹介する.
著者
丹羽 政美 安藤 秀人 平松 達 深澤 基 伊藤 栄里子 安藤 俊郎 渡邉 常夫 藤本 正夫 小出 卓也 岡野 学
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.143, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>前立腺癌は日本人の高齢化と食生活の欧米化に伴い、日本でも増加傾向にある疾患である。前立腺疾患の診断においてはprostate specific antigen(PSA)、直腸診、経直腸的超音波断層法、MRI、針生検などが中心になっているが、生検が簡便に施行できるため画像診断よりも生検が優先される傾向にあった。しかし、従来の生検のsensitivityは50%前後という報告や最近のMRI診断法の進歩によって前立腺の内部構造が明瞭に描出されるようになり生検で前立腺癌と確定した症例の臨床病期診断のみならず、生検前の癌病変の検出においても非常に有用であることがわかってきた。生検前にMRI検査を行って癌部が検出もしくは疑いができれば系統的生検と標的生検を同時に実施することができ、診断能の向上が期待できる。以前勤務した西美濃厚生病院や当院でも前立腺癌を疑った場合、生検前にMRI検査を行うことをルーチン化し、生検の診断能の向上を目指して担当技師が画像についてコメントを記載している。 今回、東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行した症例について生検結果と比較検討した。また拡散強調画像が可能であった症例についてADC(apparent diffusion coefficient)値を測定したので報告する。<方法>東濃厚生病院と西美濃厚生病院で昨年度一年間に生検前にMRI検査を施行し標的生検が可能であった91例について生検診断をゴールドスタンダードとして年齢、PSA値、MRI診断について検討した。撮影装置は1.5T(PhilipsおよびGE社製)装置でphased array coilを用いて撮像した。撮像法はT1強調画像、T2強調画像、Gdダイナミック画像で検討した。(可能であった24症例についてはADC値も検討した。)<結果>生検前にMRIが施行された91症例中37症例に生検によって前立腺癌が認められた。癌の平均年齢は72.5歳でPSA値の平均値は46.5ng/mlであった。PSA値を年代群別に癌とBPHを比較検討すると年代群が高くなるにつれて高値になる傾向がみられたが年代群別では有意差はみられなかった。しかし、癌とBPHでは各群で有意差を認めた。生検結果を基準にみたMRIの正診率は84%、感度96%、特異度76%、陽性的中率73%、陰性的中率95%と高い診断能が得られた。また拡散強調画像が可能であった前立腺癌部のADC値は平均0.97×10-3mm2/sec、正常部のADC値は1.57×10-3mm2/secであった。<考察>前立腺は生検後の出血によって前立腺の信号強度は修飾され、しかもその影響が長く続くことが知られている。これらの信号変化は読影の妨げになるだけでなく、偽病変の原因となり病変の検出能をも低下させる。そのためMRIは生検前に撮像することが推奨されるが、今回の検討でかなり精度の高い診断が可能であることが認められた。また、Gdダイナミック撮像やADC値を測定することにより、より精度が増すと考えられる。さらにMRIは検出能だけでなく皮膜外浸潤や隣接臓器浸潤などの検出も可能で治療法を選択するためにも必要不可欠な検査であると考えられた。ただし、MRIで強く前立腺癌が疑われたにもかかわらず生検でBPHと診断された症例があることやMRIで癌と良性病変との鑑別が困難な場合もあったことより十分に経過観察し今後の検討課題としたい。
著者
坂本 治也 富永 京子 金澤 悠介
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
pp.NPR-D-22-00013, (Released:2024-02-16)
参考文献数
41

なぜ日本人の政治参加は他国と比べて低水準なのだろうか.なぜこの30年あまりの間に低下し続けているのだろうか.これらの問いに答える新たな理論的説明として,本稿では過去の大規模な社会運動に対する否定的評価が政治参加水準に与える影響に着目する.つまり,日本人の政治参加が他国の人々に比べて低調であり時系列的にも低下しているのは,過去の社会運動に対する悪いイメージが投票参加を除いた政治参加全般に投影されて,政治参加への強い忌避感を生じさせているためではないか,との仮説を立て,その仮説の妥当性を検証した.分析の結果,1960年安保闘争や2015年安保法制抗議行動への否定的評価は,投票参加以外の政治参加(ボランティアや寄付を含む)に対して有意な負の影響を与える関係にあることが明らかとなった.日本人の政治参加水準を向上させるためには,過去の大規模社会運動に対する悪いイメージが政治参加全般に安易に投影されている現状を改めて行く必要がある.
著者
原 安寛 山村 和也
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2012年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.329-330, 2012-09-01 (Released:2013-03-01)

フッ素樹脂の低摩擦特性が、高い免震性能を有するすべり支承のベアリング材として注目されている。本研究では、大気圧プラズマ処理によるフッ素樹脂(PTFE)の表面改質を行い、接着剤として用いるエポキシ樹脂界面との密着強度の向上を図った。プラズマ処理によりPTFE表面上に形成された過酸化物ラジカルの存在形態や、各プラズマ処理条件によるPTFE表面モホロジーの変化を観察し、密着強度向上のメカニズムについて考察を行った。
著者
堀江 広行
出版者
ロシア史研究会
雑誌
ロシア史研究 (ISSN:03869229)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.3-19, 2005-12-28 (Released:2017-07-25)

Статья посвящена анализу понятия <<личности>> в <<Философии имени>> С.Н. Булгаова. Основные задания, предъявленные философом в данной работе-представление идеи отражения фундаментальной бытийной структуры человека на языке и посредством этого оправдание учения о Имени Божии имяславцев. Любое человеческое слово рассматривается Булгаковым как результат скрытого первородного суждения, т.е. именования, в котором обязательно присутствует три составляющих элемента : подлежащее как предмет именования, предикат как идея и связка как <<онтологическая агглютинация>>, соединяющая подлежащее, представленное как трансцендентное и предикат как имманентное. Однако, по мнению автора, в результате принятия Булгаковым православного учения Божественной Энергии, которая представляет собой исконнно личностное действие Бога, в струкутру именования вводится идея <<личность>> и здесь остро стоит вопрос о том, кто есть субъект скрытого действия именования, т.е. Энергии. В научном сообществе распространено мнение о том, что субъектом именования является отдельный человек. Автор настоящей статьи, признавая определенные доводы распространенных мнений, пытается доказать, что субъект именования-человечество, понимаемое Булгаковым как обладающее некой собирательной личностью. Автор считает, что, несмотря на формальное отсутствие упоминания Софии Премурости Божьей в <<Философии имени>>, Булгаков по-прежнему фактически придерживается теории собирательной личности человечества, т.е. Софии, предложенной им в предыдущих работах. В статье также анализируется основное различие двух булгаковских пониманий первородного суждения, которое рассматривается в <<Философии имени>> и <<Трагедии философии>>.
著者
本間 圭一
出版者
日仏社会学会
雑誌
日仏社会学会年報 (ISSN:13437313)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.61-77, 2022-11-30 (Released:2024-02-12)

Il y a de plus en plus de violences et de menaces contre les journalistes en France. 12 cas ont été signalés pendant les trois années qui ont précédé février 2021. Le Conseil de l'Europe a publié un rapport annuel dans lequel la France fait partie des onze pays où sont répertoriées des atteintes contre la liberté de la presse. Cela peut déstabiliser la démocratie. Pour comprendre le contexte derrière ce phénomène et réfléchir à des solutions, j'ai enquêté auprès de dix éditeurs, journalistes de presse alternatifs et experts du journalisme. Toutes les dix personnes se sont accordées sur le fait que ces événements étaient liés à l'hostilité et la défiance envers les médias et les journalistes. De plus, parmi les facteurs à l'origine de cet état de fait, six ont indiqué le fait que la presse française aujourd'hui était contrôlée par des entreprises non médiatiques, tandis que cinq ont souligné que la presse était très influencée par les politiciens. Quatre ont aussi signalé que les journalistes étaient considérés comme faisant partie des élites et donc pas dignes de confiance. Deux autres ont mentionné que ces menaces et violences ne sont pas nouvelles dans l'histoire française. Cette enquête montre qu'il y a plusieurs facteurs à l'origine des atteintes contre les médias, comme indiqués ci-dessus, et non pas une seule cause. C'est dans un tel contexte que le mouvement des gilets jaunes et les manifestations des anti-pass se sont développés dans la violence. Il faut donc essayer d'améliorer les problèmes mentionnés précédemment pour retrouver la confiance, faire cesser les violences et préserver la démocratie.
著者
細野 達夫 浅井 雅美 西畑 秀次 臼木 一英
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.459-466, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
8

冬季積雪地域である富山県砺波市および新潟県上越市で秋播き移植栽培したタマネギ ‘ターザン’ の抽苔株率データを用い,抽苔株率推定モデルについて検討した.タマネギの花芽形成に関する温度反応を積算したVD値,または日々の温度反応と葉数との積を積算したVDLN値について,積算期間を変えて抽苔株率との近似曲線への非線形回帰における決定係数を調査した.VDについては,いずれもの場合も決定係数が低く抽苔株率を高精度に推定することはできなかった.一方,植物体の大きさを加味したVDLNの決定係数については,砺波と上越の全データを用いた場合,1月20日まで,または移植後80日間の積算で0.75以上,砺波のデータのみを用いた場合は2月20日以降または移植後120日以降までの積算で概ね0.95以上と高かった.よって,VDLNを用いるモデルの有効性が示唆された.実用的な指標として,砺波において移植後140日までのVDLN > 490が ‘ターザン’ の抽苔可能性の目安として示された.
著者
田中 伸之輔 南谷 圭持 中村 優花 平田 謙次 松本 裕希子 原 有希
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR MANAGEMENT INFORMATION (JASMIN)
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
pp.143-146, 2024-01-31 (Released:2024-01-31)

本研究では、組織開発の構造的・技術的側面だけでなく人間的側面を重視する方法として開発された「人間中心設計・実践コミュニティに基づく組織開発手法」が、A社内に導入・展開された約3年のプロセスを事例分析した。その結果、従業員が「組織開発の主体」に成長する、対話型の学習・実践プログラムが段階的に設計されていたこと、人間の認知・感情・行動に着目する人間中心設計の考え方が、従業員のポジティブな感情体験を生み出す組織文化を支えていたことが示された。
著者
福島 統
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.555-563, 2023-12-25 (Released:2024-02-08)
参考文献数
31

国内では, 大学設置基準が2022年9月に改正された. COVID-19パンデミックを乗り越えてきた大学の経験を活かし, 現行のルールでは認められていない教育方法, 単位認定を「特例制度」として実施できる道が開かれている. 「特例制度」という社会実験の成果を今後の大学設置基準の改定に活かしていく必要がある. 海外では, このパンデミックを通じ, 医学生は守られるべき学習者かそれともエッセンシャルワーカーかという議論や, 今回のパンデミックのように医学教育の順次性が中断された時, 進級, 卒業, 臨床研修への移行にあたり, 教育時間ではなく学習者がどのような能力を獲得しているかに重点を置いたCompetency-based, Time-variable (CBTV) Educationなどの議論が行われている.
著者
坂本 将基 高柳 暁斗 安東 大輔
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.1-16, 2024 (Released:2024-02-06)
参考文献数
28

This study investigated the characteristics of visual behavior in skilled kendoists while judging the validity of strikes. A total of 19 expert and 19 novice kendoists were asked to judge the validity of strikes for men (head armor), do (side trunk covered by a stomach and chest protector), or kote (lower forearm covered by a gauntlet). Simultaneously, the participants' eye movements were recorded at 30 Hz, and the location at which their gaze was directed was identified. Additionally, the pupil area was calculated for each frame. Both expert and novice kendoists focused on the striker's shinai (bamboo sword) during the phase from 900 ms to 600 ms before striking, and on the site struck during the phase from the moment of striking to 300 ms after striking. However, during the phase from 600 ms before the strike to just before the strike, the experts tended to switch their gaze from the strikefur's shinai to the striking site earlier than the novices. Furthermore, the pupil areas of the experts were correlated with their years of experience in judging the validity of a strike to the men. The gaze behavior specific to expert kendoists, such as observing the striking area during the phase just before striking while exhibiting intense scrutiny, may be related to their superior ability to judge the validity of strikes.