著者
大熊 るり 植松 海雲 藤島 一郎 向井 愛子
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.180-185, 2002-04-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
18
被引用文献数
5 2

上部消化管造影検査施行中に発生したバリウム誤嚥について調査を行い,誤嚥への対策について検討した.7年半の間に検査を受けた262,888名を対象に,誤嚥発生率の推移や誤嚥が確認された118名のプロフィール等につき調査した.誤嚥者の年齢は30~94(平均65)歳.70歳以上では誤嚥発生率が70歳未満の約10倍となっており,高齢受診者への配慮が必要と思われた.また誤嚥発生率が平成11年度から12年度にかけて上昇しており,これは検査に使用するバリウム製剤の粘性が低下した時期と一致していた.誤嚥対策として,検査前に嚥下障害に関するスクリーニングを行うこと,使用するバリウム製剤の粘性を検討すること等が考えられた.
著者
八木 拓磨 井上 達朗 小川 真人 岡村 正嗣 島田 雄輔 平郡 康則 岡田 梨沙 岩田 脩聡
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12148, (Released:2022-05-20)
参考文献数
29

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟に入棟した患者のサルコペニアが実績指数に与える影響を明らかにすること。【方法】2019年5月~2020年6月に単一の回リハ病棟に入棟した65歳以上の連続症例128例。主要アウトカムは日常生活動作能力の改善度を示す実績指数とした。サルコペニアと実績指数の関連について重回帰分析を実施した。【結果】対象者(平均年齢81.5歳)のうちサルコペニアの有病率は76.6%であり,サルコペニア群の実績指数は非サルコペニア群と比較して有意に低値を示した(サルコペニア群:42.2 vs.非サルコペニア群:52.2, p=0.039)。重回帰分析の結果,サルコペニアは独立して実績指数と関連していた(β=−20.91, p=0.003)。また,Skeletal Muscle Mass Index(β=−18.82, p=0.008)が独立して実績指数と関連していた。【結論】回リハ病棟入棟患者のサルコペニアは実績指数の独立した予測因子であった。
著者
荒木 理沙 藤江 敬子 中田 由夫 鈴木 浩明 松井 幸一 植松 勝太郎 柴﨑 博行 安藤 貴彦 植山 ゆかり 礒田 博子 橋本 幸一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.121-131, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

オリーブは, 果実だけでなく, 葉にもオレウロペイン等のポリフェノールを豊富に含んでいる。この点に着目し, オリーブ葉茶が生産されているが, ヒトにおけるオリーブ葉茶の機能性は明らかになっていない。そこで, 血清LDL-コレステロール (LDL-C) 濃度が境界域または軽度高値の40‐70歳非糖尿病男女を対象とし, 試験飲料としてオリーブ葉茶と緑茶を用いたランダム化2群並行群間比較試験を実施した。12週間の介入によって, オリーブ葉茶群でのみ, 体重 (p<0.05) と腹囲 (p<0.01) が有意に減少した。このことから, オリーブ葉茶が緑茶に比べて体重や腹囲の減少に有効となる可能性が示唆され, オリーブ葉に特有のポリフェノール等の機能性成分の関与が考えられた。なお, オリーブ葉茶群ではLDL-C濃度の低下傾向 (p=0.054) がみられたが, 明確な糖・脂質代謝改善効果を認めるには至らなかった。オリーブ葉茶がヒトの健康に及ぼす影響について, 今後さらに検討すべきと考えられた。
著者
赤木 和夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.20-21, 2007-01-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
1
著者
濱尾 章二 那須 義次
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.13-20, 2022-04-22 (Released:2022-05-11)
参考文献数
26

鳥の巣からは多くの昆虫が見いだされ,鳥は昆虫の生息場所(ハビタット)を作り出す生態系エンジニアとしての役割を担っている可能性が考えられている.しかし,そのことを実証する生態学的研究はほとんど行われていない.そこで,シジュウカラParus minor用巣箱を用い3年間の調査と実験を行って,鳥の繁殖活動が昆虫の生息場所を作り出しているか,そして昆虫は鳥の巣を積極的に利用しているかどうかを調べた.調査の結果,初卵日から巣立ちあるいは捕食,放棄が起きるまでの巣の利用期間が長い巣ほどケラチン食の昆虫が発生しやすかった.腐食性の昆虫でも同様の傾向が見られた.これらのことは,羽鞘屑に依存すると考えられているケラチン食の昆虫に加え,広く腐植質を摂食する昆虫にとっても,鳥の営巣が新たな生息場所を作り出していることを示唆する.また,鳥が利用を終えた後直ちに巣材を採集した場合と3週間後に巣材を採集した場合を比較したところ,昆虫の食性によらず,昆虫の発生する割合は処理による差が見られなかった.このことは,昆虫が鳥の営巣中から巣に侵入していることを示唆する.
著者
植阪 友理 植竹 温香 柴 里実
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.175-191, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
30

近年,「子どもの貧困」の問題が脚光をあびるようになり,社会的関心も高まっている。その一方で,貧困をテーマとした論文が『教育心理学研究』に掲載されたことはなく,学会としてこの問題に正面から取り組んできたとは言い難い。一方,他領域,他学会等では,課題はあるものの活発な議論や活動が行われつつある。本稿では,日本における貧困家庭の子どもの支援について,研究知見や官民の取り組みを概観するとともに,そこでの課題を乗り越えるため,著者が生活保護受給者世帯を支援するNPOと連携し,数年にわたって行ってきた学習支援の実践を取り上げる。この実践は,認知心理学を生かして学習者の自立を目指す「認知カウンセリング」の知見を活用しようとする試みである。目に見えて大きな成果が得られているとは言い難いが,確実に変化は見られている。この実践を記述することを通じて,心理学的発想や「認知カウンセリング」の知見は貧困家庭の子どもの支援においてなぜ受け入れられにくいのかという原因を考察するとともに,心理学に基づく支援が活用されるためには,支援者にどう学んでもらうことが効果的なのかを実践を踏まえて提案した。
著者
Satoshi Ohkubo Hideaki Miyashita
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Soil Microbiology / Taiwan Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Plant Microbe Interactions / Japanese Society for Extremophiles
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.217-225, 2012 (Released:2012-09-06)
参考文献数
27
被引用文献数
11 13

Acaryochloris spp. are unique cyanobacteria which contain chlorophyll d as the predominant pigment. The phylogenetic diversity of Acaryochloris spp. associated with 7 Prochloron- or Synechocystis-containing didemnid ascidians and 1 Synechococcus-containing sponge obtained from the coast of the Republic of Palau was analyzed; we established a PCR primer set designed to selectively amplify the partial 16S rRNA gene of Acaryochloris spp. even in DNA samples containing a large amount of other cyanobacterial and algal DNAs. Polymerase chain reaction-denaturing gradient gel electrophoresis with this primer set enabled detection of the phyogenetic diversity of Acaryochloris spp. All the ascidian and sponge samples contained Acaryochloris spp. Fourteen phylotypes that were highly homologous (98–100%) with A. marina MBIC11017 were detected, while only 2 phylotypes were detected with our previously developed method for detecting cyanobacteria. The results also revealed that many uncultured phylotypes of Acaryochloris spp. were associated with those didemnid ascidians, since a clonal culture of only 1 phylotype has been established thus far. No specific relationship was found among the Acaryochloris phylotypes and the genera of the ascidians even when sample localities were identical; therefore, these invertebrates may provide a favorable habitat for Acaryochloris spp. rather than hosts showing any specific symbiotic relationships.
著者
Akira S. Hirao Atsushi Kumata Toshihito Takagi Yoshito Sasaki Takashi Shigihara Eiichi Kimura Shingo Kaneko
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
Mycoscience (ISSN:13403540)
巻号頁・発行日
pp.MYC570, (Released:2022-05-20)

Pholiota microspora (“nameko” in Japanese) is one of the most common edible mushrooms, especially in Japan, where sawdust-based cultivation is the most dominant method accounting for 99% of the production. The current strains for sawdust cultivation in Japan are considered to have been derived from a single wild strain collected from Fukushima, Japan, implying that commercial nameko mushrooms are derived from a severe genetic bottleneck. We tested this single founder hypothesis by developing 14 microsatellite markers for P. microspora to evaluate the genetic diversity of 50 cultivars and 73 wild strains isolated from across Japan. Microsatellite analysis demonstrated that sawdust-cultivated strains from Japan were significantly less genetically diverse than the wild strains, and the former displayed a significant bottleneck signature. Analyzing the genetic relationships among all genotypes also revealed that the sawdust-cultivated samples clustered into one monophyletic subgroup. Moreover, the sawdust-cultivated samples in Japan were more closely related than full-sibs. These results were consistent with the single founder hypothesis that suggests that all commercial nameko mushrooms produced in Japan are descendants of a single ancestor. Therefore, we conclude that cultivated P. microspora originated from a single domestication event that substantially reduced the diversity of commercial nameko mushrooms in Japan.

37 0 0 0 OA 1.帯状疱疹

著者
浅田 秀夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.48-53, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
10

帯状疱疹は,体内に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化して生じる疾患で,高齢者に好発する.わが国においては帯状疱疹の罹患率は右肩上がりで増え続けており,今後もさらなる増加が予想される.2016年より水痘ワクチンが帯状疱疹の予防にも適応拡大され,さらに最近では新規サブユニットワクチンの発売も始まった.また近年,新規薬理効果をもつ抗ヘルペスウイルス薬も登場し,帯状疱疹診療を取り巻く環境は新しい時代を迎えつつある.
著者
岡田 明彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.407-413, 1998-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ここ数年, 日本でも小規模醸造所のビール醸造が増加しているが, 醸造技術者を悩ませているものの一つに微生物汚染がある。微生物汚染は品質に直接影響を及ぼすため, 微生物管理の技術は非常に重要である。そこで, 小規模醸造所において役立つ技術を, 微生物管理に詳しい筆者に解説していただいた。現在ビール醸造に携わっている技術者のみならず, これからビール醸造に携わろうとする方々にとっても, 十分参考になると思われる。
著者
金水 敏
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.67-91, 1999-07-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
34
被引用文献数
8 4

日本語の指示詞の3系列(コソア)は, いずれも直示用法とともに非直示用法を持つ. 本稿では「直示」の本質を「談話に先立って話し手がその存在を認識している対象を, 話し手が直接指し示すこと」ととらえ, ア系列およびコ系列では直示・非直示用法にわたってこの直示の本質が認められるのに対し, ソ系列はそうではないことを示す. 本稿では, ア系列の非直示用法は「記憶指示」, すなわち話し手の出来事記憶内の要素を指し示すものであり, コ系列の非直示用法は「談話主題指示」, すなわち先行文脈の内容を中心的に代表する要素または概念を指し示すものと考える.「記憶指示」も「談話主題指示」も上記の直示の本質を備えている上に, ア系列およびコ系列の狭義直示用法において特徴的な話し手からの遠近の対立も備えているという点は, ア系列およびコ系列の非直示用法がともに直示用法の拡張であることを示唆している. さらにさまざまなソ系列の非直示用法を検討した上で, ソはコ・アとは異なって, 本質的に直示の性格が認められないことを論じる. 非直示用法のソ系列は話し手が談話に先立って存在を認めている要素を直接指すためには用いられず, 主に言語的な表現によって談話に導入された要素を指し示すためた用いられる.またソが, 「直示」によっては表現できない, 分配的解釈や, いわゆる代行用法等の用法を持つことも, ソがアやコと違って非「直示」的であるという主張と合致する.
著者
里宇 文生 大野 祐介 岩下 航大 梅澤 慎吾 臼井 二美男
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.406-409, 2018-05-18 (Released:2018-06-14)
参考文献数
8

近年,下肢切断者が義足歩行を達成して日常生活へ復帰した後に,パラスポーツに参加する機会が増えている.下肢切断者のパラスポーツへの参加は,身体的効果,精神的効果が報告されており,医学的に有用である.下肢切断者が行うスポーツとしては,ウォーキングや登山,卓球,釣り,ゴルフ,自転車競技などの生活用義足を用いて行うスポーツに加え,専用の競技用義足を用いることで,陸上競技,バドミントン,テニス,スキー,スノーボード,サーフィン,スキューバダイビングなど,多くのパラスポーツを行うことが可能である.パラスポーツへの参加に関しては,費用や参加機会の点で課題が存在するが,医療者からの適切な情報提供が重要である.