著者
神谷 光信
出版者
関東学院大学キリスト教と文化研究所
雑誌
キリスト教と文化 : 関東学院大学キリスト教と文化研究所所報 (ISSN:13481878)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-57, 2016-03

遠藤周作は日本国内のみならず、英仏語に翻訳され国外でも評価された作家、すなわち西欧に発し、今日ではグローバルな商業流通と結びついた「世界文学空間」システムに組み込まれた国際的な著者である。しかし不思議なことに、彼の代表作『死海のほとり』は多言語に全く翻訳されていない。理由の一つとして考えられるのは、この作品が強い政治性を帯びたテクストとして読まれうることだ。ナチスによるユダヤ人迫害が描かれているが、イスラエルのユダヤ人によるアラブ人抑圧もさりげなく描き込まれている。つまり、アラブ人、ユダヤ人双方から批判される可能性を持つテクストなのである。遠藤は村松剛を通じてイスラエルの政府の協力の下に取材旅行をしているが、イスラエル側が見せたいと思った世界と作家が実際に見た世界は違っていた。現代のイスラエルには関心がないと発言する主人公の目に入るのは、アメリカ合衆国の俳優ジョン・ウエインが騎兵隊に扮した映画館のポスターである。先住民を駆逐する騎兵隊イメージは、アラブ人を抑圧するイスラエルの隠喩であり、このような暗示的描写が作品中には少なくない。 作者はアウシュビッツ問題とパレスチナ問題を重ね合わせて捉えているのであり、物語の最後で描かれる<永遠の同伴者イエス>も、虐げられたユダヤ人がアラブ人を虐げるという暴力の連鎖状況を踏まえて提出されていると考えるべきなのである。
著者
T. V. Subba Rao
出版者
南山大学
雑誌
Asian folklore studies
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, 1980
著者
山本 茂貴 石渡 正樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.51-62, 1998
被引用文献数
1

食中毒による被害はこれまで事件数, 患者数, 死者数という直接的な被害を表す数値によって表現されてきた。しかし, このような指標は原因の異なる食中毒の被害を十分に比較できず, 食中毒が社会的又は経済的に及ぼす影響について評価し難いという問題を持っている。<BR>細菌性食中毒による経済損失の推計方法及び推計に必要なデータを調べるために米国農務省のBuzbyらが行ったcost-of-illnessの推計方法を検討した。<BR>その結果, 現在の日本ではBuzbyらが使用したものと同様な疫学データがないために同じ方法で推計を行うことができないことが判明した。そのため, 現在入手可能なデータを使用して横浜市におけるサルモネラ食中毒のcost-of-illnessの推計を行なった結果, 1991~1995年に横浜市内でおきた食中毒事件のcost-of-illnessはおよそ850万円 (1993年の円に換算) (1年あたり平均約170万円, 患者1人あたりの費用は約44, 000円) , 横浜市民のなかで発生したサルモネラ食中毒の1年間のcost-of-illnessはおよそ7, 700万~5億3, 000万円) (患者1人あたりの費用は約23, 000円) と推計された。<BR>今後, 精度の高いcost-of-illnessの推計を行うためには, 使用する質の高いデータを得るための疫学研究の充実が必要であると考えられる。
著者
矢邉 洋和 梅澤 秋久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.294_2, 2016 (Released:2017-02-24)

2009年の米国教育省は、オンライン学習の効果を対面状況と比較した上で報告し、中央教育審議会答申(2012)では、これからの時代を見据え、「教室外学修」の重要性を説いている。本研究では、小学校4年生の体つくり運動において、オンラインストレージを用いた家庭での動画視聴(以下家庭での動画視聴)による反転学習型の授業を実践した。保護者へのアンケートおよびインタビューによる分析を通して、家庭での動画視聴におけるメリットとデメリットが示唆された。6回の動画配信のうち、保護者も平均5.4回視聴し、平均3.3回は、子どもと一緒に動画を見ていた。動画を一緒に見ながら、「学習へのアドバイス」や「称賛」、「学習内容への質問」といった会話が生まれる傾向が認められた。保護者自身の動画視聴への「楽しみ度合」と、「授業のねらいへの理解」、「1時間ごとの子どもの変化への気づき」、「負担感のなさ」に統計的に有意な相関関係が認められた(p<0.05)。ネットワーク自由記述およびインタビュー分析にはテキストマイニングソフトKH Coderを用い、分析を行った。
著者
白石 好 森 俊治 磯部 潔 中山 隆盛
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.488-492, 2003 (Released:2011-06-08)
参考文献数
27
被引用文献数
1

非常にまれであるハンドル外傷による胃破裂とIIIa型膵損傷を合併した1例を経験し, 胃切除と膵胃吻合による尾側膵温存術式にて救命しえたので報告する. 患者は64歳の男性で, 交通事故による腹部打撲と吐血を主訴に救急搬送された. 腹部CTでFree Air, 腹腔内出血を認めたため胃破裂疑いで緊急手術となった. 手術所見は胃前壁の体下部から幽門前庭にかけて約7cmの破裂創と胃角部小彎に出血性潰瘍を認めた. また, 上腸間膜静脈右縁にて膵の完全断裂を認めた. 出血は胃潰瘍によるものと判断した. 止血のために胃切除施行し膵温存のため膵尾側の膵胃吻合を施行した. 急性期の経過は順調であったが, 軽度の膵液瘻を認めた. 退院6か月経過後でも血糖値, 膵外分泌機能には異常を認めなかった. 自験例と文献的考察から消化管破裂や大量出血を合併した症例では, 膵温存術式として膵胃吻合は適した再建法であると考えられた.
著者
境 くりま 港 隆史 石井 カルロス寿憲 石黒 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.3, pp.310-320, 2017-03-01

人間はわずかな感情や態度の変化を細かな動作の変化で表現することにより,対話相手に様々な感情や態度を伝達することができる.更にそれらが場の雰囲気を形成し,対話しやすさの促進などの効果をもたらす.人間に酷似したアンドロイドで人間同様に感情や態度を伝達するためには,感情の連続的な変化に対応するように動作特徴(動作の振幅や速度など)を変化させることができる動作生成手法が必要となる.人間では感情が身体の筋系に影響を及ぼして身体動作を変化させていることを踏まえると,筋系の振る舞いをモデル化した動作生成手法において,筋系のパラメータと感情状態を対応づけることで,上記のような動作生成手法が構築できると考えられる.本論文では,対話において常時現れる発話動作に着目し,著者らがこれまでに提案した音声駆動頭部動作生成システムのパラメータ空間と感情空間の対応関係を実験により明らかにした.このマッピングを用いて,感情の細かな変化を表現するように動作を変調することができる発話動作生成システムを提案する.
著者
安藤 延男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-73, 1965

基督教との関連で生じる外行動としての宗教的行為 (もしくは宗教生活) に関するインベントリーの作製手続きについて報告した。<BR>(1) "宗教的行為" の概念的定義については, 岸本の所論 (1961) を適用した。かつその測定の意義について述べた。<BR>(2) 24個の質問項目からなる原案を作製し, 予備調査 (対象: 福岡女学院高等学校3年生, N=184, 1962年度) の資料による上位・下位分析を行い, 22項目を有する最終形式をえた (Table 1)。<BR>(3) インベントリーの最終形式の質問項目22個の相互相関係数 (ピァソンのr) 231個の相関行列にもとずく因子分析のあと軸の直交回転を施した (Table 2, 3)。3個の因子に関する解釈は以下のとおりで, いずれも基督教徒の日常生活の重要な諸次元を指示する内容であった。すなわち, 第1因子は 「神中心的生活」 因子, 第2因子は 「宗教的修養」 因子, 第3因子は 「世俗生活への積極性・責任性」 因子である (Table 4, 5, 6)。<BR>(4) 一次因子の相互独立性について検討したところ, 3つの一次因子は総合点に対し, かなり高い相関を示し, かつ二次因子のレベルでも第1因子 (A) における負荷がきわめて高いことが見出された。したがって, 本インベントリーの一次因子相互間には, かなりの内的整合性がみられることから, 一次因子に準拠せる下位尺度の構成は見合わせることとした (Table 7)。<BR>(5) インベントリー最終形式の弁別力を吟味するため, いくつかのグループからえられた回答資料で分布を検べてみたところ, いずれの場合も, 6もしくは7標準偏差に及ぶ広範囲の分布がみとめられた。したがって, 最終形式の弁別力は満足すべきものということができる (Table 8-a, 8-b)。<BR>(6) 信頼性は再検査信頼度係数を用いて吟味した結果, r=. 752という, かなり満足すべきものであった。<BR>(7) 妥当性の吟味は多面的に行われた。妥当性の規準としては, 基督教会における洗礼の有無, 基督教関係学校学生・生徒と教会礼拝出席者の比較, 自己が主観的に帰属する宗教, 両親の宗教, 宗教的情操尺度・基督教への態度尺度・聖書の知的理解などの諸得点が採られ, それぞれについそ相関関係を検討した。その結果, 本インベントリーの妥当性は望ましいものであることが示された (Table 9~14)。<BR>(8) 本インベントリーは, 福岡女学院中学・高校, 西南学院中学・高校, カトリック系明治学園中学・高校のほか, 西南学院大学文学部神学科や基督教会の若干につき実施されたにすぎない。しかしながら, 本インベントリーの利用面を考え, 暫定的な標準化を行った (Table 15, 16)。いうまでもなく, 今後における資料の集積を侯って, 逐次改訂される必要のあることはいうまでもない。なお, この標準化に用いた素資料を付録として示しておく (Appendix 1-3)。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.290, pp.40-55, 2000-09

■「辛くて刺激的」「野菜たっぷりでおいしくヘルシー」「手頃な値段」——。そんなコリアンテイストが日本の食シーンで大きなうねりを巻き起こしている。今やコリアンテイストは,居酒屋,ファミリーレストランと様々な業態に広がり,韓国料理専門店だけのメニューではなくなった。■これからのコリアンテイストの本命はずばり"韓国フュージョン"。
著者
浦 達雄
出版者
古今書院
雑誌
地理 (ISSN:05779308)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.36-43, 2007-06