著者
丸山 文裕 両角 亜希子 福留 東土 小林 雅之 秦 由美子 藤村 正司 大場 淳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大学へのファンディングと大学経営管理改革との関係を検討するのが本研究の目的である。平成29年度は、一つには、日本において大学へのファンディングの方法の変化が、大学での研究生産性に及ぼす影響を考察した。大学へのファンディングは、国立大学への運営費交付金など基盤的経費の削減と、他方科学研究費補助金などの競争的資金の増加にシフトしているが、それが研究の生産性にマイナスの効果を持つことを、専門分野の異なる全国の大学の研究者にアンケート調査することによって得られたデータにより証明した。また平成29年秋の参議院選挙まえに突如争点となった自民党や有識者会議「人生100年時代構想会議」等が主張する教育無償化について、それが高等教育機関の経営管理に対する影響も含め、検討した。教育無償化案は、大学進学者や大学経営にポジティブな影響をもたらすものと推測されるが、一方で政府財政の立て直しや、大学に配分される研究費にとって、必ずしもポジティブな効果をもたらさないことを論じた。消費税増税分の一部を無償化に回すことで、国際公約となっている公的債務削減が遅れ、政府財政の健全化に支障をきたすこと。また文教予算のうち高等教育無償化を推進するため、日本学生支援機構への奨学金事業費が増加するものの、その分国立大学運営費交付金および私立大学への経常費補助金が削減される可能性があること、の2つが危惧される。以上2つの研究成果は、論文として平成29年度に公表した。
著者
瀧本 知加
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、当初予定していた「専門学校化」言説に関する資料収集を一通り終わらせたうえで、専門職大学に関する検討を通して、大衆化した大学と専門学校化の関係性を検証する作業を行なった。専門職大学に関しては、本科研の助成期間内である平成28年度に提出された中教審答申「人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」の中で、新たな大学として、制度化が提起され、学校教育法が改正されることとなった。専門職大学は既存の専門学校の教育を大学に格上げする形で設計された大学であり、その制度化の議論においては、大学における職業教育と専門学校における職業教育の関係について詳細な議論が行われている。この議論は本科研の課題ともかかわる重要なものであるため当初の作業に加えて、これら専門職大学をめぐる議論の検討を試みることとなった。本年度はそれらの作業をまとめた論文を執筆することができた。専門職大学をめぐる議論からは、大衆的な大学に求められることとなっている職業教育機関としての役割が、実際には多くの大学の中に様々な形で取り込まれており、専門学校との境界線がすでに曖昧となっていることが明らかとなっている。専門職大学は専門学校が大学化したものとして整理できるものであるが、その制度設計は「大学との差異化」を目指しており、本科研が解明を目指す「大学とは何か」という問いの解明の手がかりとなるものである。以上のように、当初の研究予定に加える形で、専門職代が区の検討を行なっているところであるが、補充的な情報を得ることができており、本科研の最終段階である「教育機関としての専門学校と大学の関係の再定位」に向けた資料の収集と検討は順調に進んでいるといえる。
著者
五十畑 浩平
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、フランスの長い職業教育の歴史のなかで発達してきた、理論的教育と企業での職場実践を組み合わせた「フランス型デュアルシステム」に関し、近年普及が高まってきた高等教育におけるそれに対象を絞り、どのような歴史的発展を遂げてきたのか、あるいは、実際どのような教育がなされているのか、また、どのような教育上の効果や問題点があるのかを解明していくことにある。課題であるフランスの高等教育における職業教育の実態、とくに高等教育におけるデュアルシステム(formation en alternance:交互制職業教育制度)の実態究明にあたり、本年度も昨年度同様、フランスの教育制度や、職業教育制度の歴史と現状についてのサーヴェイを引き続き行って来た。また、フランスの労使関係について、近年の動向を調べ、2018年3月331日、社会政策学会東海部会において、「フランスにおける労働市場改革の動向」と題しその成果を報告した。また、本研究課題の中心テーマであるフランスの交互制職業教育制度については、その教育制度のひとつであるcontrat d'apprentissage(見習契約)に着目し、引き続き、この制度を中心とした過去の統計データや資料を収集してきた。今後は、こうした日本でのサーヴェイを踏まえ、フランスでの現地調査を行い、フランスにおける労働市場改革の動向の実態に迫っていきたい。
著者
小島 佐恵子
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は現状のまとめとして、第29回アメリカ教育学会で発表を行った。発表は、米国の大学における州財政困難が州立大学にどのような影響を及ぼしているのか、なかでも学生支援部門への影響はどのようになっているか、The Chronicle of Higher EducationやInside Higher Edなどの各種高等教育関連のウェブサイト他、日本学術振興会の海外学術動向ポータルサイトに掲載された内容、また個別大学が公表している情報を収拾し、まとめることで、事例調査選定に役立てることを目的とした。結論としては、州財政の高等教育への支出は回復傾向を見せているが、リーマン・ショック以前のレベルには戻っていないこと、州財政が逼迫しているところではもちろん、そのレベルに限らず、複数の大学で学生支援のポストが削減・統合されていることが明らかとなった。州立大学に留まらず、連邦政府や州からの経常補助がないとされる私立大学においても、同様の傾向が見られた。一方で、アカデミック・アドバイジングが維持されている傾向や、学生支援への支出を増加することで学生の卒業率を上げることができているという傾向も見られた。また、とくにコミュニティ・カレッジにおいては連邦政府も学生支援に資金を拠出している例も見られた。そのため、全体的に削減傾向にはあるものの、部分的には維持・補填されているところもあり、とくに教学に近い部分では維持・補填されている傾向があるのではないかということが推察された。
著者
武石 典史
出版者
聖路加国際大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、陸軍における人材の選抜・配分の傾向と大正末期頃から陸軍で進行する権力の分化とが、どのような関係にあったのかという点を検討した。単に陸軍の動向をあきらかにするのではなく、文官官僚との比較をとおして、さらにはチリやブラジルといったラテンアメリカ諸国の政軍関係の研究成果を参考にしながら、後発国の軍部の特長について検討した。具体的には次の通りである。①『日本陸海軍総合事典』および『官報』に記載された情報を基礎資料とし、回顧録、新聞・雑誌記事の徹底的な分析をとおして、「陸軍内の選抜」と「諸ポストの階層性」との対応性の解明を試みた。なお、陸軍将校およびその関係者によって刊行された『偕行社記事』、『偕行』の網羅的な調査を実施した。②Leonard A. Humphreys, The way of the heavenly sword: the Japanese Army in the 1920's, Stanford University Press, 1995 や Edward J. Drea, Japan's Imperial Army: Its Rise and Fall, 1853-1945, University Press of Kansas, 2009、Meirion and Susie Harries, Soldiers of the Sun: the Rise and Fall of the Imperial Japanese Army, Random House, 1994 をはじめとする、外国人研究者の手による日本陸軍の研究群を綿密に検討し、その知見と考察を整理した。また、Alfred C. Stepan, The Military in Politics: Changing Patterns in Brazil, Princeton University Press, 1971 や José Nun, ‘The Middle-Class Military Coups,’ in Abraham F. Lowenthal, and J. Samuel Fitch, ed., Armies and politics in Latin America, Holmes & Meier, 1986 の分析結果の一部を、日本の比較材料とした。③上記の①と②の双方のデータを突き合わせ、相互に資料批判させるプロセスを経ながら、昭和期における陸軍の動向を検討した。

2 0 0 0 OA 九国条約無効

著者
蜷川新 著
出版者
国民文化協会
巻号頁・発行日
1937
著者
梶井基次郎作
出版者
麦書房
巻号頁・発行日
1969
著者
山下 広美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 = Eiyo To Shokuryo (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.171-176, 2014

酢酸は, 生体において空腹時に脂肪酸からβ酸化により生成される内因性の成分であり, 骨格筋などで生体燃料として利用される。一方, 外因性に酢酸を摂取すると酢酸は容易に血中に移行し組織に速やかに取り込まれた後, その代謝過程でAMPを生成し細胞内のAMP/ATP比を増加させてAMPキナーゼ (AMPK) を活性化させる。2型糖尿病の病態モデル動物に酢酸を継続的に摂取させると, 肥満が抑制され耐糖能を改善させる。また肝臓において脂肪合成関連遺伝子の転写量を低下させることから, 酢酸は脂肪合成を抑制するように作用すると示唆される。その他エネルギー消費割合の増加, 白色および褐色脂肪組織においては脂肪滴肥大化の抑制が見られる。以上より酢酸は空腹時には内因性の成分として生成され生体燃料として利用されるが, 摂食時に酢酸を摂取すると脂肪合成の抑制による肥満の抑制, さらに肥満に起因した2型糖尿病予防効果をもたらすと示唆される。
著者
鈴木 一隆 江田 英雄
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.228-231, 2013

日本経済を牽引してきた製造業を中心としたビジネスモデルが通用しなくなっている。戦後復興の名のもと、欧米製品を手本・目標に、勤勉さと労働賃金の低さを優位性に市場を席巻したビジネスモデルをいまや韓国、台湾、中国、インドに仕掛けられる立場になったためである。三兆円超の医療機器市場は高成長市場でもあり、中小企業のみならず大企業までも医療機器市場に参入を進めている。中小の新規参入者は、開発力、資金力、豊富なラインナップを有する強力な世界企業の居ない場所を開拓せざるを得ない。本研究ではこうした中小企業がとるべき戦術を、他業界への参入と比較して考察する。
著者
山田 尚史 愛須 英之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CST, コンカレント工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.471, pp.43-48, 2008-01-21
被引用文献数
1

エレベーター群管理制御は乗客へのサービスを効率化するようにかごを割当てることが主な役割である。この効率化を図るためには、(1)現時点のかご割当がサービスヘ与える影響だけを考慮するのではなく、(2)将来までに亘るかご割当がサービスヘ与える影響を考慮する必要がある。この問題(2)に対して、将来までに亘り発生する複数個ホール呼びのかご割当問題を組合せ最適化問題として捉え、Aアルゴリズムを応用した群管理制御方法を提案し、その性能評価を報告する。
著者
簗瀬 範彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-20, 2011
被引用文献数
1

本研究は19世紀に作成された地籍図の面積誤差の原因を考証したものである.現在の地籍制度は,明治期の税制革改である地租改正時の土地台帳とその付属地図を淵源としている.数%からときには10%以上に及ぶ面積誤差の原因は,当事者である農民の拙劣な測量技術,重税を逃れようとする農民の計測の誤魔化し,官側の検査の杜撰さ等によるものと一般に認識されている.しかし,いわゆる「縄伸び」と呼ばれる登記簿面積と実測面積との差は,概ね官側から提示された許容範囲内にあることを地籍図に関する測量基準の分析から明らかにした.併せて,分筆対象の筆全体を実測なしに分筆する制度が長らく行われたことや農地改革に伴う国有地解放なども地籍図における面積誤差の原因の一部であることを指摘しておきたい.
著者
大月 勇人 瀧本 栄二 齋藤 彰一 毛利 公一
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.843-850, 2014-10-15

最近のマルウェアには,他のプロセスのメモリ上に潜んで動作するものや複数のモジュールで構成されるものが存在する.このようなマルウェアに対して,従来のプロセスやスレッドを単位として挙動を観測する手法では個々の動作の区別が困難である.この課題の解決のために,システムコールトレーサであるAlkanetは,システムコールフック時にスタックトレースを行い,呼出し元となったコードまで特定する.ただし,当該手法では,マルウェアにスタックを改竄された場合に呼出し元を正確に取得できない.そこで,本論文では,CPUに搭載されているブランチトレース機能を活用した正確な呼出し元の取得手法とその有効性について述べる.
著者
清野 克行
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.837, pp.134-137, 2013-06-27

さらにシステムの改善を進めていこう。「Web SQL」というデータベースをクライアント上に追加し、仕訳データをバッチ処理によって、クラウド上のサーバーに送る形態だ。その構成を示したのが次ページの図3である。
著者
野々村 洋 栗野 俊一 深澤 良彰
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.215-216, 1993-09-27

並列計算機においてリダクション計算を行なう場合、データ交換の時間(通信時間)を考慮しなければ、2分木状に進めた時が、最少のステップ数での計算となる。しかし、通信による遅延を考慮した場合、この方法ではデータ交換のための無駄な待ち時間が生じ、計算に要するステップ数は最少にならない。本発表では、一定の通信時間を考慮した場合に、全てのプロセッサがデータ交換のための待ち時間なしで、かつ、最少のステップ数でリダクション計算を行うための並列計算機の最適なネットワークトボロジー、ならびにその上での処理割り当て法について述べる。
著者
中川 聖一 Reyes Allan A. 鈴木 英之 谷口 泰広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.1649-1658, 1997-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
19

本論文では, 音声認識技術を利用した英会話CAIシステムについて述べる. これは, システムが, 学習者の発話を自動音声認識により理解し, 待ち時間なしで適切な応答を音声で出力し, 対話を進めることにより, スピーキングとヒアリングの能力を高めるものである. まず, 日本人の発声した英語の音声認識を行うためには日本人の英語発音モデルを用いる必要のあることを示す. 次に, 評価実験として4人の日本人男性にこの英会話CAIシステムを使用してもらった評価実験結果について述べる. 使用前と使用後のスピーキングとヒアリングの能力の差を比較したところ, 全員に能力向上がみられた. またアンケートの結果, 本システムを引き続き利用したいとか, システムの応答時間はちょうど良いといった意見が多く得られた.