著者
齋藤 衛
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.468-474, 2013-04-15

日本国内におけるDDoS攻撃とその対策の状況と,これから解決すべき課題について紹介する.攻撃については,日本におけるDDoS攻撃の変遷,DDoS攻撃の発生件数,攻撃規模の変化について触れ,対策の状況では,多くのISPで提供しているDDoS攻撃対策のサービスについて概観した後,DDoS対策の限界と副作用について述べる.最後に,国内ISPのユーザ同士で互い攻撃しあうような状況が,より大規模に発生した場合,その対処において解決すべき,これからの課題を提示する.
著者
近藤 伸郎 正田 備也
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.297-302, 2020-12-05

本研究では,「全共闘世代」と呼ばれる世代とその周辺を対象としたアンケート・データをテキスト分析した.高齢化し鬼籍に入る者も少なくない全共闘世代の実態解明を目的として行われたのが本アンケートで,基本的な情報に関する設問に加えて,政治運動に参加した動機やメンタリティ,それを今どう考えているかの総括に関する設問もあり,回答者からは多数の自由記述的な言葉が寄せられた.それらを分析することで,世代の何らかの特徴を得られないか.今回は,テキストをまとめて形態素解析し,特定の二値カテゴリにしたがって分類器に学習させ,その分類器において重要度の高い特徴量を重要な単語としてあぶり出した.その上で,その重要語の特徴を考察した.
著者
辻祐喜 十鳥弘泰 大津金光 大川猛 横田隆史 馬場敬信
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.373-374, 2013-03-06

新規アーキテクチャの開発では,評価条件を変えながら繰り返しシミュレーションを行う必要があり,プログラムの種類や規模によってシミュレーションが長時間に及ぶことがある.中にはシミュレーションが長時間経過した後,初めて発現するバグがあり,このバグの原因場所を特定する方法の1つに,シミュレーションを最初からやり直し,バグが発現した場所付近で変数等の値を調べる方法があるが,実行が長時間に及ぶプログラムにおいてこの方法は非効率といえる.そこで,本稿では任意の場所で実行中のプロセス状態を保存し,保存した状態から実行再開することでバグの原因場所を見つけるまでの時間を短縮する方法を提案する.
著者
山田 隆弘
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.760-763, 2015-07-15

宇宙システム開発と情報技術とのかかわりについての現状と将来展望について具体例もまじえて解説する.宇宙システム開発における情報には,「このような衛星を作る」という仕様,計画,手順等がある.これらの情報の大部分は自然言語で記述されている.そのために情報処理は,ほとんど人手によって行われていて,情報技術はほとんど使用されていない.自然言語による記述の問題点を克服し,情報の機械的な処理を目指してモデル化技術の適用が試みられている.モデル化技術だけで宇宙システム開発で必要とされる情報処理技術のすべてを実現するのは困難であり,情報技術さらなる発展が望まれる.
著者
中村 大地
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

ブロックチェーンとは2009年サトシ・ナカモトによって提案された改竄が困難な元帳を作成する分散型元帳技術である。ブロックチェーンを活用した技術の代表例として仮想通貨「bitcoin」が存在する。しかし、「bitcoin」は取引をブロックチェーンに記録する際に、一度記録されてからチェーンが数ブロック伸びるまで待つ必要があり、単位時間当たりに処理できる取引数に限界がある。これをスケーラビリティ問題と呼ぶ。ライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題を解決するための方法として2016年にJosephらによって提案された。ライトニングネットワークは、ユーザとユーザ間を繋ぐマイクロペイメントチャネルで構成されている。ライトニングネットワークにおいて、どのユーザ、あるいはどのチャネルを経由して目的のユーザに送金を行うかを決定するのがライトニングネットワークのルーティング問題である。本研究ではルーティングアルゴリズム[Flare]を実装して性能測定、およびライトニングネットワークのルーティング問題に対して、ユーザが自分の利益を最大化するために周囲のノードと協力することを考え、ルーティングアルゴリズムの拡張を行った。 [Flare]は、2016年にPavelらによって提案されたライトニングネットワークのルーティングアルゴリズムである。Flareでは各ノードはネットワークにおける自身の近隣の情報しか所有しておらず、周囲のノードに近隣情報を要求していくことで目的のノードへのパスを発見する。このとき、支払いの中継を行ったノードは送金者から手数料として利益を得ることができる。 このアルゴリズムにおいて、一部のユーザが協力することで互いの利益を最大化しようとする場合を考える。ネットワーク上に存在するユーザの中で、中継ノードとして利用される確率の高いユーザを選択し、そのユーザ同士で互いにチャネルを持ち合うグループを作成する。チャネルを持ち合うことで、グループのメンバ1人でも近隣情報を要求されれば、グループの全ユーザが探索領域に入るようになり、中継ノードとして使用されやすくすることでお互いの利益を最大化しようとする。このようなユーザのグループを作成することで、アルゴリズムの性能、ユーザが得られる利益がどう変化するかを調査した。結果、グループを作成することで、メンバが得る利益と他のノードがパスを発見できる確率を増加させることに成功した。
著者
安田 利枝 ヤスダ リエ Rie Yasuda
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-24, 2005-04-30

1999年の地方自治法(LSGA)は、開発援助の与え手(ドナー)側の援助思潮ならびに開発戦略に基づいて、分権化の原則と政策、参加型開発の定式化、地方政府機関の確立に向けて相当程度包括的な法的枠組みをもたらした。しかしながら、1982年地方分権法とこれに続く分権化スキームと同様、問題は法の実効性、運用、実施にある。実施を阻害する要因として、多くの研究者が、高度に権力を集中させた封建的、権威主義的、世襲制的政治、中央政府の実質的コミットメントの欠如、財政分権化への中央省庁の抵抗、地方政府機関の弱体な管理運営能力等を指摘してきた。だがむしろ根源的な問題は、ネパールの恩顧主義の政治文化に支えられて、課題設定権力がドナーの側にあり、ネパール政治社会に適合的な制度設計の代替案が十分に検討されてこなかったことにある。
著者
水島 洋平 Yohei Mizushima
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.115-126, 2009-07-25

本稿の目的は、ケア役割が男性にとってどのような意味を持つのかという問題意識の下、ケア役割を通して成人期男性がどのような発達を遂げるのかに焦点を当て、生涯発達の視点から考察することにある。近年、わが国においても、ワーク・ライフ・バランスの推進が喫緊の課題となっている。少子高齢化や産業構造の変化により、性別役割分業型家族が後退し、核家族が増加している。それに伴い、育児や介護の問題も変容している。かつて、育児や介護などのケア役割は、主に女性が担ってきたが、男性もケア役割を担う必要性、さらには、ケアに積極的に関わりたいという男性のニーズがあるなど、実態面や意識面での変化が見られる。本稿では、まず、ケア役割を通した成人期男性の発達の問題にアプローチする際に、生涯発達の視点を持つことの重要性を指摘した。次に、ケア役割と成人期男性の発達との関連性について明らかにするために、ケアの概念を概観し、成人期男性の発達にとってのケア役割の重要性について指摘した。最後に、ケア役割を通した成人期男性の発達を考えるうえで有用と思われるHavighurst、Erikson、Levinsonの発達理論の整理と理論から得られた知見を提示した。
著者
戸次 大介
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.66(2002-NL-150), pp.69-76, 2002-07-15

型付き動的論理(TDL)[2]は、動的述語論理[8]と複数形論理[5]の両方の利点を備えた論理言語である.本論文では、TDLを日本語の形式意味論に応用し 量化子の分配/累積読み 照応子の変項束縛/Eタイプ読みなどの分析における 他の意味論への優位性を示す.
著者
松井 暁
雑誌
専修経済学論集 (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.17-42, 2010-12-15
著者
末盛 慶 小平 英志 鈴木 佳代
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.39-52, 2017-09-30

近年,ワーク・ライフ・バランスに関する研究が蓄積されている.しかし,その多くは共働き世帯など夫婦世帯を対象とした研究が多い.しかし,ワーク・ライフ・バランスの実現がより困難であることが推測されるのはひとり親家庭である.ひとり親家庭の場合,理論的に1 人で家庭役割や職業役割等を遂行していく必要があるからである. 以上の問題意識から,本稿では,シングルマザーの家庭領域から仕事領域に対するワーク・ファミリー・コンフリクト(FWC)の規定要因を分析した.分析対象は,名古屋市区部に在住し,年齢の記入があり,就業しているひとり親の母親113 名である. 分析の結果,時間のFWC に関しては,仕事過重と貧困状態が有意な関連を示した.ストレインのFWC に関しては,仕事過重,上司のサポート,および貧困状態が有意な関連を示した.行動価値のFWC に関しては,学校関与と上司のサポートが有意な関連,貧困状態は有意傾向で関連を示した.以上の結果から,仕事の過剰や上司のサポートといった要因に加え,貧困状態がシングルマザーのワーク・ファミリー・コンフリクトを高めることが示された.