著者
吉岡 勇太 和田 俊和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.471, pp.241-246, 2010-03-08

画像を用いたトラッキングや物体認識,複数画像の張り合わせなどに,SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)などの局所特徴量がよく用いられる.これは,SIFTが照明の変化や回転,拡大・伸縮などに対して比較的安定な特徴を生成するためである.しかし,SIFTの計算量は多いため,現在の汎用CPUではビデオレートで計算をすることはできない.このことは,より高速な計算が可能な局所特徴量SURF(Speed Up Robust Features)でも同様である.本報告では,SURFアルゴリズムを,ソフトウエア的な論理回路合成が可能なFPGA(Filed Programmable Gate Array)上で実装し,データ並列とタスク並列によって,ビデオレートで計算する方法を示す.
著者
森江 隆 岩田 穆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.162, pp.67-78, 2002-06-21
被引用文献数
2

脳の初期視覚系での特徴抽出モデルとして知られるガボールウェーブレット変換を画素並列動作で実現するLSIを核とする自然画像認識システム構築の試みについて述べる。まず,自然画像の特定領域を注視する処理として抵抗ヒューズを用いた大局的領域分割を行う。分割された各領域を個別に抽出し,ガボールウェーブレット変換を行う。得られたガボール特徴量を用いて,ダイナミックリンクアーキテクチャに基づく柔軟なマッチングにより認識を行う。特徴抽出までの処理をハードウェアで実行するために,画素並列で動作するLSIをパルス変調信号を用いたアナログ・デジタル(AD)融合回路アーキテクチャに基づいて設計した。本稿では特に,(1)パルス変調方式ピクセル回路を用いた大局的領域分割用抵抗ヒューズネットワークおよび抵抗ネットワーク型ガボールフィルタ回路とそのLSI設計例,(2)セルオートマトン型画像領域抽出アルゴリズムとそのFPGAへの実装例,(3)システム化の基盤となるLSI制御用FPGA搭載PCIボードの仕様について詳述する。
著者
中野 鉄平 彦本 里美 森江 隆 永田 真 岩田 穆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.248, pp.45-51, 2001-07-26
被引用文献数
1

本論文では, 画像の領域分割後に得られるエッジ情報を利用し, エッジで囲まれた領域を画素並列で個別に抽出するアルゴリズムとそれを実現するLSI回路構成を提案する.1画素毎に1処理モジュールを割当て, 隣接画素の状態で自分の状態を決めるセルオートマトン型のアルゴリズムである.提案する画素回路は極めてコンパクトなので, すでに提案されている画像分割用画素回路内に組み込むことができるが, 今回はFPGAに実装した例を示し, 画素並列処理がどの程度現状のFPGAで可能かを議論する。
著者
野村 明美 塚本 尚子 青木 昭子 舩木 由香
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

子供が一生涯を健やかに過ごすために、子供の成長過程におけるセルフケア能力育成プログラムと教材開発を行い、実用化することを目的に、まず幼児期、学童期を中心に調査を行い生活習慣と健康の結びつきについての認識を明らかにし、この認識に基づく健康行動の選択が健康に及ぼす影響を検証した。その結果をもとに、行動を支える認識を育成するセルフケア能力育成プログラムを考案し、教材を開発し、実用化した。
著者
仙石 知子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

毛宗崗本『三国志演義』に表現された女性像と、その背景となっている清代初期の女性に対する社会通念を追究し、その結果を『毛宗崗本『三国志演義』における女性像の表現』として刊行することが研究の目的である。本年度は、「毛宗崗本『三国志演義』における徐庶の母と忠」を公刊した。その内容は、以下のとおりである。劉備に仕えていた徐庶は、曹操に母を捕らえられ、劉備のもとを離れて曹操のもとに赴く。徐庶の行動は、忠よりも孝を優先させたことになる。毛宗崗本は、徐母の忠を強調するあまりに、徐庶の孝を貶めている李卓吾本の表現を改め、忠と孝の狭間に苦しむ徐庶の葛藤を救い出し、何のためらいもなく徐庶を送り出す劉備の仁に傷がつかない配慮をしている。こうして、毛宗崗本は、三絶と位置付ける曹操・関羽・諸葛亮の人物像を明確に描くとともに、漢を代表する劉備の「仁」の属性も明確にするため、忠の表現を工夫しているのである。以上である。このほか、「中国小説における「女をさらう猿」の展開」を『日本中国学会報』に投稿し、10月に掲載された。
著者
東本 裕美 岩崎 弥生 石川 かおり 野崎 章子
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

最終年度にあたる本年は、これまでの調査で得られた結果をもとに高齢者の精神的健康の維持、増進を図るため健康教室を企画した。これまでの研究より「お互い楽しく話し合える場や、協力できる友達が必要」等の意見をふまえ、地域在住の高齢者を対象にグループ活動を実施した。このグループは参加を希望し研究の承諾が得られた6名の女性高齢者(60代~80代、平均年齢73.3歳)を対象とし全8回実施した。グループにはグループ回想法の技法を用い、1.回想を通じての情緒的交流の機会の提供、2.共有体験の分かち合い、3.孤立感の軽減、4.生活の活性化を目的とした。各セッションのテーマは参加者と話し合って設定したが、それにこだわることなく毎回自由な雰囲気で進行した。また、話し合いばかりではなく1回は「散歩」を取り入れた。結果としては、グループの中でお互いの情報を交換したり、悩みについてアドバイスをしあう様子がみられた。そして、実施後の参加者の感想としては、「楽しかった」、「だれかと話をする時が紛れる」、「また参加したい」、「最初はうまく話せるか不安だったけど、会が進む間に楽になった」と肯定的なものであった。また、実施前後でQOLを比較したところ、グループでの話し合いは高齢者のQOLを高める一定の効果があった。さらに、今後は「戦争体験について若い人たちに話したい」や「若い人たちに役に立つことは何か、自分たちができることは何か」ということをテーマに話したいという、高齢者自身が地域づくりのためにできることは何かを模索する姿勢が見られた。今後の課題としては、グループの中で、個々のプライベートや心的外傷体験に関する内容が話された場合に、その取り扱いについて十分な配慮が必要であり、今後は進行の方法などの運営側の体制づくりが必要となると考える。
著者
筑和 正格
出版者
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 = Graduate School of International Media, Communication, and Tourism Studies, Hokkaido University
雑誌
国際広報メディア・観光学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-44, 2008-11-28

The purpose of this paper is to examine the basic concepts of "International Regional Culture Studies", structure them and consider adequate methods of new "Community Development", which contribute to the promotion of tourism at the same time. It is indispensable first to construct conceptual systems in order to understand what "culture" is because it is "an historically transmitted pattern of meanings embodied in symbols" (Geertz) and therefore can hardly be recognized by external observations alone. The "culture" of a human group reflects the value of its members. Furthermore, we can formulate that the term "international" means the relationship between or among larger regions and can be characterized by the interrelationship of regional cultures and therefore of different values. The construction of "conceptual systems" is also required as part of activity of new "Community Development" because it means a sustainable revitalization based on the internalized common values of participants, and these values arise from self-recognition based on the conceptualization of their own culture. The further task of new "Community Development" is to somehow transform the concepts of their own "culture" into a tangible reality.
著者
砂上 史子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

幼稚園での観察とそこで得た事例の詳細な分析から,幼児の人間関係における同型的行為の役割について検討した。その結果として(1)保育実践現場における観察と記録のあり方,(2)幼稚園における仲間関係の発達と身体を通してのかかわり,(3)幼稚園の葛藤場面における子どもが他者と同じ発話をすることの機能を明らかにした。
著者
鈴木 良徳 八重樫 純樹
出版者
Japan Society of Information and Knowledge
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.215-220, 2010-05-15

博物館(M)、図書館(L)、公文書館(A)のデータベースを統合する際に、資料の記述規則が異なることは、以前から指摘されてきた問題である。近年、MLA の連携を目的とした活動が活発となり、MLA の標準化に向けてそれぞれの記述規則を見直す必要が出てきている。このような背景を踏まえ、著者らはMLA それぞれの代表的な記述規則であるIGMOI、ISBD(G)、ISAD(G)の比較分析を行った。比較の結果、それぞれの機関の活動目的と記述規則が深く関わっていることがわかった。本稿では、比較の結果から、MLA 連携のために今後どのように研究を進めていくべきかを考察する。
著者
伊永 隆史 尾張 真則 竹内 豊英 内山 一美
出版者
首都大学東京
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

化学実験に用いる器具・装置類のダウンサイジングは、今日マイクロ〜ナノテクノロジーの一研究分野として世界的に重要性が認識されてきたマイクロ化学システムを利用し、ガラス実験器具・装置の微小モノづくりによる環境負荷最小化を目的に、サンプルの前処理,反応,分離,検出など実験室・研究室で行われている化学操作をすべてマイクロチップやマイクロリアクター上に構築するものである。化学操作をダウンサイジング化することにより、化学実験の小スケール化による合理的な環境負荷低減・リスク低減を、実験効率を大きく低下させないで実現可能な環境安全教育に適用することを目標として化学実験器具のダウンサイジングによる実験教育手法の開発を行った。大学等でHPLC装置・システムを研究実験に使用するところは多く、廃棄有機溶媒の環境に対する負荷削減を目的に検討したが、実験者に対する曝露リスクの低減効果を考えると、分離カラムのダウンサイジングはきわめて費用対効果は大きい。現在全国で稼働中のHPLCシステムをモノリス型カラムに置き換えることに対し抵抗感が無くなれば、HPLC稼働に伴う溶媒消費量を1/1000近くに低減できることがわかった。ダウンサイジングによる環境安全教育を標準化し、モノリス型カラムLC組み立て実験、化学工学スケールダウン実験、小スケール有機反応実験などのダウンサイジング化学実験事例を取り入れた実験指導教育が望まれることを認めた。中学・高校および大学一般教育・専門教育で行われる基盤的化学実験においては、適切な実験を経験する機会をできるだけ多く与えることが重要で、実験教育による環境負荷や曝露リスクの低減等の課題を解決できるダウンサイジング化学実験法の構築が有望であるため、実験効率を大きく低下させることなく、種々の実験テーマに適用可能なように標準規格化することが今後の課題である。
著者
井筒 美津子 井筒 勝信
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、文末詞の使用を中心に異方言間コミュニケーションにおける誤解・誤伝達の仕組みを明らかにした。関東・関西方言話者の北海道方言に対する印象調査と北海道方言話者の関東方言に対する印象調査を実施した。関東調査の結果を基に「方言イメージの形成過程」を策定し、その汎用性を関西・北海道調査のデータを用いて検証した。調査結果は報告書にまとめている。また、調査の基盤となる文末詞の研究として、北海道方言と共通語の文末詞『さ』の違いに関する研究や、日本語と英語の文末・節末要素の意味・機能や史的発達についての研究、日本語文末詞と独語・仏語等に見られる心態詞との統語的・機能的類似性に関する研究なども行った。
著者
小峯 和明 渡辺 匡一 池宮 正治 渡辺 憲司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

研究の推進に当たって、まず長年進めている琉球文学研究会メンバーを協力者として要請し、初年度に沖縄で研究会を開催、各自の研究テーマと琉球文学研究とのすりあわせを行い、研究組織の拡充をはかった。当初の目的にしたがい、本土との交流もふまえた総合的体系的な琉球文学の総合目録作成をめざし、初年度にハワイ大学ホーレー文庫調査を試みたが、図書館側の事情もあり、思うように進捗しなかったため、テーマを各自の研究課題とあわせてしぼることとし、最終的に琉球の中世と近世の一大転換点である薩摩藩の侵攻、いわゆる島津入りに焦点を集約し、「薩摩藩侵攻前後の文学言説をめぐって」という研究テーマを確立した。これは従来まったくみられない斬新かつ重要なテーマであり、島津入りの数年前に琉球に滞在した袋中の著述『琉球神道記』『琉球往来』、島津侵攻を物語化した『薩琉軍記』、本土から往還した僧の『定西法師物語』、近世期の遊女・遊郭の起源伝承等々、多角的多面的ななテーマ設定が可能になった。『琉球神道記』をのぞいてはいずれも本格的な研究がなされておらず、伝本調査をはじめ、基礎的な研究からはじめ、ひとまず研究の方位を見定める地点で時間切れとなった。『琉球往来』に関しては従来の活字翻刻を一新する伝本を再発見し、詳細な本文校訂と注釈によって、一気に古琉球をうかがう資料としての価値が高まった。『琉球神道記』は近年の中世神道系の研究動向をふまえた注釈のための基礎資料集を作成、『薩琉軍記』は錯綜する伝本を整理し、かつ写本二種を購入、基礎的な研究をスタートさせた。『定西法師物語』も詳細な伝本研究と注釈研究を始動させ、遊女伝承も従来解明されていない領域にはじめて本格的な考証が加えられた。以上のように、基礎的な研究に終始したが、従来琉球文学といえば、無文字のシャーマニックな古代的なイメージが強かったのを完全に払拭し、あらかな研究の地平を開拓することができた。本研究をもとになるべく早く成果を公刊したいと考えている。
著者
角田 文衞 角田 文衛 黒川 哲郎 辻村 純代 川西 宏幸 KUROKAWA Tetsurou
出版者
(財)古代学協会
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1988

アコリス市の中枢的な機能を果していたと考えられるネロ神殿を中心に、アコリスの形成過程と、その後の展開を考古学的に解明することを目的として発掘調査を実施してきた。その結果、ネロ神殿はローマ皇帝ネロと同ディオクレティアヌスの治政下で大規模な修復と整備が行われていることが判明した。ところが神殿の創建時期については重要な研究課題であるにもかかわらず不明のままに残されてきた。そこで、岩窟を掘り込んで造られた神殿内部の床に開いた竪坑墓の年代をつかむために今回、本格的な調査を行うこととなった。調査の結果、深さ4メートルの竪坑は中程まで垂直に掘り込まれた後に、階段状に下降して小室を造る構造が明らかになった。ワニのミイラやソベク神のレリーフ、棺材、青銅製オシリス等が出土しており、これらの遺物には当墓がローマ時代を遡ることを証明するものはなかった。一方、ネロ神殿に隣接して同じ岩山を掘り込んで造られたハトホル神殿内の竪坑墓については既に調査を行っていたが、下部に造られた二つの部屋のうち南室の調査が完了していなかったため今回、再調査となったものである。先の調査ではピノジェム1世の銘を刻んだ石碑が出土したことから、当墓の造営年代を20ー21王朝と推定した。ところが今回、副葬品として納められた木製模型船や木製枕が発見され、墓の造営が一拠に4000年前の中王国時代に遡ることが明らかになった。模型船は長さ2メートルに及ぶ大型船で、櫂や櫓を漕ぐ40名ばかりの水夫とそれにかかわる装具一式、ミイラになった被葬者とその寝台が船本体に付属しており、規模や写実性において世界的な優品であることがエジプト考古庁やカイロ博物館でも認められ、学問的な価値が極めて高い。ただ、木質が脆弱で、保存処理のための用意がないことから、本年度は船体の一部を取り上げるにとどめて埋め戻した。そして次年度に化学的処理を施したのち全体を取り上げ、その下層を調査することとした。神殿域の南東隅は神殿を隔する大壁が錯綜しており、その築造時期は神殿創建の時期と極めて強い関連性を有する。神殿域の東を隔する大壁は約100メートルの長さで門柱に達する。これをディオクレティアヌス帝治政下に神殿整備が行われた際のものとすれば、神殿本体のみを廻るように築かれた大壁はそれより古く、その基層に含まれる土器の形態からほぼ1世紀、ネロ帝による整備の時期に相当する。更に、この下層からはプトレマイオス朝の時期に比定される土器が出土し、径1メートルたらずのドーム状の貧弱な煉瓦積遺構が検出された。同様の遺構は神殿域の各所で検出されているが、同時期に刻まれた磨崖碑に記されたアコリスが都市であったとすれば、それに相当するような遺構はこれまでのところ発見されていない。従って、神殿域の調査に関する限り、都市の造営はローマ時代帝政期の初期に行われた可能性が強い。神殿域では参道の両側の調査も行い、コプト時代の住居跡数棟を検出した。コインやランプ等の遺物も豊富に出土したが、なかでも重要なのは中門の西側で発見された100点を越すコプト語のパピルス文書である。これまでにもコプト語パピルスは出土しているが、いずれも小片であった。それらに比べ、今回、発見されたパピルスは完形で、封印がそのまま残っている例も含まれている。一部を解読したところによれば、修道士の書いた手紙で、宗教的内容の逸話である可能性が高く、初期キリスト教研究の史料として多大な寄与をすることは疑いない。また、新しい技術を導入して和凧を利用した空中撮影の結果、遺跡の中央部に建立されたローマ様式を持つセラピス神殿から北に延びて都市門に続く中央道路が判明した。この道路はネロ神殿から北に延びる道路とほぼ平行しており、アコリスの道路はローマ的な都市計画に基づいていたことが知られるのである。