著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
松久保 隆 杉原 直樹 須山 祐之 古賀 寛
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、学齢期(学校歯科保健)における食育の推進に口腔に関連した要因がどのように関連しているかを検討することを目的とした。また、医師会が行った生活習慣病リスクに口腔に関連した要因がどのように関連しているかについても検討し、次の結果をえた。(1)う蝕有病に関連する要因は、朝食の欠食であり、歯肉炎の有無(口腔清掃状態と関係する、ついでう蝕原因菌であるS. mutansとLactobacilliのレベル、歯列不正、就寝前の飲食などであった。(2)生活習慣病のリスクは、運動が嫌い、朝食の欠食、S. mutansレベル(10^5以上)であった。S. mutansレベルが関連しているのは、食生活の乱れを示していると考えらた。(3)小学校4、5年生の食べられる食品の多さに関連する要因(食品受容応答)は、保健行動に関連する知識(生活習慣病の知識、朝食(欠食)、フッ化物配合歯磨剤を使用、歯科医院での歯口清掃指導の有無)や習慣と口腔内の機能的な状態である唾液分泌速度や咬合状態が関連していた。検討したすべての項目で朝食の欠食が強く関連する要因であることが示された。これは規則的な食習慣は、う蝕のみならず、生活習慣病のリスクを大きく下げることを示唆するもので、学校保健活動における食育の重要性を示すものと考えられた。
著者
尾形 凡生 植田 栄仁 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.251-259, 1995-09-15
被引用文献数
3 10

数種類のジベレリン生合成阻害物質がウンシュウミカンの着花促進に及ぼす効果について調査した.<BR>1. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびCCCを秋期 (1986年10月末~12月末) に3回散布したところ, パクロブトラゾールおよびウニコナゾールーP処理が翌春の着花数を有意に増加させた.<BR>2. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびGA<SUB>3</SUB>を冬期 (1992年12月19日~1993年3月10日) に散布処理した. パクロブトラゾールでは, 1月10日および1月30日, ウニコナゾール-Pでは1月30日, プロヘキサジオン-Caでは, 12月20日~1月30日の処理によって有意な花数増加が得られた. GA3は各処理時期とも着花を著しく抑制し, とくに1月10日処理における着花抑制効果が高かった.<BR>3. 1993年1月30日にパクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの100,300,1,000および3,000ppm溶液を散布したところ,パクロブトラゾールでは100~1,000ppm, ウニコナゾール-Pでは100ppm, プロヘキサジオン-Caでは300~1,000ppm処理で花数の増加効果が認められたが, このうちパクロブトラゾールの100ppm処理区では着蕾後の落花 (果) が発生した.<BR>4. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの1,000ppm溶液を1993年1月10日~2月20日に1~3回散布したところ, いずれの薬剤でも3回処理が最も効果的で, 1,2回処理でも花数は増加する傾向にあった.<BR>
著者
井上 智彰 八杉 健司
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.622-627, 2011-11-30 (Released:2012-02-29)
参考文献数
27

バイオ医薬品では,薬理作用に種特異性が高い場合が多く,安全性評価には薬理作用が認められる動物種を用いることが望まれる.毒性の特徴として,医薬品自体に対する免疫反応の誘導,抗体医薬の一部に認められるサイトカイン放出などがあり,ヒト細胞を用いたin vitro評価法などが検討されている.DDSによるバイオ医薬品の毒性への影響の例として,PEG化による免疫原性の改善,PEG化リポソームにおけるABC現象,徐放性製剤における皮膚刺激性について解説する.
著者
高橋 順太郎
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
no.81, pp.538-542, 1888-11-03
著者
谷口 敏代 高木 二郎 原野 かおり 廣川 空美 高橋 和巳 福岡 悦子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-1, 2012 (Released:2012-03-05)
参考文献数
37
被引用文献数
4 6

介護老人福祉施設に勤務する介護職員のいじめ,ハラスメントとストレス反応:谷口敏代ほか.岡山県立大学保健福祉学部保健福祉学科―目的:本研究は地方都市にある介護老人福祉施設に勤務する介護職員について,いじめ,ハラスメントの実態を明らかにし,それらが心身の不調(ストレス反応)を起こすという仮説を検証することを目的とした.方法:A県のB地区にある介護老人福祉35施設の医師を除く全従業員を対象とし,2009年8–9月,自己記入式質問紙による横断調査を行った.調査内容は,職業性ストレス簡易調査票のストレス反応29項目,個人的ないじめ,仕事上でのいじめ,性的ハラスメントで構成される日本語版Negative Acts Questionnaire(NAQ)12項目であった.調査項目のストレス反応・NAQに欠損値のない1,233名(有効回答率63.9%)のうち,介護職員897名を分析対象とした.心理的ストレス反応(活気の低下,イライラ感,疲労感,不安感,抑うつ感)と身体的ストレス反応(身体愁訴)が,いじめの体験の有無によって異なるかをt検定や分散分析を用いて検定した.結果:男女ともに半数以上が仕事上のいじめを構成する「必要な情報を与えない人がいて仕事が困難になる」を体験していた.また,男女とも4割程度が個人的ないじめを構成している「あなたについての陰口,または,うわさ」を体験していた.女性介護職員においては,個人的ないじめを受けた体験のある人で,有意に(p<0.05)活気が低く,疲労が高かった.また,仕事上のいじめを体験した人の方がそうでない人に比べ有意に(p<0.05)うつ気分が高く,性的ハラスメントを体験した人の方がそうでない人に比べ有意に(p<0.05)不安感が高かった.一方,男性介護職員ではいじめを体験している人がそうでない人に比べ有意に(p<0.05)活気が高かった.結論:女性介護職員において,職場のいじめ,ハラスメントは精神的ストレス反応の一部と正の関連を示し,仮説と矛盾しなかった.一方,男性介護職員ではいじめと活気との正の関連がみられた.職場のメンタルヘルス対策においては性差に考慮する必要性が示唆された.
著者
吉見 俊哉 ディマ クリスティアン ディマー クリスチャン DIMMER Christian
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、高まる世界経済競争と世界の都市部での社会格差の中、いかに政治家、プランナー、デベロッパー、市民に共通する「都市の公共空間」を明らかにすることである。しかし公共空間における過去のネオリベラルな規制緩和や民営化政策の結果、相互依存における発展の影響について適切な理解が深められることなく政府、地方自治体などの行政側から民間セクターへと移行することとなった。本研究では、公共性の高い都市空間の協力的(官民)計画方法、実際の建設、管理という全プロセスの流れを系統的に調査、分析する。研究の中では、現制度や社会的状況における「公開空地(privately owned public space、POPS)」(※「公開空地」は公共性の高い民間所有地)のあり方を特に詳しく精査する。それに加え、より新しい実例として着目しているのは特定地域における公共空間の民間による創出や管理が争いに繋がるケースである。下北沢の道路開発プロジェクトや銀座松坂屋の再開発プロジェクト、渋谷宮下公園の民間化と京都梅小路公園の中の民間デベロッパーで水族館工事といったものが挙げられる。都市化や都市構造の再編が進む中、民間化の拡大は日本に限った問題ではない。都市空間の問題はアメリカ・ニューヨーク、チリ・サンティアゴ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ各都市でも見られるため、それらの都市と日本の都市との関連性も共同研究中である。共同研究結果の議論のため、2010年5月27日、28日、29日にはオーストラリア・メルボルンでアーヘン工科大学のペゲレース博士とメルボルン工科大学のヨナス教授主催のワークショップに参加して次の共同のワークショップは12月にドイツのアーヘン市で予定されている。また2010年7月10日上智大学の比較文化研究所主催の『Alternative Politics : Youth, Media, Performance and Activism in Urban Japan日本人若者政治参加と都市空間』と言うコンファレンスで東京における「奪い合われる空間」に関して発表し、複合的観点から見る現代都市日本の公共空間の社会文化特有性について議論した。また同じテーマに関して11月にドイツ、フランクフルト市でのVSJF学会と2011年の3月にホノルル市でのAASの学会発表する予定である。
著者
小林 浩
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.1263-1267, 2011-05-01

子宮頸がんは本邦では年間15,000人が発症し3,500人が死亡する疾患であり,女性特有のがんの第2位を占める.発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV 16型・18型)というウイルスの持続的な感染が原因となって発症する.このウイルスに感染すること自体は決してまれではなく,性交経験がある女性であればだれでも感染する可能性がある.最近10年間で特に20歳代や30歳代の若年層で罹患率が増加している.HPVに感染してもほとんどの場合,ウイルスは自然に排除されるが,排除されずに長期間感染が持続する場合があり,ごく一部の症例で数年〜十年かけて前がん病変の状態を経て子宮頸がんを発症する.この間に子宮頸がん検診を行えば前がん病変を早期発見し,治療することができる.女子中学生などへの子宮頸がん予防ワクチン,乳幼児へのヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチン接種については,平成22年度の国の補正予算でその公費助成費用が措置された(子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業)ことから,市町村では実施準備が整い次第,当該ワクチン接種の公費助成を開始している(一部市町村では既に公費助成を開始している).子宮頸がん予防ワクチンの公費負担が開始されたが,各市町村により接種対象者が異なるので十分把握する必要がある.ワクチン接種に関するガイドラインとその実務的な内容を記載した.
著者
横田 晋大 結城 雅樹
出版者
北海道心理学会
雑誌
北海道心理学研究 (ISSN:09182756)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.11-26, 2010-03-31

近年,適応論に基づく研究において,人が様々な種類の外集団からの脅威に対抗するために,脅威の種類に応じた多様な心理メカニズムと行動傾向を持つ可能性に注目が集まっている。本研究では,外集団脅威への適応心理メカニズムの性差を検討した。男性には,外集団からの資源の強奪や暴力 (“妨害脅威”) に対抗するための心理メカニズムが,女性には,外集団から未知の病原体の感染 (“感染脅威”) に対抗するための心理メカニズムが備わっているという仮説を立て,実験室実験にて検証した。大学生166名が参加し,事前に外集団脅威の状況手がかりの有無と種類(妨害vs. 感染)を操作した後,最小条件集団状況で報酬分配課題を行った。その結果,予測通り,妨害脅威条件では男性でのみ,感染脅威条件では女性のみで差別行動が見られた。しかし,予測と異なり,脅威の手がかりが存在しない統制条件においても,男性の差別行動が見られた。