著者
庄 ゆかり 長登 康 稲垣 知宏 隅谷 孝洋
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
no.92, pp.27-35, 2011-08

広島大学図書館は. 1年次前期授業「情報活用基礎」において1回60分で文献情報の探索と利用に関する情報リテラシー教育プログラムを提供している。このたび,この授業について,アンケートとe-learning教材を利用した事前テスト・事後テストにより,学生の能力調査と授業評価を行った。コンピュータ利用経験と文献情報利用に関する情報リテラシー能力には大きな関連性は見られなかった。また,4-7月の期間における通常の授業の影響は明らかではなかったが,このプログラムには効果があることが確認できた。知識を実際の学習行動に結びつけることが今後の課題である。Hiroshima University Library offers an information literacy program to freshmen in their first semester which is a one-shot sixty minute session on how to search for and use bibliographic information. Student knowledge and sessions are evaluated through the use of questionnaires about their experiences using computers and pre-and post-tests using e-learning resources. While neither a strong correlation between computer use and information literacy knowledge nor direct effects of their learning in other subjects during the period of April to July was found in relation to use of bibliographic information, the researchers were able to confirm that the program was effective. How to link the knowledge learned in this program and reallearning behavior is a topic that needs to be studied further.
著者
小杉 健二 佐藤 威
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

吹雪は積雪・寒冷地域においてしばしば視程障害や吹きだまりの原因となり、時として自動車の多重衝突などの深刻な災害を引き起こす。しかし、吹雪の時空間変動の観測に適した安価な測器が無いために、その変動特性には不明な点が多く残されている。本研究では、安価な吹雪計測方法を開発することを目的とする。低温実験室において、吹雪の中に音響センサーを置き、発せられる音響信号と雪の質量フラックス(単位時間に単位面積を通過する総質量)の関係を調べた。実験の結果、質量フラックスの増大とともに音響信号の変動も増大することが分かった。以上のことから、吹雪の計測に音響センサーを用いることの有効性が示された。
著者
松村 真宏 加藤 優 大澤 幸生 石塚 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.554-564, 2003-10-15
被引用文献数
17

議論の論点をすばやく発見し理解するためには、議論構造を可視化してユーザに提示することが有効である。そこで本稿では、議事録から話題の単位(セグメント)を同定し、さらに同定したセグメント間の関連を調べることにより、議論構造を構造化マップとして可視化するシステムを提案する。また、構造化された議論に影響の普及モデルIDMを適用することにより、議論の発展のトリガとなる話題を発見することを試みる。アンケートによる調査の結果、適度に議論が分割・構造化された構造化マップは、ユーザが議論の論点を直感的に捕らえるための手がかりを提供していることを示す。また、IDMにより同定された話題は、構造化マップにおける入次数、出次数に着目した結果よりもPrecisionが高いことを示す。
著者
伊藤 嘉高 田中 幸子 大嶋 聡子
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.209-216, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
11

「看護師不足」が広く認識されるなか,看護職員への離職防止,定着促進策が種々講じられている。そうした動向の背景には,病院の看護職員の年齢構成がいわゆるM字カーブを描いておらず,30歳代から一貫した低下傾向にあるとの認識がある。しかしこの認識は全国的には必ずしも当てはまらず,山形県のデータではM字カーブを描いている。本研究では,この山形県の看護職員の年齢構成を子細に分析した。その結果,山形県でも都市部の急性期病院は30歳代から一貫した低下傾向にあるものの,地域間の転職・再就業の流れが地方部の重要な人材供給パスになっており,結果として県全体でM字カーブになっていることを明らかにした。山形県におけるM字カーブは必ずしも離職防止・定着促進の結果ではない。したがって,今後の看護政策には,急性期病院に目を向けた「固定化」策だけではなく,個々の看護職員の移動を視野に収めた施設横断的な就労支援策も求められる。
著者
後藤 英昭 阿曽 弘具
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.465-473, 1995-03-25
被引用文献数
8

文字領域の抽出は,文書画像に対して文字認識処理を適用する際の,必須な処理である.本論文では,文書画像から文字領域を抽出する新しい手法:区分直線連結法(Linear Segment Linking)を提案する.本提案手法は,文書画像中の区分直線状の要素を文字行と仮定して抽出するもので,文書構造に関する知識を必要とせず,画像のゆがみなどにも耐性があることが示される.本手法では,画像の中間表現として新しく定めた基本矩形を用いるが,これは行方向にぼかしを入れて抽出される定まった幅の矩形(高さは画像に依存する)である.この基本矩形は,外接矩形よりも容易かつ高速な生成が可能なものとなっている.また,文字行抽出処理の段階で行間の結合(ブリッジ)を強制的に切り離す処理を導入している.これによって,文字行間に若干の接触のある文書からも安定な文字行の抽出が可能となることが示される.
著者
藤原 求美 山口 実果 手塚 康貴 太田 忠信
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.330-333, 2006-10-20

本研究の目的は,脳卒中患者・骨関節疾患患者・健常高齢者におけるFour Square Step Test (以下,FSST)の検者内信頼性と妥当性について検討することである。対象は脳卒中患者30名,骨関節疾患患者20名,健常高齢者20名とし,FSST,Berg Balance Scale(以下,BBS),Timed Up and Go test(以下,TUG)を測定した。脳卒中患者30名のうちFSSTを完全に実施できた患者は24名であった。FSSTは2回の測定を2日間行い,その測定値より級内相関係数を求めた結果,全対象者で高い再現性(ICC=0.807〜0.985)を示した。またFSSTとBBS,BBSとTUGの間には危険率1%未満の有意な相関関係(ρ=0.677〜0.860)が認められ,FSSTとTUGの間には危険率5%未満の有意な相関関係(r=0.559〜0.948)が認められた。結果より,FSSTは上記の対象者において有用な評価方法であると示唆された。
著者
新小田 春美 末次 美子 加藤 則子 浅見 恵梨子 神山 潤 内村 直尚 樗木 晶子 西岡 和男 大久保 一郎 松本 一弥 南部 由美子 加来 恒壽
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡醫學雜誌 (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.12-23, 2012-01-25 (Released:2013-06-19)

Purpose : To find the relationship between parents' sleeping and living behaviors and their children's sleeping habits, and to investigate factors specifically related to children staying up late in recent Japan. Methods : During regular health check-ups of children at three local health centers in the city A, we recruited the parents of one-and-half-year-old and three-year-old children to participate in the Child Sleep Cohort Project (ChiSCoP). Parents of 184 children who consented to participation were mailed three questionnaires by placement method. These are "sleeping diary for 10 days," "sleeping and lifetime rhythm survey," and "emotional behavior assessment scale (CBCL : Child Behavior Checklist 2rd/3rd edition)," of which valid data on 178 children were collected over two years and analyzed. Analysis : Participants' demographic data, perceived and actual sleeping and living habits, and bedtime patterns were compared among the groups classified by bedtime of children. Bedtimes were classified as early (before 21 : 00), normal (21 : 00 to 21 : 59), and late (after 22 : 00). Using one-way analysis of variance with two (early vs. late) and three bedtime categories, significant differences were found among the three bedtime categories about childcare environmental factors (meal, daytime activity, TV, nap, and bath). So we performed logistic regression analysis with "late bedtime" as the dependent variable and scores of environmental factors (upper or lower than median values) as independent variables in a stepwise manner to eliminate collinear variables and to obtain adjusted odds ratios. Results : 1) Among the 178 children, 96 and 82 were recruited during the physical check-up for one-and-half-year-old and three-years-old, respectively. There were 49, 72, and 57 children in the early, normal, and late bedtime groups, respectively, and no significant difference in attribute factors was found. 2) In children of the early bedtime group, proportions of those with "efforts to establish good life rhythm" (P < 0. 0001), "efforts to cultivate sleeping habits" (P < 0. 0001), and "keeping a regular bedtime" (P < 0.05) were significantly higher, as well as for children who had more than 105 minutes of "daytime nap" compared to children who had less (P < 0.05). 3) Children's bedtimes were significantly correlated with "mother's wake-up time on weekdays" (r = 0. 33) and "mother's bedtime on weekdays" (r = 0. 33). Children's wake-up times were also correlated with "mother's wake-up time on weekdays and weekends" (r = 0. 49) and "mother's bedtime on weekdays" (r = 0.34), which indicates that children's wake-up times had relationship with mother's sleeping and life habits. 4) Later "wake-up time on weekends" (odds ratio = 4.9) and "regular bedtime hour" (odds ratio = 3.53) were found to be the determinant of late bedtimes of children. Conclusions : To encourage earlier bedtimes in children, it is important to take he mother's sleeping and living habits into account and to maintain a regular wake-up and bedtime schedule across weekdays and weekends.
著者
阿川 千一郎
巻号頁・発行日
1992-04-22 (Released:2012-03-01)

報告番号: 乙10689 ; 学位授与年月日: 1992-04-22 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(医学) ; 学位記番号: 第10689号 ; 研究科・専攻: 医学系研究科
著者
岡部 恒治 三島 健稔 鈴木 俊夫 西村 和雄 西森 敏之
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本に伝わる和算・そろばんにある、イメージを利用し、直感的に理解させる思考法を用いて、数学が苦手な学生・生徒にわかりやすく理解させるための方策の研究である。この研究に基づいて、小学生向きの自学自習教科書を実際に作成した。その目覚しい成果は産経新聞、読売新聞、フジテレビなどでも紹介された。また、代表者の岡部は、この成果を用いてお台場のパナソニック・センターに18年8月に開設された「RiSuPia」の数学関連の展示コンテンツの監修をした。三島は教材の電子化に関して多大な貢献をした。このRiSuPiaは、数学に関しての本格的な体験的施設としては、現在本邦唯一のものである。このリスーピアも、NHKはじめ各テレビ局や新開でも大きく報道された。ここでは、和算・そろばんの果たした意義やその思考法を来場者自ら体験してもらうようにもなっている。
著者
石川 秀樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)大規模集客施設の現状や催事の分析など、施設や催事への医療支援に関する事項近隣の大規模集客施設の医療対応状況を調査し、各施設での傷病者数とその内容、治療状況、施設ごとの特性(医寮対応能力など)を明らかにした。結果公開に同意を得た野球場の状況を論文にまとめた(KJM 2007;56:85-91)が、野球場の医療対応に関する論文は本邦初で海外でも稀少である。催事に合わせ開催場所近隣の医療機関に救急医療対応を文書で依頼する「慣習」を分析し、催事内容や主催者の医療に対する考え方を論文にまとめた(JJDM 2005;10:10-18)。Mass-gathering medicineをこのような観点で捉えた報告は国内外を通じ皆無で、催事参加者、とくに観客の安全担保が不十分な国内の催事事情が判明し、実効性のない文書のみの医療対応要請を廃して主催者/施設責任者と医療機関双方でより具体的な準備を行うための貴重な資料となった。(2)教育体制や医療従事者側の意識向上など、傷病者への医療対応に関する事項大規模集客施設の救急医療需要に対応する医療者側の意識向上も不可欠で、研究代表者所属機関で一層の院内教育充実を図り、新規入職者(医療職・事務職すべて)への災害医療講演、初期臨床研修医への災害医療に特化したoff-job training(OJT)、医学部学生への講義、などを実施した。とくに0JTは教育対象者から好評で、その内容を学会で発表した。(3)現時点での本研究に対する評価と今後の展開以上の研究姿勢が評価され、研究代表者は平成19年度から都医師会の救急委員を委嘱されたため、行政側・消防庁などの諸機関と一層の連携強化を図った。本研究の成果に今後の分析を加え、都が誘致中の2016年夏季オリンピックを含む、さらに大きな催事への医療対応システムの確立を目指し、国内で恒常的に開かれる催事での参加者の安全確保に努める。
著者
レメイン ジェラード・バスチアン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

典型発達 (TD) の未就学児童 (3-7 歳) と同じ年代の自閉症スペクトラム(ASD)の子供について,共感を喚起する刺激の脳内処理を 2 つの実験で確認した。まず TD の未就学児童を対象とした脳磁図の計測において,手指の触覚刺激に対する神経応答が他者の足指が刺激される映像を見ているときと比べ手指を刺激されている映像を見る時のほうがより増強されることを示した。これは視覚情報が他者のものであるにも関わらず、自身の触覚刺激に対する神経応答に影響を与えたことを示唆する。次に我々は近赤外分光法を用い,TD と ASD の子供両方について通常の音声と比べてささやき声のほうが皮質の血流応答を増大させることを示した。この応答反応の増大は,より個人的な意思疎通における話者意図の理解に関わる処理を反映している可能性がある。両実験を通じて, TD と ASD の子供両方が他者の気持ちを理解する共感に関連した刺激に対して反応しうることを示した。さらなる研究が求められるが,ASD の子供のささやき声に対する皮質の感応性は医学的な応用のために利用できるかもしれない。
著者
森 恵莉 松脇 由典 満山 知恵子 山崎 ももこ 大櫛 哲史 森山 寛
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.917-923, 2011 (Released:2012-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
5 12

現在日本で保険適応のある嗅覚検査には, 基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査の二種あるが, 基準嗅力検査は実施率, 普及率ともに低く, 静脈性嗅覚検査は疼痛を伴う検査であり患者への侵襲が高い. 嗅覚同定能検査の一つとして開発されたOpen Essence (以下, OE) は, 現在医療保険の適応はないが, その臨床的有用性が期待されている. 今回われわれは嗅覚障害患者に対するOEと自覚症状, 基準嗅力検査, および静脈性嗅覚検査との比較検討を行った. 当院嗅覚外来患者のうち, 嗅覚の評価が可能であった122例を対象とした. OEスコアと基準嗅力検査, 静脈性嗅覚検査, また嗅覚障害に対する自覚症状としてのVisual Analog Scale (VAS) と日常のにおいアンケートとの間にはそれぞれ有意な相関を認めた. また静脈性嗅覚検査において嗅覚脱失を認めた群はOEの正答率が有意に低かった. OEは従来からの検査法である基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査および自覚症状をよく反映するため, 一般臨床において広く利用可能な嗅力検査であると考える. なお, OEに含まれるメンソールは詐病を見破れるものとして必要と考えるが, 嗅力を判定する際にはこれを除いて検討する方が良いかもしれない.