著者
山森 光陽
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.71-82, 2004-03-31

本研究では,中学校1年生の英語学習に対する学習意欲はどの程度持続するのか,また持続させている生徒とはどのような生徒なのかについて検討を行った。具体的には,中学校1年生の英語学習に対する学習意欲はどの程度持続するものであるのかを生存時間分析を用いて検討し,さらに,学習意欲を持続させている生徒とはどのような生徒なのか,またどのようなことが切っ掛けとなって学習意欲が失われるのかを検討した。その結果,中学校1年生の英語の学習においては,初回の授業では9割以上の生徒が英語の学習に対して高い学習意欲を有していることが確認された。しかし,それを持続させることが出来たのは6割程度の生徒であったことが確認された。また,1年間の中でも,特に2学期において学習意欲が低くなる生徒が顕著に多いことが,本研究の結果明らかになった。さらに,試験で期待通りの成績が得られたかどうかではなく,「もうこれ以上がんばって勉強できない」と感じることの方が,その後の学習意欲の変化に影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。さらに,学習意欲が上昇する生徒についても考察を行った。
著者
徳永 健伸 岩山 真
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.28, pp.33-40, 1994-03-17
被引用文献数
18

本論文では,新しい文書のインデックスの重み付け手法を提案し,これを文書の自動分類に応用した実験結果について報告する.本論文で提案する手法は情報検索の分野で一般的に使われている重み付け手法IDFを改良したもので,これをWIDFと呼ぶ.200から6000程度の文書の自動分類実験の結果,WIDFを使うことによってIDFに比べ最大で7.4%精度を改善することができた.This paper proposes a new term weighting method called weighted inverse document frequency (WIDF). As its name indicates, WIDF is an extension of IDF(inverse document frequency) to incorporate the term frequency over the collection of texts. WIDF of a term in a text is given by dividing the frequency of the term in the text by the sum of the frequency of the term over the collection of texts. WIDF is applied to the text categorization task and proved to be superior to the other methods. The improvement of accuracy on IDF is 7.4% at the maximum.
著者
杉戸 清樹 塚田 実知代 尾崎 喜光 吉岡 泰夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1. 日常の言語場面における談話のまとまり(質問・要求・あいさつなど)が言語行動として実現される際,どのような「構え」のもとに生成され受容されるかについて,言語行動論・社会言語学の枠組みで検討することを目的として,次の研究を進めた。(1) 前年度までに行った愛知県岡崎市,東京都内などでの探索的な臨地調査の結果,及び国語研究所の従来蓄積した敬語意識調査の結果などについて,「構え」という視点から整理・分析し,より具体的な分析の手がかりとして「メタ言語行動表現」という表現類型の有効性を検討した。(2) これらの検討に基づき,「メタ言語行動表現」「構え」「ととのえる」などという研究上の観点・方法論的枠組みについて,その有効性を主張しうる見通しを得て,その内容を提案・議論する研究論文を執筆した(裏面第11項参照)。2. 本研究の最終年度にあたるため,上記の研究論文等を中心にして「研究成果報告書」をとりまとめ印刷した(A4判全75ページ)。
著者
篠崎 和弘 武田 雅俊 鵜飼 聡 西川 隆 山下 仰
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

並列分散処理の画像研究を統合失調症(幻聴有群となし群)と健常者について、脳磁図の空間フィルタ解析(SAM)をつかって行った。色・単語ストループ課題では刺激提示から運動反応までの650msを時間窓200msで解析した。賦活領域は左頭頂・後頭(刺激後150-250ms)に始まり右前頭極部(250-350ms)、左背外側前頭前野DLPFC(250-400ms)、一次運動野の中部・下部(350-400ms)に終った。複数の領域が重なりながら連続して活動する様子を時間窓200msでとらえることができたが、MEG・SAM解析のこのような高い時間分解能はPETやfMRIに勝る特徴である。左DLPFCの賦活は幻聴のない患者では健常者では低く、幻聴のある患者で賦活がみられなかった。これらの結果は統合失調症の前頭葉低活性仮説に一致しており、さらに幻聴の有る群でDLPFCの賦活が強く障害されていることを示唆する。単語産生課題(しりとり)ではDLPFCの賦活が患者群でみられ健常群では見られなかったのに対して、左上側頭回の賦活は健常群でみられ患者群では見られなかった。まとめると患者群では言語関連領域の機能障害があるために代償的にDLPFCが過剰に賦活されるが(しりとり課題)、DLPFCにも機能低下があるため(スツループ課題)、実行機能が遂行できないと推論される。このような神経ネットワークの機能障害が統合失調症の幻聴などの成因となっているのであろう。今後はネットワークの結びつきを定量的に評価する方法の開発を進めたい。
著者
山口 彰
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
材料力学部門講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, pp.11-12, 2000-10-05
被引用文献数
1
著者
班目 春樹 木村 浩 古田 一雄 田邉 朋行 長野 浩司 鈴木 達治郎 谷口 武俊 中村 進 高嶋 隆太 稲村 智昌 西脇 由弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国における原子力開発利用の歴史はおよそ半世紀になる。この間、わが国における原子力規制はその規制構造を殆ど変えることなく今日にいたっている。このため、現在の原子力規制は合理性・実効性を欠き、信頼醸成を阻害する原子力システムをもたらしている。そこで、本研究では、原子力安全規制に関する知的インフラに関連する論点に焦点をあてて分析を実施し、原子力規制に関する適切なガバナンスを実現するためのフィールドの創出と論点の整理・政策提言を行った。
著者
佐郷 ひろみ 町田 秀夫 和田 宏 加口 仁 田辺 宏暁
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
no.1, pp.383-384, 2001-08-22

A part of the SORE system was developed for Reactor Vessel. SORE is prototype system that calculates stress history and creep-fatigue damage for main component of MONJU using plant data In this study, the calculating method of stress and temperature using plant data and the procedure of fatigue damage and creep damage evaluation using calculated history of temperature and stress was investigated.
著者
小林 傳司 山脇 直司 木原 英逸 藤垣 裕子 平川 秀幸 横山 輝雄 副田 隆重 服部 裕幸 沢登 文治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

現代社会における科学技術が、知的、物質的威力としてのみではなく、権力や権威を伴う政治的威力として機能していることの分析を行い、科学者共同体において確保される知的「正当性」と、科学技術が関連する社会的意思決定において科学知識が果たす「正統性」提供機能の錯綜した関係を解明し、論文集を出版した。また、このような状況における科学技術のガバナンスのあり方として、科学技術の専門家や行政関係者のみならず、広く一般人を含む多様なステークホルダーの参加の元での合意形成や意思決定様式の可能性を探求した。特に、科学者共同体内部で作動する合意形成様式の社会学的分析に関する著作、幅広いステークホルダー参加の元手の合意形成の試みのひとつであるコンセンサス会議の分析に関する著作が、その成果である。さらに具体的な事例分析のために、参加型のテクノロジーアセスメントにおける多様な試みを集約するワークショップを開催し、現状の成果と今後の課題を明らかにした。課題としては、全国的なテーマと地域的なテーマで参加手法はどういう違いがあるべきか、参加型手法の成果を政策決定とどのように接続する課などである。同時に、「もんじゅ裁判」を事例に、科学技術的思考と法的思考、そして一般市民の視点のずれと相克を記述分析し、社会的紛争処理一般にかかわる問題点や課題を明らかにした。本研究の結果到達した結論は、人々の現在及び将来の生活に大きな影響を与える科学技術のあり方に関しては、政治的な捕捉と検討という意味での公共的討議が必要であり、そのための社会的仕組みを構想していく必要があるということである。こういった活動の成果は、最終年度にパリで開催された4S(Society for Social Studies of Science)国際大会でセッションを組んで報告された。
著者
矢吹 万寿 鈴木 清太郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
Bulletin of the University of Osaka Prefecture. Ser. B, Agriculture and biology (ISSN:03663353)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.51-193, 1967-03-31

この研究は筆者の一人が,戦時中福岡県耳納山麓に疎開中台風に見舞われたが,山は防風の役目を果すものと考えられているにかかわらず,風下側の山麓の農作物の被害が平地のそれより甚大であったことを観察し,この奇異な現象に興味を持ったことから始められた.其の後の調査によると,このような現象は日本各地に発現しており,また日本のみならず世界各地で問題となっていることを知った.この論文はそれ以来約15年間にわたって行われた研究の集積である.この論文は第1部と第2部とにわかれ,第1部では,この種の局地風として有名な,北陸地方のフェン,清川ダシ,ヤマジ風,広戸風,耳納山オロシ,比良八荒(講),上州空っ風について現地の資料および高層資料によって解析するとともに,特に筆者らによって約3年間直接観測を行った六甲山の両山麓におこるオロシについて解析された結果について述べた.第2部においては,模型実験によって山越気流を解析した結果について述べた.この種の実験は風洞によって自然状態を再現することが困難であるので,水槽を用い,塩水濃度を変えることにより,大気の自然条件を再現させた.実験は斉一密度流,二層流,三層流,安定成層流,寒冷前線および温暖前線通過時の流れについて行った.この実験により,山越気流の全容を知ることが出来るとともに,P.Queneyの理論およびJ.Forchtgottの観測によって得られた山越気流をも再現することが出来た.現地観測,高層資料および模型実験から,このいわゆる山越気流は,滝あるいは堰堤の落下する水と同様に,冷気が山腹を落下するとき重力により加速され,山麓に強風域を生ずるものと考えられる.したがって山の風下測に強力な吹き下し風が発達するためには,1.山項近くに不連続面が在存し,上下両層の密度差が大きいこと.2.一般風が強いことが必要であり,下層が安定であればさらにこれを強める.したがって不連続線の進行方向と山脈の走行方向とから山越気流の性質が決ってくる.寒冷前線の場合は前線の通過直後から山越気流が発生し,同時に雨も伴う.日本では寒冷前線は主に北西風を伴うから,寒冷前線によって発生する山越気流は,広戸風,良比八荒,六甲山南麓オロシ(神戸の北風)などあであり,温暖前線の場合は前線通過前におこり,これによって発生する山越気流は,耳納山オロシ,ヤマジ風,六甲山北麓オロシなどである.また閉塞前線は低気圧の北側にあり,東風を伴うから,主に南北に走る山脈に山越気流は発生し,生駒山オロシ,平野風(奈良県)などで,英国のMt.Crossfellもこれに属すゝものと考えられる.これらの分類は一般的なことで,不連続線の通過方向によっては,ヤマジ風が寒冷前線によって,比良八荒が温暖前線によって発生する場合もある.従来山越気流は発生する場所によって,その前兆なり,現象が全く相反することもあって,問題とされていた点も,これによって統一的に解析できるものと考える.
著者
大島 慶一郎 若土 正曉 江淵 直人 三寺 史夫 深町 康
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

海水・海氷・油の流動予測の基盤となる3次元海洋モデルを開発・高精度化した。最終的には、分解能1/12度で、日本海と太平洋の海水交換も含み、日々の風応力と月平均の海面熱フラックスによって駆動されるモデルを開発した。係留系及び海洋レーダーより取得した測流データとモデルとの比較・検討により、東樺太海流・宗谷暖流に関しては非常に再現性のよいモデルを開発することができた。このモデルに粒子追跡法を取り入れて、サハリン油田起源の海水の漂流拡散を調べた。水平拡散の効果は、Markov-chain modelを仮定したランダムウォークを用いて取り入れた。表面下15mでは粒子の漂流はほとんど海流(東樺太海流)で決まり、粒子は東樺太海流に乗って樺太東を南下しあまり拡散せずに北海道沖に達する。表層(0m)では、風による漂流効果も受けるので、サハリン沖の粒子の漂流は卓越風の風向に大きく依存する。沖向き成分の風が強い年は、表面の粒子は東樺太海流の主流からはずれ、北海道沖まで到達する粒子の割合は大きく減じる。アムール川起源の汚染物質の流動予測も同様に行い、東樺太海流による輸送効果の重要性が示された。2006年2・3月に起こった知床沿岸への油まみれ海鳥の漂着問題に、後方粒子追跡実験を適用し、死骸は11-12月のサハリン沿岸から流れてきた可能性が高いことを示した。潮流による拡散効果を正しく評価するために、主要4分潮のオホーツク海の3次元海洋潮流モデルを、観測との比較・検討に基づいて作成した。この潮汐モデルと上記の風成駆動モデルを組み合わせて粒子追跡実験を行うことで、より正確な流動予測モデルとなる。オホーツク海の海氷予測に関しては、その最大面積を予測するモデルを提出した。秋の北西部の気温とカムチャッカ沖の海面水温を用いることで、3ヶ月前の時点で、高い確度で最大海氷面積を予測できることを示した。
著者
植田 睦之 福田 佳弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S21-S26, 2010

北海道西部の日本海沿岸において,オジロワシとオオワシの飛行頻度に影響する気象要因を明らかにするために調査を行なった.解析した気象要素は,気圧,気温,降水量,風速,日照量および,風速の西ベクトル(西方向の風の強さ)と北ベクトル(北方向の風の強さ)で,これらとワシ類の飛行頻度とを比較した.その結果,西方向の風の強さがオジロワシ,オオワシの出現頻度に影響していた.調査地では西方向の風が吹くと海岸段丘による斜面上昇風が生じると考えられ,そのため西方向の風が強いとワシ類の出現頻度が高くなるのだと考えられる.
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.5-20, 2003-03-25

フランス革命のさなか市民社会の揺藍期にあって,早くもコンドルセは,公正な理想社会実現の基礎条件として,賃銀システムの不確実性を補う社会保険の不可欠なことを予測し情熱をこめて制度を構想唱道した。いま,成熟した高度産業社会のひずみに対抗して,社会秩序の総体的なバランスを回復するために,現代の社会保障政策を考えるとき,その大きなポイントは,惰性と勢力に支配された政治算術をあやつることではなく,転換期の社会形成にかけたコンドルセの確かなロゴスにささえられた熱いパトスを継ぎ,福祉政策の目的と機能を明示して,そこに公平性確保の精気をよみがえらせ,新しいこれからの社会統合の土台をつくりだすべきことを考察した。