著者
西本 陽一
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「周縁性」を中心テーマとして、社会的な周縁におかれた少数者集団が、自らが経験してきた歴史・社会的な苦境の中で、何を感じ、何を希望として抱いているかという問題の解明を目指すものである。具体的には、東南アジア大陸部北部から中国西南端にかけての山岳地帯に暮す少数民族ラフを対象として、歴史的・社会的な周縁化の過程の中で、彼らの間で起こってきた伝統宗教の改革・復興運動およびキリスト教への改宗に焦点を当てる。特に、「周縁性」の経験および「周縁性」への応答としての宗教変容や宗教運動についての、ラフ自身による語りの実証的な記録と分析とによって、その社会的な経験を彼/彼女らの視点にできるだけ近づいて理解しようとするものである。このような研究目的をもつ本研究は、(1)東南アジア大陸部山地における諸民族の政治・経済・文化的権力関係の歴史研究、(2)ラフの宗教復興・改革運動の研究、(3)村人自身の語りによる「周縁性」の経験の研究の3つの部分から構成される。このうち平成20年度には特に、(2)と(3)について研究を進めた。平成20年8月から9月にかけて、中国雲南省およびタイ国チェンマイ市にて現地調査をおこなった。研究最終年度にあたる平成20年度には、論文と学術発表を積極的におこない、成果の発表にも努めた。平成20年度末には、3年間の研究成果の報告書である『平成18年度〜20年度科学研究費補助金萌芽研究(課題番号:18652077)研究成果報告書「周縁性の経験-少数民族ラフの宗教変容と語り-」、研究代表者:西本陽一』(2009年3月31日、全302ページ、DVD付)を刊行した。

2 0 0 0 OA 公法判例研究

著者
山崎 栄一
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.827-839, 2003-03-20

2 0 0 0 IR 雷と送電線

著者
藤高 周平
出版者
誠文堂新光社
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.7, pp.290-294, 1950-07-01

今年もまた雷の季節とつた.タ立とともにわたしたちに凉風をおくる雷も,送電線に落雷しでは大都市も一瞬のうちに暗黒の巷に化するいたずらものである.とくに現有施設の全能力をあげて送電しているわが國の現状てはその對策はもつともいそがれている.送電線に架空地線をはることは電撃豫防に有効な方法だが,殘念ながら完全とはいえない.そこでもし被害をうけた地點がただちに判定されれば,修理に要する人手と日數をきわめて節約できるであろう.これには有望な方法がある.ここにこれらに關して筆者の行つた最近の研究を紹介しよう.
著者
山下 浩史
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.781-796, 2007-09-30
参考文献数
11
被引用文献数
1

2005年5月15日夕方,東京都八王子市などでは降雹や突風による風害が発生した.そこで,この現象をもたらした積乱雲の特徴について調査を行った.その結果,この積乱雲は,15時頃から15時30分前まで,スーパーセルに発達していたことが分かった.その発達の要因として,以下の(1)〜(3)が考えられる.(1)500hPaで約-27℃の寒気を伴った低気圧が東北地方を通過し,それに伴い,中層(高度600〜700hPa付近)のトラフが埼玉県熊谷付近を通過していたこと,(2)(1)のトラフの通過による対流不安定の強化の可能性と,海風による水蒸気量の増加と日照による昇温効果が加わったことにより,時間的・局地的に安定度が悪くなったと思われること,(3)積乱雲からの降水粒子の荷重と蒸発とで形成された冷気外出流と地上の南東風との間で起きた収束により上昇流が存在したと考えられること,である。このスーパーセルの最大の特徴は,メソサイクロンの出現時に,高度2000mより下層で鉛直渦度が顕著に強まっていること,スーパーセルの内部での雷が少ないことであった.また,スーパーセル発生時のバルク・リチャードソン数とストーム・リラティブ・ヘリシティは,それぞれ8.5,-5m^2/s^2となっていて,米国のスーパーセル発生指標の下限値を下回っていた.突風の被害地域はメソサイクロンの進路にほぼ一致し,被害は鉛直渦度の極大域が地上付近に達した時に発生していた.
著者
田畑 惣太郎 岩崎 慶 高木 佐恵子 吉本 富士市
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.668, pp.1-6, 2005-02-18

現在, 多くの情報検索システムがあるが, モバイル環境で利用できるものは少ない.本稿ではモバイル環境で簡単に利用できる花の画像検索システムについて述べる.本システムは, 携帯電話を用いて撮影した花の画像とその位置情報, および花の簡単な特徴を花の画像検索サーバに送り, 検索した結果を携帯電話で確認するシステムである.特徴量の和による順位付けと, 各特徴量の順位を用いた順位付けの2種類について, 特徴量の重みを変化させて, 検索方法の評価を行った.その結果, 目的とする花が第1位から第10位までに入ったものが最も高かった組み合わせにおける検索率は, 前者で89%, 後者で87%であった.
著者
向川 均 佐藤 均
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

熱帯大気には活発な対流活動を伴う循環変動が存在するが、これまで熱帯大気循環の予測可能性は正しく評価されていなかった。このため、本研究では、熱帯大気循環の予測可能性評価に必要な熱帯域有限振幅不安定モードについて気象庁アンサンブル予報システムを用いて詳しい解析を行い、その力学特性を明らかにした。また、熱帯域大気循環偏差が、中高緯度域の大気循環の予測可能性に及ぼす影響についても評価した。
著者
田井中 秀嗣 織田 肇 中村 清一 田淵 武夫 野田 哲朗 三戸 秀樹
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.241-249, 1998-11-20
参考文献数
22

阪神淡路大震災における勤労者のストレス-家屋被害別にみた1年半後のストレス症状-:田井中秀嗣ほか.大阪府立公衆衛生研究所労働衛生部-阪神淡路大震災被災地域に職場のあった勤労者を対象に, 震災1年半後に, 被災実態とストレス関連症状の有無を尋ねる質問紙調査を実施した.製造業, 病院, 地方公務員, 交通・港湾関連の勤労者3, 015名から回収(回収率40%)した質問票を分析した結果, ストレス関連諸症状の訴えは家屋被害が大きい群ほど高く, また, それら諸症状の訴えは時間経過に伴い減少するが, 家屋被害の大きい群では1年半後にも高い訴えを示す.心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)様の症状を示す者の比率を男性勤労者についてみると「家屋被害なし, あるいは軽微であった群」では, 震災直後21.8%, 3ケ月後12.9%, 1年半後3.7%であり, 直後にはかなりみられるが, 1年半後は少ない, 他方「家屋被害が大きく元の家に住むことができなかった群」では, 直後48.0%, 3ケ月後34.2%, 1年半後12.6%であり, 直後も多く, かつ, 1年半後もかなり多い.持病の再発・悪化を訴える者の比率は震災直後頃よりも3ケ月後頃に高く, 1年半後でもほとんど減少せずそのまま残る.職業上の問題としては, 失業不安, 震災後の繁忙と過労, 無理な出勤, 通勤の不便, 危険を感じながらの作業, 収入減, 勤務地の変更・出向が訴えられた.
著者
木原 一雄 加藤 多恵子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.351-355, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
16

日本をはじめ,地形的に地震発生の可能性のある地域での図書館の地震対策は喫緊の課題である。図書館での地震発生時での図書館,および図書館員の対応について述べる。図書館が地震に遭遇した場合,まずは図書館利用者,図書館スタッフの人命を守る,次に図書館資料を守ることである。いずれにしても図書館の免震構造,および図書館内の設備の耐震の工夫は重要である。その中でも書架の構造,固定などは地震発生被害を経験して,いくつかの教訓が得られている。日本の阪神淡路大震災,カリフォルニア州で発生した2件の地震に関連して図書館が遭遇した被害について触れた。
著者
田中 浩 岩田 和之 改田 徹哉 根井 敏之 泉田 史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFT, 光ファイバ応用技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.545, pp.21-24, 2007-02-23

この論文では,1999年〜2005年までに発生した生物被害について分析した結果と,設備の信頼性,保守稼動削減を考慮した対策方法について説明します.
著者
伊場 昭三 筧 弘毅 有水 昇
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-45, 1971-06-20

The gonad dose was evaluated upon forty-six patients with the hyperthyroid treated with the therapeutic dose of ^<131>I, 2 to 20mCi, These forty-six patients have been derived from all the out-patients, 15787 cases, visiting the Chiba University Hospital in recent twelve years. The gonadal exposure due to gamma rays of ^<131>I was directly measured by the pocket chambers placed close to the gonad of each patient, showing 0.35 to 0.4 rad per one mCi of ^<131>I the first 24 hours after the administration. Those of beta-rays, however, were approximately estimated at 0.3 rad per one mCi by using the specific activities of ^<131>I in the blood and the calculation. The fundamental experiment concerning the gonadal exposure was perfomed with a body-sized phantom containing ^<131>I solution, suggesting that ^<131>I excreted into the bladder had gave considerable contribution to the gonad dose.
著者
岡本 高幸 朴 泰祐 佐藤三久 建部修見
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.87, pp.121-126, 2006-07-31

家庭やオフィスの遊休PCは潜在的に大きな計算能力を有しており,これらを接続して効率的に利用することができれば非常に大きな計算資源となる.しかし,NATやファイアウォールの中にあるこれらのPCを相互に接続するには,物理的なIPアドレスに依存しないノード識別子によるルーティング処理やUPnP,hole punchingなどのNAT越えの技術が必要である.これらをアプリケーションごとに実装していくことは煩雑であり,P2Pアプリケーションの開発における問題となっている.そこで本稿では,アプリケーションをネットワークの物理構成から独立させ,物理ネットワークに依存せず参加するすべてのノードを等しく接続可能とするオーバーレイネットワークを提案する.そして,その実現に必要なNAT越え技術の一つであるUDP hole punchingについてのテストシステムを作成し,市販の家庭用ルータを用いて性能評価を行った.UDP hole punchingと独自のライブラリを使うことによってTCPと比べて2 割程度のスループットの低下でNATを越えて直接通信が実現できることを確認した.An enormous number of PCs at home or office potentially implies a great amount of computation power when they are out of the work, and there is an opportunity to utilize their power for a large scale computation. However, these machines usually exist behind the NAT or firewall and it requires various techniques to access and connect them, such as logical naming independent from the original IP addresses, efficient routing, or NAT traversing with UPnP or UDP hole punching. It is troublesome to apply these techniques adequately to each application, and this is a hazard in the development of P2P application. In this paper, we propose an overlay network to connect all attending nodes in logically flat layer independently from their physical network in order to encourage the easy development of various P2P applications. In our system, we implement a generic communication library based on UDP hole punching which is one of the most common NAT traversal techniques, and evaluated the communication performance on commodity personal broadband router widely used at home. We developed an original communication layer only with UDP protocol which is basically compatible with TCP. By the direct communication through NAT box without intermediate relay server, we confirmed that our method provides a communication performance with only about 20% of performance degradation compared with TCP communication.
著者
永田 豊 吉田 次郎
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1986

海洋中に放出された河川水・温排水と周囲水との間に形成されるフロントは排出水の拡散を抑制する。フロントの形成は比較的小規模な放出条件においても見られるが、現象が大規模化し地球自転効果が有意に効きはじめるとより明確になる。本研究では、大規模排水にともなう温水あるいは汚染物質の拡散予測の問題に関連して、排水と周囲水の間に形成されるフロントの果たす役割をそこに生じる波動あるいは渦動に焦点を当てて研究したものである。数値実験・水槽実験の両手法を通した研究を行なったが、前者では主として地球自転効果のフロント強化作用の解明につとめ、フロント前面での水の収束発散がいかにその生成に影響するかを明確にした。波動・渦については主として回転水槽実験を通して研究したが、沿岸からの排水にたいして、その放出角度が渦動の性質に大きな影響を与え、北半球では海岸線沿い左方向の速度成分を持たす形で放出した場合に非常に早い段階から渦の発生・水塊の分裂が起こることを示した。この分裂は、従来水槽の中央部で水平速度成分を抑えた形での放水実験のときに現れた分裂現象とは本質的にその性質が異なっている。条件をより単純化するため、放水口を水槽の中央に移し種々の水平速度を与えた場合についても渦の発生の様子を調べた。その結果強制的な流れが水塊の縁に沿う形で放水が行なわれるときと、放水口が明らかに水塊の内部に位置してしまう場合とでは異なった不安定・渦の分裂が起こることが示された。これは前述の沿岸に放出口を置いたときのフロントの性状に対する放出角の影響の仕方をよく説明するものである。このような放出角に対する温排水の振舞の違いは、福島第一原子力発電所の場合にも明らかに認められており、自転効果の現れを示すと考えている。またここで得られた結果は数値予測を行なう場合の渦動拡散係数の取り方などに有効な指標を与えるものであると考えている。